コクランレビューワークショップの記事を書く過程で見つけたレビュー(アブストのみ)
偶然見つけたコクランレビューを紹介したいと思います。
最新のものなので、登録してない僕には全文読めないのでアブストのみの紹介になりますので、ご了承ください。
統合失調症治療で抗精神病薬で治療するのですが、単剤が望ましいとはされていますが、単剤ではうまくいかない場合併用療法が選択されることがあります。(電気けいれん療法が使えない施設では抗精神病薬の併用は現実的な治療選択肢になります)
Antipsychotic combinations for schizophrenia
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD009005.pub2/full
では、論文の設定している臨床疑問と結果を見ていきましょう。
P:統合失調症患者
E:抗精神病薬の併用療法
C:抗精神病薬の単剤治療
O:(効果)
・臨床的改善応答 RR 0.73, 95% CI 0.63 to 0.85; participants = 2364; studies = 29, very low-quality evidence
・再発予防 RR 0.63, 95% CI 0.31 to 1.29; participants = 512; studies = 3, very low-quality evidence、高い異質性(I² = 82%)
・治療からの早期脱落 RR 0.89, 95% CI 0.73 to 1.07; participants = 3103; studies = 43, low-quality evidence
・入院 RR 0.96, 95% CI 0.36 to 2.55; participants = 202; studies = 3, low-quality evidence
(安全性)
・重篤な有害事象による中止 RR 1.05, 95% CI 0.65 to 1.69; participants = 2398; studies = 30, very low-quality evidence
S(study design):ランダム化比較試験、準ランダム化比較試験
データベース:CINAHL, BIOSIS, AMED, Embase, PubMed, MEDLINE, PsycINFO, registries of clinical trials
調査日: September 2010, August 2012 and January 2016
治療への応答には併用療法の優位性がみられていますが、軒並みlow-qualityで今後の研究次第では結論は容易に変わることが予想されます。さらに、長期試験はなく長期での有効性・安全性を議論するデータはないといったところでしょうか。
奈良コクランレビュープロトコールワークショップに行ってきました
かなり遅くなりましたが、6/24に開催されました奈良コクランレビュープロトコールワークショップに参加してきましたので、報告したいと思います。(参加者の中に薬剤師が自分一人で寂しかったので、参加者増を勝手に目指しての宣伝目的の記事ですので、興味のない方はソッ閉じをお勧めします)
NPO法人日本コクランセンターの開催するワークショップで、コクランレビューを書くために必要なタイトルの事前登録を目指して開かれているものです。(10月頃に全手順を網羅したフルワークショップが開催予定です)
事前課題として臨床疑問を2~5個用意してくることと、Pubmedの超初級を知っておくことが設定されています。(僕は行きの電車の中で考えましたw)
そもそも、システマティックレビューとは、構造化された疑問(要はPECOと疑問の種類のこと)にフォーカスをあて、似ているが異なる研究を探して、事前に規定された方法で選択・評価しまとめることを指し、通常データとして統合することが可能であればメタ解析を行うものです。
PICOの設定からレビュー出版までには、他のレビューとの重複を回避するための事前審査があり、メールにてマネージングエディターの評価を受け、その関門を通過後タイトル登録フォームにてレビューグループの評価を受け、そこを合格して初めてタイトルの登録が可能になります。(レビューグループの評価会議は、分野によって開催頻度が毎月~年1、2回であるため、この過程で1~2年かかることもあるとのこと)(また、既報のRCTが複数ないとメタ解析できないため登録はほぼ無理とのこと)
文献の選択基準となるP(参加者)、E(介入)の定義と研究デザインを決定したら、実際の文献検索に入ります。ここではタイトルとアブストラクトに表記され、他と区別しやすいP(参加者)、E(介入)と研究デザインで検索をかけていきます。検索にはテキストワード(同意語、関連用語、反対語、複数形などの表現、短縮とワイルドカードの使用の可否、インターフェース毎に変わる)と統制語(データベース毎に呼び名ごと変わる。Medline=MeSH,Embase=EMTREE)の両方を使って検索を行います。検索はどのデータベースを何時どのように行ったかを記録しておく必要があります。
ワークショップではこの後、Revmanを用いたメタ解析体験でした。(ソフトウェアのダウンロードは以下のリンクから。)
まずは効果の指標から。性別のような2値変数、血圧のような連続変数、都道府県のようなカテゴリー変数があり、指標の実例としては、2値変数ではリスク比・オッズ比・リスク差があり、連続変数では平均値の差(MD)・標準化された平均値の差(SMD)、生存時間の場合ハザード比で表現します。
統合方法は、1つの真の値があり研究間の差は偶然のバラツキと仮定するfixed effects modelと、研究毎に真の値があり真の値がばらついていると仮定するrandom effects modelがありますが、通常はrandom effects modelを選んだ方が無難です。(感度分析として追加でfixed effects modelをするのはありかと)
で、ここまで約3時間くらいかかって書いてきたのですが、実はここまでの内容を説明した動画がyoutubeにあったりします。よければご覧ください。
なお、参加費がコクラン非会員で1万5千円しますので、気楽に参加できる金額ではありませんが、将来コクランレビューを書くことを目指すのであれば、コクランレビューを書いた先達と知り合える貴重な機会ですので、ご一考いただければ幸いです。
今回の記事はここまでになります。次回のワークショップは転職後のタイミングであるため参加できるかは不透明ですが、できる限り参加したいと考えています。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
【告知】7月29日土曜日に居酒屋抄読会を開催します!
いつも告知がギリギリだったのですが、今回は少しばかり早く告知します(;^ω^)
今回はゲストにりちおさんとみやQ先生を、AHEADMAPから理事の稲生先生をお迎えして、配信したいと思います。
なお、もうお一方ゲストの方が来られるのですが、当日までのお楽しみということで。
総計10名でお送りします。
まだ来てほしいのに呼べていない方がいっぱいいる(´;ω;`)
では、早速仮想症例シナリオをば
<仮想症例> ひざ痛に悩むご近所のTさん(68歳、女性)
貴方はドラッグストアで勤務している登録販売者。
品出しをしているとご近所のTさんが膝をさすりながら歩いて来ました。
貴方「こんにちは。Tさんどうされました?」
Tさん「両膝が痛くてね。冬場には歩けなくなるくらいひどくてね。テレビのCMでグルコサミンやコンドロイチンがいいって言ってたし、友達の知り合いも使ったらよくなったらしいしね。サプリかなんかでいいのあるかな?」
取りあえずサプリや健康食品のコーナーにご案内。
貴方「グルコサミンやコンドロイチンはこのあたりになります」
Tさん「どれもいい値段するのね~。これは120mg、180粒で3360円ね~。こっちは医薬品?5600円?コンドロイチンは1500mg?効果に違いってあるの?やっぱり医薬品がいいのかな?素直にお医者様にかかった方がいいのかしら?あなたはどう思う?」
(画像はイメージ)
貴方「A先生!」
Tさんに断ってから時間をもらい薬剤師のA先生に相談した貴方。
A先生「一緒に調べて考えてみよう」とA先生が以前読んだPharmaTribuneの記事のGoogleなどの検索サイトで日本語による情報検索方法を試してみることにしました。
調べてみると一次情報も載せているブログもありました。
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2015-11-09
http://www.rda.co.jp/topics/topics3853.html
「GAIT研究?そんなのあるんだ!」
早速調べてみると、以下の論文に当たりました。
Glucosamine, chondroitin sulfate, and the two in combination for painful knee osteoarthritis.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/16495392/
PMID 16495392
ちゃっかり、シナリオにAHEADMAPワークショップの記事を入れてます(;^ω^)
是非、読んでください。
損はしませんから(特に初心者の方)
今回はゲストのりちおさんにちなんだシナリオに仕立てたつもりです。
ご意見ご感想はワタクシのツイッターアカウント(@zuratomo)までお願いします。
と、いうわけで読んでみました
さっきの更新であれですが、読んでみましょう。
話題になったあの試験、EMPA-REG OUTCOMEです。
Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. - PubMed - NCBI
では、早速論文のPICOから見ていきましょう。
P:2型糖尿病患者
(組み入れ)18歳以上、組み入れ時のBMI45以下、治療を受けている場合はHbA1c7%以上9%以下で組み入れの12週間前までの治療内容の変更がない、前治療なしならHbA1c7%以上10%以下、心血管リスクが高い
(除外)一晩の絶食後に> 240mg / dl(> 13.3mmol / L)を超えるコントロールされていない高血糖、ALT・AST・アルカリホスファターゼの正常上限の3倍以上、心臓手術や血管形成術が3ケ月以内に計画されている、GFR<30ml/minの低下、過去2年間の肥満手術および慢性吸収不良を引き起こす他の消化器外科手術、血液疾患または溶血または不安定な赤血球を引き起こす障害(例えば、マラリア、バベシア症、溶血性貧血)、過去5年間のがんの病歴(基底細胞癌を除く)および/またはがんの治療、閉経前の女性、インフォームドコンセントの2ヶ月以内に急性冠動脈症候群、脳卒中またはTIA
I:エンパグリフロジン10mgおよび25mg投与1日1回(投与量を違う両群をまとめて解析しているので、I群はまとめて記載しています)
C:プラセボ
O:3点MACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)hazard ratio 0.86; 95.02% confidence interval, 0.74 to 0.99; P=0.04 for superiority(非劣性マージン1.3)
T(研究期間):3点MACEが691人に発生するまで(観察期間の中央値3.1年)
二重盲検比較試験の非劣性試験ですね。有名過ぎてあちこちのブログに載ってます。(何番煎じだよってレベルです)
FDA指定のプラセボ対照非劣性試験なので、しっかりした試験といった印象です。
Resultの冒頭に「患者の97.0%が研究を完了し、25.4%の患者が試験薬物を早期に中止した」とありますが、早期中止はイベントの発生には含まれていないので、この食い違いはよくわかりません。(すでに眠いので頭回ってません。批判的吟味も甘々です)
研究薬物を少なくとも1回の投与された患者を対象としていることからFAS解析をもちいています。
主要アウトカムの発生がプラセボ群(233例中282例(12.1%))、empagliflozin群(4687のうち490例[10.5%])なので、ARRが1.5、NNTが3年で63といったところでしょうか?(計算あってるかな?)
今日のシステマティックレビューの結果のほぼすべてがこの研究によるものなので、効果はいいのですが、結果から削除された有害事象はどうなるのでしょう?
今後SGLT2阻害薬のメタ解析は増えるでしょうが、結果は有名な大規模studyに引っ張られるでしょうから、少なくとも話題に上った有名studyは読んでおくべきでしょうね。
今日は近畿大学studentCASPに参加してきました
お久しぶりです。更新さぼりすぎですね(;^ω^)
先週土曜日の第3回奈良コクランレビューワークショップ(たぶん薬剤師の参加者僕だけ)も、先週日曜日の岡山CASPの報告もまだですが、先に本日開催された近畿大学studentCASPの報告をしたいと思います。
なお、今日のCASPはワタクシのチューターデビューだったりします(;^ω^)
SGLT2阻害薬の有効性(全死亡、心血管死)を評価したシステマティックレビューの論文です。
まずはお題論文をば
全文URLはこちら
http://www.siditalia.it/images/Effects_of_SGLT-2.pdf
事前登録情報は以下のリンク
SGLT2 inhibitors and mortality in type 2 diabetes
P:2型糖尿病患者
I:SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、イプラグリフロジン、ertugliflozin)
C:プラセボもしくはほかの治療薬
O:(主要)全死亡 MH-OR 0.70 [0.59-0.83](EMPAREGが78%のウエイトを占める)
心血管死(本文中では副次に変更されている)MH-OR 0.43 [0.36-0.53]
(副次)心筋梗塞 MH-OR [95 % CI] 0.77 [0.63–0.94]
脳卒中 MH-OR [95 % CI] 1.09 [0.86–1.38]
(計画にはあるけど報告からは消滅)骨折、ケトアシドーシス
T(研究期間):治療期間が12週間以上
T(試験のデザイン):randomized trials
検索されたデータベース、サイト:MEDLINE(2015.11.16まで)、FDA、EMA、clinicaltrials.gov
検索キーワード:dapagliflozin, empagliflozin, canagliflozin, ipragliflozin, ertugliflozin
言語:英語のみ
参考文献、専門家への連絡:記載なし
2人の研究者が独立してデータ抽出、意見対立時は第三者が介入
個々の試験はthe Cochrane Collaboration’s tool for assessing risk of biasで評価
(結果はTable1、randomized trialsを集めたはずなのに×がいくつか散見されるというw。ランダム化や盲検がダメとなっている文献も見てみると二重盲検のRCTとしっかり記載されているというザル評価)
統合された結果はなぜかフォレストプロット(Fig3)に載っていなくて、サブグループ解析(Fig4)に載っている謎仕様。
異質性はグラフにはなく、本文中に「For the principal endpoint, I2 was<0.001, suggesting no relevant heterogeneity」とだけ記載されている謎。
謎がたくさんあって結果の解釈が難しいけど、とりあえずEMPAREG OUTCOME読んだらいいんじゃないかな?異質性少ないのと、結果示されてないけどEMPAREG OUTCOME除いても結果の傾向は同じらしいので、効果の大きさはともかく死亡は減る方向で。
なお、事前に計画された有害事象の評価は消えているので何とも言えません。
結論としては、EMPAREG OUTCOME読めってことですね。(;^ω^)
Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. - PubMed - NCBI
居酒屋抄読会in名古屋
告知が遅くなってすみません
名古屋のインターネットカフェから更新しています。
早速ですが、今日(4/15)20時頃から居酒屋抄読会を行いたいと思います。
いつもは大阪でやっている居酒屋抄読会ですが、初の遠征です!
中部地方在住のEBMerの皆様をゲストに執り行いたいと思います。
(正直、僕に出番はないレベルの豪華ゲストです)
ツイキャス配信はこちら↓↓
http://twitcasting.tv/zuratomo4
お題論文はこちら
- PMID:28279964
日経メディカルでも紹介されていましたので、すでに読んだ方もおられるかもしれませんが、記事へのリンクも貼っておきます。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/bmj/201704/550758.html
JJCLIPの観察研究を10分で吟味するポイントのワークシートに沿って進行したいと思います。
抄読会配信のバイブル! JJCLIP本もオススメです。
しかし、本日持参し忘れるという失態を犯しましたorz
ゆるく、楽しくがコンセプトですので、視聴の際はリラックスした体勢かつ好きなものを飲み食いしながらでお願いいたします。
では、また夜にツイキャスでお会いしましょう!
お題論文にならなかった論文サルベージ企画②(2/25、禿論文編)
昨日に引き続いて、禿論文を読んでいきたいと思います。
フィナステリドやデュタステリドの第三相臨床試験を読みたかったのですが、全文フリーでないので他の論文で行きたいと思います。(禿論文の最終回はネットワークメタ解析の論文を読みたいと考えています)
台湾からの漢方の報告。
と、言っても日本にはない漢方(薬用人参、黄耆、当帰、アカヤジオウ、女貞子=トウネズミモチ、旱蓮草)のようですし、メーカーのサイトにも商品としての紹介はありませんが(;^ω^)
開発元?→Taiwantrade | Home - Sourcing quality Taiwan products, suppliers, manufacurers and exporters
販売元?→SUN TEN PHARMACEUTICAL CO., LTD
では、本文を読んでいきましょう。
P:AGAの患者40名(女性9名)
6か月間の試験を完遂したのは32名。脱落は男性5名、女性3名
E:漢方の錠剤を1回4錠、朝食前と昼食前に服用
C:プラセボ(中身はコーンスターチ)を1回4錠、朝食前と昼食前に服用
O: 6か月後のdermatoscope、写真、3人の皮膚科医による評価。
男性→Norwood-Hamilton scaleで評価
American Hair Loss Association - Men's Hair Loss / The Norwood Scale
女性→Ludwig scaleで評価
American Hair Loss Association - Women's Hair Loss / Degree of Hair Loss
育毛効果がみられたのは、介入群9/17(52.9%)、プラセボ群2/15(13%)P<0.025で有意差ありと
Fig1が誤植っぽいですが、プラセボ群も後々介入受けてるっぽくなってますが、実際は受けていないようです。
あと、記載は見つからないのですが、脱落者が解析にはいってないのでper protocol解析と判断してよいと思います。
なお、治療期間中に血液検査異常や有害反応は見られなかったとのこと。
効くのはいいけど、手に入らないんじゃどうしようもないなという感じでしょうか。著者らはフィナステリドなんかと併用することで発毛増強効果が見込めるといってますが、ホントでしょうか?