今年度最後のJJCLIPの予習をしてみた→視聴終了の感想
2018.3.25、21:00より、薬剤師のジャーナルクラブ(JJCLIP)が開催されました。
誰でも無料で視聴可能!コメントをする場合のみTwitterかfacebookのアカウントが必要になります。
案内は以下のリンク
なお、JJCLIP開始前にこのブログを見てしまった人はお清めの意味も込めて配信中に「おっぱい」とコメントしてください。
ご協力ありがとうございました!
本記事作成の背景
いつも先走ってPECO(当ブログではPICOとしたりしていますが、同じような意味ですので、同じものとして考えてください)を投稿してしまうので、今回はもっと先走ってみました。
※個人の見解であり、JJCLIPの公式なナントカではありません。
シナリオのPECOをサクッとまとめると(あくまで一例です)
P:成人
E1:Facebookの使用
E2:Twitterの使用
E3:Instagramの使用
C:SNS未使用
O:気質・性格を反映するか
正直、これでいいのかよくわかりません。
で、お題論文に行きましょう。
PMID: 29370275
はじめに
この論文はルール大学ボーヘム校でのアンケート調査です。
BOOM(Bochum Optimism and Mental Health)プロジェクトの一環として行われた研究の一つになります。
Arbeitseinheit Klinische Psychologie & Psychotherapie (BOOM Bochum Optimism and Mental Health)
もともと著者らはFacebookの使用が精神に与える悪影響を研究しており、米露中の研究者と今回のプロジェクトを始めたようです。
https://www.researchgate.net/profile/Julia_Brailovskaia
前置きはこのくらいにして、論文本体を見ていきましょう。
P:ドイツ人学生(新入生、平均年齢21.8、男女比=214:419、52.9%フリー・43.4%恋人有・3.6%既婚)
I/C①:コンピューターゲーム やってる:やったことない=65.3%:34.8%
I/C②:インターネットの使用 やってる:やったことない=100%:0%
(そもそもインターネットでアンケートしてるのでこの設問を設定したこと自体頭おかしい)
I/C③:SNSの使用 やってる:やったことない=91.9%:8.1%
I/C④: Facebook、Twitter、Tumblr、Instagram 平均1.63SNS使用
(Facebook76.3%、Twitter10%、Tumblr8.7%、Instagram39.7%、その他24.8%)
O①~③:人格特性、メンタルヘルスとの相関
O④:同じ相関パターンを示すか
※探索的研究なのでI/Cが多い
評価項目(要はアウトカムの中身)
人格特性①自己愛(ナルシシズム)
Narcissistic Personality Inventory (NPI-13)で測定。大本はNPI40といって7因子(権威性、自己顕示性、優越感、うぬぼれ、搾取性、特権意識、自信)40項目の検査。この40項目のうち13項目に簡易化したもの(著者も簡易化について論文を出している)
信頼性係数Cronbach’s αは40項目のもので0.82、13項目で0.65と記載あり。
下記リンクより「通常,0.8 以上でなければ妥当な尺度とはみなせない」
クロンバックの α 信頼性係数とは - 統計学用語 Weblio辞書
人格特性②自尊心
Single-Item Self-Esteem Scale (SISE)で測定。,“I have high self-esteem.”という1 つの質問に対して,“not very true of me”と“very true of me”を双極とする5 件法で自己評定を行う。Rosenberg 自尊感情尺度の代替簡易尺度。
人格特性③ビッグファイブ
パーソナリティを外向性(α = .78, rmi = .63)、協調性(α = .45, rmi = .29)、誠実性 (α = .40, rmi = .26)、神経症傾向(情緒安定性)(α = .55, rmi = .38)、開放性 (α = .54, rmi = .38)の5因子にわけた5因子モデルに基づく調査。
mean interitem correlation (rmi)設問項目間の相関。高いとお互いの項目が関連している。信頼性係数Cronbach’s αをみかけ高くしてしまう。
※日本版ビッグファイブ
http://jspp.gr.jp/doc/manual_TIPI-J.pdf
メンタルヘルス①人生に対する満足尺度(SWLS)
「人生満足尺度SWLSの質問:
1. ほとんどの面で、私の人生は私の理想に近い
2. 私の人生は、とてもすばらしい状態だ
3. 私は自分の人生に満足している
4. 私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた
5. もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう」
http://lab.sdm.keio.ac.jp/maenolab/questionnaire_about_happiness.htmより
この5項目を7点満点で評価。α= 0.86
メンタルヘルス②主観的幸福感
4項目、各項目7点満点で評価。α= 0.86
日本版主観的幸福感尺度(Subjective Happiness Scale: SHS)の信頼性と妥当性の検討
11項目、各項目7点満点で評価。 α = 0.86(以下のリンクは参考)
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/15731/1/shinrishakaigaku_5_22.pdf
メンタルヘルス④社会的サポート
14項目、各項目5点満点で評価。α= .93
Fragebogen zur sozialen Unterstützung (F-SozU): Normierung der Kurzform (K-14) - IOS Press
メンタルヘルス⑤DASS21(うつ、不安、ストレス)
3因子21項目、各項目4点満点で評価 (depression: α = .91, anxiety: α = .79, stress: α = .86)
ここまでの評価項目の参考になるスライド
解決志向尺度日本語版 ストレスコーピングとの関係性 Development and validation of the Solution …
探索的だけあって要因以外にもアウトカムもたくさんあるので、どれかしら相関らしきものが見えるのは当然みたいな内容。
ここから結果を見ていきます。
Table1と2は全体の平均など集団全体の特性を示している。
Table3は人格特性。有意(P<0.01)な相関のみ示すと
①自己愛:ネットの利用0.11、SNSの使用0.15、Facebook0.11
②自尊心:該当なし
③外向性:ゲーム-0.22、SNS0.16、Facebook0.24、Instagram0.17
③協調性:ゲーム-0.14、ネット-0.12、Twitter-0.11
③誠実性:ゲーム-0.27、Twitter-0.14
③神経症:ゲーム-0.12
③開放性:Tumblr0.11
Table4はメンタルヘルス。有意(P<0.01)な相関のみ示すと
①満足度:Facebook0.11、Twitter-0.15、Tumblr-0.10
②幸福度:ゲーム-0.12、Twitter-0.12、Tumblr-0.10
③レジリエンス:ネット0.13、Twitter-0.12、Tumblr-0.11
④サポート:ゲーム-0.18、ネット0.13、SNS0.13、Facebook0.11、Twitter-0.13、Instagram0.11
⑤うつ:ゲーム0.10、Twitter0.12
⑤不安:Twitter0.11、Tumblr0.15
⑤ストレス:Tumblr0.13
どれもこれもまともな相関関係はなく、こんだけ多数の項目をやれば何かそれっぽいものは出るだろうくらいの感想しか出ない。
(個人的には否定的な項目の方が多い気がします。で、研究者の業績調べたらSNSに否定的な論文を出してたという学術的COIの入った研究だったというね)
もともとFacebook中毒の研究をしている研究者からの報告なので、好意的な報告にはならないという。外向性ならInstagramよりFacebookの方が上という結論だし。
しんどい割に得る物の少ない論文でした。居酒屋でのどうでもいいトークのネタくらいには使えるかも。
評価項目多すぎて疲れた。
視聴後追記
人格特性が違うというより、SNS特有のふるまい?
日本ではどうか?AHEADMAPで研究企画
みんなの検索が医療を変えるから、立ち上がろうぜ薬剤師byるるーしゅ先生
「性格って、着る洋服を閉鎖的なものにするか、開放的なものにするかで変わりません??どこにいるか?によっても。ライブ会場で鬱っぽくなる人も少ないし・・・。」とは、けいしゅけ先生
ようするに、おっぱい(Titten)は世界を救うですよ
∩
( ゚∀゚)彡 Titten!Titten!
( ⊂彡
| |
し ⌒J
阪調勉強会に潜入した件
3月の某日、阪神調剤薬局で開催されたEBM研修会に参加してきました。
(流石はソクラテス先生の薬局を買収しただけのことはある)
で、会場は写真の本社ビルではなくて、近くにある別館(研修・会議棟らしい。本館と同じく綺麗)
中に入ると日曜日にもかかわらずスーツ姿の皆様!私服で行ってごめんなさい
スタートは高垣先生による高血圧の歴史。まとめると、
降圧を通じて、人類は臨床試験を究めていく
でした。
仮想症例のPICO立てをした後、お題論文へ
PMID: 26724178
http://www.thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(15)01225-8.pdf
チェックシートは以下のものを使用
http://spell.umin.jp/BTS_SR5.0.pdf
無料でEBMを学ぶなら、上記の南郷先生のHPとJJCLIPのツイキャス視聴がオススメです。JJCLIPは今度の日曜日に開催ですので、日曜21時から聞けそうなら是非お試しください!
では、お題論文のPICOから
P:降圧薬を使っている人(高血圧以外もオッケー)
I/C:降圧薬
O:心血管イベント
abstractがとにかく読みにくい。
PICOがたったら、システマティックレビューの評価へ
先ずは集める努力を評価。
データベース:MEDLINE(大規模だから?SRとしては残念な感じ)
検索語:高血圧、各薬剤クラスの名前、各薬剤名
検索期間:1966.1.1~2015.7.7
集めた研究の種類:RCT(各試験群で少なくとも1000患者年のもの)
参考文献(reference list):〇
専門家連絡:×
研究の重複は除かれている(Fig1より)
言語:制限なし
実際にきちんと集まったかを評価でfunnnel plotを使うのが一般的だけど、今回はなし。
大規模の研究のみを集めたのでやる意味がなかった?
集まった研究の評価は2者独立、もめたら第三者が介入。評価はthe Cochrane risk of bias tool
異質性「We characterised heterogeneity with the I2 statistic.」
統合 「fixed-effects meta-analyses because heterogeneity was low」
I2が低いと言ってるけど25~41%の異質性。素直にRandom effects model使えばいいのに
結果、収縮期血圧の10mmHg低下毎に
主要心血管疾患(RR 0,80,95%CI 0.77-0.83)
冠状動脈性心疾患(0.83、0.78-0.88 )
脳卒中(0.73、0.68-0.77)
心不全 (0.72, 0.67–0.78)
全原因死亡 (0.87, 0.84–0.91)
以上、血圧下げるの大事と。
薬物クラスごとの結果もあったので見てみる。
β遮断薬は、主要心血管疾患(RR1.17,95%CI1.11-1.24)、脳卒中(1.24,1.14-1.35)、腎不全(1.19,1.5-1.34)でかえって悪くするという現行のガイドラインで第一選択から外されたことを支持する結果。
CCBは、脳卒中予防(0.90、0.85-0.95)よりも優れていたが、心不全予防(1.17,1 .11- 1.24)では劣っていた。
利尿薬は、心不全予防で他のクラスより優れていた(0.81,0.75-0.88)
仮想症例への適用を考えつつ、パンフレット作製。
帰りにけいしゅけ先生とサシのみして帰還。
楽しい一日でした。
で、会場で高垣先生とけいしゅけ先生からアドバイスをもらってNMAチェックシートを改良。
是非ご活用ください!
ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道④~COPD患者に対するLABA/LAMA合剤の安全性~
まだまだ続くネットワークメタ解析(NMA)チェックリスト試用大会。
第五回目の今回は、イタリアからのCOPDの報告を読んでみたいと思います。
いつも通りアブストラクトから
P:COPD患者
I/C:LABA/LAMA固定用量の組み合わせ製剤、単剤療法(LABA単剤、LAMA単剤)、プラセボ
O:心血管系の重篤な有害事象
続いて本文からの追加情報を赤字で追加
P:肺機能検査で診断されたCOPD患者
I/C:LABA/LAMA固定用量の組み合わせ製剤:アクリジニウム/ホルモテロール 400/12 µg (KRP-AB1102F、杏林開発中phaseⅢ終了), グリコピロニウム/インダカテロール 15.6/27.5 µg (Utibron、アメリカでのみ承認のウルティブロの1日2回版), グリコピロニウム/インダカテロール 50/110 µg (ウルティブロ), ウメクリジニウム/ビランテロール 62.5/25 µg (アノーロ), チオトロピウム/オロダテロール 5/5 µg (スピオルト), グリコピロニウム/ホルモテロール 14.9/9.6 µg (Bevespi Aerosphere AZ開発中)、単剤療法(LABA単剤、LAMA単剤)、プラセボ
O:心血管系の重篤な有害事象(LABA/LAMA固定用量の組み合わせ製剤対単剤療法)
セカンダリ:死亡率(LABA/LAMA固定用量の組み合わせ製剤対単剤療法)
セカンダリ:心血管系の重篤な有害事象(LABA/LAMA固定用量の組み合わせ製剤対プラセボ)
続いてシステマティックレビューの評価
・データベースはMEDLINE(PubMed)、Scopus、Embase、Google scholar
検索語は薬品名とCOPD、検索期間は2017.6.31
(。´・ω・)ん? 6/31? 本文間違ってね?
・元論文バイアスはRCTに限定。(二重盲検比較試験が集まっている)
質の評価はJadad score
※Jadad scoreで集まったすべての試験の評価結果が良質というが、評価自体がザルなので(;^ω^)
・評価者バイアスは二名以上の独立評価はしており、意見対立時は話し合い。第三者介入については不明。
・出版バイアスは英語のみ。参考文献は他のレビューを参照。ClinicalTrials.govも検索している。専門家連絡については言及がない。ファンネルプロットはあり、 Egger’s testでも評価しており有意差はなかった。
※ Egger’s testは左右対称性を検定する。バイアスの存在を有意差で表現するが、有意差がなくてもバイアスの存在を否定できないのが難点。
・異質性バイアスは事前登録情報がある。
https://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.php?ID=CRD42017070100
対象患者は中等度~重症の60代。試験期間は2~64週。むしろこれで心血管系有害事象や死亡増えたらヤバいくらいの年齢層と試験期間。(RCTの時点でハイリスクは除外されている)
アウトカムについてきちんとした定義がかかれていないので、統合可能性の評価が難しい。
なぜにJadad score使ったんだろ?英語縛りの時点で有名な大規模研究狙いだったからそれでもよかったのだろうかという疑問。大規模研究狙いなら、集め方が恣意的すぎるような(;^ω^)
プライマリアウトカムは普通のメタ解析で行われている。「NMA」で検索した論文なのに(´;ω;`)
結果は RR 0.94,(95% CI 0.79–1.13) I2 0%で単剤療法に比べて心血管イベント(本文中で確認できるのは心房細動、心筋梗塞、冠動脈疾患。詳しくはtable2)は増やしませんでした~。
で、今回の記事の本番はこれから。
本論文では安全性についてランク付けの為にNMAでのSUCRAを利用している。
NMAの評価
ネットワーク図は示されていないが、本文中に「results on head-to-head RCTs are not currently available.」とあり、閉じた環がなかった(star-shape)であったことがわかる。
このため、ⅱとⅲは評価ができない。
ⅳはCOIは記載されているが、資金源は登録情報を含めどこにも記載がない。
SUCRAに基づくランクと各薬剤ごとのSAEサブ解析の値を並べてみる。
1.KRP-AB1102F RR0.61,(95% CI 0.35–1.06)
2.スピオルト RR0.89,(95% CI 0.65–1.23)
3.プラセボ
4.アノーロ RR0.77,(95% CI 0.36–1.65)
5.Bevespi RR1.36,(95% CI 1.00–1.85)
6.Utibron RR0.62,(95% CI 0.21–1.85)
7.ウルティブロ RR0.72,(95% CI 0.39–1.34)
結果は一致しない。
比較対象の単剤療法だが、単剤が安全とは言ってないということでしょうか。
で、ネットワーク図がない場合のシートの説明が不十分と判断し、改訂。
是非ご活用ください。
できればご意見をツイッターアカウントの方にいただけると幸いです。
ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道③~日本人統合失調症患者に対する抗精神病薬の効果比較~
ネットワークメタ解析(NMA)チェックシートを改善すべく、どんどんNMAの論文を読んでいきたいと思います。
お題論文は藤田保健衛生大学の岸先生のグループによる報告になります。
チェックシートに沿って、どんどん読み進めたいと思います。
先ずはアブストラクトから臨床疑問を定式化していきます。
P:日本人統合失調症患者
O:有効性(反応率)、忍容性(すべての理由による治療中断)
前回の論文と違い、とても素直なアブストラクトでした。
次は本文で追加情報を確認します。(追加分は赤字で表示)
P:日本人統合失調症患者
I/C:第二世代抗精神病薬:アリピプラゾール(エビリファイ)、ブロナンセリン(ロナセン)、クロザピン(クロザリル)、クロカプラミン(クロフェクトン)、モサプラミン(クレミン)、オランザピン(ジプレキサ)、パリペリドン(インヴェガ)、ペロスピロン(ルーラン)、クエチアピン(セロクエル)、リスペリドン(リスパダール)
ハロペリドール(セレネース)、クロルプロマジン(コントミン)、プラセボ
O:有効性(反応率:PANSS20~30%改善か全般改善度中等度以上改善)、忍容性(すべての理由による治療中断)
組み入れ患者背景に追加情報がない(登録情報を見ても追加情報なし)のが気になる。診断基準は改訂を受ける上に、患者の年齢や疾患重症度の指定がないのも気になる。
第二世代抗精神病薬の例としてクロカプラミンとモサプラミンが入っているが、分類違うような(;^ω^)
後、反応率の基準が緩すぎてプラセボとの反応差が出るのかも心配。
あくまで数を読みこなすのが目的なので、疑問点は無視して次へ。
システマティックレビュー(SR)の評価
・データベースはMEDLINE(本文のPubMedとなっているが、データベースの検索エンジンなので正しくはコッチ)、Cochrane Library、医中誌
検索語は薬剤名と「統合失調症」、検索期間は1970.1.1~2016.11.10
・元論文バイアスは二重盲検とPROBE(評価者のみ盲検化)のRCTに限定しているが、質の評価については言及がない。(登録情報ではRisk of Bias Toolで評価したとあるが、質への言及がない)
・評価者バイアスは二者独立で評価とあるが、意見対立時の解決についての記載がない。
・出版バイアスは言語が英語と日本語に限定。(日本人患者限定なので問題ないと思われる)添付文書の試験の組み入れの他、メーカーに問い合わせている。ファンネルプロットは集まった研究数が18なので、実施されていない。
異質性バイアスは事前登録はあるものの、登録番号は記載していない。
http://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.php?ID=CRD42016037307
対象患者はかなり広く、統合してよいのか疑問。
アウトカムは統合できるように設定されている。
岸先生ってメタ解析の論文いっぱい書いてなかった?と思う程度には雑なSRという感じ。
最初に読んだ論文が比較対照なので、ほぼすべての論文が「雑」評価になるという(;^ω^)<読む順番を明らかに間違えた
NMAの評価
・ネットワーク図はappendix3にあり、載っている図がすべてスカスカ。研究数やサンプルサイズも小さい。(日本人対象なので当然の結果)
・直接比較と間接比較を分けて記載していない
・不一致の組み合わせについて記載はあるが、そもそも一致率の検証が充分にできない
・COIの記載はある。研究資金は科研費で賄われている。
ランク付けはsupplement6にあるが、図に説明がなく読み方がわからない。
http://www.dovepress.com/get_supplementary_file.php?f=134340_6.pdf
で、結果
有効性の指標である反応率は、プラセボとの比較で有意差のあったものだけ示すと
オランザピン OR1.23(95%CI:-2.301~-0.149)
パリペリドン OR1.205(95%CI:-2.157~-0.2846)
忍容性の指標である全中止は、プラセボとの比較で有意差のあったものだけ示すと
オランザピン OR1.246(95%CI:0.3667~2.124)
パリペリドン OR1.275(95%CI:0.5335~2.023)
薬物治療の切り札クロザピン、有意差示せず。
適応患者の縛りが一切ない状態なので、クロザピンのみ治療抵抗性患者が集まっていることは容易に想像できることと、反応率の基準が緩くわずかな改善を反応としてしまったことが響いたのではないかと思いますが、詳細は不明です。
最後に気になったことを一つ。
著者の中に統計を専門的にやっている人がいない。
日本では統計の専門家とかレアポケモンよりレアな存在なので、仕方ないか。
今回の検証ではチェックシートの改定はなし。
最新バージョンはver4のまま。
ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道②~開放隅角緑内障の第一選択となる点眼薬は?~
抗うつ薬のネットワークメタ解析(NMA)の論文を読み直すこと3度。
更にチェックシートを改訂しました!
Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver3.pdf
チェックシートの完成度を高めるべく新たなNMAの論文を読むことにしました。
緑内障の点眼薬による治療についてはFizz先生による記事がありますのでご参照ください。(そもそも緑内障点眼薬への理解は概ね以下の記事のようでした)
で、上記記事に緑内障の点眼薬のNMAの論文が紹介されていたのですが、
2008年の上記論文にはタプロスが含まれていないこと、既に2018年であり改訂版が出ている公算が大きいことから、新しいお題論文を探すことにしました。
(「国産」をウリにした製剤はエビデンスが質量ともにイケていないことが多く、上記論文でも対象になれなかったものと推測しています)
(青島先生がNMA祭りでツイートしていた時は焦りました)
では、臨床疑問の定式化をアブストラクトで行いましょう。
I/C:点眼治療単剤、プラセボ(未治療を含む)
O:きちんと記載されていないが、「治療開始3か月後の眼内圧(IOP)」?
微妙にアウトカムの分かりにくい書き方に、読み進める気力を奪われましたが、チェックリスト改良の為、どんどん読み進めます!
P:参加者の60%以上が原発性開放隅角緑内障もしくは高眼圧症と診断された患者
10名未満の群で比較している試験、併用療法を許容している試験は除外
28日以上追跡していること
I/C:β遮断薬:チモロール(チモプトール)、カルテオロール(ミケラン)
ベタキソロール(ベトプティック)、レボブノロール(ミロル)、levobetaxolol
炭酸脱水酵素阻害薬:ブリンゾラミド(エイゾプト)、ドルゾラミド(トルソプト)
α2刺激薬:ブリモニジン(アイファガン)、アプラクロニジン(アイオジピン)
タフルプロスト(タプロス)、トラボプロスト(トラバタンズ)、
濃度は問わず一緒に解析。(感度分析として濃度別解析をする)
O:治療開始3か月後の平均眼内圧mmHgの差(測定方法は問わない)
(眼内圧測定値の優先順位:平均日内IOP>24時間平均IOP>ピークIOP>朝IOP>トラフIOP)
「40%も対象にしたい疾患外の混入を認めるのヤバくね?」と思いつつ次へ
システマティックレビュー(SR)の評価
・データベースはCENTRAL、MEDLINE、EMBase、FDAのサイトで検索。検索語(appendixにある)検索日の記載はあるが、検索期間がない
・元論文バイアスはRCTに限定しており、risk of bias toolで評価している。
結果、スポンサーバイアスがかなり入っているよう。
・評価者バイアスは英語文献のみ二者独立、それ以外の言語は単独での評価、意見対立時は第三者介入を行っている。
・出版バイアスについては言語の制限を設けていないが、参考文献や専門家連絡については記載が見当たらない。またファンネルプロットもない。
・異質性バイアスは事前登録情報はなく、対象集団には40%未満の対象外疾患の混入が認められ、アウトカムの眼圧値も測定方法や内容の違いを無視してよいのか疑問。
SRの作り方が、前回の抗うつ薬の論文に比べて極めて雑なのが伺えます。
(と、いうか前回の論文がSRの作り方でコクランレビューをも凌駕するほど完ぺきなだけで、あれと比較するのは厳しすぎる気もします)
NMAの評価
・ネットワーク図はあるが、閉じた環の少ない介入がぽつぽつ見受けられる(タフルプロスト、アプラクロニジン、levobetaxolol、カルテオロール、トラボプロストが特に少ない)
・直接比較と間接比較を分けて結果を示していない
・11%に不一致がみられたとの記載あり
・COIの記載なし。資金源の記載はあるが提示された番号を検索しても何もヒットしない
(筆頭著者のCOIを確認すべく検索するもCOI不明。眼科出身の疫学の専門家らしい)
Tianjing Li - Faculty Directory - Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health
で、結果(IOPの低下。対プラセボ)
ビマトプロスト 5.61(4.94; 6.29)
ラタノプロスト 4.85 (4.24; 5.46)
トラボプロスト 4.83 (4.12; 5.54)
レボブノロール 4.51 (3.85; 5.24)
タフルプロスト 4.37 (2.94; 5.83)
チモロール 3.70 (3.16; 4.24)
ブリモニジン 3.59 (2.89; 4.29)
カルテオロール 3.44 (2.42; 4.46)
levobetaxolol 2.56 (1.52; 3.62)
アプラクロニジン 2.52 (0.94; 4.11)
ドルゾラミド 2.49 (1.85; 3.13)
ブリンゾラミド 2.42 (1.62; 3.23)
ベタキソロール 2.24 (1.59; 2.88)
ウノプロストン1.91(1.15; 2.67)
タプロス、ミロルに負けちゃった(;^ω^)
で、SUCRAによるランク付けが行われています。(順位は上記の並び順)
COIの公開のないランク付けはメーカーバイアスかかっている可能性が高いのでご注意ください。
あ、Fig5の見方ですが、ランクが上の方にいる可能性が高いほどグラフの曲線の上りが左に寄ります。
正直、疫学の専門家が参加してこの出来ってどうなん?(;^ω^)
前回のお題論文が方法論的に凄過ぎたことによる落差もあるかもしれませんが、結果の確信性が低すぎるでしょ(;^ω^)
で、今回の論文を読んで、更にチェックシートをバージョンアップしました!
是非、ご活用ください!
ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道①~抗うつ薬のNMAを読んでみた~
先日、ネットワークメタ解析(NMA)のチェックリストを作ったので、使い勝手を確認すべくNMAの論文を読んでみることにしました。
お題論文は今年発表された抗うつ薬21種のネットワークメタ解析です。
全文フリーかつ京都大学の古川教授も参加された論文ですので、精神科に興味のある方は是非お読みください。
(SRの手順部分の書き方が理想的かつ読みやすいので、個人的にはこの書き方が全世界に広がってほしい)
今回のお題論文は2009年に話題になったMANGA studyの改訂版になります。
MANGA studyの解説は以下のリンクよりどうぞ(困ったときのミニ丸先生頼り)
では、お題論文を読んでいきたいと思います。
読んでいくうえで、以下のチェックリストを使っていきます。
Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシート.pdf
臨床研究は臨床疑問から生まれるので、臨床疑問をまずは確認しましょう。
と、いうわけでチェックリストを上から順に埋めていきたいと思います。
臨床疑問の定式化から(効率化と現実性を考えてアブストで確認しましょう)
P:大うつ病急性期の18歳以上の成人患者
I/C:抗うつ薬21種
O:(有効性)反応率、(忍容性)全理由による治療中止
割と最近の研究タイプであるNMAはアブストも構造化抄録になっていることが多いので、きちんとした研究であればアブストだけでPICOが確認できると思います
。
※この時点でPICOが読み取れない論文を読み進めるよりは、他の文献を探したほうが効率的である可能性が高いので、「ほかの文献を探そう」としています。
ざっくりと大まかにPICOを確認したら、本文から追加情報を探します。
批判的吟味は研究手順が科学的に妥当とされている方法にどの程度準拠しているかを確認します。なので、批判的吟味で見るのはメソッドになります。
追加情報も入れると(赤字は追加部分)
P:その研究が行われた当時使われていた診断基準 (Feighner criteria, Research Diagnostic Criteria, DSM-III, DSM-III-R, DSM-IV, DSM-5, and ICD-10)で大うつ病と診断された急性期の18歳以上の成人患者
(双極性障害、精神病性うつ、治療抵抗性うつ病患者が20%以上含まれる試験は除外)
(※DSM-Ⅳ-TRがないのが気になります。DSM-Ⅳから変更なかったかな?)
I/C:治療量の抗うつ薬21種(カタカナ表記は国内承認済みのもの)
日本、ヨーロッパ、アメリカで承認されている第二世代抗うつ薬
agomelatine、bupropion、citalopram、desvenlafaxine、デュロキセチン(サインバルタ)、エスシタロプラム(レクサプロ)、fluoxetine、フルボキサミン(デルロメール・ルボックス)、levomilnacipran、ミルナシプラン(トレドミン)、ミルタザピン(リフレックス・レメロン)、パロキセチン(パキシル)、reboxetine、セルトラリン(ジェイゾロフト)、ベンラファキシン(イフェクサー)、vilazodone、vortioxetine
アミトリプチリン(トリプタノール)、クロミプラミン(アナフラニール)
O:(有効性)各種スコアリングの50%低下と定義した8週での反応率、(忍容性)8週での全理由による治療中止
8週のデータがないときは4~12週のうち長いものを採用
PICOが立ったところで、システマティックレビューの評価を行います。
・使用したデータベース
Cochrane Central Register of Controlled Trials, CINAHL, Embase, LILACS database, MEDLINE, MEDLINE In-Process, PsycINFO, AMED, the UK National Research Register, PSYNDEX
検索期間は2016年1月8日まで
バイアスへの配慮
・元論文バイアス
「double-blind, randomised controlled trials」を採用。
研究の登録情報(CRD42012002291)をみると中国のRCTは除外されているようです。
http://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.php?ID=CRD42012002291
個々の研究はコクランのrisk of bias toolを使ったようです。
結果はSupplementary appendix(以下のリンク)より
http://www.thelancet.com/cms/attachment/2119023008/2088154696/mmc1.pdf
本文より全試験中9%の試験がハイリスク、73%が中リスク、18%が低リスクだったと
ITT解析であったかどうかは不明です。(3/12訂正)
・評価者バイアス
6組のペアが独立して抽出・評価を行い、意見の不一致の際はリーダーが第三者として調停に入った
・出版バイアス
言語制限はなし
参考文献の検索の他、著者、専門家、メーカーに未公表データがないか問い合わせている
ファンネルプロットでの検討は行っており、結果はSupplementary appendixに示されている。
結果、出版バイアスの存在が疑われたとのこと。
・異質性バイアス
※システマティックレビュー&メタ解析での異質性と同じ用語だが意味が異なるので注意
アウトカムなどの事前の設定→CRD42012002291で示されている
対象集団の近しさ→MDDの診断基準の違いが無視できるか疑問(特にDSM設定以前と以後)
統合可能なアウトカムか→有効性はいろいろなスコアリングを反応率に変換。スコアリング毎の差異は無視できるか疑問
個人的評価
著者たちはバイアスへの配慮を行っているが、行われてきた試験や過去のいきさつからバイアスが入っていることは否めない
解析本体であるNMAの評価
・ネットワーク図(上:有効性、下:忍容性)
fig2で示されている。閉じた環の数は比較的多いように感じる(絶対的評価基準がないので主観で評価しているため注意してください)研究数が少ない線が多数見受けられる。
※アウトカムごとで報告(計測)されていなかったりするため、上下で全く同じ図にはならないことに注意してください
・直接比較・間接比較を分けて示しているか?→Supplementary appendix137ページ以降に示されている
・一致性→一致しなかったのが8%(アウトカムごとに検討している。サブ解析はSupplementary appendixにあり)
・COIと資金源→明示されている
ここまでみてしっかり作りこまれた研究だと感じた。
結果はFig4
薬剤間の差はそれほど大きくはないように見える。
※左にある物がI(介入)に相当し、右にある薬剤(C:対照)に比べてオッズ比がどうなるかを見ている。例えば有効性で見てEsci vs Fluvは1.34(1.03-1.75)となっているが、反応率を達成するオッズ比がエスシタロプラムはフルボキサミンに対して1.34(1.03-1.75)倍になったと解釈する。なお、GRADEの結果も併記されており例の組み合わせは中等度の確信性とされている。
(MANGAで上位にいたセルトラリンやエスシタロプラムは埋没した感が否めない)
しかし、国内用量と本試験で容認された量はミルタザピンなど一部を除き国内用量の方が少ないため解釈には注意を要する。
ここまでが論文の内容になります。
一度読んだ論文であっても、チェックリストを使うことで、格段に読みやすくなったというのが個人的な感想です。
ですが、わかりにくい部分もあったので改訂しました。
宜しければVer2のチェックリストをお使いください
※青字は3/12加筆訂正分
3/22追記分
本日、エビデンス精神医療研究会に参加して、筆頭著者のお一人である古川先生に質問してきましたので、記載します。
DSM-Ⅳ-TRがない件→DSM-Ⅳと実質的な差がなく分ける必然がなかった。
WHO系の診断基準がICD-10のみ→操作的診断基準でないICD-9以前のものは組み込んでいない。
以上です。
後、古川先生の教室のHPにネットワークメタ解析のチェックリストが公開されていると教えていただきましたので、ここで紹介します。
上記リンクの中から
http://ebmh.med.kyoto-u.ac.jp/files/Enetwork%20meta-analysis.doc
英語のチェックリストでした。
宜しければご参照ください。
次回のエビデンス精神医療研究会は5/31です。
年間1000円(年6回開催)とかいう極めて頭の悪い価格設定の研修会ですので、是非ご参加ください!
次回は初心者(研修医)対象に古川先生からRCTの読み方のレクチャーが入ります。
ネットワークメタ解析の論文を批判的吟味をしながら読むときに使えるチェックリストを作ってみた件
【作成の背景】
最近ネットワークメタ解析の論文を読むことが増えてきたのですが、どう批判的吟味をしたらいいのかよくわからず、青島先生作成JJCLIP印のシステマティックレビューのチェックリストを代用していたのですが、人に向けて解説する機会ができたため、分かり易い専用のチェックリストが欲しくなった
【既存のチェックリスト】
相原先生のホームページで公開されているもの
内科医のエビデンスに基づく医療情報 » Network Meta-analysis、Multiple Treatment Comparison Meta-analysis、批判的吟味、JAMA
実際のチェックリストは下記のリンクよりどうぞ
http://www.grade-jpn.com/jama/NMA.pdf
チェックリストの基となった文献
How to use an article reporting a multiple treatment comparison meta-analysis. - PubMed - NCBI
【作成に当たって】
基にした文献
論文であげられていたチェック項目
①対象者は?
②介入はすべての選択肢が入っているか?
③アウトカムは何か?
④適用可能性は?
⑤関連するRCTはすべて包含されているか?
⑥ネットワークは一つ以上あるか?
⑦質の低いRCTは入っていないか?
⑧選択的報告によるバイアス
⑨治療修飾因子(年齢など結果に影響を与える因子)への配慮は?
⑩RCTの質(ITT解析か)
⑪一致性は(間接比較と直接比較での効果推定値は近似しているか?)
⑫研究の網羅性は?(組み入れ基準によるバイアス)
⑬バイアスを最小化するモデルの選択(一致性モデル、不一致性モデル)
⑭ランダム効果モデルで統合したか?
⑮異質性は?
⑯異質性があった場合の感度分析は事前計画されたか?
⑰ネットワーク図は示されているか?
⑱個々の結果は示されているか?
⑲直接・間接比較の結果は分けて示されているか?
⑳95%信頼区間は示されているか?
㉑SUCRAのランク付けはあるか?
㉒感度分析は行ったか?
㉓結果は公平か?
㉔COIの有無と公開
作成に当たって参考にしたチェックシート
で、作成したチェックシートがこちら
Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシート.pdf
各チェックポイントに簡単な解説と、ここでダメ評価になったら他の論文探したほうがええんちゃう?というポイントを明示しました!
実際使ってみての感想を僕のツイッターアカウント(zuratomo4)までお願いします!