窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑧~経口血糖降下薬間の心血管死の抑制効果~

<今回の記事作成の背景>

るう先生(僕の転職に当たっていろいろ助言をくださった恩人)より、このようなツイートのやり取りをした結果、読んだにもかかわらずほったらかしにした論文があったことを思い出しました。

f:id:zuratomo4:20180410222949p:plain

 

はい、お題論文は薬局2018年1月号の「エビデンスアップデート2018」の青島先生の記事で引用されていたネットワークメタ解析の論文になります。

 

※薬局の1月の特集は前年にアップデートされたエビデンスをまとめてチェックできるのでオススメですが、販売当初は売れすぎて品薄でした。確認はしていませんが、今はきっと大丈夫!

 

今回のお題論文

Comparative effectiveness of oral antidiabetic drugs in preventing cardiovascular mortality and morbidity: A network meta-analysis. - PubMed - NCBI

PMID: 28542373

一言でまとめると「SGLT2阻害薬が一番良かった」です。

ここから批判的吟味をして、結果を見ていきましょう。

 

臨床疑問(リサーチクエスチョン)をアブストラクトから抽出します。

 

P:2型糖尿病の患者

 

I/C:メトホルミン、スルホニルウレア、チアゾリジンジオン(TZD)、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、ナトリウム - グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害剤

 

O:全原因死亡率、心血管関連死亡率、急性冠動脈症候群(ACS)、心筋梗塞(MI)

 

本文から詳細情報を追加すると(追加情報は赤字

P:2型糖尿病の患者

 

I/C:メトホルミン、スルホニルウレア、チアゾリジンジオン(TZD)、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、ナトリウム - グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、meglitinide

※background medicationは変更がなければ、解析時に考慮しない

 

O:全原因死亡率、心血管関連死亡率、急性冠動脈症候群(ACS)、心筋梗塞(MI)

24週以上、100名以上のサンプルサイズ、アウトカムに設定されたデータが報告されていること(有害事象としての報告も含む)

 

実際に集まったのは、54~73歳、ベースラインのHbA1c 7.2~8.9%、平均罹病期間18年、本文中にはないが追跡期間は24~270週(24週に近いものが多い)。

 

また、各薬剤クラスごとの内訳は本文中で開示されていないためS2 Table「Main characteristics of included trials.」から探していくと(黒字は凡例より、赤字は表より)

スルホニルウレア:Glipizide、グリメピリド、グリベンクラミド、グリクラジド、Glyburide

TZD:Rosiglitazone、ピオグリタゾン

DPP4阻害剤:シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン

SGLT2阻害剤:ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン

 

※薬剤略称の凡例にない薬剤があることに怒りを覚えていますので、本記事はそういうバイアスがかかっていることをご承知おきください。普通に考えて、武田が種まき試験的にアログリプチンvsピオグリタゾンの試験やってんだから、もれてんの気づけよ!編集!

(# ゚Д゚)<こちとら確認のために表に記載の臨床試験登録情報確認しとんじゃ!

 

臨床疑問の定式化だけでくたびれましたが(すでにこの論文に読む価値はないのではという疑念が拭えません)、システマティックレビュー(SR)の評価に進みたいと思います。

 

・データベース:MEDLINE、EMBASE,、the Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.gov

・検索期間:~2016.3

・検索用語:S1 Tableより「2型糖尿病」と各薬剤名

・元論文:RCT、risk of bias toolで評価している→S3 Table、S1 Figにあり

・評価者:二者独立→第三者介入

・出版:言語制限なし、参考文献は追っている、専門家連絡なし、funnnel plotあり(S4 Fig)

・異質性:事前登録なし、P/Oについてバックグラウンド治療(多くがメトホルミン)の無視が気になる

 

SR部分で気になったのは、risk of biasの評価の雑さ。PROactiveはクソ試験ではあるが一応は評価者も盲検されていたぞ!(解析後に後付け解析されはしたが)

あと、NCT00509236だが、評価者は盲検化されていない試験でlow riskってどうなん?英語が読める読めない以前の問題では?(おそらく著者達はきちんと読んでない)

 

すでに読む価値なしという結論が頭をよぎりますが、ネットワークメタ解析(NMA)の評価行きます!(もはや意地)

 

・ネットワーク図:本文には全死亡のみだが、S7~S9Figでほかの図も示されている

・閉じた環:多数ある

・直接比較、間接比較:分けて示されている

・一致性:非一致は少ない(S3 Fig)

・資金源、COI:ともに「なし」とのこと

 

NMAの評価部分だけ見るとまともに見えますが、SR部分ではあえて触れませんでしたが、ほとんど説明なくα-グルコシダーゼ阻害剤、meglitinideが削除されています。(アカルボースは非一致性が高かったから削除したとはあります)

説明もなく介入群を削除し、アブストラクトでは触れもしないのでは「粉飾」との誹りは免れません。

価値がないと判断してから結果見るのは苦痛ですが、結果を見ていきます。

 

結果

全死亡(Fig3下側)・・・上側の直接比較と大きな差がない=一致性が高い

有意差をもって他剤より死亡を減らしたのはSGLT2阻害剤だけ

vs Placebo 0.68(0.57-0.80)

vs SU 0.63(0.46-0.87)

vs TZD 0.71(0.55-0.90)

vs DPP4 0.65(0.54-0.78)

なお、直接比較ではプラセボとしか有意差はなかった

vs Placebo 0.72(0.61-0.85)

 

心血管死(Fig4下側)

有意差をもって他剤より死亡を減らしたのはSGLT2阻害剤だけ

vs Placebo 0.61(0.50-0.76)

vs SU 0.52(0.31-0.88)

vs TZD 0.66(0.49-0.91)

vs DPP4 0.61(0.48-0.77)

なお、直接比較ではプラセボとしか有意差はなかった

vs Placebo 0.63(0.51-0.78)

 

EMPA-REG OUTCOMEの結果に見事に引っ張られているといった印象。

ただ、firstlineとsecondlineの治療がごちゃごちゃに解析されており、何の参考になるのか疑問。粉飾もされており、「読む価値はない」というのが僕の結論です。

つまり、この論文読むよりEMPA-REG OUTCOMEを読んだ方がよいと思います。

 

駄文を最後まで読んでいただきありがとうございます。

まだまだ記事のストックがあるので、さっさと書かねば:;(∩´﹏`∩);:

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑦~心房細動患者の卒中予防に有効な治療手段は?~

 今回のお題論文は「広島文献を読む会(通称HCA)」で3月に取り上げられた論文を、一人寂しく読んでいきたいと思います。

 

※HCAとは、、、

 平社員先生(ツイッターアカウント@T462759)や有志で運営されている文献抄読会。その名の通り広島で開催されているが、平社員先生は住まいも職場も広島ではないという。そもそも平社員先生は「中国地方~関西までは誤差みたいなもん」という思考と異常な行動力を誇る方で、学生時代よりEBMを学んできたEBMerの年下の先輩。広島に近い方は一度参加をご検討ください。

 

お題論文はコチラ

Comparative Effectiveness of Interventions for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation: A Network Meta-Analysis. - PubMed - NCBI

PMID: 27207998

 

 非弁膜症性心房細動の患者さんに対する抗凝固療法の効果と安全性を検討したネットワークメタ解析になります。著者たちはアブストラクトの結論で「全介入有効だった」と述べています。なお、本文の結論は「リバロキサバンが一番良かった」でした。(見え透いた伏線)

 

さっそく読んでいきます。

 

アブストラクトから臨床疑問(リサーチクエスチョン)を探していきます。

P:非弁膜症性心房細動の患者

I/C:NOAC→アピキサバン(エリキュース)、ダビガトラン(プラザキサ)、エドキサバン(エドキサバン)、リバロキサバン(イグザレルト)

ビタミンK拮抗薬(書いてないけどINRの設定からほぼワルファリンっぽい)

アスピリン

Watchman device→経皮的左心耳閉鎖術(LAA Closure: Left Atrial Appendage Closure)で使用する。

Percutaneous closure of the left atrial appendage versus warfarin therapy for prevention of stroke in patients with atrial fibrillation: a randomis... - PubMed - NCBI

O:有効性(脳卒中、全身性塞栓症)、二次アウトカム(全死亡)、安全性(頭蓋内外の大出血) 六か月以上のフォローアップをしている。

 

本文メソッドからの追加情報はなし。

 

実際に集まった層は、平均年齢71.5歳、男性65%、フォローした期間(中央値)1.7年

 

ステマティックレビューの評価

・データベース:MEDLINE

・検索期間:1966~2015.8

・検索語:記載なし

・元論文バイアス:RCT(第2相臨床試験は除外)、risk of biasの評価はしている

・評価者バイアス:二者で共同。意見対立時の方法はなし

・出版バイアス:英語のみ。参考文献、専門家連絡共になし。

・異質性バイアス:事前登録なし。患者情報、アウトカム共に統合に際して問題はないと思われる。

 

 システマティックレビューに関して、検索語の提示がなくデータベースも一つのみと、レビューする気があるのか疑問。

(たぶん有名な大規模研究のみを相手にしたからだとは思うが)

 ※個々の研究の評価について

「J-ROCKET AF」(PMID: 22664783)の評価がすべてunclearになっており、評価はしたと記載されているがきちんと評価できたとは言えないと思われる。

(著者の文献評価能力が怪しい)

なお、RobotReviewerの評価はコチラ

(僕の評価と一致したから出すというバイアスがかかっていますのでご注意ください)

trial

design

n

Random sequence generation

Allocation concealment

Blinding of participants and personnel

Blinding of outcome assessment

The J-ROCKET AF Study.pdf

RCT

???

+

?

+

+

 

 個人的な小括として、ステマティックレビューはずさんで、結果への確信性は低いと言わざるを得ない。(本来ならここで読むのをやめるが、本記事の目的はチェックリストが使えるかの確認なので最後まで読んでみる)

 

ネットワークメタ解析の評価

・ネットワーク図:一部あり(示されているのは脳卒中のもの)

・閉じた環:二か所のみ

・直接、間接比較:無

・一致性:非一致性なし

・資金源:示されていない

・COI:アピキサバン、リバロキサバン、Watchman deviceの販売メーカー

 

結果

・卒中、塞栓症(fig6)

 vsVKA プラセボアスピリンは常に劣る

・大出血(fig8)

 vsVKA エドキサバンのみ出血が少ない

・死因を問わない死亡(全死亡)(fig10)

  vsVKAorPlacebo 有意差のあるものはない

・ランキング(table3)

 卒中、塞栓症:リバロキサバン>ダビガトラン>アピキサバン

 大出血:プラセボエドキサバン>アピキサバン

 死亡:Watchman device>リバロキサバン=アピキサバン

 

 TTR50%台のワーファリン相手に優越性一つつけられなかったリバロキサバンが謎の大躍進!もとにしたデータはROCKET AFとJ-ROCKET AFなのに!

 アブストラクトの結論で「The entire spectrum of therapy to prevent thromboembolism in nonvalvular AF significantly reduced stroke/systemic embolism events and mortality.」とあるが、アスピリンは?

 あと、Fig7は「unajasted」の間違いと思われる。

 

 本論文を読んだ個人的感想。「捏造スレスレじゃね?」以下は参考文献。

「ちょっと盛られた」臨床試験の気付き方 医学書院/週刊医学界新聞(第3246号 2017年10月30日)

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑥~メトホルミン治療の次の選択肢はどれがいいですか~

 4/1、薬価改定でバタバタの時期の貴重過ぎる日曜日にもかかわらず、多くの方にご参加いただき、第2回AHEADMAP×EBM倶楽部ジョイントワークショップを盛会のうちに終えることができました。ご参加の皆様、兵庫医療大学の清水先生はじめEBM倶楽部の皆様ありがとうございました!

 

 ワークショップが終わって、モンハンで一狩りし終わったので、まだ記事化できていないネットワークメタ解析の論文を読んでいきたいと思います。

 

今日のお題論文はコチラ

www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID: 25919293

 

先ずはアブストラクトから情報を拾っていきます。

 

P:メトホルミン単剤(1500mgか最大耐用量を4週以上使って)でコントロール不良の2型糖尿病患者

 

I/C:FDA、EUで承認された25薬剤(インスリン製剤以外の血糖降下薬+持効型インスリン)

 

O:(有効性)HbA1c、体重、収縮期血圧(安全性)低血糖、尿路感染、生殖器感染

 

まるでSGLT2iに特化したかのような安全性のアウトカムが光ります。

 

本文から追加情報を拾っていくと(追加情報は赤字で表示。英字は日本未発売)

P:メトホルミン単剤(1500mgか最大耐用量を4週以上使って)でコントロール不良の18歳以上の2型糖尿病患者

 

I/C:FDA、EUで承認された25薬剤(インスリン製剤以外の血糖降下薬+持効型インスリン)

αGI:ミグリトール(セイブル)、アカルボース(グルコバイ

DPP4i:アログリプチン(ネシーナ)、リナグリプチン(トラゼンタ)、サキサグリプチン(オングリザ)、シタグリプチン(ジャヌビア/グラクティブ)、ビルダグリプチン(エクア)

胆汁酸吸着薬:colesevelam(コレスチミドの類似薬。下記は参考)

高コレステロール血症治療薬「ウェルコール」の2型糖尿病に関する適応追加申請について - ニュースリリース - 第一三共株式会社

グリニド系:レパグリニド(シュアポスト)、ナテグリニド(スターシス/ファスティック)

GLP1アナログ:エキセナチド(バイエッタ)、リキシセナチド(リキスミア)、リラグルチド(ビクトーザ)

持効性インスリン:インスリングラルギン(ランタス

SGLT2i:カナグリフロジン(カナグル)、ダパグリフロジン(フォシーガ)、エンパグリフロジン(ジャディアンス)

SU:グリベンクラミドオイグルコン/ダオニール)、グリクラジド(グリミクロン)、グリメピリド(アマリール)、glipizide

TZD:rosiglitazone、ピオグリタゾン(アクトス

合剤:アログリプチン+ピオグリタゾン(リオベル)、empagliflozin/linagliptin

 

O:(有効性)HbA1c、体重、収縮期血圧(安全性)低血糖、尿路感染、生殖器感染

12~52週で評価

 

実際に集まったのは、50~62歳、BMI30.8、SBP131、HbA1c8.0%の患者さん。

 

リサーチクエスチョンが明確になったところで、システマティックレビューの評価へ

 

・データベース:MEDLINE、CENTRAL

・検索語:メトホルミン、2型糖尿病HbA1c

・検索期間:~2014.5

 

・元論文バイアス

RCT(Blindは問わない)、risk of bias toolで評価(FigS2.不明評価が多い)

・評価者バイアス

二者独立→話し合いで決着つかない場合は第三者介入

・出版バイアス

英語のみ。リファレンスは探している。専門家への連絡はない。ファンネルプロットはないがEgger's testをしている(研究数が少ないのでやる意味があったかは不明)

・異質性バイアス

事前登録情報なし。PとOは統合可能(診断、検査性能の違いはありそうだが)

 

EU系ならEMBASEは見ても良かったかもしれない(糖尿病のRCTなら英語だけでも十分そうだが)

 

ネットワークメタ解析の評価

・ネットワーク図

Fig2に示されてはいるが、何のアウトカムについてかの説明がない。(研究の組み入れ基準がHbA1cの報告なので、HbA1cである可能性が高そう)

・閉じた環

少数(研究数1が多い)

・直接比較、間接比較

示されている(Table2:有効性、Table3:安全性)

・一致性

示されていない

(95%CIを見る限りTable2では一致性は高そう。Table3は不一致性が高そう)

・資金源、COI

資金源はベーリンガー。COIはベーリンガーとヤンセンファーマ(ランク付けはない)

 

結果(Table2とTable3)

(有効性)

HbA1c   SU

体重    SGLT2iとDPP4iは低下に働く

収縮期血圧 SGLT2i

 

(安全性)

低血糖  SUとグラルギンは増加させる

尿路感染 有意差をもって増加させるものはなかった 

生殖器感染 カナグリフロジン、エンパグリフロジンで増加

 

研究数が少なく、結果の示し方もわかりにくいため、どう利用したらいいのか?というのが読んでみての感想。集めた研究の質も微妙であるため、確信性の高い情報を得るには今後の研究待ちといったところか。

 

フェブキソスタットの心血管イベントを評価した論文読んでみた(CARES)trial

 FDAより心血管死がフェブキソスタット(商品名:フェブリク)でアロプリノール(商品名:ザイロリック)より多かったとの情報が流れたものの、論文化されておらず評価できないままになっていました。

 販売メーカーのMR(医療情報担当者)さんに聞いても、現場にはそもそも情報が来ていないのでわからないとのお返事をいただいていました。

 

 事の発端はFDAでフェブキソスタットが承認された際の臨床試験で心血管イベント(CV)がフェブキソスタット群で多い傾向がみられたことにあります。

 ロシグリタゾンで心血管イベントが増えるという報告から、プラセボ対照非劣性試験での心毒性評価が求められていましたが、今回もその流れの一環にありそうです。

 

 なお、フェブキソスタットの心毒性は日本国内では積極的に周知されていません。現場的に使用しづらさに定評のあるRMP(医薬品リスク管理計画)に記載がある程度のため、知らない医療関係者も多いのではないかと思います。

※RMPの内容を情報提供しているMRさんを見たことがないのですが、僕だけでしょうか?

 フェブキソスタットの心毒性に関する国内の状況は以下のリンクが詳しいと思いますので、よろしければご参照ください。

フェブキソスタットで心関連死のリスク上昇? | ぼうそう医薬情報室

 

で、今回のお題論文はコチラ
www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID: 29527974

※「Free full text」となっていますが、NEJMのアカウントを持っていないと読めないようです。

 

詳しい結果以外の試験の概要はこちらで把握できます。

Cardiovascular Safety of Febuxostat and Allopurinol in Patients With Gout and Cardiovascular Comorbidities - Tabular View - ClinicalTrials.gov

 

P:50歳以上の男性または55歳以上の女性で、少なくとも1つを含む主要なCVまたは脳血管疾患の病歴を有する米国リウマチ協会の基準を満たす痛風

 

I:フェブキソスタット40mg開始、最大80mgまで(腎機能による投与量の調整なし)

 

C:アロプリノール300mg開始、最大600mgまで(推定クレアチニンリアランス30~60mL/minなら200mg開始、最大400mgまで)

 

両群とも血清尿酸値が6.0mg / dL未満が目標

 

O:主要有害心血管イベント(MACE):心臓血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症の再灌流術

 

非劣性マージン1.3

 

4者ブラインド(Quadruple :Participant, Care Provider, Investigator, Outcomes Assessor)のRCT。

 

実際に集まった患者集団は平均64歳、65歳以上が半分くらいで、男性が80%強、尿酸値が8.7mg/dL、BMI33.5前後、9割以上高血圧・脂質異常症を合併、CKDstage1~2が75%。

 

結果

フェブキソスタット335 人 (10.8%) 対アロプリノール321 patients (10.4%) 

hazard ratio(HR), 1.03; upper limit of the one-sided 98.5% confidence interval (CI), 1.23

ということで98.5%CIの上限値が1.3を上回らなかったので非劣性。

 

ここまでが試験の主な結果ですが、注目されたのはMACEの中身。

心血管死:HR1.34 [95% CI, 1.03 to 1.73]

全死亡:HR1.22 [95% CI, 1.01 to 1.47]

有意差がついたのが「死亡」に関する部分だったという点です。

 

もう一つ気になるのが試験中断率の多さ

試験中断:フェブキソスタット57.3% 、アロプリノール 55.9%

受診(検査等臨床試験で実施機関に患者が赴くことが定められているのだが、それを辞めた率):フェブキソスタット45.0% 、アロプリノール 44.9%

mITTのため解析に脱落者も含まれるが、扱い次第では結果が変わりかねない。

 

脱落理由の内訳がSupplementary AppendixのFigS1に記載されているので抜粋すると、

フェブキソスタット中断57.3%のうち、同意の撤回22.5%、有害事象14.6%、lost to follow-up6.9%

アロプリノール中断55.9%のうち、同意の撤回21.6%、有害事象14.4%、lost to follow-up6.6%

受診中断

フェブキソスタット45.0%のうち、同意の撤回19.2%、有害事象6.2%、lost to follow-up7.3%

アロプリノール 44.9%のうち、同意の撤回19.0%、有害事象5.6%、lost to follow-up7.2%

 

 フェブキソスタット群3101名のうち3098名、アロプリノール群3097名のうち3092名が解析に回っている。試験プロトコルで脱落者の扱いを確認すると、「電話→手紙」でコンタクトをとるとはなっているが、統計的処理については触れられていない。

 

※なお第三相臨床試験の脱落を見てみると、ほぼゼロ。

Effects of febuxostat versus allopurinol and placebo in reducing serum urate in subjects with hyperuricemia and gout: a 28-week, phase III, randomi... - PubMed - NCBI

 

 ディスカッションでもこの脱落の多さへの言及はあるが、「両群同程度の脱落で問題なし」とまるで説明になっていない。

 脱落者の扱い如何で評価が変わる可能性が高く、この結果をもって安全とは言い難い。死亡も同様の理由で確信性が低く、直ちに行動を起こすようなものではないと考えてはいるが、今後の報告次第だろうか。

 

 

ここからは推測なのでご注意ください。

仕方ないので、治験で脱落の少なかった薬剤でここまで脱落した理由を考えてみたい。

脱落理由で最も多かったのは同意の撤回。

Supplementary Appendixに脱落者の国別内訳が示されている。(この試験自体はアメリカ、カナダ、メキシコで行われている。のちにカナダが除外されているが理由は不明)

フェブキソスタット群:アメリカ2651人中1081人、カナダ68人中20人、メキシコ379人中48人

アロプリノール群:アメリカ2655人中1102人、カナダ72人中13人、メキシコ355人中53人

脱落者の多くがアメリカに集中している(人数、率ともアメリカが群を抜いて多い)

 

この心血管安全性評価試験が計画されたのがFDA承認の1年後の2010年。

Febuxostat: the evidence for its use in the treatment of hyperuricemia and gout

 一般への情報提供が行われたのがいつ頃かは不明(調べても出てこなかった)だが、試験企画当時まだ安全性への懸念が一般に広まっていなかったのではないだろうか?

 

 同意取得前に、薬剤の心毒性への懸念を十分に伝えなかった結果、後から同意の撤回が増えたのではないだろうか?

(武田はピオグリタゾンで心血管リスクの高い人を組み込んだ試験を通した実績がある)

 

余談

この件の影響かわからないが、順調に株価下がってる。

(武田)

ãã£ã¼ãç»å

 

帝人

f:id:zuratomo4:20180401041035p:plain

 

 

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑤~抗菌薬による下痢の予防効果の高いプロバイオティクスは何か~

 早速ですが一部チェック項目の順を間違えていたので、ネットワークメタ解析(NMA)のチェックシートを改訂しました。

Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver7.pdf

 

今回は中華製NMAの論文を読んでいきたいと思います。

 

<今回の記事作成の背景>

 中国では論文投稿ごとに特別ボーナスが出るらしく、論文の投稿数がものすごく多いですが、一方で質が問題視されています。

 特に研究の二次解析であるメタ解析の分野は、きちんとシステマティックレビューをしたうえでメタ解析を行うととても大変なのですが、システマティックレビューとはとても呼べない適当な集め方をしており、その結果は読むに値しないほど信頼性の低いものしか出てきていないという現状があります。

 信頼できない論文を「読む価値なし」と判定できることもチェックリストには求められていると考えているので、質の低いものは低いと評価できるかを検証する意味も込めて読んでいきたいと思います。

 

では、お題論文を

www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID: 29511547

 

先ずはリサーチクエスチョンを見ていきます。

P:抗菌薬服用者

I/C:プロバイオティクス

O:有効性、忍容性

Pがきちんと書いていないが、わからなくはないレベル。

 

本文で情報を追加すると

P:何らかの理由で経口抗生物質療法を受けた個人

I/C:プロバイオティクス、形態はサプリメント(カプセル、小袋)か食品(例:ヨーグルト)、対象菌種はTable1参照。()内のコメントは国内の販売状況を調べたものですが、漏れている可能性はあります。

Multi-genera II=Combinations of two types of genera (Lactobacillus + Bifidobacterium, Lactobacillus + Streptococcus, Bifidobacterium + Streptococcus, Bifidobacterium + Clostridium)
Multi-genera III =Combinations of three or more types of genera (Lactobacillus + Bifidobacterium + Streptococcus, Lactobacillus + Bifidobacterium + Enterococcus, Lactobacillus + Bifidobacterium + Lactococcus + Saccharomyces + Leuconostoc, Lactobacillus + Bifidobacterium + Propionibacterium)
LGG =Lactobacillus rhamnosus GG(ヨーグルト)
L. rhamnosus =Lactobacillus rhamnosus species except for Lactobacillus rhamnosus GG
L. casei =Lactobacillus casei species (ビオラクチス、ヤクルト系)
L. acidophilus =Lactobacillus acidophilus species(サプリメントのみ)
L. reuteri =Lactobacillus reuteri species(輸入系サプリメント
L. plantarum =Lactobacillus plantarum species(漬物、キムチ、ザワークラウト
B. clausii =Bacillus clausii species(該当商品無し)
S. boulardii =Saccharomyces boulardii species(輸入系サプリメント

O:有効性→下痢の発生率(下痢の定義は個々の研究に依存)Clostridium difficile 感染率

 忍容性→全有害事象の発生率

 

実際に集まったのは平均43.2歳、男性比率59.5%。介入群の男性の比率次第で結果がゆがみそう。

 

PICOがたったら、システマティックレビューの評価へ

 

データベース:Medline(PubMed)、Embase、Cochrane library 、 Web of Science

検索語:プロバイオティクス、菌種、ヨーグルト、抗菌薬、下痢

検索期間:1996.1.1~2016.12.31

 

・元論文バイアス

 RCTのみ。 Risk of biastoolで評価したとあるが結果の記載はない。

・評価者バイアス

 三人が独立して評価。意見対立時は共同してレビュー(権威勾配で評価が歪みそう)

・出版バイアス

 言語制限なし。参考文献は追っている。専門家連絡はなし。funnel plotという単語はあるがやったと思われる痕跡はない。

・異質性バイアス

 事前登録はされている。(CRD 42016050776)、Pの近似性は不明。アウトカムは定義がバラバラではあるが統合可能なものを選択していると思われる。

http://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.php?ID=CRD42016050776

 

 Supplementary Materialが公開されていないので、評価しようのない項目が多々存在する。書いてある項目だけならきちんと記載はされている印象。

 

ネットワークメタ解析の評価

・ネットワーク図

 全アウトカムについて示されている。閉じた環(closed-loop、ようは介入群で三角形が描けているかどうか)はとても少ない。

・直接、間接比較

 示されていない。もっとも、示すことができるほどの閉じた環もないが。Table2とTable3で示されているのはプラセボ比で、ここでいう比較(head-to-headの結果と第三者を介して推定した結果が一致するかを評価する)とは異なる。

・一致性

 不明。評価できるほどの閉じた環がない。

・資金源、COI

 ともに記載はされている

 

研究そのものが少なく、いかんともしがたいといった感じ。

 

結果(ランク順に記載)

・下痢の発生率(プライマリアウトカム)

LGG 0.28(0.17~0.47)

L. casei 0.29(0.13~0.68)

L. plantarum 0.83(0.22~3.20)

S. boulardii 0.41(0.29~0.57)

L. acidophilus 0.57(0.43~0.76)

Clostridium difficile 感染率(セカンダリアウトカム)

L. casei 0.04(0.00~0.77)

L. acidophilus 0.20(0.08~0.48)

全有害事象の発生率

L. reuteri 0.33(0.08~1.42)

L. plantarum 1.04(0.20~5.29)

LGG 0.44(0.23~0.84)

 

L. plantarumの謎の躍進っぷりが気になる。

体裁だけなら意外ときちんとしている印象。

但し、本研究の結果の確信性は高くない。

 

 

今年度最後のJJCLIPの予習をしてみた→視聴終了の感想

2018.3.25、21:00より、薬剤師のジャーナルクラブ(JJCLIP)が開催されました。

 

誰でも無料で視聴可能!コメントをする場合のみTwitterfacebookのアカウントが必要になります。

案内は以下のリンク

pharmasahiro.hatenablog.com

 

 なお、JJCLIP開始前にこのブログを見てしまった人はお清めの意味も込めて配信中に「おっぱい」とコメントしてください。

ご協力ありがとうございました!

 

本記事作成の背景

いつも先走ってPECO(当ブログではPICOとしたりしていますが、同じような意味ですので、同じものとして考えてください)を投稿してしまうので、今回はもっと先走ってみました。

※個人の見解であり、JJCLIPの公式なナントカではありません。

 

シナリオのPECOをサクッとまとめると(あくまで一例です)

P:成人

E1:Facebookの使用

E2:Twitterの使用

E3:Instagramの使用

C:SNS未使用

O:気質・性格を反映するか

正直、これでいいのかよくわかりません。

 

で、お題論文に行きましょう。

What does media use reveal about personality and mental health? An exploratory investigation among German students. - PubMed - NCBI

PMID: 29370275

 

はじめに

 

この論文はルール大学ボーヘム校でのアンケート調査です。

BOOM(Bochum Optimism and Mental Health)プロジェクトの一環として行われた研究の一つになります。

Arbeitseinheit Klinische Psychologie & Psychotherapie (BOOM Bochum Optimism and Mental Health)

もともと著者らはFacebookの使用が精神に与える悪影響を研究しており、米露中の研究者と今回のプロジェクトを始めたようです。

https://www.researchgate.net/profile/Julia_Brailovskaia

 

前置きはこのくらいにして、論文本体を見ていきましょう。

P:ドイツ人学生(新入生、平均年齢21.8、男女比=214:419、52.9%フリー・43.4%恋人有・3.6%既婚)

I/C①:コンピューターゲーム やってる:やったことない=65.3%:34.8%

I/C②:インターネットの使用 やってる:やったことない=100%:0%

(そもそもインターネットでアンケートしてるのでこの設問を設定したこと自体頭おかしい)

I/C③:SNSの使用  やってる:やったことない=91.9%:8.1%

I/C④: FacebookTwitterTumblrInstagram 平均1.63SNS使用

  (Facebook76.3%、Twitter10%、Tumblr8.7%、Instagram39.7%、その他24.8%)

O①~③:人格特性、メンタルヘルスとの相関

O④:同じ相関パターンを示すか

※探索的研究なのでI/Cが多い

 

評価項目(要はアウトカムの中身)

人格特性①自己愛(ナルシシズム

Narcissistic Personality Inventory (NPI-13)で測定。大本はNPI40といって7因子(権威性、自己顕示性、優越感、うぬぼれ、搾取性、特権意識、自信)40項目の検査。この40項目のうち13項目に簡易化したもの(著者も簡易化について論文を出している)

信頼性係数Cronbach’s αは40項目のもので0.82、13項目で0.65と記載あり。

下記リンクより「通常,0.8 以上でなければ妥当な尺度とはみなせない」

クロンバックの α 信頼性係数とは - 統計学用語 Weblio辞書

 

人格特性②自尊心

Single-Item Self-Esteem Scale (SISE)で測定。,“I have high self-esteem.”という1 つの質問に対して,“not very true of me”と“very true of me”を双極とする5 件法で自己評定を行う。Rosenberg 自尊感情尺度の代替簡易尺度。

 

人格特性③ビッグファイブ

パーソナリティを外向性(α = .78, rmi = .63)、協調性(α = .45, rmi = .29)、誠実性 (α = .40, rmi = .26)、神経症傾向(情緒安定性)(α = .55, rmi = .38)、開放性 (α = .54, rmi = .38)の5因子にわけた5因子モデルに基づく調査。

mean interitem correlation (rmi)設問項目間の相関。高いとお互いの項目が関連している。信頼性係数Cronbach’s αをみかけ高くしてしまう。

※日本版ビッグファイブ

http://jspp.gr.jp/doc/manual_TIPI-J.pdf

 

メンタルヘルス①人生に対する満足尺度(SWLS)

「人生満足尺度SWLSの質問:

1. ほとんどの面で、私の人生は私の理想に近い
2. 私の人生は、とてもすばらしい状態だ
3. 私は自分の人生に満足している
4. 私はこれまで、自分の人生に求める大切なものを得てきた

5. もう一度人生をやり直せるとしても、ほとんど何も変えないだろう」

http://lab.sdm.keio.ac.jp/maenolab/questionnaire_about_happiness.htmより

この5項目を7点満点で評価。α= 0.86

 

メンタルヘルス②主観的幸福感

4項目、各項目7点満点で評価。α= 0.86

日本版主観的幸福感尺度(Subjective Happiness Scale: SHS)の信頼性と妥当性の検討

 

メンタルヘルスレジリエンス

11項目、各項目7点満点で評価。 α = 0.86(以下のリンクは参考)

https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/15731/1/shinrishakaigaku_5_22.pdf

 

メンタルヘルス④社会的サポート

14項目、各項目5点満点で評価。α= .93

Fragebogen zur sozialen Unterstützung (F-SozU): Normierung der Kurzform (K-14) - IOS Press

 

メンタルヘルス⑤DASS21(うつ、不安、ストレス)

3因子21項目、各項目4点満点で評価 (depression: α = .91, anxiety: α = .79, stress: α = .86)

 

ここまでの評価項目の参考になるスライド

解決志向尺度日本語版 ストレスコーピングとの関係性 Development and validation of the Solution …

探索的だけあって要因以外にもアウトカムもたくさんあるので、どれかしら相関らしきものが見えるのは当然みたいな内容。

 

ここから結果を見ていきます。

Table1と2は全体の平均など集団全体の特性を示している。

 

Table3は人格特性。有意(P<0.01)な相関のみ示すと

①自己愛:ネットの利用0.11、SNSの使用0.15、Facebook0.11

②自尊心:該当なし

③外向性:ゲーム-0.22、SNS0.16、Facebook0.24、Instagram0.17

③協調性:ゲーム-0.14、ネット-0.12、Twitter-0.11

③誠実性:ゲーム-0.27、Twitter-0.14

神経症:ゲーム-0.12

③開放性:Tumblr0.11

 

Table4はメンタルヘルス。有意(P<0.01)な相関のみ示すと

①満足度:Facebook0.11、Twitter-0.15、Tumblr-0.10

②幸福度:ゲーム-0.12、Twitter-0.12、Tumblr-0.10

レジリエンス:ネット0.13、Twitter-0.12、Tumblr-0.11

④サポート:ゲーム-0.18、ネット0.13、SNS0.13、Facebook0.11、Twitter-0.13、Instagram0.11

⑤うつ:ゲーム0.10、Twitter0.12

⑤不安:Twitter0.11、Tumblr0.15

⑤ストレス:Tumblr0.13

 

 どれもこれもまともな相関関係はなく、こんだけ多数の項目をやれば何かそれっぽいものは出るだろうくらいの感想しか出ない。

(個人的には否定的な項目の方が多い気がします。で、研究者の業績調べたらSNSに否定的な論文を出してたという学術的COIの入った研究だったというね)

 もともとFacebook中毒の研究をしている研究者からの報告なので、好意的な報告にはならないという。外向性ならInstagramよりFacebookの方が上という結論だし。

 

 しんどい割に得る物の少ない論文でした。居酒屋でのどうでもいいトークのネタくらいには使えるかも。

 

評価項目多すぎて疲れた。

 

 

視聴後追記

FacebookTwitterで傾向が逆。

人格特性が違うというより、SNS特有のふるまい?

日本ではどうか?AHEADMAPで研究企画

みんなの検索が医療を変えるから、立ち上がろうぜ薬剤師byるるーしゅ先生

「性格って、着る洋服を閉鎖的なものにするか、開放的なものにするかで変わりません??どこにいるか?によっても。ライブ会場で鬱っぽくなる人も少ないし・・・。」とは、けいしゅけ先生

 

ようするに、おっぱい(Titten)は世界を救うですよ

      ∩
  ( ゚∀゚)彡 Titten!Titten!
  (  ⊂彡
   |   | 
   し ⌒J

 

阪調勉強会に潜入した件

3月の某日、阪神調剤薬局で開催されたEBM研修会に参加してきました。

JRと阪神芦屋駅の間という好立地のビル!

(流石はソクラテス先生の薬局を買収しただけのことはある)

薬局で使える実践薬学 山本 雄一郎
 薬局で使える実践薬学 
 山本 雄一郎 
 (ソクラテス先生の著書)

 

 

 

で、会場は写真の本社ビルではなくて、近くにある別館(研修・会議棟らしい。本館と同じく綺麗)

中に入ると日曜日にもかかわらずスーツ姿の皆様!私服で行ってごめんなさい

 

スタートは高垣先生による高血圧の歴史。まとめると、

降圧を通じて、人類は臨床試験を究めていく

でした。

仮想症例のPICO立てをした後、お題論文へ

Blood pressure lowering for prevention of cardiovascular disease and death: a systematic review and meta-analysis. - PubMed - NCBI

PMID: 26724178

http://www.thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(15)01225-8.pdf

チェックシートは以下のものを使用

EBM資料集−はじめてシート [The SPELL]より

http://spell.umin.jp/BTS_SR5.0.pdf

 無料でEBMを学ぶなら、上記の南郷先生のHPとJJCLIPのツイキャス視聴がオススメです。JJCLIPは今度の日曜日に開催ですので、日曜21時から聞けそうなら是非お試しください!

pharmasahiro.hatenablog.com

 

では、お題論文のPICOから

P:降圧薬を使っている人(高血圧以外もオッケー)

I/C:降圧薬

O:心血管イベント

abstractがとにかく読みにくい。

 

PICOがたったら、システマティックレビューの評価へ

先ずは集める努力を評価。

データベース:MEDLINE(大規模だから?SRとしては残念な感じ)

検索語:高血圧、各薬剤クラスの名前、各薬剤名

検索期間:1966.1.1~2015.7.7

集めた研究の種類:RCT(各試験群で少なくとも1000患者年のもの)

参考文献(reference list):〇

専門家連絡:×

研究の重複は除かれている(Fig1より)

言語:制限なし

 

実際にきちんと集まったかを評価でfunnnel plotを使うのが一般的だけど、今回はなし。

大規模の研究のみを集めたのでやる意味がなかった?

 

集まった研究の評価は2者独立、もめたら第三者が介入。評価はthe Cochrane risk of bias tool

 

異質性「We characterised heterogeneity with the I2 statistic.」

 

統合 「fixed-effects meta-analyses because heterogeneity was low」

I2が低いと言ってるけど25~41%の異質性。素直にRandom effects model使えばいいのに

 

結果、収縮期血圧の10mmHg低下毎に

主要心血管疾患(RR 0,80,95%CI 0.77-0.83)

冠状動脈性心疾患(0.83、0.78-0.88 )

脳卒中(0.73、0.68-0.77)

心不全 (0.72, 0.67–0.78)

全原因死亡 (0.87, 0.84–0.91)

以上、血圧下げるの大事と。

 

薬物クラスごとの結果もあったので見てみる。

 β遮断薬は、主要心血管疾患(RR1.17,95%CI1.11-1.24)、脳卒中(1.24,1.14-1.35)、腎不全(1.19,1.5-1.34)でかえって悪くするという現行のガイドラインで第一選択から外されたことを支持する結果。

 CCBは、脳卒中予防(0.90、0.85-0.95よりも優れていたが、心不全予防(1.17,1 .11- 1.24)では劣っていた。

 利尿薬は、心不全予防で他のクラスより優れていた(0.81,0.75-0.88)

 

仮想症例への適用を考えつつ、パンフレット作製。

帰りにけいしゅけ先生とサシのみして帰還。

 

 

 

楽しい一日でした。

 

で、会場で高垣先生とけいしゅけ先生からアドバイスをもらってNMAチェックシートを改良。

www.dropbox.com

是非ご活用ください!

 

おまけ:阪神調剤薬局のトイレ、超綺麗だった