窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

ブレクスピプラゾール(レキサルティ)のシステマティックレビューとネットで拾った怪しげな医療経済評価の怪文書を読んでみた

<はじめに>

 

ブレクスピプラゾール(レキサルティ)の院内採用に当たって効果を検証したシステマティックレビュー&メタアナリシスの文献を探すついでに、海外での費用対効果の文献を探してみたら学会ポスター風の変なチラシみたいなのを見つけたので、ついでに読んでみた。

 

くわばら先生のブログが詳しいので、よろしければご参照ください。

新規抗精神病薬レキサルティについて | hidex公式ブログ『はぐれ薬剤師のココロ』

後、院内採用になりそうな薬は必ず目を通す審査報告書も貼っときます。

レキサルティ審査報告書(2018年01月19日)

 

<お題論文と怪文書>

 

Efficacy of brexpiprazole in patients with acute schizophrenia: Review of three randomized, double-blind, placebo-controlled studies. - PubMed - NCBI

PMID: 27157799

 

怪文書

http://www.pharllc.com/wp-content/uploads/2016/04/Brexpiprazole-Poster-for-CPNP.pdf

f:id:zuratomo4:20180612203658p:plain

怪文書といっても、著者の所属とか書いてあるんですけどね(;^ω^)

ルンドベックとか大塚アメリカ社のメディカルアフェアーズ部門の人の名前あるし。

 

<システマティックレビューを簡単に読む>

 

・RQは?

P:18~65歳のDSM-Ⅳ-TRで診断した統合失調症患者

I:ブレクスピプラゾール0.25mg、1mg、2mg、4mg

C:プラセボ

O:6週間後のPANSS

 

・phase2:1試験、phase3:2試験(VECTOR、BEACON)のうちphase3を統合

→元試験の質以外はバイアスのかかったシステマティックレビュー。

→(おまけ)2mgでプラセボと有意差が出なかったBEACON試験はメーカーからは紹介されません。

 

・結果

プラセボとの間に有意差の見られなかったphase2とphase3の0.25mg、1mgは割愛)

PANSS

2mg  -18.79 vs placebo -13.33   MD -5.46  95%CI:-8.46~-2.47

4mg  -20.01 vs placebo -13.33   MD -6.69 95%CI:-9.67~-3.70

CGI-S(ベースラインからの変化量)

プラセボ:-0.82

2mg:-1.07

4mg:-1.20

 

※日本国内では、第三相臨床試験で4mgはプラセボと有意差がなかったため、2mgまでしか承認されていません。「エビデンスが~」といって2mg錠を2錠使わないように!

 

※4mgが承認審査でけられたことを隠して「1mg→2mgのシンプルな用量設定です」と宣伝してるの、油断してると吹き出しそうになるのは秘密です。

 

※対プラセボでPANSSの差が1ケタ台って、他の薬剤では中等量くらいの効果のような(;^ω^)<大体、最大用量では10点台の改善はあるで

 

<「An Economic Evaluation of Brexpiprazole Treatment in Adult Patients with Schizophrenia in the United States」を読んでみる>

 

・RQは?

P:18~65歳の統合失調症患者 2nd lineの治療

I: Brexpiprazole(以下、「brex」と略) 2mg ,4mg

C:QuetiapineXR600mg,Lurasidone120mg(ともに国内未承認)

O:ICER(有効性の評価尺度はPANSSとCGI-Sの二つ)

※今回はPANSSの方だけで検証してみる

 

・批判的吟味

分析の立場:US Managed Care Payer(支払者)

分析期間:6週間

リソース・コスト見積もり:Table2と3(brex2mgと4mgで価格が同じ?)

価格:2014 US Dollars

モデル:決定樹

パラメータ:Table1(PANSS Score Changeより抜粋)  

brex2mg-19.65 brex4mg-20.93 lurasidone-18.69 quetiapineXR-25.72

根拠:brexはVECTORとBEACON(要は上のシステマティックレビュー)

QuetiapineXR600mgが9~10,Lurasidone120mgが6~8と文献番号が振られているが、実際に調べてみると根拠は逆になっている。

QuetiapineXR600mg

6.Efficacy and tolerability of once-daily extended release quetiapine fumarate in acute schizophrenia: a randomized, double-blind, placebo-controlled... - PubMed - NCBI

PANSS(6週)-30.9

7.The efficacy and tolerability of once-daily extended release quetiapine fumarate in hospitalized patients with acute schizophrenia: a 6-week random... - PubMed - NCBI

PANSS(6週、プラセボとの差)-13.01

8.A failed 6-week,randomized, double-blind, placebo-controlled study of once-daily extended release quetiapine fumarate in patients with acute schizo... - PubMed - NCBI

PANSS(6週)「the differences were not statistically significant」とあるが数値無し

Lurasidone120mg

9.Lurasidone in the treatment of schizophrenia: a randomized, double-blind, placebo- and olanzapine-controlled study. - PubMed - NCBI

PANSS(6週)「significantly greater improvement at week 6」とあるが数値無し

10.Lurasidone for the treatment of acutely psychotic patients with schizophrenia: a 6-week, randomized, placebo-controlled study. - PubMed - NCBI

PANSS(6週)-20.5

※根拠とパラメータを数値のわかる範囲で比較すると、brexは上方修正され比較対象薬剤は下方修正されているよう

 

・結果:ICER(PANSS)

ブレクスピプラゾールはlurasidoneにdominatedであった

 

<感想>

有効性の数値を都合のいいように修正したからでは?

 

認知症患者さんにがっつり運動してもらった認知機能はどうなる?⇒変わりませんでした!

<はじめに>

 

はい、タイトルにオチ入れちゃいました(;^ω^)

もう記事を読む価値はないかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。

 

<お題論文>

 

Dementia And Physical Activity (DAPA) trial of moderate to high intensity exercise training for people with dementia: randomised controlled trial. - PubMed - NCBI

PMID: 29769247

 

こちらはプロトコル論文

Dementia and Physical Activity (DAPA) - an exercise intervention to improve cognition in people with mild to moderate dementia: study protocol for ... - PubMed - NCBI

PMID: 27015659

 

で、双方で事前登録情報が異なっています。

上:ISRCTN10416500

下:ISRCTN32612072

上は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の換気方法の研究です(OSCAR試験)

本文の解釈には全く関係ありませんが、参考までに。

 

<臨床疑問>

 

P:軽度~中等度の認知症患者494名

→(本文より)DSM-Ⅳで診断。MMSE>10、10Feetを独歩で移動可能、椅子に着席できる。

 

I:有酸素運動+レジスタンス運動+通常ケア

→4ヶ月週2回グループセッション:理学療法士監督下にジムもしくは施設でエアロバイク(ウォーミングアップ5分+許容レベルに合わせた運動)+ダンベルなどを使ったレジスタンス運動+1時間のホームワーク。その後、自宅で150分/週の運動。

 

C:通常ケア

 

O:12ヶ月後のADAS-cogのスコア

→11項目、70点満点。高得点ほど認知機能悪化を示す

→大元のプライマリアウトカムは6ヶ月、12ヶ月でのMMSEとBADL(要はADL)

→事前登録情報の最新のプライマリアウトカムは6ヶ月、12ヶ月でのADAS-cog

(「6ヶ月」が論文では削除されている)

 

⇒実際に集まった患者群にTable1で示されている範囲で特に気になる偏りはないが、併存疾患は示されていない。平均年齢I76.9歳vsC78.1歳。独居I16%vs21%。

⇒介入の指示を守れた人とそうでない人をTable2で示している。やや男性が多いよう。

 

 

<批判的吟味>

 

・ランダム化:コンピュータで作成した乱数による。I群:C群=2:1。グループセッションがあるため、アンバランスなランダム化になった。

 

・マスキング:アウトカム評価者のみ

 

・真のアウトカム:代用

 

・アウトカムは明確?:明確

 

・ITT解析?:ITT

 

・サンプルサイズ:468名(20%は脱落する見込み)

 

・追跡率:I群85%、C群83%

 

<結果>

Table3より

 ADAS-cog      I        vs     C

開始時:    21.2     vs    21.4

6ヶ月:        22.9     vs    22.4               MD-0.6 95%CI:-1.6~0.4

12ヶ月:      25.2     vs    23.8               MD-1.4 95%CI:-2.6~-0.2

 

⇒1年後、有意差をもって介入群で悪化(臨床的意味のある差ではないが)

NIHR健康技術評価プログラムで公的資金を投じて行われた研究だが、認知機能の他QOLも測定している(医療技術評価の為QALYを測定したかったのだろう)が、そちらも有意差はなかった。

 

個人的感想「運動、キツ過ぎね?」

 

※この研究には4つほどコメントがついているので、一部を紹介

 

「4ヶ月間の介入後に評価されなかったため、著者は認知における中高度運動の効果について結論することができない」

いやいや、4ヶ月で認知機能に差がついたら、元の診断名が間違ってるでしょ!(アルツハイマー病は年単位で進行する疾患)

 

「この研究は認知症における身体活動の役割に関する多くの否定的な報道を生み出している」

こんだけの強度の運動を平均年齢76.9歳に課した部分を報道は考慮しないのね(;^ω^)

 

るるーしゅ先生から「るるーしゅが命じる!とにかく読め❕」と言われた緑内障治療薬の防腐剤に関するナラティブレビューを読んでみた

<背景>

 前回の記事を投稿したところ、黒の薬剤師会の首領である「るるーしゅ先生」より以下のようにお題が与えられましたので、読んでみました。

f:id:zuratomo4:20180607234655p:plain

るるーしゅ先生のブログ:黒の薬剤師会

なお、当ブログは強敵(とも)たちのブログには入れてもらってません(´;ω;`)

途中から初心者置き去りも辞さないクソブログになったことが原因でしょうか?

 

(´;ω;`)<初心者向けってどうやってやるの?

 

 

 

<お題論文>

 

Glaucoma therapy: preservative-free for all? - PubMed - NCBI

PMID: 29713138

 

コペンハーゲン大学病院の先生によるナラティブレビューです。

本ブログでナラティブレビューを扱うのは初めてです。たしか。

ステマティックレビューと異なり、一定のストーリーのもとに文献が紹介されるため、研究の流れは読みやすいですが、あくまで著者の先生の意向に沿った文献しか紹介されません。

そのため、いつものような批判的吟味はできませんので、内容をかいつまんで紹介したいと思います。

頭の番号はリファレンスの番号です。

 

<内容>

 

・25.点眼使用者の角膜障害の有病率(横断研究)

→9658名(防腐剤の有無は関係なし)中74%に見られた。症状は防腐剤有り群で多かった。

Ocular symptoms and signs with preserved and preservative-free glaucoma medications. - PubMed - NCBI

 

・34.ラタノプロストの防腐剤入りと防腐剤無し製剤の直接比較(非劣性試験)Fig3,Fig4の図のもとになった試験

→P:原発性開放隅角緑内障もしくは高眼圧症

 I:防腐剤フリーのラタノプロスト(T2345)

 C:防腐剤入りのラタノプロスト(キサラタン)

 O:平均IOP低下(84日)でT2345-8.6±2.6mmHg(-36%)vs キサラタン-9.0±2.4mmHg(-38%)で有効性では非劣性。

充血は T2345群21.4% vs キサラタン群29.1%; p=0.02

※全文フリーでないので確認できなかったが、Fig3の開始時のズレはなんだろう?ランダム化がうまくできてない?

Efficacy and safety of preservative-free latanoprost eyedrops, compared with BAK-preserved latanoprost in patients with ocular hypertension or glau... - PubMed - NCBI

 

・26.防腐剤入りチモプトールから防腐剤フリーのチモプトールへ切り替え

結膜充血の割合は24.4%から14.6%に減少。

※本論文中では「同じレジメン」と紹介されているが、アブストラクトを確認する限り防腐剤入りチモプトールは1日2回で、防腐剤フリーのチモプトールは1日1回投与。本文がフランス語で、要登録なので読めない(´;ω;`)

[Efficacy and safety of substituting a twice-daily regimen of timolol with a single daily instillation of nonpreserved beta-blocker in patients wit... - PubMed - NCBI

 

・36.防腐剤入りラタノプロスト(Xalatan)から防腐剤フリーのトラボプロスト(Travatan Z)へ切り替え

角膜上皮障害をOSDIスコアで比較したところBAK-free travoprost 0.004% group (score = 11.6 ± 10.8 units) vs BAK-preserved latanoprost 0.005% group (score = 14.4 ± 11.9 units)で防腐剤フリーの方がスコアが小さかった。

※トラバタンズの最後って大文字だったのか(;^ω^)<シランカッタ

 

Ocular surface disease in patients with glaucoma or ocular hypertension treated with either BAK-preserved latanoprost or BAK-free travoprost. - PubMed - NCBI

 

・38.前回記事の論文。

 

アドヒアランス部分は省略。

 

「どんな患者がいい?」→角膜上皮障害(OSD)のある患者、高齢者、40代くらいの早発性緑内障、若年者の手術前のコントロール、PCつかう職場にいる人(ドライアイが多い)、リスクファクター持ち、女性、コンタクトレンズ使用者、アジア人(アジア人はドライアイが多い)

⇒要は全員じゃねえか

 

<まとめ>

防腐剤フリー推しのナラティブレビュー。

網羅性がなく本当に防腐剤フリーが優れていると結論していいのかは不明。

個人的に読んでいて気になったのは、「有害事象が多いとアドヒアランスは低下する。防腐剤フリーは有害事象が少なくアドヒアランスが良い」という論調だったが、薬剤効果の指標である眼圧(IOP)の低下に紹介された文献ではどれも防腐剤の有無は影響していないのだが、、、

解析が脱落を考慮しないPPS解析(試験完遂者のみの解析)だからだろうか?もちろんそんな考察も記載もないが。

 

 

「JJCLIP_#57 緑内障の点眼薬は防腐剤が無いほうがよいのでしょうか?」を予習してみた件

<はじめに>

 

来る6/10の21:00より薬剤師のジャーナルクラブ(JJCLIP)が開催されます。

視聴無料で、以下のリンクを踏むと視聴可能です。

(放送は1時間30分の予定。雑談などで30分はかかりますので、本編は21:30前後から開始と考えておくと、忙しいあなたでも視聴できます)

精神科薬剤師くわばらひでのり (@89089314) 's Live - TwitCasting

なお、コメントはツイッターFacebookのアカウントがあればできます。

(過去放送分の録音も公開されていますので、是非ご視聴ください)

 

基本的に「初心者が、簡単に、医学論文を使いこなす」を解説付きで配信されていますので、「医学論文読めない~」というレベルでも十分楽しめます。

(大まかな内容をとるだけなら英語能力云々より、小1終了程度のアラビア数字の読解力だけで行けてしまいますが)

 

なお、本記事を読んでしまった方は、本配信中に「居酒屋抄読会参加者募集!7/7

札幌、7/21大阪梅田、7/28大阪天王寺、8/19新潟、8/25岡山」と宣伝お願いします

 

<お題論文と仮想症例シナリオ>

 

JJCLIP_#57 緑内障の点眼薬は防腐剤が無いほうがよいのでしょうか? – よろず屋「雅(Miyabi)」のみたて

AHEADMAP共同代表の一人、山本雅洋先生のブログです。

配信の告知は上記ブログで行われますので、RSS登録がお勧めです。

 

Benefits of switching from latanoprost to preservative-free tafluprost eye drops: a meta-analysis of two Phase IIIb clinical trials. - PubMed - NCBI

PMID: 27041987

 

 

<シナリオの臨床疑問>

あくまで参考までに。

(JJCLIPでは臨床疑問の定式化をPECOにしていますので、本記事ではいつものPICOではなくPECOで記載しますが、内容は同じです)

 

P:緑内障の患者

E:防腐剤フリーの後発医薬品

C:防腐剤入りの先発医薬品

O:角膜上皮障害(有害事象)の発生は抑制できるか

 

で、先発医薬品に防腐剤が入ってて後発医薬品に防腐剤フリーがある緑内障治療薬

ミケラン、チモプトール、レスキュラ、キサラタン、ハイパジール、ミロル

防腐剤フリーの後発医薬品は日点のPF容器製剤がメインですね。

 

<論文のRQと概要>

 

P:ラタノプロストで角膜上皮障害が出た患者

本文より→18歳以上、症状2項目か症状1項目+症候1項目の合致、高眼圧か緑内障、ラタノプロスト治療6ヶ月以上、眼圧(IOP)22以下

E:タフルプロストへの切り替え

C:(C群の設定なし)

O:症状、眼圧、好み(プライマリアウトカムの明示はないが、サンプルサイズの計算が症状で行われているので、プライマリアウトカムは症状5項目と思われる)

⇒343名、男性37.6%、平均年齢67歳(23~88歳)、原発性開放隅角緑内障85.1%

 

タフルプロストの販売メーカー参天製薬の北欧子会社、サンテンオイ社の出資で行われた二つの切り替え試験を統合したメタ解析になります。

本論文の著者は二つの切り替え試験の研究者による合同チームです。

いつも読むのはシステマティックレビュー&メタ解析の論文ですが、本論文はシステマティックレビューをしていない純粋なメタ解析です。

全例切り替えのシングルアームの前後比較試験のメタ解析なので、C群がありません

 

<方法論>

 

・評価者バイアス:本研究の著者グループ=2件の前後比較の研究者(すなわち、自分の研究の再解析)

 

・出版バイアス:自分たちの研究のまとめで、システマティックレビューではない

 

・元論文バイアス:単アームのオープンラベル前後比較。(評価するまでもなく低質)

 

・異質性バイアス:同一プロトコル。個人データの統合。(一応、異質性はなかったとの記載あり) そもそも、統計的に統合していない。

 

⇒全項目にbiasあり。

 

統合された試験

Switching from a preserved to a preservative-free prostaglandin preparation in topical glaucoma medication. - PubMed - NCBI

PMID: 20546237

RMJ Clin Ophthamol 2015:1-

pubmedgoogle schlarではヒットしない)

 

<結果>

baseline→6週→12週で表記。脱落27名(9名はAEで脱落)。結果で3名復活。

※訳は適当です。あと、6週のデータは本文になかったので手計算です。

 

table3より

・症状(軽症以上の割合)

刺激/熱感/刺痛:59.6%→21.7%→16.8%

異物感:39.8%→15.7%→13.9%

裂傷:40.7%→16.4%→15.2%

かゆみ:34.2%→16.4%→14.9%

ドライアイ:57.8%→25.2%→23.1%

・症候

眼瞼炎:60.2%→38.7%→34.2%

 

table4より

・症候

角膜フルオレセイン染色(グレードI〜IV):82.9%→54.7%→41.8%

結合性結膜フルオレセイン染色(グレードII〜VIII):87.9%→59.7%→50.9%

 

table5より

・症候

結膜充血度:1.51±0.76→0.86±0.59→0.72±0.59

 

本文にのみ記載あり

涙液分泌時間(tBUT):5.9±4.5秒→7.7±4.2→8.7±4.7

涙液分泌(Schirmer's test):7.8±6.9mm→10.6±8.6→11.5±8.4

IOP:16.6±2.6mmHg→16.0±2.3→15.7±2.5

 

不快感(開始時→12週):mild42%,moderate31%,sereve1%→mild22%,moderate2%

好み(12週):ラタノプロスト6%、タフルプロスト72%

 

⇒すでにラタノプロストで有害事象を出ている人を集めタフルプロストに切り替えた比較対照のない前後比較試験のメタ解析。

脱落者を解析に含めないなど、試験デザイン上タフルプロスト有利な試験。

本結果がBAC(防腐剤)の有無なのか、ラタノプロスト→タフルプロストなのかはわからない。

 

⇒有症状なら切り替えの価値はあるかも。なお、本研究から角膜上皮障害の発生が予防できるかはわからない。

 

 

crossover試験を読む~スピオルト®レスピマットの実力は?(対スピリーバ)~

<はじめに>

 

ネットでたまたま見かけたVESUTO試験が全文フリーだったので読んでみたというだけの記事です。

「レスピマット」でお気づきの方がいるとは思えませんが、この試験のスポンサーはワタクシの大嫌いな某ベーリンガー社です。

そのため、「粉飾してるやろ、常識的に考えて」くらいの気持ちで論文を読んで記事にしています。

本記事を読むにあたっては、強烈なバイアスがかかっていることを理解していただけますようお願いいたします。

 

<急ぐ人向け結論>

 

 プライマリエンドポイントである最大吸気量で有意差をもってスピオルトが改善しました。

でも、解析怪しい。。。

 

<お題論文>

Efficacy of tiotropium/olodaterol on lung volume, exercise capacity, and physical activity. - PubMed - NCBI

PMID: 29750027

 

以下はプロトコル論文

Study Design of VESUTO®: Efficacy of Tiotropium/Olodaterol on Lung Hyperinflation, Exercise Capacity, and Physical Activity in Japanese Patients wi... - PubMed - NCBI

PMID: 28537001

コッチは事前登録情報

Comparing the Efficacy of Tiotropium + Olodaterol Fixed Dose Combination (FDC) Over Tiotropium in Improvement of Lung Hyperinflation, Exercise Capacity and Physical Activity in Japanese COPD Patients - Full Text View - ClinicalTrials.gov

 

<リサーチクエスチョン>

黒字はアブストラクト記載分。赤字は本文より追加分。

 

P:40歳以上の日本人COPD患者184名。GOLDstageⅡ~Ⅳ期(中等~重症)。

 FEV1<80%、FEV1/FVC<70%、喫煙歴有りかつ10箱/年以上、MRC(息切れスケール)1点以上(1点=強い労作で息切れするレベル)6分間歩行テスト(6MWD)<400m

 

I:チオトロピウム2.5μg/オロダテロール2.5μg 1回2吸入、1日1回朝

 

C:チオトロピウム2.5μg 1回2吸入、1日1回朝

 

O:(プライマリ)6週間後の薬剤吸入1時間後のIC(最大吸気量)

  (セカンダリ)薬剤吸入30分後のFEV1(努力性肺活量で最初の1秒間で吐き出した量の割合)、薬剤吸入30分後のFVC(努力肺活量)、薬剤吸入1時間後のSVC(肺活量)、6MWD、1日の歩数、4METs以上の活動時間、3METs以上の活動時間、2METs以上の活動時間、平均運動量(3MET以上)

  (プロトコルにも事前登録にもないアウトカム)有害事象

 

※参考。MRCについて

http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/046080593j.pdf

 

⇒実際に集まった患者層は、男性89.7%、平均年齢72.8歳、平均BMI22.2、平均罹病期間5.49年

 

 

<批判的吟味>

 

ランダム化:コンピュータで発生させた乱数。ベーリンガー社管理。

 

盲検化:二者(被験者、研究者) 解析はベーリンガー社。

 

真のアウトカム:呼吸困難の改善なら真に近い気がするが、ICの改善の程度と呼吸困難の相関がわからない

 

アウトカムの数:プライマリは1つ(プロトコルや事前登録情報からの変更はない)

 

ITT:Fig1より脱落7名が解析に回っていないことからper protocolと思われる。

プロトコル論文ではFASで解析することになっている(追跡が90%を下回るとper protocolに変更する予定だったよう)

 

サンプルサイズ:0.1Lの差を90%で検出=180名

 

<結果>

有意差があった項目は赤字。後付け解析は青字で記載。

 

肺機能(Fig2)

 IC(プライマリエンドポイント)

   スピオルト1.990L vs スピリーバ1.875L  MD0.115L  95%CI:0.077~0.153

 FVC  3.020L vs 2.857L  MD0.163L  95%CI:0.130~0.197

 FEV1 1.275L vs 1.169L  MD0.105L  95%CI:0.088~0.123

 SVC 3.096L vs 2.962L  MD0.134L  95%CI:0.091~0.176

運動(Fig3)

 total 311.5m vs 307.4m MD4.2m 95%CI:-6.2~14.5

 以下、後付け解析

 ベースラインでGOLDⅢ~Ⅳ 301.5m vs 283.4m MD18.1m 95%CI:2.3~33.9

 6MWD完遂者 357.3m vs 346.6m MD10.7m 95%CI:4.2~17.3

活動量(Fig4):このFigは後付け解析

 2METs以上の活動(着衣8時間未満は除く)191.5min  vs  186.5min   MD5.0min 95%CI:0.39~9.69

 1日の歩数(着衣8時間未満は除く) 3871.1歩 vs 379.6歩 MD77.5歩 95%CI:-92.7~247.7

有害事象(Table2)

 全有害事象:37.8% vs 34.6%

supplementalへ追いやられたセカンダリアウトカム

 1日の歩数 MD9.5歩 95%CI:-155.7~174.7

 4METs以上の活動時間 MD-0.3min 95%CI:-1.2min~0.6min

 3METs以上の活動時間  MD0.9min 95%CI:-1.0min~2.9min

 2METs以上の活動時間  MD2.3min 95%CI:-3.0min~7.5min

 平均運動量       MD2.4min 95%CI:-4.6min~9.4min

 

⇒当初の予想通り、結果をよく見せるための粉飾が行われていた。(セカンダリで粉飾する意味が分からないのだけど)この辺りに安定と信頼のベーリンガー製臨床試験といった感じを受ける。

 粉飾の手口としては、「解析方法の変更」「後付けアウトカム」「有意差のないアウトカム隠し」。脱落が小さいのでFASで解析しても、プライマリエンドポイントに有意差がつきそうな気がするがどうだろう?

 とりあえず、結論は「スピオルトはスピリーバに比べて、呼吸は楽にするが身体活動性の改善まではもたらせない」だろうか。(元々の疾患の重症度の影響が大きそうだが)

 COPD臨床試験でよく見る「COPDの増悪」は、本研究では検討されていない。

これは、DYNAGITO試験で有意差が出なかったことによるものだろう。(疾患管理薬としてスピオルトはスピリーバを超えないと暗にメーカーが認めているということか)

 

臨床試験の粉飾を扱った論説といえば、本ブログではたびたび登場するコレ!

 医学書院/週刊医学界新聞(第3246号 2017年10月30日)

 奥村泰之先生、いい仕事をしてくださいましてありがとうございます。

 

 

 

 

第16回神戸薬科大学Student CASP ワークショップのお題論文を予習してみた

<はじめに>

 

 今回の記事は来る2018/6/3に神戸薬科大学で開催されるStudent CASP ワークショップのお題論文を予習し、その結果のメモ的記事になります。

 当日参加される方は、あくまで記事は僕個人の意見であり、この意見に引っ張られないようにご注意ください。

 「どうしても引っ張られちゃう」という方は、自己紹介中に「居酒屋抄読会、参加者募集!」と大きな声で言うようにしてください。

 そんな宣伝嫌!という方は、「おっぱい!」でも構いません。ミッションを達成することにより、僕の意見に引っ張られることはなくなるはずです。

 

<お題論文>

 

A Cluster-Randomized Trial of Blood-Pressure Reduction in Black Barbershops. - PubMed - NCBI

PMID: 29527973

この論文一言で言うと「散髪屋さんで薬剤師vs理容師で血圧管理のデキを比較してみた」ですね。

さっそく読んでいきましょう。

 

<リサーチクエスチョン>

 

研究仮説を確認しましょう。

アブストからの情報は黒字、本文からの追加情報は赤字で示します。

 

P:収縮期血圧140mmHg以上の非ヒスパニック系黒人男性。35~79歳。2回のスクリーニングで収縮期血圧140mmHg以上6ヶ月以上の期間に6週間に1回以上理髪店を利用する常連客

I(E):薬剤師介入(血圧測定。抗高血圧レジメンに沿った薬剤の処方。生活習慣指導。電解質レベルのモニタリング月1回面談。月4回電話相談。面談毎に受診・薬剤費として25ドルの支給

※抗高血圧レジメン:①アムロジピン+ACE阻害薬かARB→②インダパミドなどチアジド系利尿薬→③アルドステロン拮抗薬 (医師の指示があった場合は別のクラスの薬剤に変更可)

C:理容師による生活習慣改善指導(パンフレット渡す)。受診勧奨。

O:6ヶ月後の収縮期血圧

 

事前計画(NCT02321618)より変更有り。以下は元の情報。

P:40~79歳。黒人男性(非ヒスパニックの限定無し)。理髪店利用頻度は1年で8回。

O:収縮期血圧の8mmHg以上の改善。セカンダリは12か月後の収縮期血圧の6mmHg以上の改善。

なお、アウトカム(エンドポイントと同じ意味で両者をごちゃまぜで使っています)は全データの収集解析後の2018/2/7に行われている。

 

<批判的吟味>

 

盲検化:不可能

アウトカムの数は:1つ

真のアウトカム?:代用

サンプルサイズは?:6ヶ月で6.9mmHgの差を検出する参加者数として500人と見積もり(実際に参加したのは319人)

脱落:全体で5%

ITT解析?:どんな解析法だったか不明。ITTもおまけで使っている。

⇒ベースラインに大きな差は見られないが、介入群の方がより低所得者が多いように見える。

 

<結果>

 

プライマリエンドポイント(6か月後の収縮期血圧のベースラインからの変化)

介入-27.0±13.7vs対照-9.3±16.0 MD-21.6(-28.4~-14.7)

 

以下、セカンダリエンドポイント

拡張期血圧:介入-17.5±11.0vs対照-4.3±11.8 MD-14.9(-19.6~-10.3)

薬剤数:介入2.6±0.9vs対照1.4±1.4 MD1.9(1.3~2.4)

服用割合

ACEiもしくはARB:98.5%vs41.5% RR2.4(2.0~2.8)

CCB:94.7%vs32.7% RR3.0(2.4~3.6)

利尿薬:46.2%vs28.7% RR1.6(1.3~2.1)

アルドステロン拮抗薬:10.6%vs1.2% RR7.0(2.5~19.2)

有害事象は両群で差はなかった。

 

⇒薬剤師介入群の方がたくさん薬を服用し、血圧が下がったという結果。

介入の中でも25ドルの支給が一番効いたのでは?と思ってしまう。

(低所得層が多く、受診・服薬がままならないので)

 

ここまで差があると、元のプライマリエンドポイントでも有意差が出そうだが、解析後にプライマリエンドポイントを差し替え、セカンダリエンドポイントを多数追加している。より結果をよく見せるための印象操作?

(なお、消されたセカンダリエンドポイントは延長試験のプライマリエンドポイントとして復活している。)

 

あと結果の解釈と関係ないかもしれないが、研究協力がUniversity of California, San Francisco、Charles Drew University of Medicine and Science 、University of Southern California 、Kaiser PermanenteからNational Institutes of Health (NIH) 、National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI) 、The California Endowment 、Lincy Foundationと公的な機関に差し替えられている。なぜだろう?

 

 ただ、高血圧治療に最も抵抗性の高いと言われている黒人男性でここまでの降圧効果を示したのはすごいことなので、それが本論文の新規性といったところだろうか。

 注意が必要なのは、継続中の延長試験も含めて血圧という代用のアウトカムの評価だということ。心血管イベントを防いだわけではない。(黒人男性は血圧のコントロールが十分できず次々と心血管イベントを起こす層ではあるのだが)

 

 個人的な印象ではあるが、一番大事なのは自身の健康に気遣えるだけの最低限以上の収入ではないかと思う。(自分のスカスカな財布の中身を見ながら)

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑪~脳血管イベントの二次予防に対するスタチン間の効力の違い~

<お題論文>

Secondary prevention of major cerebrovascular events with seven different statins: a multi-treatment meta-analysis. - PubMed - NCBI

PMID: 28919704

 

<急ぐ人向け結論>

アトルバスタチンが良いとの結果だが、ネットワークメタ解析(NMA)の手法が雑で、結果としてとても使えたものではない。

というか、読むだけ時間の無駄。

 

薬剤師界のエビデンスマスターこと青島先生へ

これを読む時間を、金麦タイムか出張時にお泊り許可がもらえるように奥様に媚を売る時間にあててください。

 

<リサーチクエスチョン>

 

P:アテローム動脈硬化性心血管疾患の患者

 

I/C:lovastatin、アトルバスタチン(リピトール)、フルバスタチン(ローコール)、シンバスタチン(リポバス)、ピタバスタチン(リバロ)、プラバスタチン(メバロチン)、ロスバスタチン(クレストール)

 

O:主要脳血管イベント(致死性脳卒中、非致死性脳卒中TIA)

 

⇒実際に集まったのは、24.3%女性、143~319週の研究(4週以上が組み入れ条件)

Table1より、被験者は50代以上であることが分かる(5研究は年齢不明)

 

<システマティックレビュー(SR)の評価>

 

データベース: PubMed,、Embase、 Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane Central Register of Controlled Trials

 

検索語:各スタチンの成分名、心血管疾患、HMG-CoA還元酵素阻害薬

 

検索期間:2011.1.1~2016.6.30(2011年以前はSRの参考文献を利用)

 

元論文:RCT対象。文献の質を評価した形跡なし

 

評価者:2者独立でスクリーニング、研究の組み入れは第三者が独断で選択

 

出版:言語に関する制限の記載なし。参考文献は見ている。専門家連絡なし。funnnel plotなど報告バイアスの検討はしていない

 

異質性:事前登録なし。Pの近似性は年齢等不明項目あり疑問が残る。Oは問題なさそう

 

⇒SR部分にバイアスが入り過ぎである。

(まさかの設定したバイアス評価全項目フルコンプリートでバイアス有りとは)

特に評価者バイアスはキーワードだけを見ていると二者独立で評価し意見対立時は第三者が仲裁したように見せかけており悪質。

言語制限は有無しか想定していなかったが、今回初めて「確認できない」という事態に。

なお、年齢「NA」となっている文献㊾を確認するとTable1にロスバスタチン群60±11歳、アトルバスタチン群59±12歳との記載を見つけることができる。

Comparison of the efficacy of rosuvastatin versus atorvastatin in reducing apolipoprotein B/apolipoprotein A-1 ratio in patients with acute coronar... - PubMed - NCBI

著者は元論文を読んでおらず、当然の帰結として元論文の質の評価ができなかったようだ。

 

<ネットワークメタ解析(NMA)の評価>

 

ネットワーク図:プライマリアウトカムのものが一つだけ示されている

 

閉じた環:少数有

 

直接・間接比較:Table2と3が該当?わかりにくい

 

一致性:検討された形跡はないが、結果を見比べると一致していない

 

資金源、COIの開示:資金源は公開されていない

 

<結果>(Table3より)

 

有意差があったのは以下の二つ

アトルバスタチンvsロスバスタチン RR1.7(1.10~2.50)

アトルバスタチンvsコントロール RR1.5(1.10~1.90)

予防効果として見るようだが、結果の見方についての説明がない。

 

アブストラクトの結果にあったアトルバスタチンvsロスバスタチン RR0.6(0.40~0.92)に相当する結果が本文中に出てこない。

 

<結論>

 

読んでしまったアナタへ。

手遅れです。

 

最初に結論から読んで、途中過程をすっ飛ばしたアナタへ。

論文データを捨てましょう。

紙で印刷してしまったのなら丸めてゴミ箱へ投げ入れましょう。

 

<感想>

 

少し読めば「ヤバい」とわかる論文を掲載したDrug Design, Development and Therapy は科学雑誌として大丈夫なのだろうか?査読体制はどうなのかと思い調べてみると、査読者名が公開されており「Dr Akshita Wason」エディター「Dr Tuo Deng」という名前が確認できた。

このエディターは現在はアメリカで研究している中国人であり、著者が中国人であるので身びいきが働いたのではないかと邪推してしまった。

 

※注意!

エディターがPPARγの研究者なので、J-DOITがらみで門脇教授(PPARγ下流の物質、アディポネクチンの研究者)に良い感情を持っていないので、そうしたバイアスが記事全体にかかっていることにご注意ください。