日本のRCT報告の質は?(CONSORT声明順守率)
<はじめに>
RCTそのものの質を報告した貴重な研究を紹介しましたが、報告様式の質の研究(これまた貴重)がありますので、そちらも紹介したいと思います。
<お題論文>
PMID: 19252352
<読んでみた>
①RQ
P:2004.1~2004.3.31までに発表された日本のRCT
O:CONSORT声明の順守率+倫理的配慮+資金源
②方法
データベース:MEDLINE
検索期間:2004.1.1~2004.3.31
検索語:RCT、JAPAN
評価者:二者以上独立→協議
出版:英語
③結果
Table1(背景):国内誌36%、専門誌98%、CONSORT声明採用誌11%、構造化抄録68%、サンプルサイズ50未満50%、並行群間試験92%
Table2(各項目の順守率)
・タイトルでRCTとわかる:81%
・イントロで研究背景説明してる:70%
・組み入れ基準がある:71%
・データ収集の場:46%
・介入の内容:93%
・目的もしくは仮説:94%
・アウトカムの定義:26%
・サンプルサイズの計算:23%
・打ち切り基準:7%
・ランダム割り付けシーケンス(乱数表)の発生方法:39%
・ランダム化の制限:21%
・隠蔽化:17%
・乱数表の作成者:15%
・誰が盲検化されているか:29%
・盲検化は維持されているか:0%
・プライマリアウトカムの統計処理:100%
・サブグループ解析の解析方法:11%
・被験者の流れを文章でしめしたか:30%
・被験者の流れを図でしめしたか:6%
・プロトコル違反と理由:45%
・募集とフォローアップ期間:8%
・ベースラインデータを示したか:91%
・解析にまわった数(ITT):53%
・結果の効果推定値と精度:8%
・サブグループ解析:3%
・有害事象の報告:54%
・結果の解釈:52%
・外的妥当性:61%
・これまでの研究との比較:98%
Table3(倫理、資金源)
・倫理委員会:82%
・インフォームドコンセント:91%
・資金源:20%
<まとめ>
2004年の日本のRCTの報告様式はこんな感じだったという貴重な報告でした。
論文では、CONSORT声明採択誌とそれ以外で結果を示しているのですが、入力の都合で全体の値のみを示しています。
単年の研究では「まあ当時はこんなもんか」くらいしか感想が出てきません。経年での変化が知りたいところです。
中国ではこうした質の研究も盛んにおこなわれていますが(論文発表×IFでボーナス出るとか聞いたけど真偽不明)、日本での質評価も見たい今日この頃。
コリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンの認知症(アルツハイマー型に限らず)への効果は?
<はじめに>
記事として書こうと読んでいたら、思わぬところで躓いてほったらかしになっていた論文になります。
来る2/24の岡山CASPワークショップのお題論文になっていたので慌てて書くことにしました。
<お題論文>
PMID: 29734182
事前登録
https://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.php?ID=CRD42015025892
<読んでみた>
①RQ
P:認知症 ⇒Alzheimer disease (AD), vascular dementia (VaD), Parkinson disease dementia (PDD), dementia with Lewy bodies (DLB), frontotemporal dementia (FTD)
I:コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)、メマンチン
C:プラセボ
O:MMSE
②方法
データベース:Web of Science、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHL
検索期間:~2017.3
検索語:donepezil、galantamine、rivastigmine、memantine、Alzheimer*、vascular dement*、lewy* bod*、Parkinson* disease dement*、RCT
元論文:RCT Cochrane risk of bias toolで評価(low risk 14/80、unclear 21/80、high risk21/80)
評価者:二者独立(直接的な記載ないが)→協議
出版:英語のみ、参考文献・未出版→ICTRPなどを検索している、専門家連絡は記載なし、Fig3のFunnnel plotを見ると出版バイアスはありそう
③結果(80研究、88報)
Table1(集まった研究)
ドネペジル40件、ガランタミン13件、リバスチグミン14件、メマンチン13件
AD55件、VaD9件、AD+VaD4件、PDD or DLB10件、FTD3件
コリンエステラーゼ阻害薬:73.8歳 MMSE18.6、メマンチン75.9歳 MMSE16.5
※以下からMMSEの平均変化量(MD)+95%CIで表記。すべてRandom-effect model
Fig2(コリンエステラーゼ阻害薬、3か月)
ドネペジル3~5mg:1.15(0.69~1.61) I2=85.0%
ドネペジル10mg:1.07(0.91~1.23) I2=0%
ガランタミン:1.10(0.83~1.36) I2=75.1%
リバスチグミン:0.98(0.82~1.63) I2=68.4%
コリンエステラーゼ阻害薬計:1.08(0.92~1.23) I2=82.4%(2/24追記:本文では68.2%)
Fig4(コリンエステラーゼ阻害薬、6か月)
ドネペジル5mg:1.52(0.74~2.30) I2=89.8%←効果推定値0.47~1.44で収束していない
ドネペジル10mg:1.13(0.94~1.33) I2=0%
ガランタミン:1.39(0.79~2.00) I2=93.8%
リバスチグミン:0.69(0.43~0.95) I2=59.1%
コリンエステラーゼ阻害薬計: 1.00(0.83~1.16)I2=69.9%
※ドネペジル5mgのsubtotalの値が収束しておらず、フォレストプロットを見ても視覚的にもおかしくなっている。
2/9にAHEADMAP幹事の岡本先生に相談したところ、結婚式4次会(カラオケ)返上で精読していただけた。結果、ドネペジル5mgと10mgのsubtotalの値が入れ替わっているのではないかとのご指摘をいただいた。岡本先生、ありがとうございます。
2/24追記:南郷先生より入れ替わっているというより謎操作で効果推定値が高く見積もられたのではないかとのご指摘をいただきました。
RevManで色々再現できないか試しては見たものの結局何が起こって変なことになっているのかわかりませんでした。
Fig5(コリンエステラーゼ阻害薬、12か月、試験数が少なすぎてI2表示できず)
ドネペジル10mg: 1.52(0.38~2.66)
ガランタミン:0.58(0.27~0.90)
リバスチグミン: 1.40(1.12~1.68)
コリンエステラーゼ阻害薬計:1.10(0.48~1.72) I2=79%
Fig6(メマンチン)
3か月: 0.65(0.37~0.94)I2=0%
6か月: 0.40(0.05~0.75)I2=19.7%
12か月: 0.41(-0.44~1.26)I2=0%
2/24追記:フォレストプロットで同一研究でいくつも箱ひげが描かれている。どうやら同一試験内の用量違いを別個にプロットしたようだ。ただ、Fig2ではひげの書き忘れも見られる。
<まとめ>
平均してMMSEで1点前後の改善となったが、このくらいの変化では多くの人で効果を実感できないだろう。
使ってみて効果(介護者の介護負担感の軽減など)を感じたら継続、効果が見られなければ他剤へ変更・中止といったところが現実的だろうか。(薬剤服用=治療と考える人が少なくないので、配慮のない中止は危険だが)
もちろんコリンエステラーゼ阻害薬もメマンチンも「見かけの」認知症進行抑制効果しか持たないので、こういった薬剤を「認知症治療薬」と呼ぶのには個人的に違和感があるのだが。
この研究は認知症の種類を問わずに統合してしまっているので、薬剤効果の出にくいタイプの認知症と出やすい認知症での効果をごちゃまぜにしていることにも気を付けたい。
2/24追記:CASPワークショップでは本研究に対して「雑な仕事」ということで参加者間の評価は一致した。
2019.2.17(日)、兵庫医療大学 Student CASPに参加してきました
<はじめに>
去る2/17に兵庫医療大学にて開催されたStudent CASP Workshopに参加してきましたので報告します。
<お題論文>
PMID: 30424892
<批判的吟味>
・研究課題
P:2型糖尿病
I:SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン)
C:プラセボ
O:(有効性)3P-MACE(心筋梗塞、脳卒中、または心血管死)、心血管死+心不全による入院、腎疾患の進行
(安全性)下肢切断、骨折、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
・方法(メガトライアルのメタ解析なのでSRの評価が当てはまるのか不明だが)
データベース:MEDLINE、EMBASE
検索語:2型糖尿病、3P-MACE、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、ertugliflozin)
※ertugliflozinはFDAが承認した4剤目のSGLT2阻害薬(日本未発売)
STEGLATRO™ (ertugliflozin) | Official Site
検索期間:~2018.9.24
元論文:RCT(CANVAS Program、EMPA-REG OUTCOME、DECLARE-TIMI58)、risk of biasはすべてlow
個々の論文の記事は以下のリンクよりどうぞ(CANVAS Program記事にしてなかったっけ?)
EMPA-REG OUTCOMEは以下のリンクになります
評価者:二者独立→協議
出版:英語のみ 参考文献などは不要(もともとSGLT2阻害薬の3つのメガトライアルのメタ解析が目的であったため)
・結果(統合はすべてfix-effect modelで行われている+統合された総計がすべて本文から除外されている)
FigS2(3P-MACE) HR0.89 95%CI(0.83~0.96) I2=0%
FigS9(心血管死+入院) HR0.77 95%CI(0.71~0.84) I2=50.7%(エンパが外れ値)
FigS17(腎) HR0.55 95%CI(0.48~0.64) I2=0%
FigS18(下肢切断) HR1.26 95%CI(1.06~1.51) I2=79.1%(カナが外れ値)
FigS19(骨折) HR1.11 95%CI(1.00~1.23) I2=78.2%(カナが外れ値)
FigS20(DKA) HR2.20 95%CI(1.25~3.87) I2=0%
<まとめ>
TIMIグループによるSR&MA。(DECLARE-TIMI58の結果が出た時点でMAする予定だったとの記載あり。また、PRISMAチャートでDECLARE-TIMI58が検索によらず解析にねじ込まれていることからもDECLARE-TIMI58のためのMAであることがわかる)
ダパグリフロジンがプラセボに対し有意に心血管イベントを減らせなかったため、他のSGLT2阻害薬とMAすることでクラスエフェクトを謳いに出た敗者復活戦のような研究といったところだろうか?
脱水や感染症(尿路感染)がアウトカムに加えられていないのが気になる。また、異質性が高いアウトカムまでfix-effect modelで処理するべきではないと思う。結果として有効性でも安全性でもrandom-eefect modelなら有意差が消えそうなのもがちらほら。
日本のRCTの質はどの程度か?(2010年での評価)
<はじめに>
前回記事で日本のRCTの質はどうなっているのか?という疑問がわいたので、日本で行われたRCTの質を評価した論文を読んでみることにしました。
(参考:前回記事)
<お題論文>
Are Japanese randomized controlled trials up to the task? A systematic review. - PubMed - NCBI
PMID: 24595104
<読んでみた>
①リサーチクエスチョン
P:日本のRCT(2010年に報告されたもの)→うち60%をランダムに抽出
E/C:(該当なし)
O:コクランrisk of bias tool(2009)で評価
②方法
データベース:MEDLINE、EMBASE、CINAHL、PsycINFO、医中誌
検索期間:2010.1.1~201012.31
検索語:blind,placebo,RCT,randamization,Japanなど
元論文:RCTYのみ
評価者:二者独立→協議
出版:英語、日本語
③結果
・集まった論文(1013報)の内訳
疾患 ⇒循環器15.9%、消化器11.5%、内分泌代謝11.2%、筋骨格系9.8%…
介入の種類 ⇒薬物49.9%、理学療法10.5%、デバイス8.5%…
比較対象 ⇒head-to-head45.0%、placebo38.9%…
デザイン ⇒並行群間75.2%、クロスオーバー20.2%…
アームの数 ⇒2群77.1%、3群15.7%…
サンプルサイズ⇒50未満54.5%、50~99 19.6%、100~199 12.9%…
・質の評価(出来ている vs 不明 vs 出来ていない)
※数字で示されていないので表からおおよその数値を読み取っています、注意!
ランダム化できてるか?:30%、70%、0%
隠蔽はできているか?:20%、75%、5%
患者をブラインドしたか?:50%、35%、15%
医療者をブラインドしたか?:45%、40%、15%
アウトカム評価者をブラインドしたか?:15%、80%、5%
脱落率の報告はしたか?:70%、15%、15%
割り付けられた患者はアウトカム評価にまわされた?:45%、30%、25%
アウトカムはすべて報告したか?:5%、95%、0%
ベースラインは均等か?:65%、30%、5%
介入以外の処置は等しいか?:55%、35%、10%
コンプライアンスは許容される範囲か?:45%、50%、5%
アウトカムの評価時期は両群で近しいか?:95%、3%、2%
・発表されたジャーナルと質(high quality)
国際誌50.5%、国内誌(事前登録あり)50%、国内誌(事前登録なし)37.7%
<まとめと感想>
ディオバン事件後に行われたディオバン事件頃のRCTの質を報告した貴重な論文。
個人的にはCOIや資金源に関する調査もわかりやすい形で示してしてほしかった。(ディスカッションの項目で80%が非開示との記載あり)
著者らは日本のRCTの特徴としてサンプルサイズの小ささをあげている。個人的には研究資金の少なさの表現型だと思っている。ディオバン事件後、メーカーからの資金提供は難しくなっており、現在同じ調査をするともっとサンプルサイズの小型化が進んでいるのではないだろうか?
あと、大きな破綻は見られないが「不明」がやたら多いような気がする。
単年の評価ではなく複数年にわたる比較調査は欲しい。(だれか一緒にやりませんか?)
今回の論文に関連した「抄録から質を予測する」論文をエビデンス展覧会(エビテン)で取り扱いましたので、よろしければご覧ください。
日本人慢性便秘症患者に対するラクツロースの効果(ラグノスゼリー第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験)
<はじめに>
「ラクツロースって便秘にどれくらい効くの?」と看護師さんに聞かれたので調べてみました。
<今回の論文など>
・論文(全文フリーと書いてはないですがフリーで読めます)
PMID: 30643982
・事前登録情報
https://www.clinicaltrials.jp/cti-user/trial/ShowDirect.jsp?clinicalTrialId=11366
(あまり記載がなく開く価値はないと思われるが念のため)
・審査報告書
http://www.pmda.go.jp/drugs/2018/P20180921001/300297000_23000AMX00798_A100_1.pdf
(8ページからのLB1001試験が今回のお題論文の研究です。論文読むよりこちらを読むほうがおすすめ)
<読んでみる>
P:慢性便秘症の20~75歳の日本人患者。IBSは除外。
I/C:SK-1202(ラクツロースゼリーの成分量)13g、26g、39g、プラセボ 1日2回朝夕
O:(主)投与1週目での自発排便回数
(副)投与2週目での自発排便回数、
投与24・48時間で自発排便のあった患者の割合、
最初の自発排便までの時間、ブリストル便性状スケールの変化、
日本版IBS-QOLスコア、有害事象、バイタルサイン、12誘導心電図、検査値
(審査報告書、有効性評価項目より)
ランダム化:「randomized」の記載があるが詳細な方法は不明。
ブラインド:「double-blind」とあるので被験者・担当医は盲検化されているが、
他の担当者がどうだったかは不明。
施行バイアス:プロトコルが公開されていないので確認不能だが、
頓服使用時使用した下剤を記録することは決められているよう。
(頓服服用後24時間の排便は自発排便に含まないとの記載あり)
解析法:FAS
サンプルサイズ:各群62名
追跡率:99.2%
患者背景:39.4~43.1歳、女性77.8~87.1%、BMI20.94~21.99
(便秘の期間とSK-1202の投与量の反比例が実薬高用量有利になりそう)
結果(主):(審査報告書より。各群の記載が製品量になっているので注意)
※論文には棒グラフで変化量のみが示されており、投与1週後の自発排便の回数などは記載されていない
※※製品1回12gが成分6.5gなので1日24gが成分13gになる
結果(副):(プラセボ、13g、26g、39gの順で記載)
投与2週目での自発排便(回/週):1.99、2.29、3.22、3.97
自発排便患者の割合(24時間):35.5%、47.6%、65.1%、67.7%
自発排便患者の割合(48時間):62.9%、73.0%、82.5%、85.5%
最初の自発排便までの時間:27.98 h (95% CI 24.33–48.00) 、24.50 h (95%CI 14.33–27.77)、10.00 h (95% CI 6.08–17.00)、 10.33 h (95% CI 5.45–22.58)
有害事象
<まとめ>
「RESULTS:The 26 and 39 g/day of SK-1202 induced significantly and dose-dependently more increase in SBM at Week 1 than placebo (p = 0.003, p < 0.001).」
と実際の変化量の記載がなく、本文中にも主要評価項目そのものである投与1週目での自発排便回数が記載されていないなど、とても2019年に発表された論文とは思えない記載の寂しさ。
とりあえず26g群と39g群がプラセボに有意差をつけて自発排便を増やしているので、無事承認されました。週2~3回排便回数を増やすという結果でした。
この論文を読んで、「中国のRCTの質の研究は多数あるけど、日本のRCTの質はどうなんだろう?ディオバン事件の後にあれこれ変化はあったけど質はよくなったんだろうか?」という疑問がわいたため調べた結果を「エビテン」のネタにしました!
中国のように活発に質の評価は行われていないようで、新しいもので2010年という(;^ω^)
COPD治療で死亡率を減らせる治療は?→この研究ではインダカテロールだったが、根拠は弱そう
<はじめに>
明日(2019.1.27)にJJCLIPが開催されます。
お題がネットワークメタ解析なので、いい加減チェックシートを改訂しようと思ったため、本記事の作成に至りました。
改訂版チェックシート:Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver8.pdf
JJCLIPのお題論文、シナリオ、視聴サイトについては以下のリンクよりどうぞ。
なお、お題論文は本ブログで記事にした以下の論文です。
<お題論文>
PMID: 26559138
<読んでみた>
①妥当性の評価
P:COPD患者
I/C:14種の治療
→チオトロピウム、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、トリアムシノロン、bambuterol、ホルモテロール、サルメテロール、サルブタモール、インダカテロール、テオフィリン、roflumilast、インダカテロールマレイン酸塩、イプラトロピウム臭化物、ビランテロールトリフェニル酢酸塩、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、プラセボ、上記の組み合わせ
インダカテロールとインダカテロールマレイン酸塩の違いが判りません(´;ω;`)
O:全死亡
集まった研究:イプラトロピウムの研究のみ40歳前後、他は60歳強。用法用量に制限なし。
②SR
・データベース:EMBASE(1988~)、CENTRAL(1898~)、MEDLINE(1946~)、MEDLINE In-Progress(1946~)
・検索期間:~2012.10
・検索語:記載なし(リストとして提示されていない)
・元論文バイアス:無
RCTを集めており、risk of bias toolで評価した結果がTableS2に示されている。Zheng 2007とZhong 2012がIncomplete outcome dataでハイリスク評価になった以外は概ねlow risk
・評価者バイアス:有
独立して評価した旨の記載がない。当然意見対立時の解決法も記載がない。
・出版バイアス:不明
探した研究は英語のみ。参考文献など探したという記載はない。
・異質性バイアス:不明
本研究の事前登録はない。アウトカムは死亡であるため、統合は可能。
③NMA
・ネットワーク図:有(Fig.2)
・閉じた環:少数有
・比較ごとの研究数やサンプルサイズ:少ない(チオトロピウムのみ多い)
・直接比較と間接比較を分けて記載:無
・一致性:不明
・資金源の開示:有(GSK)
・COIの開示:有(著者の一人はGSK社員)
④結果
Fig.3(random effects modelより)
インダカテロール HR0.29 95%CI:0.08~0.89
他に有意差はない(チオトロピウム合剤系の死亡増加傾向が気になる)
多くの研究でエラーバーが大きく精度不足は否めない(要はまだまだ研究する必要がありそうだし、研究が増えれば結果が変わる可能性は十分にある)
UPLIFTのような何度も死亡のアウトカムを検証している試験では、どのアウトカムを採用したかで結果が変わりそうですが、表を見る限り、1470日(試験終了30日後)「941 patients died: 14.9% in the tiotropium group and 16.5% in the placebo group (hazard ratio, 0.89; 95% CI, 0.79 to 1.02)」の死亡に有意差が消えた時点のものを採用しているようです。
<まとめ>
久々に改訂しましたが、まだまだ完成には遠そうです(´;ω;`)
(NMAの世界にもGRADEでの評価の流れが来ているので。当然ですが)
Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver8.pdf
チェックシートともども本ブログを温かく見守っていただけると幸いです。
第9回CASPワークショップ広島(2019年1月20日開催)に参加してきました
<はじめに>
山陰地方から中国山地を超えて毎月抄読会を開催しておられるEBM界の猛者、平社員 (@T462759) | Twitter先生が恩師の先生を招待して開催されたEBMワークショップに参加してきましたので、本記事は参加報告になります。
<お題論文など>
・研究特設サイト
・お題論文
PMID: 30466866
・事前登録情報
・プロトコル論文
https://njl-admin.nihr.ac.uk/document/download/2013072(2014.8改訂版)
https://www.journalslibrary.nihr.ac.uk/programmes/eme/0910025/#/より
<批判的吟味>
今回はCASPのワークシートに沿って読んでいきます。
・論文の課題
P:大腸内視鏡検査でハイリスクとされた55~73歳の英国人709名
(ハイリスクの定義(ポリープの大きさと数):10㎜以上を1個を含む3個以上か10㎜未満5個以上)
E/C: | アスピリン | non-アスピリン |
EPA | EPA2g/day+アスピリン300mg/day | EPA2g/day+アスピリンプラセボ |
non-EPA | EPAプラセボ+アスピリン300mg/day | EPAプラセボ+アスピリンプラセボ |
※EPAはEPA-FFA1日1回からEPA-TG1日2回に変更になっている。
EPA-FFAを提供していたメーカー(Specialist in Gastrointestinal Medicines > SLA Pharma AG)が製造を止めたため
O:(主)腺腫の検出率(ADR)
(副)腺腫の数、進行した腺腫の検出率・発生数、鋸歯状腺腫の検出率・発生数、腺腫の見つかった領域、高リスクから中等度リスクへの改善、大腸がん、赤血球と直腸のEPA・DHA・AA濃度とEPA/AA比(ベースライン、6ヶ月、12ヶ月)、魚介類の摂取量、有害事象(特に出血)
T:1年
・割り付け
ウェブベース(=中央割り付け)、「using random permuted blocks of randomly varying size. 」とあるのでブロックサイズがランダムに変わるランダム割り付けだとわかる
・目隠し
参加者、研究スタッフ。
本文中にはないがプロトコルでは「調査者」、「アウトカム評価者」も盲検化されている
・解析
ITT
(本文中にみられるのは 「Per-protocol analysis」だが、「Primary and secondary outcomes were analysed according to allocation, regardless of compliance with treatment, for all participants who were randomly assigned and who had observed follow-up data」という文章からITT(FASかも?)と読み取らないといけないらしい。
プロトコルでは「ITT」となっていた。
・施行バイアス
TableS2で見られる。本文中に記載はないがプロトコル上、禁止されていた薬物は除外基準と同じNSAID、魚油サプリ、メトトレキサート。
見た限り気になるような偏りは見られない。
・サンプルサイズ
768(登録情報755、プロトコル論文904) 数字が一致しないが、どのみち不足している。
⇒サンプルサイズの不足以外は目立った問題はなさそう
<結果>
ADR:プラセボ61%、EPA63%、アスピリン61%、アスピリン+EPA61%
EPA vs non-EPA RR0.98 95%CI:0.87~1.12
アスピリン vs non-アスピリン RR0.99 95%CI:0.87~1.12
有害事象は下痢主体
<まとめ>
見事に主要評価項目に差は見られなかった。会場で上がった声としては「試験期間が短すぎたのでは?」ということ。
サンプルサイズの計算の根拠に用いられたアスピリンの試験は5年のRCT終了後20年追跡したもの。
しかし、内視鏡検査ができずアウトカムの評価ができなかった症例が66名(約9.3%)。試験期間を延ばせばこうした評価不能例や脱落でもっと多くのサンプルサイズが要求されたのではないかと思われる。(本試験は必要数集められなかったので、これ以上の募集は困難だったのではないだろうか)
のぶのぶEBM (@nobukin55) | Twitter(平社員先生の師匠)の解説「検出数は下がっており(アスピリンで0.78、95%CI:0.68~0.90)、介入の有効性は期待できる」だろうとのこと。
<おしらせ>
2019年2月開催のワークショップです。
(ともにシステマティックレビューがお題です)
ご都合のつく方は是非ふるってご参加ください!
(ちなみに、僕はただの参加者です)
2月17日 第4回兵庫医療大学Student CASP Workshop