先週、費用対効果の論文を読むワークショップに参加しました
久々の更新です。
本当はワークショップの翌日には書きたかったのですが、やる気が(´;ω;`)
胃痛を抱えながら仕事行って、帰ったら生気失ってますので。
言い訳はこれくらいにして、早速ワークショップの感想と論文の振り返りをば。
前半、午前の部は検索。
要は、PubMedを使いこなしましょう。(最近ではPubMed検索することを「パブる」っていうらしいですよ)
こんな機能ありますよっていうものですが、わたくし使いこなせていないことを気づかされました。
せっかくなので、サインインして機能を活用しましょう!
そういえば、検索ワークショップでクリニカルクエリって紹介されないけど、使わないのかな?(取りこぼしがあるので、僕自身最近の使用頻度は減ってるけど)
午後はいよいよ、費用対効果の論文を読む日本初(おそらく)のワークショップ!
予習してもさっぱりなんのこっちゃって感じですし、ワークショップで配布されたチェックリストもβ版って感じです。まだまだ、読みなれた人がいないタイプの研究ですが、医療費のことを考えるなら知っておいた方がよいタイプの研究だと思います。
CASPのチェックリストを無許可でさらすわけにはいかないので、今回の記事はCHEERS声明のチェックリストを使用して読んでいきたいと思います。
https://www.niph.go.jp/journal/data/62-6/201362060009.pdf
上記に示したpdfは日本語で、各項目の解説も載っていますので是非ご覧になってください。
なお、お題論文はコチラ(無料で全文読めますので、是非記事を見ながら、論文を読んでみてください)
新生児聴覚スクリーニング検査を全国に拡大した中国で、費用対効果を報告した論文になります。(日本での検査の実施率はおよそ80%だそうです)
血液検査のは知っていましたが、聴覚検査ってあるんですね。
早くに難聴に介入してあげないと、言語の獲得に多大な影響が出るとか。
検査なしで発覚するのが2歳前後。言語の発達の遅れで気づくのだとか。
チェックリストに沿って読んでいきます
①タイトルは経済評価研究であることを明らかにしているか?
→〇 タイトルにズバリ「Cost-effectiveness analysis」と記載されている。
*「cost benefit」もあって、「Cost-effectiveness analysis」とは別の研究になるとのこと
②と③は抄録と背景の書き方なので省略。
④対象集団は?
→MethodsのData Collectionより北京、山東省、河北省、河南省、江西省、広西チワン族自治区を代表としてサンプリングしている。
⑤介入の状況と場所
→AbstractのBackgroundより、中国全土の病院
⑥研究の立場
(患者個人やその家族、医療機関、医療保険の支払者、政策決定者など立場によって計算すべきコストが変わってくる)
→Introductionの最後の辺りにnational and provincial policy makers(国と地方の政策決定者)と記載あり
⑦比較対照
→ Otoacoustic Emission (OAE) and Automated Auditory Brainstem Response (AABR)を、全新生児対象かハイリスク児対象か、スクリーニングなしかで分けている。スクリーニング方法についてはOAEのみか両方かで分けている。
⑧分析期間
→不明。介入は生後2~7日、介入は12ケ月。分析期間はどこを指すのかわからないし、論文中に明確な記載はない。
⑨割引率
良い結果は早期に得られるほど価値が高い(遅くに得られるほど価値が下がる)ことを軸に、各研究国ごとの経済状況を踏まえ、遅くに出た良い結果の価値を下げて(割り引いて)評価する。その際の価値の減衰の程度。
→MethodsのCost estimatesより年間3%
⑩アウトカムの指標
→DALYs averted(不利益の回避、QOLYの逆)、平均費用対効果比(ACER。総費用と総健康影響を合計)、増分費用対効果比(ICER。各介入ごとの効果と費用の増分)で示されている。
⑪効果の測定(推計に用いたデータ)
→table1に示されている。診断率、介入率など下3項目は明確なデータがなく、この部分は感度分析(システマティックレビューの感度分析とは違うので注意)の対象になっている。また、介入の効果についての根拠の提示はない。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3547019/table/pone-0051990-t001/
⑫は省略(今回の論文は対象ではない?)
⑬資源の消費と費用の推計
→MethodsのCost estimates。割引率の後に記載がある。
⑭通貨(研究時点ごとでお金の価値は異なる。特にドル換算で表現している場合、為替レートがないと、実際に見積もられた費用がわからなくなる)
→記載なし
⑮モデルの選択(戦略の概略を示す。アウトカムの発生が1回だけの場合に用いる決定樹モデルと、アウトカムの発生が複数回発生する場合に用いるマルコフモデルがある)
→図1より決定樹モデル。(決断節が左端で切れていて図示されていない)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3547019/figure/pone-0051990-g001/
⑯~⑱は省略(⑪で一緒に示されている)
お待たせしました
ここから、やっと結果(;´・ω・)
⑲増分費用
→table3の右端列がICER。見やすい結果はFig2。(リファレンスの線より下がコスパに優れている)
コスパに優れるのは対象をハイリスク児に絞ったスクリーニングだった。
⑳不確実性
→⑪で不確実だったデータの値を想定される範囲で変動させて結果に違いがないか見ている。Fig4はACER、Fig5はICER。
fig3は支払限度額を変動させてみたもの。50million $を超えると、ハイリスク児に絞るより全対象のスクリーニングの方がよいという結果に変わる。
以降の項目は省略。(資金源以外は、読んでいくうえで時間だけかかるので。なお資金源は国家予算、第11次5カ年計画の主要技術研究開発計画より拠出)
費用対効果の研究は、これまでの研究の上積みによってできるものなので、先行研究の質が問われますが、なかなか吟味が難しい。気を付けるべき点もこれで良いのか?という疑問ばかり頭をよぎります。もうこのあたりは、数を読んで慣れていくしかないでしょう。
医療費削減の中でポリファーマシーが流行し、問題の本質である「ポリファーマシーは状態であって、そこの善悪はない。善悪で判断すべきは不適切か否か」が見落とされているような気がします。
このタイプの研究は日本でも盛んになっていくとは思いますが、(厚労省も医療技術評価「HTA」として注目しているよう)コストパフォーマンスしか見れないなんてことにならないよう気を付けて学んでいきたいものです。