窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

7月29日土曜日に居酒屋抄読会の為の周辺情報

 7月29日土曜日居酒屋抄読会にむけて、関節痛に対するコンドロイチンやグルコサミンの効果を検討した臨床試験などを紹介していきたいと思います。

 

 グルコサミンやコンドロイチンといえばCMでも流れているので、健康食品のイメージが強いのではないでしょうか?

こうした健康食品で信頼できる情報はどうやって手に入れてますか?

検索エンジンで単純に「グルコサミン」とか「コンドロイチン」って入力していませんか?追加で入力してもせいぜい「効果」くらいでしょうか?

臨床試験」ってそれっぽい単語を入力しても、大半が『臨床試験で効果がみられました!』なんて引用文献の一つも明示していない怪しげなサイトしか引っかかりません。

 

 こうした健康食品を調べる際、個人的にお勧めしているのは以下のサイトになります。

hfnet.nih.go.jp

 

 検索の最中に面白い文書を見つけたので貼っておきます。日本語で読みやすいと思いますので、以下の文書を読むよりラクチンだと思いますので、お疲れの方は以下のリンクからどうぞ!

http://pha.jp/shin-yakugaku/doc/43_3_44-48.pdf

 

 関節炎に関しては、すでに多くの臨床試験が行われているため多くの論文が発表されています。多くの研究結果があるということは、メタ解析(複数の研究を統合して解析する手法)の論文の存在が期待されます。はい、もちろんありました!メタ解析の論文を期待するなら、できれば手法的に信頼度の高いコクランレビューの論文がないか確認したいところ!モチロン、見つけましたよ!(コンドロイチンの論文、全文フリーでございます)

 Chondroitin for osteoarthritis. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jan 28;1:CD005614. doi: 10.1002/14651858.CD005614.pub2.

PMID: 25629804 

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD005614.pub2/full

P:いずれかの関節に変形性関節症を患っている成人

E:コンドロイチン

C:プラセボ、NSAIDs、オピオイド、グルコサミンなど

O:(有効性)

  ・疼痛スコア(0~100):コンドロイチン群で10% 低下 (95% confidence interval (CI), 15% to 6% lower; number needed to treat (NNT) = 5 (95% CI, 3 to 8; n = 8 trials )

(T2 = 0.07; I2 = 70%) (level of evidence, low; risk of bias, high)

  ・WOMAC MCII Pain subscale(疼痛、硬直および機能の自己評価):コンドロイチン群で6% 低下(95% CI 1% to 11%), (RR 1.12, 95% CI 1.01 to 1.24; T2 = 0.00; I2 = 0%) (n = 2 trials, 1253 participants; level of evidence, high; risk of bias, low).

   ・ Lequesne's index (composite of pain,function and disability):コンドロイチン群で8% 低下 (95% CI 12% to 5% lower; T2= 0.78; n = 7 trials) (level of evidence, moderate; risk of bias, unclear

 (安全性)

  ・有害事象:Peto odds ratio of 0.40 (95% CI 0.19 to 0.82; n = 6 trials) (level of evidence, moderate)

〈評価と感想〉

 コンドロイチンを使うと有効であるばかりか有害事象まで減るというコクランからの報告。(2013.11までの結果。RCTのシステマティックレビュー)メタ解析としてはこの報告が新しい部類に入る。コクランだけにシステマティックレビューやメタ解析の手法などに特段の問題はないように見える。しかしFunnel plotでは、コンドロイチンに不利な報告は欠落しているように見える。また統合における異質性も高く、結果の精確さには欠いていると言わざるを得ない。

 

 ここからはコクランの報告が2013年までの研究を集めたものなので、それ以降のものをいくつか紹介します。

 Prevention of Knee Osteoarthritis in Overweight Females: The First Preventive Randomized Controlled Trial in Osteoarthritis AJM August 2015Volume 128, Issue 8, Pages 888–895.e4

http://www.amjmed.com/article/S0002-9343(15)00244-2/abstract

 太った(BMI27以上)50~60歳女性に減量(ダイエットとエクササイズ)、グルコサミン投与の二つの介入比較し、2.5年後の変形性関節症の発症を検討したRCT。(Proof study)以下に示すように予防効果は見られなかった。

 DEP control/glucosamine群(n=204) 発症率13% オッズ比(未調整)0.610 95%CI 0.328-1.135 オッズ比(ベースラインのKellgren & Lawrence gradeで調整)0.591 95%CI 0.313-1.118
 DEP intervention/glucosamine (n=204) 発症率20% オッズ比(未調整)1.010 95%CI 0.579-1.763  オッズ比(調整)0.972 95%CI 0.553-1.710

 

 Combined chondroitin sulfate and glucosamine for painful knee osteoarthritis: a multicentre, randomised, double-blind, non-inferiority trial versus celecoxib.

PMID: 25589511  Ann Rheum Dis. 2016 Jan;75(1):37-44

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25589511

 重度の痛みのある変形性膝関節症患者にグルコサミン500mg+コンドロイチン400mgとセレコキシブ200mgを6か月間で比較した非劣性試験。WOMAC(0~500点で評価)のベースラインからの変化量の差(マージンは-40)で見た結果、非劣性が示された試験。といっても、頓用で1日3gのアセトアミノフェンの服用が認められており、最初の1か月は介入群で服用が多かったとの記載がある。

 

 Effectiveness and safety of Glucosamine, chondroitin, the two in combination, or celecoxib in the treatment of osteoarthritis of the knee.

PMID: 26576862 Sci Rep. 2015 Nov 18;5:16827

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26576862

 変形性膝関節症に対する、コンドロイチン、グルコサミン、グルコサミン+コンドロイチン、セレコキシブの有効性と安全性を比較したネットワーク・メタ解析。

An external file that holds a picture, illustration, etc.
Object name is srep16827-t1.jpg

上記はFig1であり、白色の部分が疼痛への効果で、灰色の部分が機能を評価したもの。有意差は出ているが、臨床的な有効性については変化量の小ささからすべての介入で疑問が残る。

 

 どれも調べた限り経口投与のグルコサミンやコンドロイチンが「無効」とした報告はないが、疼痛時の対策として痛み止めが使用されており、純粋なグルコサミンやコンドロイチンの効果を見た報告は調べた限り見当たらない。(探し方の問題なので、探せば見つかるはず)

 したがって現時点ではグルコサミンやコンドロイチンを服用することの関節痛低減効果は懐疑的に見る必要があると思う。

 

ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました。

そして、おやすみなさい(この記事作成時、7/18 2:33)