窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑪~脳血管イベントの二次予防に対するスタチン間の効力の違い~

<お題論文>

Secondary prevention of major cerebrovascular events with seven different statins: a multi-treatment meta-analysis. - PubMed - NCBI

PMID: 28919704

 

<急ぐ人向け結論>

アトルバスタチンが良いとの結果だが、ネットワークメタ解析(NMA)の手法が雑で、結果としてとても使えたものではない。

というか、読むだけ時間の無駄。

 

薬剤師界のエビデンスマスターこと青島先生へ

これを読む時間を、金麦タイムか出張時にお泊り許可がもらえるように奥様に媚を売る時間にあててください。

 

<リサーチクエスチョン>

 

P:アテローム動脈硬化性心血管疾患の患者

 

I/C:lovastatin、アトルバスタチン(リピトール)、フルバスタチン(ローコール)、シンバスタチン(リポバス)、ピタバスタチン(リバロ)、プラバスタチン(メバロチン)、ロスバスタチン(クレストール)

 

O:主要脳血管イベント(致死性脳卒中、非致死性脳卒中TIA)

 

⇒実際に集まったのは、24.3%女性、143~319週の研究(4週以上が組み入れ条件)

Table1より、被験者は50代以上であることが分かる(5研究は年齢不明)

 

<システマティックレビュー(SR)の評価>

 

データベース: PubMed,、Embase、 Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane Central Register of Controlled Trials

 

検索語:各スタチンの成分名、心血管疾患、HMG-CoA還元酵素阻害薬

 

検索期間:2011.1.1~2016.6.30(2011年以前はSRの参考文献を利用)

 

元論文:RCT対象。文献の質を評価した形跡なし

 

評価者:2者独立でスクリーニング、研究の組み入れは第三者が独断で選択

 

出版:言語に関する制限の記載なし。参考文献は見ている。専門家連絡なし。funnnel plotなど報告バイアスの検討はしていない

 

異質性:事前登録なし。Pの近似性は年齢等不明項目あり疑問が残る。Oは問題なさそう

 

⇒SR部分にバイアスが入り過ぎである。

(まさかの設定したバイアス評価全項目フルコンプリートでバイアス有りとは)

特に評価者バイアスはキーワードだけを見ていると二者独立で評価し意見対立時は第三者が仲裁したように見せかけており悪質。

言語制限は有無しか想定していなかったが、今回初めて「確認できない」という事態に。

なお、年齢「NA」となっている文献㊾を確認するとTable1にロスバスタチン群60±11歳、アトルバスタチン群59±12歳との記載を見つけることができる。

Comparison of the efficacy of rosuvastatin versus atorvastatin in reducing apolipoprotein B/apolipoprotein A-1 ratio in patients with acute coronar... - PubMed - NCBI

著者は元論文を読んでおらず、当然の帰結として元論文の質の評価ができなかったようだ。

 

<ネットワークメタ解析(NMA)の評価>

 

ネットワーク図:プライマリアウトカムのものが一つだけ示されている

 

閉じた環:少数有

 

直接・間接比較:Table2と3が該当?わかりにくい

 

一致性:検討された形跡はないが、結果を見比べると一致していない

 

資金源、COIの開示:資金源は公開されていない

 

<結果>(Table3より)

 

有意差があったのは以下の二つ

アトルバスタチンvsロスバスタチン RR1.7(1.10~2.50)

アトルバスタチンvsコントロール RR1.5(1.10~1.90)

予防効果として見るようだが、結果の見方についての説明がない。

 

アブストラクトの結果にあったアトルバスタチンvsロスバスタチン RR0.6(0.40~0.92)に相当する結果が本文中に出てこない。

 

<結論>

 

読んでしまったアナタへ。

手遅れです。

 

最初に結論から読んで、途中過程をすっ飛ばしたアナタへ。

論文データを捨てましょう。

紙で印刷してしまったのなら丸めてゴミ箱へ投げ入れましょう。

 

<感想>

 

少し読めば「ヤバい」とわかる論文を掲載したDrug Design, Development and Therapy は科学雑誌として大丈夫なのだろうか?査読体制はどうなのかと思い調べてみると、査読者名が公開されており「Dr Akshita Wason」エディター「Dr Tuo Deng」という名前が確認できた。

このエディターは現在はアメリカで研究している中国人であり、著者が中国人であるので身びいきが働いたのではないかと邪推してしまった。

 

※注意!

エディターがPPARγの研究者なので、J-DOITがらみで門脇教授(PPARγ下流の物質、アディポネクチンの研究者)に良い感情を持っていないので、そうしたバイアスが記事全体にかかっていることにご注意ください。