窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

DECLARE–TIMI 58 (ダパグリフロジンの心血管系への影響をプラセボと比較する非劣性試験)を読んでみた

<はじめに>

 

 SGLT2阻害薬の心血管イベントを検討した研究で話題の最新論文を読んでみました。

 メーカーからの速報ではイイ感じだと聞いていたのですが、蓋を開けてみたらエンパグリフロジン、カナグリフロジンと違い悲しい結果に(´;ω;`)

 これまでの研究で示された心血管イベント抑制はSGLT2阻害薬のクラスエフェクトだと思っていたので、「どうしてこうなった?」を探るべく、本文を読んでみました。

アストラゼネカのフォシーガが2型糖尿病患者さんを対象とした大規模心血管アウトカム第III相DECLARE-TIMI58試験において良好な結果を達成

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<お題論文など>

 

・お題論文

Dapagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes. - PubMed - NCBI

PMID: 30415602(全文フリー)

 

・登録情報

 

Multicenter Trial to Evaluate the Effect of Dapagliflozin on the Incidence of Cardiovascular Events - Tabular View - ClinicalTrials.gov(英語)

DECLARE-TIMI58 臨床試験概要詳細画面|一般財団法人日本医薬情報センター 臨床試験情報(日本語)

 

※上記二つとも組み入れ基準がざっくりとしか書いておらず、P(被験者)情報を取得するには役に立たないので注意

 

プロトコル論文(今回読んでないけど)

 

The design and rationale for the Dapagliflozin Effect on Cardiovascular Events (DECLARE)-TIMI 58 Trial. - PubMed - NCBI

PMID: 29898853

 

<批判的吟味>

 

ここから、本文を読んでいきたいと思います。

 

①RQ

 

・P:40歳以上の2型糖尿患者。HbA1C6.5%~12.0%。

  CCr≧60mL/min。

  心血管リスク因子(男性55歳以上、女性60歳以上、高血圧、脂質異常症、現在の喫煙)複数保有かアテローム性心疾患(虚血性心疾患、脳血管疾患、PAD)の既往

  WOCBP(妊娠の回避くらいの理解しかしてないです)

 

・I:ダパグリフロジン10mg1日1回

  (国内承認量は1日1回5mg、効果不十分時10mgへ増量)

 

・C:プラセボ1日1回

 

・O:<安全性>3P-MACE(心血管死、心筋梗塞脳卒中

   <有効性>3P-MACE、心血管死+心不全による入院の複合アウトカム

(アウトカムのうち複合の方は2016.12にEMPA-REGでいい結果が出たことによりセカンダリより昇格したことが本文METHODSに記載されている)

   <セカンダリ>腎複合アウトカム(eGFR40%減、末期腎不全、心血管死、腎死)、全死亡

   <2016.12に削除されたセカンダリ>不安定狭心症、再灌流術、体重の変化

 

・T:観察期間の中央値4.2年(元は3年、MACE1390件発生まで追跡の予定)

 

⇒実際に集まったのは、年齢64歳前後、女性37~38%、白人80%弱、北米30%強、BMI32、平均罹病期間10~11年、HbA1C8.3%、収縮期血圧135mmHg、拡張期血圧58mmHg、アテローム性心疾患の既往40%、メトホルミン服用80%強、ACEiかARB80%強、スタチンもしくはエゼチミブ服用75%

※両群に目立った偏りはないが、変化を調査している体重については記載がない。

 

②方法論

 

・ランダム化(プロトコルより):ブロックランダム法(CVリスク、血尿の有無で層別化)。中央(アストラゼネカ社)割り付け。病態、参加地域、性別が一定の比率になるようモニターしながら募集した。

 

・盲検化:4者(患者、研究者、調査者、アウトカム評価者)

 

・解析:有効性はITT(I群8582名、C群8578名。割り付け全員が解析された)

    安全性はFAS(I群8574名、C群8569名)

 

・介入以外の処置:チアゾリジン系とSGLT2阻害薬は禁止。

 ※:ADA、EASDに従いHbA1C<7.0%を目標とするが、治療に使用した薬剤については非公開とするとプロトコル40ページにあり、詳細不明。

 ※2:被験薬以外のSGLT2阻害薬服用率が本文中に公開されており、I群3.4%、C群6.1%とある。

 

・サンプルサイズ:MACEで計算。17150人、1390イベントとある。

         参加人数は満たしたが、イベント数は913件と未達であった。

 

③結果

 

・MACE:I群8.8%、C群9.4% HR0.93 95%CI 0.84~1.03

     非劣性マージン1.3なので非劣性

 

・心血管死+入院:I群4.9%、C群5.8% HR0.83 95%CI 0.73~0.95

 

・入院:I群2.5%、C群3.3% HR0.73 95%CI 0.61~0.88

 

・心血管死:I群2.9%、C群2.9% HR0.98 95%CI 0.82~1.17

 

・腎複合:I群4.3%、C群5.6% HR0.76 95%CI 0.67~0.87

 

・全死亡:I群6.2%、C群6.6% HR0.93 95%CI 0.82~1.04

 

・本文中では「リスクファクターに良い結果を与えた」とあったリスクファクター達

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・SAE:I群34.1%、C群36.2% HR0.91 95%CI 0.87~0.96

→不安定狭心症:I群2.8%、C群2.8%

→急性心筋梗塞:I群2.7%、C群2.3%

 

低血糖:I群0.7%、C群1.0% HR0.68 95%CI 0.49~0.95

 

ケトアシドーシス:I群0.3%、C群0.1% HR2.18 95%CI 1.10~4.30

※「ケトアシドーシスを起こした人の80%が組み入れ以前にインスリンを使っていた」と本文にある。結果は示されていないが両群で脱水は同等だったとも記載あり。

 

・切断:I群1.4%、C群1.3% HR1.09 95%CI 0.84~1.40

 

・性器感染症:I群0.9%、C群0.1% HR8.36 95%CI 4.19~16.68

 

 

<まとめ>

 

これまでのSGLT2阻害薬の結果に比べると思わしくない結果だった。

 

 試験期間を延長したが、目標イベント数が達成できず、検出力が不足したのではないか?と思う。

 

 一方で、少ないながらも性器感染症など以前から言われている有害事象はしっかり有意差をつけて増加しており、今後も注意を要すると思われる。

 

 ディスカッションにも書いてあったが、レジメン違反が多かったと。しかし、両群で行われた詳細な治療内容は非公開であり、その違反が結果に与えた影響を推し量ることは難しい。(思わしくない結果への言い訳感が強く、読むのが苦痛だったので読み飛ばしたかもしれないが)

 

 個人的な感想だがTIMI研究会(TIMI Study Group - CLINICAL TRIALS)が絡むと思わしくない結果が出やすい気がする。