窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

日本人に対するEPAの効果は?(今更JELISを読む)

<はじめに>

 

 

 前回REDUCE-ITを読んだわけですが、その中で日本での研究が比較対象として幾度もJELISが取り上げられていたので、今更ではありますが読んでみることにしました。

 JELISについては様々なサイトで取り上げられていますので、今更新規情報もないので、読んだことがある人はここでブラウザバックをお勧めします。

 

<お題論文など>

 

・お題論文

 

Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint anal... - PubMed - NCBI

 PMID: 17398308 

 

・登録情報

 

Protective Effect of EPA on Cardiovascular Events - Tabular View - ClinicalTrials.gov

 

プロトコル論文

 

Effects of eicosapentaenoic acid on cardiovascular events in Japanese patients with hypercholesterolemia: rationale, design, and baseline character... - PubMed - NCBI

PMID: 14564313

 

・記事、ブログなど

 

臨床薬理 39(5)Sep2008;167-168

EPAの効果 : 薬剤師の地域医療日誌

 

<批判的吟味>

 

ここから、本文を読んでいきたいと思います。

 

①RQ

 

・P:総コレステロール250mg/dL以上の者(LDL170mg/dL以上に相当)

   男性は40~75歳、女性は閉経後~75歳

 

 

・I:エパデール300mg1回2カプセル、1日3回(EPAとして1800mg)+スタチン(プラバスタチン10mgかシンバスタチン5mg)

 

・C:スタチンのみ

 

・O:複合心血管イベント(心突然死、心筋梗塞、不安定   狭心症、血管形成術、ステント、冠動脈バイパス術)

 

   <セカンダリ>全死亡、脳卒中、末梢動脈疾患、がん発症率(登録情報より)

          冠動脈疾患の死亡率と罹患率(本文中で追加されている)

   

・T:平均観察期間4.6年

 

⇒実際に集まったのは、年齢61歳、女性69%、BMI24、CVD二次予防3645名(19.5%)、喫煙者18~20%、糖尿病16%、総コレステロール7.11mmol/L、TG1.74mmol/L、HDL1.51mmol/L、血圧135/79mmHg、プラバスタチン60%、シンバスタチン37%、抗血小板薬14%、カルシウム拮抗薬30%、硝酸剤10%、血糖降下薬12%

 

両群で気になる様な差は見られなかった。

 

 

 

 

②方法論

 

 

・ランダム化:層別ランダム法(一次予防、二次予防で層別化)ブロックサイズ4。

 

・盲検化:PROBE(アウトカム評価者) 

 

・解析:ITT (197名のlost to follow upの処理法の記載がない)

 

・介入以外の処置:脂質代謝に影響する薬剤は禁止。

         他の治療薬は必要に応じて変更可能。

         治療目標値の設定はない。

 

・サンプルサイズ:18000名。(一次予防0.58%/年、二次予防2.13%/年、EPAでイベント25%減で計算)

 

 

③結果

 

・プライマリ I群:2.8%、C群:3.5% HR0.81 95%CI:0.69~0.95 NNT143
   一次  I群:1.4%、C群:1.7% HR0.82 95%CI:0.63~1.06
   二次  I群:8.7%、C群:10.7% HR0.81 95%CI:0.657~0.998

   (本文の数字抜いてきたけど有効数字どうなってんの?)

有意差のあった主要評価項目構成要素
・不安定狭心症  I群:1.6%、C群:2.1% HR0.76 95%CI:0.62~0.95
・不安定狭心症(二次)  I群:4.8%、C群:6.7% HR0.72 95%CI:0.55~0.95

セカンダリ
脳卒中  I群:1.8%、C群:1.7% HR1.02 95%CI:0.91~1.13
・全死亡  I群:3.1%、C群:2.8% HR1.09 95%CI:0.92~1.28

有害事象 
・がん  I群:2.6%、C群:2.4%
・疼痛 I群:1.6%、C群:2.0%
・消化器症状 I群:3.8%、C群:1.7%

・皮膚症状  I群:1.7%、C群:0.7%

・出血  I群:1.1%、C群:0.6%

検査値

・TG  I群:-9%、C群-4%

EPA濃度 I群:72μg/mL、C群0μg/mL

 

<まとめ>

 

 有意差があったのはソフトエンドポイントのみ。検査値も含めEPA投与による大幅な改善は見られなかった。limitationにあったが検出力の都合でソフトエンドポイントを入れたというがならば二重盲検にしないとせっかくした研究の意味が・・・

 

 後、個人的に気になった点だが、研究の事務局(組み入れの可否の判断、ランダム化の乱数表の管理、データの管理)を富山医科薬科大学が担当していること。一番めんどくさい事務処理を一手に担っておきながらJELISの筆頭著者は神戸大学という。

 それから、わざわざ本文中に「role of funding source」という項目を設定し、「The sponsor had no role」と関与しなかったことを明記している。

 この点について臨床薬理 39(5)Sep2008;167-168では「試験デザイン、試験実施、判定委員会、論文執筆に持田製薬は関与していないと明記されている」(一部改変)と。

 臨床試験登録情報を見てみると、スポンサーは神戸大学であったと明記されている。

 

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 結論から言うと、試験に関与しなかったスポンサーとは神戸大学であって、持田製薬が関与したかどうかはわからない。この記載から試験の事務局が富山医科薬科大学であったのもうなづける。

 でも、論文執筆で筆頭著者としてかかわってるけどね(;^ω^)

 

 個人的には医薬品としてEPA補充するくらいなら、その金でうまい魚でも食いに行けというのが正直な感想ではある。