日本人慢性便秘症患者に対するラクツロースの効果(ラグノスゼリー第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験)
<はじめに>
「ラクツロースって便秘にどれくらい効くの?」と看護師さんに聞かれたので調べてみました。
<今回の論文など>
・論文(全文フリーと書いてはないですがフリーで読めます)
PMID: 30643982
・事前登録情報
https://www.clinicaltrials.jp/cti-user/trial/ShowDirect.jsp?clinicalTrialId=11366
(あまり記載がなく開く価値はないと思われるが念のため)
・審査報告書
http://www.pmda.go.jp/drugs/2018/P20180921001/300297000_23000AMX00798_A100_1.pdf
(8ページからのLB1001試験が今回のお題論文の研究です。論文読むよりこちらを読むほうがおすすめ)
<読んでみる>
P:慢性便秘症の20~75歳の日本人患者。IBSは除外。
I/C:SK-1202(ラクツロースゼリーの成分量)13g、26g、39g、プラセボ 1日2回朝夕
O:(主)投与1週目での自発排便回数
(副)投与2週目での自発排便回数、
投与24・48時間で自発排便のあった患者の割合、
最初の自発排便までの時間、ブリストル便性状スケールの変化、
日本版IBS-QOLスコア、有害事象、バイタルサイン、12誘導心電図、検査値
(審査報告書、有効性評価項目より)
ランダム化:「randomized」の記載があるが詳細な方法は不明。
ブラインド:「double-blind」とあるので被験者・担当医は盲検化されているが、
他の担当者がどうだったかは不明。
施行バイアス:プロトコルが公開されていないので確認不能だが、
頓服使用時使用した下剤を記録することは決められているよう。
(頓服服用後24時間の排便は自発排便に含まないとの記載あり)
解析法:FAS
サンプルサイズ:各群62名
追跡率:99.2%
患者背景:39.4~43.1歳、女性77.8~87.1%、BMI20.94~21.99
(便秘の期間とSK-1202の投与量の反比例が実薬高用量有利になりそう)
結果(主):(審査報告書より。各群の記載が製品量になっているので注意)
※論文には棒グラフで変化量のみが示されており、投与1週後の自発排便の回数などは記載されていない
※※製品1回12gが成分6.5gなので1日24gが成分13gになる
結果(副):(プラセボ、13g、26g、39gの順で記載)
投与2週目での自発排便(回/週):1.99、2.29、3.22、3.97
自発排便患者の割合(24時間):35.5%、47.6%、65.1%、67.7%
自発排便患者の割合(48時間):62.9%、73.0%、82.5%、85.5%
最初の自発排便までの時間:27.98 h (95% CI 24.33–48.00) 、24.50 h (95%CI 14.33–27.77)、10.00 h (95% CI 6.08–17.00)、 10.33 h (95% CI 5.45–22.58)
有害事象
<まとめ>
「RESULTS:The 26 and 39 g/day of SK-1202 induced significantly and dose-dependently more increase in SBM at Week 1 than placebo (p = 0.003, p < 0.001).」
と実際の変化量の記載がなく、本文中にも主要評価項目そのものである投与1週目での自発排便回数が記載されていないなど、とても2019年に発表された論文とは思えない記載の寂しさ。
とりあえず26g群と39g群がプラセボに有意差をつけて自発排便を増やしているので、無事承認されました。週2~3回排便回数を増やすという結果でした。
この論文を読んで、「中国のRCTの質の研究は多数あるけど、日本のRCTの質はどうなんだろう?ディオバン事件の後にあれこれ変化はあったけど質はよくなったんだろうか?」という疑問がわいたため調べた結果を「エビテン」のネタにしました!
中国のように活発に質の評価は行われていないようで、新しいもので2010年という(;^ω^)