窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

アルコール依存症のお薬は何が良い?⇒データが足りなくて結論出せなかった(´;ω;`)

<はじめに>

 

 ほかの研究を紹介しようと執筆中ですが、図表の作成に手間取っており、たまたま本日ナルメフェンの院内勉強会があったので、以前読んだアルコール依存症薬物治療のネットワークメタ解析を書くことにしました。

 

<お題論文>

 

Pharmacologically controlled drinking in the treatment of alcohol dependence or alcohol use disorders: a systematic review with direct and network meta-analyses on nalmefene, naltrexone, acamprosate, baclofen and topiramate.

PMID: 28940866

 

・事前登録情報

http://www.crd.york.ac.uk/prospero/display_record.php?ID=CRD42015019841

 

<読んでみた>

 

①リサーチクエスチョン

 

P:アルコール依存症またはアルコール使用障害の患者→18歳以上

I/C:ナルメフェン、naltrexone、アカンプロサート、baclofen、topiramate→単剤療法

O:(主)アルコール総消費量、(副)多量飲酒日数(HDD)、非飲酒日数、飲酒日数、飲酒日当たりの飲酒量、有害事象、重篤な有害事象、安全性上の理由による脱落、死亡率

 

シアナマイド、ジスルフィラムは組み入れられていない

※topiramateは国内で適応ないため英字表記としました

 

②システマティックレビューの評価

 

・データベース:MEDLINE、CENTRAL、EMBASE

・検索語:薬剤成分名、alchol

・期間:不明(見つかったのは1999~2015の研究)

・元論文:不明⇒RCTのみ(32RCT)、incomplete outcome data(脱落の扱い)でhigh riskが目立つ

・評価者:無⇒2者独立、意見対立時第三者介入

・出版:不明⇒英語、仏語、スペイン語 reference→検索した、funnnel plot→したがアウトカムによって研究数が不足しており評価が難しい

・異質性:無⇒事前登録あり、P、Oとも統合は可能そう

 

③ネットワークメタ解析の評価

 

・ネットワーク図:すべてのアウトカムについて示されている

・閉じた環:全くない(star-shape)

・資金源、COI:ともに開示されている

 

④結果(有意差があったもののみ)

 

プラセボ SMDかOR(95%CI)、赤字は異質性高い

 

TAU(SMD):ナルメフェン -0.19(-0.29~-0.10)、baclofen -1.00(-1.80~-0.19)、topiramate -0.77(-1.12~-0.42)

・HDD:ナルメフェン -0.22(-0.32~-0.12)、topiramate -0.59(-0.96~-0.22)

・非飲酒日数:topiramate 0.45(0.15~0.75)

・AE:ナルメフェン  2.00(1.52~2.65)、naltrexone 2.21(1.36~2.59)

 

間接比較

 

TAU(SMD):baclofen-naltrexone 0.90(0.01~1.79)、baclofen-アカンプロサート 0.96(0.02~1.89)、topiramate-ナルメフェン 0.60(0.15~1.06)、topiramate-naltrexone 0.69(0.22~1.16)、topiramate-アカンプロサート 0.75(0.20~1.3)

※低減量になっており正数ほど左側薬物がTAUを減らしたという意味。対プラセボと書き方が異なるのでご注意ください。

 

<まとめ>

 

topiramateが最も効果が高く見えるが、研究の質・量ともに不足しており今後の研究で効果推定値は容易に変わりうる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<おまけ>

 

保 医 発 02 25 第 9 号平成 31 年2月 25 日

https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2019/190228_4.pdfにて、

「(1) セリンクロ錠 10mg
① 本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「アルコール依存症治療
の主体は心理社会的治療であることから、服薬遵守及び飲酒量の低減を目的とし
た心理社会的治療と併用すること。」とされているので、本製剤の薬剤料について
は、以下のすべての要件を満たした場合に限り算定できること。
アルコール依存症の患者に対して、アルコール依存症に係る適切な研修を修
了した医師が、アルコール依存症に係る適切な研修を修了した看護師、精神保
健福祉士、公認心理師等と協力し、家族等と協議の上、詳細な診療計画を作成
し、患者に対して説明を行うこと
イ 必要に応じて患者の受入が可能な精神科以外の診療科を有する医療体制との
連携体制があること
ウ 心理社会的治療については、アルコール依存症に係る適切な研修を修了した
医師によって行い、その要点及び診療時間を診療録に記載すること
なお、少なくとも本剤の初回投与時においては、30 分を超えて当該治療を行
うこと(本剤の初回投与までの診療時において 30 分を超えて当該治療を行った
場合を除く)
エ ア及びウに定めるアルコール依存症に係る適切な研修は、「診療報酬の算定方
法」(平成 20 年厚生労働省告示第 59 号)別表第一医科診療報酬点数表(以下
「医科点数表」という。)区分番号「A231-3」重度アルコール依存症入院医療管
理加算の算定にあたり医師等に求められる研修に準じたものであること
② 本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「アルコール依存症の診
断は、国際疾病分類等の適切な診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場
合にのみ投与すること。」、「アルコール依存症に伴う精神・身体症状及び患者の意
思を総合的に勘案し、断酒ではなく飲酒量低減を治療目標とすることが適切と判
断された患者に対して本剤を投与すること。」及び「飲酒量低減治療の意思のある
患者にのみ使用すること。」とされているので、投与に当たっては十分留意するこ
と。
③ 本製剤の用法・用量に関連する使用上の注意において「本剤の投与継続及び治
療目標の見直しの要否について定期的に検討し、漫然と投与しないこと。」とされ
ているので、3ヵ月ごとを目安に治療の評価を行うこと。」

という条件が課されており、専門医のいる施設でしか現状使えない。

 

セリンクロの審査報告書では

http://www.pmda.go.jp/drugs/2019/P20190109002/180078000_23100AMX00009_A100_1.pdf

7.R.6 本剤の適正使用について「② 心理社会的治療を含むアルコール依存症治療が実施可能な体制があること。」に対し申請者より②について、臨床試験では、外部機関によるトレーニングを実施し、認定テストを完了した評価者のみ BRENDA 法の実施が認められていたが、類似の要素を持つニコチン依存症患者の禁煙指導時に特別なトレーニングを行うことなくプライマリケア医等による治療が行われていることを踏まえると、非専門医であっても問題なく心理社会的治療の実施は可能と考えることを説明した。なお申請者は、医療従事者向け情報提供資材に BRENDA 法を踏襲した手順を記載することで、実臨床においても臨床試験と同レベルの心理社会的治療を行うことが可能と考えることを説明した。」となっており、申請段階でハードルを設定しないよう求めていた様子がうかがえる。