京都エビデンス精神医療研究会に参加しませんか?
今日の記事は毛色を変えて、研究会のご案内です。
京都エビデンス精神医療研究会は精神科医療をエビデンスベースドで行う研究会です。
基本的な内容は、『症例提示(自分が悩んだ症例などを個人情報に配慮して提示)→疑問の抽出と定式化→検索のコツと使えそうな論文のヒント』が前半で与えられ、次の会で実際自分で選択した論文を『批判的吟味→症例への適応』を後半で考える2回1セットの研究会です。
日時は、原則奇数月の第3木曜日の19:00~21:00(演者、座長の古川先生の都合で前後します)。つまり、次回は11/16(木)19:00~になります。
会場: 福井ビル5階、京都駅前メンタルクリニックのデイケアルーム。
会費は年間1000円。
参加職種に制限はありませんが医師が主体ではあります。(僕のような薬剤師も参加しています)
*来年度から日時の変更の予定です。詳細はまだ未定です。
予定は以下のリンクから見ることができます。
Publications : Health Promotion and Human Behavior : Kyoto Univ.
【内容の紹介】
前半1時間で症例提示を行い、症例の経過報告と聴講している先生方からの質疑応答を経て疑問の提示と定式化を行い、後半1時間で2か月前に提示した臨床疑問の解決に役立ちそうな論文を提示し批判的吟味の後適応を考えるという流れになっています。
また、発表者には事務局の田近先生からわからないところをサポートしていただけます。
*後で紹介しますが、座長を含め聴講している側もEBMを実践している一線級の精神科医が揃っている会の為、上級者向けの会話が展開していたことから、次回より初心者(多くは研修医の先生)向けのレクチャーを挟む予定になっています。
正直、薬剤師のジャーナルクラブ(JJCLIP)で、ランダム化比較試験(RCT)とメタ解析について理解するか、
南郷先生の運営されているHP、SPELLのはじめてシートでRCTとメタ解析を一通り理解しておかないと簡単に置いてけぼりを食らうレベルの会話が繰り広げられます。
参加されている先生方の名前がちらほら見ることのできる刊行物として、統合失調症薬物治療ガイドラインがあります。(まあ、そういうことです)
会の運営が初心者向けにシフトすることを鑑み、本ブログで紹介することとしました。
ここで終わると思いました?
このブログは論文読んでいく趣旨のブログです。もちろん読みますよ。
座長の古川壽亮教授が書かれた論文をね!
その前に著作と業績の中にあった有名論文を
MANGA Studyですね。(今日は読みません)
では、今回のお題論文です。
うつ病に対するミルタザピンの効果を多剤と比較したメタ解析になります。
先ずは、論文の臨床疑問を定式化するところから
P:成人大うつ病患者
E:ミルタザピン投与
C:他剤を投与(三環系、SSRI、SNRI、トラゾドン、MAOI、bupropion、reboxetine、イヨウオトギリソウなどのハーブ)
*E、C群とも投与量、用法などは問わない
O:(主要)治療反応率(HAM-D、MADRS、CG-I)
*HAM-Dはベースラインから50%改善で治療に反応したとする。CG-Iは1~2点
T(評価時点):2週間、急性期(6~12週)、維持期(4~6ヶ月)
検索データベース:CCDAN、MEDLINE (1950- date),、EMBASE (1980 - date) 、PsycINFO (1967 - date)、CENTRAL
その他調査:参考文献、専門家へのコンタクトもされている
調査された言語:英語だけには縛っていない
主要アウトカムの治療反応率は代用のアウトカムで良く用いられる。
以下は採用された各論文のリスクオブバイアスであるが、資金面でメーカーからの支援が入っていることは右端列の赤の並ぶsponsorship biasを見れば一目瞭然だろう。
報告は資金・期間の面で負担の大きく差が出るまでのサンプルを集めにくいことから治療反応率の報告が多いことも予想できる。研究数の確保も考えるなら主要アウトカムが治療反応率になるのもやむを得ないが、別に緩解率を主要にせず副次アウトカムに置く必要あるのかね?と個人的には思った。
結果です。(試験が一つしかないなど結果が統合されていないものは省略)
1)vsTCA
2週での治療反応率 8 studies;OR 0.85, 95% CI 0.64 to 1.13
6~12週での治療反応率 9 studies;OR 0.89, 95% CI 0.72 to 1.10
2週での緩解率 8 studies;OR 0.85, 95% CI 0.55 to 1.32
6~12週での緩解率 9 studies;OR 0.86,95% CI 0.69 to 1.08
高血圧、頻脈 4 studies;OR 0.44, 95% CI 0.24to 0.81
振戦 7 studies;OR0.36, 95% CI 0.22 to 0.57
2)vsSSRI
2週での治療反応率 12 studies;OR 1.57, 95%CI 1.30 to 1.88
6~12週での治療反応率 12 studies; OR 1.19,95% CI 1.01 to 1.39
2週での緩解率 12 studies;OR 1.82, 95%CI 1.36 to 2.44
6~12週での緩解率 12 studies;OR 1.17, 95% CI 0.98 to 1.40
口渇 10 studies; OR 1.80, 95%CI1.37 to 2.36
体重・食欲増加 11 studies; OR 4.23, 95%CI 2.93 to 6.11
倦怠感 8 studies; OR 1.53, 95%CI 1.08 to 2.15
傾眠 11 studies; OR 1.81,95% CI 1.39 to 2.37
発汗 5 studies; OR 0.25, 95% CI 0.15 to 0.44
下痢 8 studies; OR 0.57, 95% CI0.41 to 0.80
悪心・嘔吐 11studies; OR 0.33, 95% CI 0.26 to 0.43
性機能障害 4 studies; OR 0.31, 95% CI 0.13 to 0.74
頭痛 11 studies; OR 0.69,95% CI 0.56 to 0.86
振戦 5 studies;OR 0.34, 95%CI 0.18 to 0.66
睡眠障害 5 studies; OR 0.52, 95% CI 0.31 to 0.86
3)vsSNRI
2週での治療反応率 2 studies; OR 2.29, 95% CI 1.45 to3.59
6~12週での治療反応率 2 studies; OR 1.53, 95% CI 1.03 to 2.25
2週での緩解率 2 studies; OR 2.34, 95% CI 1.07 to 5.13
6~12週での緩解率 2 studies; OR 1.55, 95% CI 0.98 to 2.47
何らかの理由による脱落 2 studies;OR 0.65, 95% CI 0.43 to 0.99
4)vsトラゾドン
2週での治療反応率 2 studies; OR 1.14, 95% CI 0.64 to 2.04
6~12週での治療反応率 2 studies;OR 1.50, 95% CI 0.95 to 2.37
2週での緩解率 2 studies; OR 1.00, 95%CI 0.36 to 2.80
6~12週での緩解率 2 studies; OR 1.38, 95% CI 0.76 to 2.52
何らかの理由による脱落 2 studies; OR 0.90, 95% CI0.47 to 1.72
5)vs reboxetine(ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)
試験が一つしかないため結果省略
赤字は主要評価項目でミルタザピンの方が優れていると出たもの
コクランは読むのはいいですが、結果が多すぎて書くのがつらいです。
で、こうした論文を書かれた先生から直接教えを請える機会です。
こうした研修会で年6回で1000円とか頭おかしいんじゃないかと思わざるを得ないレベルです。(1回1000円でも破格に安い)
平日の晩であるため、参加は難しいかもしれませんが、機会があればぜひともご参加ください。
参加するのが心細いという方は、@zuratomo4 にリプをいただけましたら京都駅までならお迎えに上がりますので積極的なご参加をお待ちしております。