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またまた宣伝記事です。
そして個人的には値段設定が頭おかしいんじゃないか?(褒め言葉)と思うくらい安く質の高い医療情報を提供してくれるオンラインジャーナルです。
お値段なんと月額250円!
さっきの言葉訂正します。
頭おかしいわ!
で、今回の特集は冷酷なエビデンスです。
いかに薬の効果が小さいか、新薬として世に出たときは真の効果に夢や希望という名のメッキがついた状態で過大評価されています。
やがて、使用経験が蓄積されるとメッキがはがれ真の効果が姿を現します。
その小ささにときに失望するかもしれません。
あるいは見つけることができなかった有害事象によって、消えていくかもしれません。
そんなときEBMの実践をするものが、どう考え・どう悩み・どう行動するか見てみませんか。
求める答えが書いてあるわけではないですが、参考になると思います。
以下のリンクからどうぞ
で、このブログは僕が読んだ論文を秘めやかに記録する場ですので、もちろん論文を読みます。
やはり精神科病院に勤務するものとして、こちらの記事は必読でしょう。
はい、我らがAHEADMAP代表の桑原先生の記事ですね。
うつ病はメーカー主導の試験が多く、発表される試験の結果はスポンサーのメーカーの薬剤が強いとパキシル🄬(パロキセチン)なんかを中心にたたかれてきた歴史もあるわけです。
で、発表されていないネガティブな研究結果を集めると効果は想定より小さいと言われているわけですね。
(桑原先生の記事を楽しんでほしいので、記事の引用はしません)
今回はその記事の中からこちらを取り上げたいと思います。
ざっくり紹介すると、大うつ病患者にSSRIを使うのはプラセボと比べて17項目のハミルトンのうつ病評価尺度でみた効果に統計的有意差はあるけど臨床的有意差を示すほどの差はなく、重篤な有害事象はSSRIで多かったというものです。
どうしてこれを取り上げようかと思ったかというと、答えは上記リンク先にあります。
研究結果に異論がある場合、論文の投稿先にレターという形で疑義が投げかけられるのですが、この論文はPubmedのページにまで反論コメントがつけられています。
正直こんなにこってりコメントつけられた論文初めて見ました。(;´・ω・)
まあコメントは疑義でしょうから、普通に批判的吟味してたらわかるはず!と思って普通に本文を読むことにしました。
先ずは論文のPECO(臨床疑問の定式化)から
P:18歳以上の大うつ病患者に
E:SSRI(citaloplam、エスシタロプラム、セルトラリン、fluoxetine、パロキセチン、フルボキサミン)を投与すると
C:プラセボ、active placebo、何も介入しない場合と比べて
O:①うつ病の症状はどうなるか?(ハミルトン評価尺度17項目と21項目、 Montgomery-Asberg Depression Rating Scale、 Beck’s Depression Inventory)
②緩解率は?
③有害事象は?
なんか。もうつっこみポイントが出ましたね(;´・ω・)
なんでプラセボとの比較を謳っている研究で比較に「no-intervention(何も介入しない」が入ってくるのかと。で、active placeboは具体的に何なのか説明はないっす。でも、結果的にプラセボ以外は見つからなったとのことなのでセーフ。(いいのか?)
先にネタバレしますが、アウトカムの英字は方法の中には出てきますが、これ以降本文中で触れられることはありませんので、安心して無視してください。
*一応尺度について簡単に解説
・ハミルトン評価尺度(HDRS)→HAM-Dとも。うつ病の重症度の推移を見るのに使う。17項目は重症度評価で21項目は先の17項目に性状4項目を加えたもの。うつ病の診断に使われる項目が網羅されていない、うつ病の評価に必要ない余計な項目があるなどの理由で使うべきでないという批判があります。
・ Montgomery-Asberg Depression Rating Scale→略記MADRS。うつ病患者でよくみられる症状のうち三環系抗うつ薬に反応しやすい症状10項目で作成された。HDRSと違い身体症状は評価されない。
・Beck’s Depression Inventory→略記BDI。重症度評価やスクリーニングに使う自己評価尺度。0~63点満点で評価。29点以上で重症。
入口でいきなり足払い食らった気分ですが、本丸はPubmedにくっついてたコメントで紹介されていたレター論文ですので、サクッと済ませていきます。
検索したデータベース: CENTRAL, PubMed, EMBASE, PsychLIT, PsycINFO, clinicaltrials.gov., Science Citation Index Expanded。他にFDA、EMA、製薬企業のサイト
評価者バイアス:13名がペアを組んで独立して評価。意見対立は第三者仲介。(13人でペアって、ぼっちでるやん)
出版バイアス:記載がなく著者に連絡を取ったかどうかなどは不明。事前登録情報を見ると検索は英語のみの模様。
http://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.asp?ID=CRD42013004420
一応、対称っぽい感じではある。
元論文バイアス:ここだけコクランハンドブック準拠。(スポンサーバイアスが赤一色であることを示したかっただけに見える)
結果を一目で評価できるSummary of findings tableはなぜかAppendixに追いやられている。(結果を隠す研究ってやる意味あるのですかね?)
Summary of findings table |
||||||||||||||||||||||
|
Risk with placebo |
Risk with SSRIs |
Relative effect |
№ of participants |
Quality of the evidence |
Comments |
||||||||||||||||
Hamilton Depression Rating Scale (HDRS) |
- |
- |
The mean HDRS score at end of treatment in the SSRI group was 1.94 (2.50 to -1.3) HDRS points lower than the placebo group |
10,464 (49 trials) |
⊕⊕⊝⊝ Very low |
Trial sequential analysis showed that the boundary for harm was crossed |
||||||||||||||||
Serious adverse events |
22 per 1,000 |
31 (25 to 40) per 1,000 |
OR 1.37 (1.08 to 1.75) |
13,299 (44 trials) |
⊕⊕⊝⊝ Very low |
Trial sequential analysis showed that the boundary for harm was crossed
|
||||||||||||||||
No remission |
746 per 1,000 |
657 (642 to 679) per 1,000 |
RR 0.88 (0.84 to 0.91) |
4214 (34 trials) |
⊕⊕⊝⊝ Very low |
Trial sequential analysis showed that the boundary for benefit was crossed
|
*The risk in the intervention group (and its 95% confidence interval) is based on the observed risk in the comparison group and the relative effect of the intervention (and its 95% CI). |
GRADE Working Group grades of evidence |
HDRS(17項目) 平均差 −1.94 points; 95% CI −2.50 to −1.37(49試験)I 2 = 75%(異質性:高)
緩解 RR 0.88; 95% CI 0.84 to 0.91 I 2 = 36%(著者は異質性はないと評価。えっ?)
重篤な有害事象(SAEと略す。死亡、機能障害、入院を評価) OR 1.37; 95% CI 1.08 to 1.75(異質性の評価はなし)
HDRSの17項目で3点差が臨床的に優位な差とされているとのことで、著者の結論は「統計的有意差はあるけど臨床的有意差を示すほどの差はなく、重篤な有害事象はSSRIで多かった」となっているわけです。
ツッコミがちょいちょい入りましたが、精神科薬剤師としては未熟な雑魚薬剤師視点でこんなもんです。
ここからは、レターで寄せられたツッコミを見ましょう。
本文の内容をざっくり紹介します。(ご自身で是非ご覧ください、ツッコミがすさまじくて笑えます)
①SAEカウントの際の分母がおかしい(少なくカウントされている=SAEを過大評価)
②SAEカウントの際の分子がおかしい(少なくカウントされている=SAEを過小評価)
③SAEの全データが追えていない。(少なくカウントしている。分子より分母の影響が大きい=SAEを過大評価している)
④有害事象による入院にアルコールや薬物依存による治療の入院がカウントされている
⑤そもそもSAEの定義がおかしい
⑥RevManで解析しても再現できず、解析方法が間違っているか解析方法が本文記載の方法で行われていない
などなど(一部ツッコミは省いています)
ここまではナンバリングして突っ込んでますが、まだツッコミは続きます。
・統計処理時の重みづけが間違っている
・データ解析時にすべてのデータを解析に含んでいない
・そもそも拾うべき重要論文が除外されている
・HDRSはSSRIの効果を過小評価する欠点を内包した評価尺度
で、レター論文の著者は訂正をするよう求めています。
はい、訂正記事出ました。
リファレンスがちょこっと訂正( ^ω^)・・・
そこじゃねぇ!(# ゚Д゚)
しかも間違い方がSSRIの効果を過小に、有害事象を多くする方向で一貫して間違ってるし。
もはや捏造臭しかしない。(以下、捏造だったと仮定して書きます)
で、ここまでイカれた報告を出した著者がどんな人物か興味がわくわけですよ。
日本の内〇聡とかみたいな人物像が浮かんできます。
で、調べた結果がこちら
https://www.researchgate.net/profile/Janus_Jakobsen2
心臓病が専門(-_-;)
で、シーケンス分析もしていると。
お題論文にあった「Trial Sequential Analysis」をやることが目的だったと。
で、評判を高めるためにインパクトの出るようにアレコレやったわけね。
端から読む価値のない論文だったと
で、これがメディアに出て治療機会を失う患者さんが出てくると
ふざけんな!
と、ここまで書いて、「冷酷なエビデンス」が牙をむいたのは患者さんではなく著者になったと。
しかし、被害者は患者さんですよ。
これは冷酷ではなく残酷ですね。
コレだけ大大と反論が出ているのを桑原先生が見逃すはずもなく
この論文が取り上た意図は、「原著をきちんと確認しろ、自分の目と頭で評価しろ」ということでしょう。
で、こんな盛大な伏線もりもりで月額250円ですよ。
頭おかしい(褒め言葉)と思いませんか?
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では今日はこの辺で
おやすみなさい。(現在、10/7の0:47 土曜も出勤なのに)