窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

居酒屋抄読会in天王寺、開催報告。本編:「qSOFAとSIRSとオムツ」延長戦:「診断のシステム1と顔面改造工事」

 遅くなりましたが、2/9に開催しました居酒屋抄読会in天王寺の開催報告をしたいと思います。

  開催案内は以下よりご参照ください。

zuratomo4.hatenablog.com

 

録音はこちらからどうぞ

本編「qSOFAとSIRSとオムツ」https://twitcasting.tv/zuratomo4/movie/440056552

延長戦「診断のシステム1と顔面改造工事」https://twitcasting.tv/zuratomo4/movie/440076813

 

 お題論文はqSOFAとSIRSクライテリアの比較をした研究のメタ解析論文になります。

A Comparison of the Quick-SOFA and Systemic Inflammatory Response Syndrome Criteria for the Diagnosis of Sepsis and Prediction of Mortality: A Syst... - PubMed - NCBI

 共に敗血症で使われる基準となりますが、SIRSは旧定義(sepsis-1)で敗血症患者のスクリーニングを目的として作られたものであり、qSOFAは2016年2月に公開された新基準(sepsis-3)で作られた基準(SOFA)とは別個の死亡率が高く危険な患者群を特定するために作られた基準です。

 本来別定義の別基準、しかも目的が異なるもの同士を比較するので、前提がアレなのですが、現状この比較しかqSOFAを検証する術がないので、上記のような研究が行われました。

 要するに高感度低特異度(敗血症診断に対して)のSIRSと低感度高特異度(死亡に対して)のqSOFAの対決です。

 このあたりの歴史的背景は、薬師寺泰匡先生の著書「@ER×ICUめざせギラギラ救急医」のp.199~に参考文献付きで詳しく書かれていますので、興味のある方は是非ご一読を!

f:id:zuratomo4:20180213190346p:plain

 

 では、論文の中身を見ていきましょう

先ずは臨床疑問の定式化から

P:ICU以外の感染症または感染症疑いの16歳以上の患者

(登録情報を見るとICUの部分は記載なしhttp://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.php?ID=CRD42017067645

I:qSOFAを使用

C:SIRSを使用

(I群、C群とも入院時のデータで評価したと登録情報に記載がある)

O:敗血症診断の感度・特異度、ICU滞在期間の予測(このアウトカムは本文中では評価されていない)、院内死亡率の予測

 

続いてSystematic Reviewの評価を。(ここでは集める対象の研究、集める努力、実際に集まったかを評価します)

研究の種類:観察研究

使用したデータベース:MEDLINE,CIANHL,Web of Science

言語:英語のみ

個々の研究の質の評価:Newcastle-Ottawa Scale(0~8点、5点以上で良。集まった10研究中1個が低質と評価)

死亡をアウトカムとした研究と診断感度をアウトカムとした研究のファンネルプロットが示されており、著者はpublication biasは少ないとしている。

 

*個人の感想:新基準の発表から1年と少々でのレビューであり、質を担保して集めるとなると英語のみは妥当な判断としてよいか。ファンネルプロットは基本的には10研究以上で行うものだが、10研究に満たないにもかかわらず行っている。sepsis-3公開から期間がないことを考えるとよく集めたという感じはするが、ファンネルプロットをおこなう意味はあったのだろうか?

 

結果

院内死亡:SMD(標準化された差) 0.03、(95% CI, 0.02-0.05)I2 = 48%

*なぜか本文ではリスク比と記載されている。

診断感度:SMD1.32;、(95% CI, 0.40-2.24) I2 = 100%

*これもなぜか本文ではリスク比と記載されている。異質性100%だが、全研究で感度はSIRSが勝っているので、異質性は程度の差という判断で良いと思われる

 

 死亡予測では死亡予測ツールとして開発されたqSOFAが、診断感度はその目的で開発されたSIRSがよかったという順当な結果でした。示されていないアウトカム(診断特異度、ICU在室期間)がどうだったかは不明と。

 

 もともとSIRSの特異度の低さ(スクリーニング目的なので特異度が低いのは仕方ないのだが)が問題視された経緯があるので、微妙な結果だったのだろうなぁとは予測できるが

Systemic inflammatory response syndrome criteria in defining severe sepsis. - PubMed - NCBI

 

 今回参加していただいた薬剤師メンバーのうちqSOFAに日常的に触れているメンバーは僕も含めていないので、どういった場面でqSOFAを使うかの議論にもなりました。(ベッドサイドで簡便に使えるのがqSOFAのウリなので)

使い道

①経口抗菌薬が処方された患者さんが薬局に!

→ふらふらで呼吸が荒い!(=qSOFA2点)

→疑義照会(抗菌薬処方=感染症疑い+qSOFA2点→敗血症疑い!)

②在宅で

→ふらふらで呼吸が荒い!(=qSOFA2点)

→至急連絡!(qSOFA2点=死亡する可能性の高い状態であることの示唆!)

 

 qSOFAを味方にすることで、バイタルサインの知識も活した活躍もできそうで、楽しい一夜となりました。

 なお、締めのラーメンを食べに行った後、見事に終電を逃し徒歩で帰宅することになりました!(40分とかからなかったので、食後のいい運動とは言えなかったのが残念です)

 

駄文を最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

敗血症に興味を持たれた方は、以下のサイトを是非ご覧ください!

xn--ucvv97al2n.com