窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

一般向けの医療情報を紹介した書籍にまともなものは存在しない!

 いきなり極論風に結論を書いちゃいました(;^ω^)

極論の意図は最後で解説します。(どうせ医療デマな本に騙された被害者の方には、当ブログの説明は親切度が足りなくて読むのが苦痛でしょうから)

 

 この記事はじほう社から弊社宛に送られてきた挑戦状(ラブレターともいう。単なるチラシ)の検証が目的です。

 以下は実際に送られてきたラブレターです。(正直、ラブレターは女性からいただきたいです。と、言うか女性から以外のラブレターは遠慮したいです)

 一見して「認知機能低下は治せる?防げる?デマも大概にしろ!」としか思わなかったし、著者見て「世界的権威?誰だよ?ああ、自称ですか。偉そうな肩書を自称するのにまともなのいねぇし。日本で有名な肩書自称は自称医療ジャーナリストのいとしゅん氏ですよね~」という感想しか出ませんでした。

 

 あんまりボケっとしてるとネタをHさんに全部ツイートされかねないので、大急ぎで書いてます(^^;

 チラシの裏を見ると「metabolic enhancement for neurodegeneration (MEND)」とかいうプログラムを実施したら、認知症患者さんの認知機能が回復して仕事に復帰できたのだとか。

 で検索してみると以下の論文が見つかりました。google先生、超優秀!(正直まともな論文があるとは思えなかったので、パブる気にもなりませんでした)

 

Reversal of cognitive decline: a novel therapeutic program. - PubMed - NCBI

PMID: 25324467(全文フリー)

クッソ長いイントロのあとに10例の症例報告が出ています。(本文で紹介された3例を抜粋)

①67歳女性。物忘れに悩む(認知症であったかどうか不明)→介入で改善した模様。

②69歳男性。起業家。FDG-PETで初期アルツハイマーパターンがみられる→介入で改善した模様。

③55歳女性。弁護士。仕事でスペイン語を覚えようとするもできず→介入でできるようになった模様。

PubMed Central, Table 2: Aging (Albany NY). 2014 Sep; 6(9): 707–717. Published online 2014 Sep 27. doi: 10.18632/aging.100690

診断名のない症例報告って(;^ω^)

しかも介入前後のデータが症例報告なのに全症例分ないって(;^ω^)

 と思ったら表に書いてあったけど、診断根拠なんだろ?FDG-PETは感度特異度共にイマイチで臨床的には実用に耐えないレベルなんだが。

で、介入はというと

PubMed Central, Table 1: Aging (Albany NY). 2014 Sep; 6(9): 707–717. Published online 2014 Sep 27. doi: 10.18632/aging.100690

 見ても何をしているのかよくわからない。検査値を正常化って?何よ?

 

で、二年後にまた同著者から同タイトルで論文出ました~!

Reversal of cognitive decline in Alzheimer's disease. - PubMed - NCBI

PMID: 27294343(全文フリー)

唯一の表がコレ

PubMed Central, Table 1: Aging (Albany NY). 2016 Jun; 8(6): 1250–1258. Published online 2016 Jun 12. doi: 10.18632/aging.100981

前の論文の10症例がそのまま転載されてね?

有効な介入なんだったら新規症例いるよね?

そもそも有効な介入なんだったらRCTやんなさいよ

結論から言うと何らかの原因たまたま認知機能がよくなった10人を自分の手柄って報告しただけ(ほかに有効だった人がいないから症例がそのまま流用されてる)

 

これが世界的権威(爆笑)

google先生に「metabolic enhancement for neurodegeneration 」って入力してここまで判明するのに10分強。

この程度の検証もできないって、じほう社さん、大丈夫ですか?

 

 そもそも、現時点でアルツハイマー認知症の治療・予防の双方とも有効な介入は見つかっていません!

 一番「metabolic enhancement for neurodegeneration (MEND)」に近そうなFINGER試験も「有意な誤差」でしかなかったことは指摘済みです。

 

今回の記事はここまでです。

駄文を最後まで読んでくださった、あなたのやさしさと忍耐に感謝を!

 

では、タイトルについて解説を

本当は「一般向けの医療情報を紹介した書籍にまともなものはほとんど存在しない!」としたかったのですが、そうしてしまうと「じゃ、自分の読んでるのは大丈夫」と都合よく解釈される危険性が高いと判断し、不正確なタイトルになるデメリットと勘案して極論にしました。

 

都合よく解釈された例の記事(Fizz先生、ありがとう)

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