窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑦~心房細動患者の卒中予防に有効な治療手段は?~

 今回のお題論文は「広島文献を読む会(通称HCA)」で3月に取り上げられた論文を、一人寂しく読んでいきたいと思います。

 

※HCAとは、、、

 平社員先生(ツイッターアカウント@T462759)や有志で運営されている文献抄読会。その名の通り広島で開催されているが、平社員先生は住まいも職場も広島ではないという。そもそも平社員先生は「中国地方~関西までは誤差みたいなもん」という思考と異常な行動力を誇る方で、学生時代よりEBMを学んできたEBMerの年下の先輩。広島に近い方は一度参加をご検討ください。

 

お題論文はコチラ

Comparative Effectiveness of Interventions for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation: A Network Meta-Analysis. - PubMed - NCBI

PMID: 27207998

 

 非弁膜症性心房細動の患者さんに対する抗凝固療法の効果と安全性を検討したネットワークメタ解析になります。著者たちはアブストラクトの結論で「全介入有効だった」と述べています。なお、本文の結論は「リバロキサバンが一番良かった」でした。(見え透いた伏線)

 

さっそく読んでいきます。

 

アブストラクトから臨床疑問(リサーチクエスチョン)を探していきます。

P:非弁膜症性心房細動の患者

I/C:NOAC→アピキサバン(エリキュース)、ダビガトラン(プラザキサ)、エドキサバン(エドキサバン)、リバロキサバン(イグザレルト)

ビタミンK拮抗薬(書いてないけどINRの設定からほぼワルファリンっぽい)

アスピリン

Watchman device→経皮的左心耳閉鎖術(LAA Closure: Left Atrial Appendage Closure)で使用する。

Percutaneous closure of the left atrial appendage versus warfarin therapy for prevention of stroke in patients with atrial fibrillation: a randomis... - PubMed - NCBI

O:有効性(脳卒中、全身性塞栓症)、二次アウトカム(全死亡)、安全性(頭蓋内外の大出血) 六か月以上のフォローアップをしている。

 

本文メソッドからの追加情報はなし。

 

実際に集まった層は、平均年齢71.5歳、男性65%、フォローした期間(中央値)1.7年

 

ステマティックレビューの評価

・データベース:MEDLINE

・検索期間:1966~2015.8

・検索語:記載なし

・元論文バイアス:RCT(第2相臨床試験は除外)、risk of biasの評価はしている

・評価者バイアス:二者で共同。意見対立時の方法はなし

・出版バイアス:英語のみ。参考文献、専門家連絡共になし。

・異質性バイアス:事前登録なし。患者情報、アウトカム共に統合に際して問題はないと思われる。

 

 システマティックレビューに関して、検索語の提示がなくデータベースも一つのみと、レビューする気があるのか疑問。

(たぶん有名な大規模研究のみを相手にしたからだとは思うが)

 ※個々の研究の評価について

「J-ROCKET AF」(PMID: 22664783)の評価がすべてunclearになっており、評価はしたと記載されているがきちんと評価できたとは言えないと思われる。

(著者の文献評価能力が怪しい)

なお、RobotReviewerの評価はコチラ

(僕の評価と一致したから出すというバイアスがかかっていますのでご注意ください)

trial

design

n

Random sequence generation

Allocation concealment

Blinding of participants and personnel

Blinding of outcome assessment

The J-ROCKET AF Study.pdf

RCT

???

+

?

+

+

 

 個人的な小括として、ステマティックレビューはずさんで、結果への確信性は低いと言わざるを得ない。(本来ならここで読むのをやめるが、本記事の目的はチェックリストが使えるかの確認なので最後まで読んでみる)

 

ネットワークメタ解析の評価

・ネットワーク図:一部あり(示されているのは脳卒中のもの)

・閉じた環:二か所のみ

・直接、間接比較:無

・一致性:非一致性なし

・資金源:示されていない

・COI:アピキサバン、リバロキサバン、Watchman deviceの販売メーカー

 

結果

・卒中、塞栓症(fig6)

 vsVKA プラセボアスピリンは常に劣る

・大出血(fig8)

 vsVKA エドキサバンのみ出血が少ない

・死因を問わない死亡(全死亡)(fig10)

  vsVKAorPlacebo 有意差のあるものはない

・ランキング(table3)

 卒中、塞栓症:リバロキサバン>ダビガトラン>アピキサバン

 大出血:プラセボエドキサバン>アピキサバン

 死亡:Watchman device>リバロキサバン=アピキサバン

 

 TTR50%台のワーファリン相手に優越性一つつけられなかったリバロキサバンが謎の大躍進!もとにしたデータはROCKET AFとJ-ROCKET AFなのに!

 アブストラクトの結論で「The entire spectrum of therapy to prevent thromboembolism in nonvalvular AF significantly reduced stroke/systemic embolism events and mortality.」とあるが、アスピリンは?

 あと、Fig7は「unajasted」の間違いと思われる。

 

 本論文を読んだ個人的感想。「捏造スレスレじゃね?」以下は参考文献。

「ちょっと盛られた」臨床試験の気付き方 医学書院/週刊医学界新聞(第3246号 2017年10月30日)