窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

「JJCLIP_#57 緑内障の点眼薬は防腐剤が無いほうがよいのでしょうか?」を予習してみた件

<はじめに>

 

来る6/10の21:00より薬剤師のジャーナルクラブ(JJCLIP)が開催されます。

視聴無料で、以下のリンクを踏むと視聴可能です。

(放送は1時間30分の予定。雑談などで30分はかかりますので、本編は21:30前後から開始と考えておくと、忙しいあなたでも視聴できます)

精神科薬剤師くわばらひでのり (@89089314) 's Live - TwitCasting

なお、コメントはツイッターFacebookのアカウントがあればできます。

(過去放送分の録音も公開されていますので、是非ご視聴ください)

 

基本的に「初心者が、簡単に、医学論文を使いこなす」を解説付きで配信されていますので、「医学論文読めない~」というレベルでも十分楽しめます。

(大まかな内容をとるだけなら英語能力云々より、小1終了程度のアラビア数字の読解力だけで行けてしまいますが)

 

なお、本記事を読んでしまった方は、本配信中に「居酒屋抄読会参加者募集!7/7

札幌、7/21大阪梅田、7/28大阪天王寺、8/19新潟、8/25岡山」と宣伝お願いします

 

<お題論文と仮想症例シナリオ>

 

JJCLIP_#57 緑内障の点眼薬は防腐剤が無いほうがよいのでしょうか? – よろず屋「雅(Miyabi)」のみたて

AHEADMAP共同代表の一人、山本雅洋先生のブログです。

配信の告知は上記ブログで行われますので、RSS登録がお勧めです。

 

Benefits of switching from latanoprost to preservative-free tafluprost eye drops: a meta-analysis of two Phase IIIb clinical trials. - PubMed - NCBI

PMID: 27041987

 

 

<シナリオの臨床疑問>

あくまで参考までに。

(JJCLIPでは臨床疑問の定式化をPECOにしていますので、本記事ではいつものPICOではなくPECOで記載しますが、内容は同じです)

 

P:緑内障の患者

E:防腐剤フリーの後発医薬品

C:防腐剤入りの先発医薬品

O:角膜上皮障害(有害事象)の発生は抑制できるか

 

で、先発医薬品に防腐剤が入ってて後発医薬品に防腐剤フリーがある緑内障治療薬

ミケラン、チモプトール、レスキュラ、キサラタン、ハイパジール、ミロル

防腐剤フリーの後発医薬品は日点のPF容器製剤がメインですね。

 

<論文のRQと概要>

 

P:ラタノプロストで角膜上皮障害が出た患者

本文より→18歳以上、症状2項目か症状1項目+症候1項目の合致、高眼圧か緑内障、ラタノプロスト治療6ヶ月以上、眼圧(IOP)22以下

E:タフルプロストへの切り替え

C:(C群の設定なし)

O:症状、眼圧、好み(プライマリアウトカムの明示はないが、サンプルサイズの計算が症状で行われているので、プライマリアウトカムは症状5項目と思われる)

⇒343名、男性37.6%、平均年齢67歳(23~88歳)、原発性開放隅角緑内障85.1%

 

タフルプロストの販売メーカー参天製薬の北欧子会社、サンテンオイ社の出資で行われた二つの切り替え試験を統合したメタ解析になります。

本論文の著者は二つの切り替え試験の研究者による合同チームです。

いつも読むのはシステマティックレビュー&メタ解析の論文ですが、本論文はシステマティックレビューをしていない純粋なメタ解析です。

全例切り替えのシングルアームの前後比較試験のメタ解析なので、C群がありません

 

<方法論>

 

・評価者バイアス:本研究の著者グループ=2件の前後比較の研究者(すなわち、自分の研究の再解析)

 

・出版バイアス:自分たちの研究のまとめで、システマティックレビューではない

 

・元論文バイアス:単アームのオープンラベル前後比較。(評価するまでもなく低質)

 

・異質性バイアス:同一プロトコル。個人データの統合。(一応、異質性はなかったとの記載あり) そもそも、統計的に統合していない。

 

⇒全項目にbiasあり。

 

統合された試験

Switching from a preserved to a preservative-free prostaglandin preparation in topical glaucoma medication. - PubMed - NCBI

PMID: 20546237

RMJ Clin Ophthamol 2015:1-

pubmedgoogle schlarではヒットしない)

 

<結果>

baseline→6週→12週で表記。脱落27名(9名はAEで脱落)。結果で3名復活。

※訳は適当です。あと、6週のデータは本文になかったので手計算です。

 

table3より

・症状(軽症以上の割合)

刺激/熱感/刺痛:59.6%→21.7%→16.8%

異物感:39.8%→15.7%→13.9%

裂傷:40.7%→16.4%→15.2%

かゆみ:34.2%→16.4%→14.9%

ドライアイ:57.8%→25.2%→23.1%

・症候

眼瞼炎:60.2%→38.7%→34.2%

 

table4より

・症候

角膜フルオレセイン染色(グレードI〜IV):82.9%→54.7%→41.8%

結合性結膜フルオレセイン染色(グレードII〜VIII):87.9%→59.7%→50.9%

 

table5より

・症候

結膜充血度:1.51±0.76→0.86±0.59→0.72±0.59

 

本文にのみ記載あり

涙液分泌時間(tBUT):5.9±4.5秒→7.7±4.2→8.7±4.7

涙液分泌(Schirmer's test):7.8±6.9mm→10.6±8.6→11.5±8.4

IOP:16.6±2.6mmHg→16.0±2.3→15.7±2.5

 

不快感(開始時→12週):mild42%,moderate31%,sereve1%→mild22%,moderate2%

好み(12週):ラタノプロスト6%、タフルプロスト72%

 

⇒すでにラタノプロストで有害事象を出ている人を集めタフルプロストに切り替えた比較対照のない前後比較試験のメタ解析。

脱落者を解析に含めないなど、試験デザイン上タフルプロスト有利な試験。

本結果がBAC(防腐剤)の有無なのか、ラタノプロスト→タフルプロストなのかはわからない。

 

⇒有症状なら切り替えの価値はあるかも。なお、本研究から角膜上皮障害の発生が予防できるかはわからない。