ブレクスピプラゾール(レキサルティ)のシステマティックレビューとネットで拾った怪しげな医療経済評価の怪文書を読んでみた
<はじめに>
ブレクスピプラゾール(レキサルティ)の院内採用に当たって効果を検証したシステマティックレビュー&メタアナリシスの文献を探すついでに、海外での費用対効果の文献を探してみたら学会ポスター風の変なチラシみたいなのを見つけたので、ついでに読んでみた。
くわばら先生のブログが詳しいので、よろしければご参照ください。
新規抗精神病薬レキサルティについて | hidex公式ブログ『はぐれ薬剤師のココロ』
後、院内採用になりそうな薬は必ず目を通す審査報告書も貼っときます。
<お題論文と怪文書>
PMID: 27157799
怪文書
http://www.pharllc.com/wp-content/uploads/2016/04/Brexpiprazole-Poster-for-CPNP.pdf
怪文書といっても、著者の所属とか書いてあるんですけどね(;^ω^)
ルンドベックとか大塚アメリカ社のメディカルアフェアーズ部門の人の名前あるし。
<システマティックレビューを簡単に読む>
・RQは?
I:ブレクスピプラゾール0.25mg、1mg、2mg、4mg
C:プラセボ
O:6週間後のPANSS
・phase2:1試験、phase3:2試験(VECTOR、BEACON)のうちphase3を統合
→元試験の質以外はバイアスのかかったシステマティックレビュー。
→(おまけ)2mgでプラセボと有意差が出なかったBEACON試験はメーカーからは紹介されません。
・結果
(プラセボとの間に有意差の見られなかったphase2とphase3の0.25mg、1mgは割愛)
PANSS
2mg -18.79 vs placebo -13.33 MD -5.46 95%CI:-8.46~-2.47
4mg -20.01 vs placebo -13.33 MD -6.69 95%CI:-9.67~-3.70
CGI-S(ベースラインからの変化量)
プラセボ:-0.82
2mg:-1.07
4mg:-1.20
※日本国内では、第三相臨床試験で4mgはプラセボと有意差がなかったため、2mgまでしか承認されていません。「エビデンスが~」といって2mg錠を2錠使わないように!
※4mgが承認審査でけられたことを隠して「1mg→2mgのシンプルな用量設定です」と宣伝してるの、油断してると吹き出しそうになるのは秘密です。
※対プラセボでPANSSの差が1ケタ台って、他の薬剤では中等量くらいの効果のような(;^ω^)<大体、最大用量では10点台の改善はあるで
<「An Economic Evaluation of Brexpiprazole Treatment in Adult Patients with Schizophrenia in the United States」を読んでみる>
・RQは?
P:18~65歳の統合失調症患者 2nd lineの治療
I: Brexpiprazole(以下、「brex」と略) 2mg ,4mg
C:QuetiapineXR600mg,Lurasidone120mg(ともに国内未承認)
O:ICER(有効性の評価尺度はPANSSとCGI-Sの二つ)
※今回はPANSSの方だけで検証してみる
・批判的吟味
分析の立場:US Managed Care Payer(支払者)
分析期間:6週間
リソース・コスト見積もり:Table2と3(brex2mgと4mgで価格が同じ?)
価格:2014 US Dollars
モデル:決定樹
パラメータ:Table1(PANSS Score Changeより抜粋)
brex2mg-19.65 brex4mg-20.93 lurasidone-18.69 quetiapineXR-25.72
根拠:brexはVECTORとBEACON(要は上のシステマティックレビュー)
QuetiapineXR600mgが9~10,Lurasidone120mgが6~8と文献番号が振られているが、実際に調べてみると根拠は逆になっている。
QuetiapineXR600mg
PANSS(6週)-30.9
PANSS(6週、プラセボとの差)-13.01
PANSS(6週)「the differences were not statistically significant」とあるが数値無し
Lurasidone120mg
PANSS(6週)「significantly greater improvement at week 6」とあるが数値無し
PANSS(6週)-20.5
※根拠とパラメータを数値のわかる範囲で比較すると、brexは上方修正され比較対象薬剤は下方修正されているよう
・結果:ICER(PANSS)
ブレクスピプラゾールはlurasidoneにdominatedであった
<感想>
有効性の数値を都合のいいように修正したからでは?