窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

近畿大学CASPワークショップ(2018.7.1開催)の予習をしてみた件

<はじめに>

 

2018.7.1開催の近畿大学CASPワークショップの予習です。

抗がん剤とは無縁の職場なので、解釈に間違いがある可能性が高いのでご注意ください。

ワークショップの流れに沿って、論文の内的妥当性の吟味→外的妥当性と適用で進めていきます。(本当はシナリオの臨床疑問の抽出を最初に行う)

また、内的妥当性の吟味はCASPのチェックシートに沿った形で行います。

 

<お題論文>

 

・ペムブロリズマブ(キイトルーダ)の第三相臨床試験より

Health-related quality-of-life results for pembrolizumab versus chemotherapy in advanced, PD-L1-positive NSCLC (KEYNOTE-024): a multicentre, intern... - PubMed - NCBI

PMID: 29129441

KEYNOTE-024の後付け解析(事前に規定されていたとの記載はあるが、登録情報には事前に設定されていた痕跡はない)としてQOLを扱った論文です。

 

※以下、おまけ

事前登録情報

Study of Pembrolizumab (MK-3475) Compared to Platinum-Based Chemotherapies in Participants With Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer (MK-3475-024/KEYNOTE-024) - Tabular View - ClinicalTrials.gov

NCT02142738

(主要解析の事前登録情報なので、お題論文の内容を必ずしも反映していません)

 

プロトコル論文(全文フリー)

Pembrolizumab versus Chemotherapy for PD-L1-Positive Non-Small-Cell Lung Cancer. - PubMed - NCBI

PMID: 27718847

 

 

<内的妥当性>

 

・A-1:研究仮説(RQ)

P: 進行性非小細胞肺癌(NSCLC)stage IV の患者。腫瘍細胞の50%以上にPD-L1発現。18歳以上。NSCLCに対する全身化学療法の治療を受けていない。平均余命3ヶ月以上。RECIST 1.1放射線学的に評価できる病変が1つ以上。ECOGのパフォーマンスステータス0または1。

 

※キイトルーダ審査報告書(2016年12月19日)より「化学療法歴のない、EGFR 遺伝子変異陰性、ALK 融合遺伝子陰性及び PD-L1 陽性(≧50%)の進行・再発の NSCLC 患者」

 

I:ペムブロリズマブ200 mgを3週ごとに静脈内投与。(35サイクル)

 

C:プラチナベースの化学療法

(5種類のうち1つを担当医が選択。投与スケジュールは事前登録情報かプロトコルを参照してください)

 ①カルボプラチン(AUC5~6)+ペメトレキセド(500mg/m2、アリムタ)

 ②シスプラチン(75mg/m2、ランダ)+ペメトレキセド(500mg/m2)

 ③カルボプラチン(AUC5~6)+ゲムシタビン(1250mg/m2、ジェムザール)

 ④シスプラチン(75mg/m2)+ゲムシタビン(1250mg/m2)

 ⑤カルボプラチン(AUC5~6)+パクリタキセル(200mg/m2、タキソール)

 ※PDが発生した場合、条件によってはI群の治療を受けることも可能

 

O:15週時点でのQLQ-C30(がん種を問わない自記式QOL測定質問用紙)、QLQ-LC13(肺がんに特化した自記式QOL測定質問用紙)

 

・A-2:研究手法(デザイン)

 薬剤効果を見ることが目的なので、RCTが適切と考えられる。本研究はRCT。

 

・A-3:割り付け

 ランダム割り付け(ブロックランダム法、ブロックサイズは4)

 

・A-4:盲検化

 なし。本文中の「blinded independent central review」はPFS(無増悪生存期間)の評価を指しているので注意。(なので、本解析はPROBE法)

 

・A-5:解析法

 FAS(審査報告書ではITTとなっているが、製薬協会の決まりで治験の解析はFASで行われる)

 

・A-6:介入以外の処置は同等か?

 プロトコル47ページ「Concomitant Medications/Vaccinations (Allowed & Prohibited)」に記載あり。

 

・A-7:サンプルサイズ

 後付け解析の為計算できない

 

・B:結果

 ①ベースライン(お題論文に記載がないのでプロトコル論文より)

             I (154名)       C(151名)

年齢:中央値、(幅)  64.5(33~90)      66.0(38~85)

男性:人数、(%)   92(59.7)        95(62.9)

東アジアからの参加:  21(13.6)        19(12.6)

EOCG PS0:     54(35.1)        53(35.1)

現喫煙者:       34(22.1)        31(20.5)

非喫煙者(喫煙歴無): 5(3.2)         19(12.6)

扁平上皮癌:      29(18.8)        27(17.9)

脳転移:        18(11.7)        10(6.6)

 

 ②QLQ-C30(Table 2より) 

I群6.9 vs C群-0.9 MD7.8 95%CI:2.9~12.8

 ③QLQ-LC13(Figure 3:悪化までの生存曲線)

HR0.66 95%CI:0.44~0.97

 ④仮想症例シナリオ用(Figure2より)

疲労:I群で少ない、不眠・下痢は両群で同程度。

 

<外的妥当性>

 

Aさん(stageⅢANSCLC)へキイトルーダ開始の説明に行くも、Bさんに説明に行くという痛恨のミス。

Bさんは倦怠感、下痢、不眠を前治療で経験しており、同じような症状に苦しむくらいなら治療はしたくないと。(主治医は把握していなかった)という設定。

 

Bさんの基本情報がなく、適用してよいのか不明な部分が多いが、倦怠感は少なくなりそうなので、効果も合わせるなら年齢等の状態にもよるがチャレンジする価値はありそう。

 

その前に、患者を取り違えるなど事前情報の把握の甘さと勉強資料がメーカーパンフというシナリオの「あなた」がヤバすぎる。

あと、舞台の病院の教育研修状況も危険。早急に改善しないと取り返しのつかない事故が近日中に起こりそう。