近畿大学CASPワークショップ(2018.7.1開催)の予習ついでにキイトルーダの費用対効果の論文を読んでみた
<背景>
Pubmedの「Similar articles」に出てきたので、なんとなく読んでみた。
なお、がんを扱っていない病院勤務の為、現物を見たことはないです。
<お題論文とチェックシート>
PMID: 28620848
Dropbox - 費用対効果チェックシートver2.pdf
<リサーチクエスチョンは?>
チェックシート(チェックリスト)に従ってアブストラクトから抽出、本文メソッドより追加の内容を拾うと(追加情報は赤字)
P: 進行性非小細胞肺癌(NSCLC)stage IV の患者。→要は前記事のP(腫瘍細胞の50%以上にPD-L1発現。18歳以上。NSCLCに対する全身化学療法の治療を受けていない。平均余命3ヶ月以上。RECIST 1.1で放射線学的に評価できる病変が1つ以上。ECOGのパフォーマンスステータス0または1。)
I:ペムブロリズマブ200 mgを3週ごとに静脈内投与。(35サイクル)
C:プラチナベースの化学療法
(5種類のうち1つを担当医が選択。投与スケジュールは事前登録情報かプロトコルを参照してください)
①カルボプラチン(AUC5~6)+ペメトレキセド(500mg/m2、アリムタ)
②シスプラチン(75mg/m2、ランダ)+ペメトレキセド(500mg/m2)
③カルボプラチン(AUC5~6)+ゲムシタビン(1250mg/m2、ジェムザール)
④シスプラチン(75mg/m2)+ゲムシタビン(1250mg/m2)
⑤カルボプラチン(AUC5~6)+パクリタキセル(200mg/m2、タキソール)
※PDが発生した場合、条件によってはI群の治療を受けることも可能
O:ICER(効果はQALYとLYで測定、QOL値はEQ-5Dで計測)
※LY=生存年数(QALYからQOLの評価を除いたもの)
<方法の評価>
・分析の立場:US third-party public healthcare payer
(公的保険支払者。つまりメディケア、メディケイド)
・分析期間:20年
・割引率:年率3%
・コスト見積もり:Table1に記載
・見積もりの根拠:NCCNガイドラインなど
・価格:米ドル(2016年)
・モデル:分割生存時間モデル
(癌患者の予後を「無増悪生存」「増悪後の生存」「死亡」の3状態に分けたモデル)
・パラメータ:Fig.2~4が相当するか?
・パラメータの根拠:KEYNOTE-024、専門家の意見
・根拠なしの値の感度分析での扱い:±25%で動かしている(一部50%も)
<結果とその頑健性>
・ICER(Table2):$US97621/QALY、$US78344/LY
・不確実性
→トルネード図による分析(Fig5):遷移確率
→散布図(Fig6):y=axの数式を見ているよう
・異質性:記載なし
・閾値:$US171660(WHOの$US50000/DALYを換算したとディスカッションに記載)
・資金源:公開されている(メルク)
・COI:公開されている(著者はメルク社員)
<まとめ>
有害事象の見積もりが肺炎を除いて、KEYNOTEでの報告値より軒並み高い。
閾値がディスカッションで三倍強の値になった根拠はよくわからない。
ただ、思ったより安いかな?
なお、日本でのキイトルーダの薬価は100mg/瓶で410541
2016年の為替レート(月平均)101~118
日本の価格をドル換算すると6958.3~8129.5となり、本文中のキイトルーダ治療費の$US8762より安い?