CARMELINA試験(リナグリプチンの心血管系への影響をプラセボと比較する非劣性試験)を読んでみた
<はじめに>
DPP4阻害薬の心血管イベントを検討した研究で話題の最新論文を読んでみました。
7/26付けの速報で「心血管イベント抑制」ではなく「主要評価項目達成」だったので、他のDPP4阻害薬と似たような結果だったんだろうなとは思っていましたが、先日ダパグリフロジンについて取り上げたので、ついでに読んでみました。
<お題論文など>
・お題論文
PMID: 30418475(全文フリー)
・登録情報
・プロトコル論文(今回も読んでないけど)
PMID: 29540217(全文フリー)
<批判的吟味>
ここから、本文を読んでいきたいと思います。
①RQ
・P:18歳以上(日本のみ20歳以上)の2型糖尿患者。HbA1C6.5%~10.0%。
BMI≦45 kg / m2。
以下の①か②を満たすこと
①アルブミン尿症(微小またはマクロ)および大血管疾患(虚血性心疾患、脳血管疾患、PAD)の既往
②腎障害:eGFR 15 以上45 mL/min/1.73 m2未満かeGFR 45 以上 75 mL/min/1.73 m2 でUACR > 200 mg/g か > 200 μg albumin/min か > 200 mg albumin/24 h を満たすもの
前治療(DPP4阻害薬、GLP1アゴニスト、SGLT2阻害薬を除く)でランダム化前8週間安定 。(インスリンの投与量は投与量の変化が10%以内のもの)
・I:リナグリプチン5mg1日1回
・C:プラセボ1日1回
※元のプライマリアウトカムは4P-MACE(=3P-MACE+不安定狭心症による入院)だったが、他の試験とそろえるため2016年(登録情報は2017.6)にセカンダリアウトカムだった3P-MACEが昇格
<セカンダリ>腎アウトカム(eGFR40%減、末期腎不全、腎死)
<2017.6に削除されたセカンダリ>3P-MACE、腎アウトカム(eGFR50%減、末期腎不全、腎死)
・T:観察期間の中央値2.2年(元は4年、アウトカム変更に伴い4.5年へ変更。611イベントの発生が必要と見積もられている)
⇒実際に集まったのは、年齢66歳前後、女性35%、白人80%弱、ヨーロッパ40%強、eGFR 54.7mL/min/1.73 m2、UACR162mg/g、BMI31.4、平均罹病期間14.5年、HbA1C8%、非喫煙者53%、収縮期血圧140mmHg、 拡張期血圧78mmHg、虚血性心疾患の既往58%、メトホルミン服用54%、SU剤32%、インスリン57%強、ACEiかARB80%強、スタチン服用71%
※両群に目立った偏りはなさそう
②方法論
・ランダム化:ブロックランダム法(地域で層別化)。
・盲検化:2者(患者、研究者)
・解析:FAS
・介入以外の処置:DPP4阻害薬、GLP1アゴニスト、SGLT2阻害薬は禁止。
※プロトコル36ページに「Sulphonylureas and insulin are known to cause hypoglycaemia. Therefore, caution is advised when linagliptin is used in combination with a sulphonylurea and/or insulin. A dose reduction of the sulphonylurea or insulin may be considered.」とあるが、どうやってI群に減量の考慮を伝えたのだろう?
※HbA1CはI群で最初の一年およそ0.5%下がったが、以降その差は小さくなっている。
・サンプルサイズ:3P-MACEで計算。611イベントとある。
腎アウトカムも計算されていて432イベント。
イベント数は854件と計算上充分であった。
③結果
・MACE:I群12.4%、C群12.1% HR1.02 95%CI 0.89~1.17
非劣性マージン1.3なので非劣性
・腎複合:I群9.4%、C群8.8% HR1.04 95%CI 0.89~1.22
・SAE:I群37.0%、C群38.5%
・重症低血糖:I群3.0%、C群3.1%
・類天疱瘡:I群7件、C群0件
・皮膚病変:I群5件、C群1件
<まとめ>
プロトコルに「インスリン使用者とSU剤使用者にリナグリプチン服用時に減量考慮する旨の勧告」とあったのだが(誤訳してるかも)、どうやって盲検化維持したのだろう?
不安定狭心症による入院はI群1.2%、C群1.4%、心不全により入院がI群6.0%、C群6.5%と差はないので、上記勧告による影響は小さいのだろうが。