日本のRCTの質はどの程度か?(2010年での評価)
<はじめに>
前回記事で日本のRCTの質はどうなっているのか?という疑問がわいたので、日本で行われたRCTの質を評価した論文を読んでみることにしました。
(参考:前回記事)
<お題論文>
Are Japanese randomized controlled trials up to the task? A systematic review. - PubMed - NCBI
PMID: 24595104
<読んでみた>
①リサーチクエスチョン
P:日本のRCT(2010年に報告されたもの)→うち60%をランダムに抽出
E/C:(該当なし)
O:コクランrisk of bias tool(2009)で評価
②方法
データベース:MEDLINE、EMBASE、CINAHL、PsycINFO、医中誌
検索期間:2010.1.1~201012.31
検索語:blind,placebo,RCT,randamization,Japanなど
元論文:RCTYのみ
評価者:二者独立→協議
出版:英語、日本語
③結果
・集まった論文(1013報)の内訳
疾患 ⇒循環器15.9%、消化器11.5%、内分泌代謝11.2%、筋骨格系9.8%…
介入の種類 ⇒薬物49.9%、理学療法10.5%、デバイス8.5%…
比較対象 ⇒head-to-head45.0%、placebo38.9%…
デザイン ⇒並行群間75.2%、クロスオーバー20.2%…
アームの数 ⇒2群77.1%、3群15.7%…
サンプルサイズ⇒50未満54.5%、50~99 19.6%、100~199 12.9%…
・質の評価(出来ている vs 不明 vs 出来ていない)
※数字で示されていないので表からおおよその数値を読み取っています、注意!
ランダム化できてるか?:30%、70%、0%
隠蔽はできているか?:20%、75%、5%
患者をブラインドしたか?:50%、35%、15%
医療者をブラインドしたか?:45%、40%、15%
アウトカム評価者をブラインドしたか?:15%、80%、5%
脱落率の報告はしたか?:70%、15%、15%
割り付けられた患者はアウトカム評価にまわされた?:45%、30%、25%
アウトカムはすべて報告したか?:5%、95%、0%
ベースラインは均等か?:65%、30%、5%
介入以外の処置は等しいか?:55%、35%、10%
コンプライアンスは許容される範囲か?:45%、50%、5%
アウトカムの評価時期は両群で近しいか?:95%、3%、2%
・発表されたジャーナルと質(high quality)
国際誌50.5%、国内誌(事前登録あり)50%、国内誌(事前登録なし)37.7%
<まとめと感想>
ディオバン事件後に行われたディオバン事件頃のRCTの質を報告した貴重な論文。
個人的にはCOIや資金源に関する調査もわかりやすい形で示してしてほしかった。(ディスカッションの項目で80%が非開示との記載あり)
著者らは日本のRCTの特徴としてサンプルサイズの小ささをあげている。個人的には研究資金の少なさの表現型だと思っている。ディオバン事件後、メーカーからの資金提供は難しくなっており、現在同じ調査をするともっとサンプルサイズの小型化が進んでいるのではないだろうか?
あと、大きな破綻は見られないが「不明」がやたら多いような気がする。
単年の評価ではなく複数年にわたる比較調査は欲しい。(だれか一緒にやりませんか?)
今回の論文に関連した「抄録から質を予測する」論文をエビデンス展覧会(エビテン)で取り扱いましたので、よろしければご覧ください。