窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑪~脳血管イベントの二次予防に対するスタチン間の効力の違い~

<お題論文>

Secondary prevention of major cerebrovascular events with seven different statins: a multi-treatment meta-analysis. - PubMed - NCBI

PMID: 28919704

 

<急ぐ人向け結論>

アトルバスタチンが良いとの結果だが、ネットワークメタ解析(NMA)の手法が雑で、結果としてとても使えたものではない。

というか、読むだけ時間の無駄。

 

薬剤師界のエビデンスマスターこと青島先生へ

これを読む時間を、金麦タイムか出張時にお泊り許可がもらえるように奥様に媚を売る時間にあててください。

 

<リサーチクエスチョン>

 

P:アテローム動脈硬化性心血管疾患の患者

 

I/C:lovastatin、アトルバスタチン(リピトール)、フルバスタチン(ローコール)、シンバスタチン(リポバス)、ピタバスタチン(リバロ)、プラバスタチン(メバロチン)、ロスバスタチン(クレストール)

 

O:主要脳血管イベント(致死性脳卒中、非致死性脳卒中TIA)

 

⇒実際に集まったのは、24.3%女性、143~319週の研究(4週以上が組み入れ条件)

Table1より、被験者は50代以上であることが分かる(5研究は年齢不明)

 

<システマティックレビュー(SR)の評価>

 

データベース: PubMed,、Embase、 Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane Central Register of Controlled Trials

 

検索語:各スタチンの成分名、心血管疾患、HMG-CoA還元酵素阻害薬

 

検索期間:2011.1.1~2016.6.30(2011年以前はSRの参考文献を利用)

 

元論文:RCT対象。文献の質を評価した形跡なし

 

評価者:2者独立でスクリーニング、研究の組み入れは第三者が独断で選択

 

出版:言語に関する制限の記載なし。参考文献は見ている。専門家連絡なし。funnnel plotなど報告バイアスの検討はしていない

 

異質性:事前登録なし。Pの近似性は年齢等不明項目あり疑問が残る。Oは問題なさそう

 

⇒SR部分にバイアスが入り過ぎである。

(まさかの設定したバイアス評価全項目フルコンプリートでバイアス有りとは)

特に評価者バイアスはキーワードだけを見ていると二者独立で評価し意見対立時は第三者が仲裁したように見せかけており悪質。

言語制限は有無しか想定していなかったが、今回初めて「確認できない」という事態に。

なお、年齢「NA」となっている文献㊾を確認するとTable1にロスバスタチン群60±11歳、アトルバスタチン群59±12歳との記載を見つけることができる。

Comparison of the efficacy of rosuvastatin versus atorvastatin in reducing apolipoprotein B/apolipoprotein A-1 ratio in patients with acute coronar... - PubMed - NCBI

著者は元論文を読んでおらず、当然の帰結として元論文の質の評価ができなかったようだ。

 

<ネットワークメタ解析(NMA)の評価>

 

ネットワーク図:プライマリアウトカムのものが一つだけ示されている

 

閉じた環:少数有

 

直接・間接比較:Table2と3が該当?わかりにくい

 

一致性:検討された形跡はないが、結果を見比べると一致していない

 

資金源、COIの開示:資金源は公開されていない

 

<結果>(Table3より)

 

有意差があったのは以下の二つ

アトルバスタチンvsロスバスタチン RR1.7(1.10~2.50)

アトルバスタチンvsコントロール RR1.5(1.10~1.90)

予防効果として見るようだが、結果の見方についての説明がない。

 

アブストラクトの結果にあったアトルバスタチンvsロスバスタチン RR0.6(0.40~0.92)に相当する結果が本文中に出てこない。

 

<結論>

 

読んでしまったアナタへ。

手遅れです。

 

最初に結論から読んで、途中過程をすっ飛ばしたアナタへ。

論文データを捨てましょう。

紙で印刷してしまったのなら丸めてゴミ箱へ投げ入れましょう。

 

<感想>

 

少し読めば「ヤバい」とわかる論文を掲載したDrug Design, Development and Therapy は科学雑誌として大丈夫なのだろうか?査読体制はどうなのかと思い調べてみると、査読者名が公開されており「Dr Akshita Wason」エディター「Dr Tuo Deng」という名前が確認できた。

このエディターは現在はアメリカで研究している中国人であり、著者が中国人であるので身びいきが働いたのではないかと邪推してしまった。

 

※注意!

エディターがPPARγの研究者なので、J-DOITがらみで門脇教授(PPARγ下流の物質、アディポネクチンの研究者)に良い感情を持っていないので、そうしたバイアスが記事全体にかかっていることにご注意ください。

 

 

 

費用対効果の論文(Cost-Effectiveness Analysis=CEA)チェックシート改訂への道①~過活動膀胱に対するソリフェナシンの費用対効果は?~

<背景>

以前公開したCEAチェックシートを改訂すべく過活動膀胱(OAB)に対するソリフェナシンの費用対効果の論文を読んでみることにした。

Dropbox - 費用対効果チェックシートver1.pdf

 

<お題論文>

Cost-effectiveness of solifenacin compared with oral antimuscarinic agents for the treatment of patients with overactive bladder in the UK. - PubMed - NCBI

PMID: 29686801

この論文は、イギリスで承認を受ける際にメーカーが提出するCEA報告です。

 

<ざっくり結論>

著者「ソリフェナシン5mg/日は他の抗コリン薬より費用対効果高かったよ~」

僕「コストを安く見積もったからってだけじゃないっすか?」

 

<リサーチクエスチョンは?>

チェックシート(チェックリスト)に従ってアブストラクトから抽出すると

 

P:過活動膀胱の患者

I:ソリフェナシン5mg/日(日本ではベシケア5mg/日なので、日本と同じ用量)

C:他の経口抗ムスカリン

O:ICER(効果はQALYで測定、QOL値はEQ-5Dで計測)

 

本文メソッドより追加の内容を拾うと(追加情報は赤字

 

P:過活動膀胱の成人患者

 

I:ソリフェナシン5mg/日(日本ではベシケア5mg/日なので、日本と同じ用量)

 

C:他の経口抗ムスカリン

→主たる比較対象として、トルテロジン徐放4mg(デトルシトール)

→サブの比較対象として、フェソテロジン4mg・8mg(トビエース)、オキシブチニン10mg(徐放・速放 ポラキス)、ソリフェナシン10mg、TolterodineIR4mg、トロスピウム(スパスメックス、日本では販売中止)

 

O:ICER(効果はQALYで測定、QOL値はEQ-5Dで計測)

 

用量が日本と同じ薬剤が多い

 

<方法の評価>

 

・分析の立場:NHS(保険支払者)

 

・分析期間:5年

 

・割引率:年率3.5%

 

・コスト見積もり:Table2に記載

 

・見積もりの根拠:主に公的機関からのプレス発表。リソースの見積もりはアステラスの資料

 

・価格:ポンド(2015~2016年)

 

・モデル:マルコフモデル

(TableS1は治療の流れ。状態遷移を含めたモデルの提示無し)

 

・パラメータ:Table1に記載

 

・パラメータの根拠:治療効果はネットワークメタ解析。状態遷移についてはミラベグロン(ベタニス)のCEAより引用している。副作用で中断した後の再開率5.6%は仮定の数値

 

パラメータの設定根拠はバイアスの入りやすいものなので注意が必要か

 

<結果とその頑健性>

 

・ICER(Table3):1QALY増加に必要なポンド

→ソリフェナシン5mg/日が優位を示したもの:トルテロジン徐放4mg、フェソテロジン4mg・8mg、オキシブチニン10mg(徐放)、ソリフェナシン10mg

→オキシブチニン10mg(速放)22393、TolterodineIR4mg 23975、トロスピウム 15007

 

・不確実性

→トルネード図による分析(結果に影響を与えた因子):AEによる中断(仮定値)

→散布図:優勢に偏っている

 

・異質性:記載なし

 

閾値:3万ポンド

 

・資金源:公開されている(アステラス)

 

・COI:公開されている(著者はアステラス社員)

 

優位の根拠は有効性の差ではなく、コストの見積もりの差(ほぼ差はない)

 

<個人的結論>

 

当然のごとく入っているスポンサーバイアスを考えれば、どの薬剤を用いても費用対効果の面で差はないと考える。

 

 

<チェックシート改訂>

 

改訂内容

検索に使えるキーワードを追加:分析期間(time horizon)、マルコフモデル(Markov)

閾値に有無をチェックするボックスを追加

 

Dropbox - 費用対効果チェックシートver2.pdf

 

是非、ご活用ください!

費用対効果の論文(Cost-Effectiveness Analysis=CEA)を読むとき用のチェックシートを作ってみた

 今回はタイトルのように、費用対効果の論文を読むための、簡便(?)なチェックリストを作成しましたので、公開します。

費用対効果チェックシートver1.pdf

 

<作成の背景>

f:id:zuratomo4:20180504223333p:plain

 

 薬剤師界が誇るエビデンスマスターこと青島先生の上記ツイートにクソリプを送って絡んだわけですが、論文の怪しさはわかるものの、「具体的に何がヤバいのか・結果の信憑性はどのくらいなのか?」に回答できませんでした。

 なお、青島先生が疑問を投げかけていた論文は以下になります。

Cost-effectiveness of a New Opportunistic Screening Strategy for Walk-in Fingertip HbA1c Testing at Community Pharmacies in Japan. - PubMed - NCBI

研究実施機関である筑波大学からのプレスリリース

薬局での指先 HbA1c チェックの優れた医療経済性 

 

 

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そして、こういう結論に。

 CEAは、諸外国では薬剤承認申請時の資料として必須ですが、日本では「CEA?出しても承認にも薬価にも反映されないゴミだから出さねぇよ」がまかり通ってました。

 近年、オプジーボC型肝炎治療薬など高額な医薬品が承認されるようになり、医療行政の破綻の危機が叫ばれ、CEAを用いて効果だけでなく経済性(コスト)も評価する流れ(医療技術評価=HTA)となりました。

(実際はすでに破綻してるんですけどね。税金と問答無用に天引き額の上がる保険料が証拠です)

 世界的に何年遅れだよって感じの遅さですが、日本でもHTAが行われるので、医薬品の専門家である薬剤師が医薬品のCEAを読めないのは極めてマズいです。

 ただ、集学的な研究なので、読みこなすのは極めて難しく、CEAを読み解く勉強会はレギュラトリーサイエンスが主催するワークショップが東京で開催されているほかは、以前の記事で紹介した岡山CASPくらいしかありません。

 つまり、研究論文を読みこなすための素地すらできていないのが現状です。

読みこなすための素地としての日本語での解説本はありますので、実際に数を読みこなすためのツールが必要であると判断し、今回のチェックシートの作成となりました。

 

<既存のチェックリスト>

Consolidated Health Economic Evaluation Reporting Standards (CHEERS) Statement | The EQUATOR Network

日本語の解説

 

<作成の元論文>

 

 CEAの報告様式の統一を目的に2013年に複数の雑誌で同時にCEA報告様式(=CHEERS声明)が出されました。

過去記事では(先週、費用対効果の論文を読むワークショップに参加しました - 窓際さんのお勉強な日々)PLoS Oneのものを利用しました。

Cost-Effectiveness Analysis of a National Neonatal Hearing Screening Program in China: Conditions for the Scale-Up

その他のCHEERS声明(掲載雑誌が違うだけで、同じ内容)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23531194

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23531108

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23529982

なお、CHEERS声明はCONSORT声明を基に作成されている。

 

<各項目の採否と理由>

①タイトルは経済評価研究であることを明らかにしているか?

→「×」:このチェックシートは「CEA」であることを確認していないと使えないので

②構造化抄録か

→「△」:研究の目的(仮説)の抽出だけ採用。

③研究の目的(リサーチクエスチョン)と現実の政策や診療の関係

→「×」:②と本文メソッドで抽出するように作成したので、簡便に読むために、ここの部分をチェックリストに盛り込むことは避けた

④分析対象となるベースケースの集団とそのサブグループの特徴。

→「〇」:Pの本文相当部分。

⑤介入の状況と場所

→「〇」:要はI群

⑥研究の立場(視点)

→「〇」:患者個人やその家族、医療機関医療保険の支払者、政策決定者など立場によって計算すべきコストが変わってくるため、CEA読解には必須の項目

⑦比較対照

→ 「〇」:要はC群

⑧分析期間

→「〇」:CEAはモデルを構築し、一定期間動かすシミュレーションで成り立つ研究なので必須の項目と考えた。

⑨割引率

→「〇」:良い結果は早期に得られるほど価値が高い(遅くに得られるほど価値が下がる)ことを軸に、各研究国ごとの経済状況を踏まえ、遅くに出た良い結果の価値を下げて(割り引いて)評価する。その際の価値の減衰の程度。長期分析するCEAでは必須と考えた。

⑩アウトカムの指標

→「〇」:評価における効果(ベネフィット)の尺度は何を選択したか?を見る。研究のアウトカムは多くはICER(増分費用対効果比)であるが、このICERの計算にはコストと効果が必要である。効果の測定に何を使ったかを選択形式で提示した。

 ・OALY(質調整生存年)、DALY(障害調整生存年、QALYの逆。WHOで採用されている)、その他(主には生存年LYを想定)

⑪効果の測定(推計に用いたデータ)

→「×」:ここまでやると大変だと思い、一応外すことにした。(改訂で盛り込みなおすかも)

⑫選好に基づくアウトカムの測定や評価

→「×」:ここまでやると大変だと思い、一応外すことにした。(改訂で盛り込みなおすかも)

⑬資源の消費と費用の推計

→「〇」:コストの見積もりの根拠を求めている。

⑭通貨

→:「〇」:研究時点ごとでお金の価値は異なる。特にドル換算で表現している場合、為替レートがないと、実際に見積もられた費用がわからなくなる。経済評価が必須の研究なので、必須の項目と考えた。

⑮モデルの選択

→「〇」:シミュレーションの元となる大事な項目。CHEERS声明では図示することを強く推奨しているが個人的には必要不可欠と考えている。アウトカムの発生が1回だけの場合に用いる決定樹モデルと、アウトカムの発生が複数回発生する場合に用いるマルコフモデルがあるので、選択形式にした。また選びやすいよう模式図も添付した。

 

⑯仮定

→「△」:⑱でカバーできると考えた。

⑰解析方法

→「△」:歪んだ、欠測した、打ち切られたデータ。外挿方法。データを統合する方法。モデルの妥当性を検討・調整する(半サイクル補正など)方法をみるが、異質性の検討でカバーできると考え、独立項目としては設定していない。

⑱パラメータ

→「〇」:すべてのパラメータについて、その値と範囲、リファレンスを提示する。要はシミュレーション各選択肢での確率(移行確率、遷移確率)の見積もり。これがないとシミュレーションできないので必須の項目である。リファレンスの頑強性に注目しないと恣意性が見抜けないと考え、リファレンスの研究デザイン確認の項目を追加した。

⑲増分費用と増分アウトカム

→「△」:要はICERの分子分母の値。(実際はICERをすべてに求めているわけではない)項目としてはICERとして扱った。

⑳不確実性

→「〇」:⑪で不確実だったデータの値を想定される範囲で変動させて結果に違いがないか見ている。選択形式にした。また、閾値を動かして適正価格を探る感度分析を考慮し、閾値を変動させる項目を追加した。

一因子づつ動かしてICERへの影響を検討(トルネード図)

f:id:zuratomo4:20180504235118p:plain

複数因子を同時に検討(ICER Scattered Plot)

ãICER Scattered Plotãfreeãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

㉑異質性

→「〇」:ベースライン特性が異なることによる患者間変動で説明できる費用や効果、費用対効果の差についての検討。集学的研究であるCEAでは不可避の検討と考え設定した。

㉒考察(研究結果、限界、一般化可能性、現在の知見)

→「×」:エビデンスを使うのに考察を読むことは少ないので削除。

㉓資金源、㉔利益相反

→「〇」:恣意性が入り込みやすい研究デザインなので必須と考えた。

 

以上です。

使ってみて、「こうした方が良い」「ここ間違っている」などご意見をいただければ幸いです。

 

広島文献を読む会(2018.4.27開催)のお題論文を読んでみた~内視鏡術後のピロリ菌除菌で胃がんが予防できるか?~

<背景>

 

 HCAのメンバーには入れてもらっているものの参加できていないので、一人寂しく読んでみた。

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<急ぐ人向け結論>

 

除菌した方が良いとの結果。

しかし、研究中に怪しげな操作が行われており、除菌が有用とは言えない。

 

<お題論文>

 

Helicobacter pylori Therapy for the Prevention of Metachronous Gastric Cancer. - PubMed - NCBI

PMID: 29562147

 

事前登録情報

Effects of H. Pylori Eradication on the Gastric Preneoplastic Lesion and Neoplasm After ESD - Tabular View - ClinicalTrials.gov

 

使用するチェックシート

論文を10分で読むためのワークシート - aheadmap ページ!

 

<臨床疑問>

 

アブストラクトより

P: 早期胃癌または高悪性度腺腫の内視鏡的切除を受けた470人の患者

I: H. pylori除菌療法

C: プラセボ

O1: 1年のフォローアップかそれ以降での内視鏡検査で検出された異時性胃癌の発生率

O2: 3年後の胃体部小弯の腺萎縮の改善

 

本文より追加

P:18~75歳。がんは内視鏡検査で診断。(転移のない早期がん)ピロリ菌は組織学的検査かウレアーゼテストで確認。

I:アモキシシリン1000mg、クラリスロマイシン500mg、ラベプラゾール10mgを1日2回7日間

C:プラセボ+ラベプラゾール10mg

O:最初の1年は3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月。それ以降は年2回。最大3年。

 

⇒実際に集まったのは平均60歳、男性約70%、家族歴有が20%弱。偏りはなさそう。

 

<ランダム化比較試験(RCT)の批判的吟味>

 

ランダム化?:OK

アウトカムは明確?:二つなのでOK

真のアウトカム?:発生率はいいけど、腺萎縮の改善は代用度が高そう

盲検化?:二重盲検(正確には参加者、ケア提供者、研究者、アウトカム評価者の4者)

ITT解析?:modified intention-to-treat(mITT)とアブストラクトにある

(実際にmodified intention-to-treatで解析されたのはO1: 1年のフォローアップかそれ以降での内視鏡検査で検出された異時性胃癌の発生率だけのよう)

脱落率:O1は15.8%、O2は30.4%

 

⇒「modified intention-to-treat」で解析から除外していいのは、割り付け後に治療を受けなかった者のみなのに、追加手術も除外されておりmITTとは言えない。

O1での除外は介入群42名、対照群32名だが、介入群42名中36名と対照群32名中24名が追加手術を理由に解析から除外されている。

このやり方は、介入群で有意差を出すときに使われる結果の信頼性を損なう方法。

(介入群の結果が良いように錯覚させるバイアスが働くため)

 

※なお、ここで不誠実な方法で除外された人をO1のアウトカム発生者として計算すると、介入群50名(21.2%)、対照群51名(21.8%)となり、有意差は消える。

 

<結果>

Fig2より

O1:異時性胃癌の発生率 HR 0.50(0.26~0.94)

 

Table2より(記載順も論文準拠)

O2:腺萎縮改善率

幽門 I:25.8%  C:18.8%   OR 1.51(0.88~2.59)

小弯   I:48.4%  C:15.0%   OR 5.30(3.08~9.13)

大弯  I:24.5%  C15.8%    OR 1.73(0.98~3.03)

 

Table2で、プライマリアウトカムが二つ目に記載されていることに強烈な違和感。

(プライマリアウトカムは論文でもっとも言いたいことなので、通常1番最初に記載する)

で、登録情報を見ると「腺萎縮および腸上皮化生の改善」がオリジナルのプライマリアウトカム。

はい、SPIN(良い結果に見せかけるためにアウトカムを途中で変更すること)です。

途中もっともらしくサンプルサイズの計算が載ってましたが、デコイです。

更に解析で都合の悪い症例を除いているので、ほぼ捏造ですね。

「ちょっと盛られた」臨床試験どころの話ではないです。

( 医学書院/週刊医学界新聞(第3246号 2017年10月30日 )

 

この結果をもとにピロリ菌の除菌を迫るのは止めましょう。

それは、極めて不誠実で詐欺的な行動です。

 

今回は以上です。

会場がどんなふうに盛り上がっているのか気になって仕方ありません(´;ω;`)

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑩~SGLT2阻害薬、GLP1アゴニスト、DPP4阻害薬の全原因死亡の比較~

<急ぐ人向け結論>

 

SGLT2阻害薬サイコー!(そりゃあ、そういう論文集めてるからね)

 

<この論文を選択した理由>

ツイッターのTLで見かけて読んだものの、まだPMIDが決まってなかったので放置していた論文。(内容的にも大した価値はないし)

たまたまTLで再度見かけたので、PMIDを確認出来たので記事化することにした。

 

<お題論文>

Association Between Use of Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors, Glucagon-like Peptide 1 Agonists, and Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibitors With ... - PubMed - NCBI

PMID: 29677303

 

評価シートはコチラ

Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver7.pdf

 

<リサーチクエスチョン>

 

P:2型糖尿病

 

I/C:SGLT2阻害薬、GLP1アゴニスト、DPP4阻害薬

 

O:primary→全死亡

   secondary→心血管死、心不全心筋梗塞全、非致死性)、不安定狭心症脳卒中全、非致死性)、有害事象(全、重篤、試験中断に至ったもの)、低血糖minor、major)、(class-specific SGLT2阻害薬=尿路感染症、GLP1アゴニストとDPP4阻害薬=急性膵炎

 

アブストラクトより抜粋。赤字は本文より追加

 

⇒実際に集まったのは、50代(DPP4阻害薬群がやや若い)、BMI29超、男性比率50%超、Hba1c 8%強

 

<システマティックレビュー(SR)の評価>

 

データベース:MEDLINE、Embase、Cochrane library

 

検索語:不明(eMETHOD1)

 

検索期間:~2017.10.11

 

元論文:RCT、risk of biasはしたが結果はeFig1,Etable4のため確認できず

 

評価者:二者独立→第三者介入

 

出版:英語のみ。reference OK 、専門家連絡なし、Egger testでバイアスが一部にみられる

 

異質性:事前登録なし。 PとOの統合は問題ないと思われる

 

<ネットワークメタ解析(NMA)の評価>

 

ネットワーク図:総合のものが一つ示されている

 

閉じた環:すべてに有

 

一致性:非一致無し

 

資金源、COIの開示:OK

 

<結果>

 

Fig3(通常のメタ解析)

つまりは、対プラセボ

 

DPP4阻害薬  HR1.02(0.94~1.11)

GLP1アゴニスト HR0.88(0.81~0.94)

SGLT2阻害薬      HR0.80(0.71~0.89)

 

NMAの結果→eTable5,eFig6(見れない)

ランキング→プロットのみ

 

クラスごとにくくった大雑把な比較。

最初に設定されたアウトカムのうちsecondary扱いのものはすべてappendixへ

(そもそも個々の研究の統合解析でprimaryとかsecondaryとか意味あるの?)

NMAをランキング付けに使っているが、クラスごとに分けているのでやる意味は少ない。

比較検証が雑過ぎて、この研究のリサーチクエスチョンに臨床的・研究的価値があるのか疑問。

要は有名論文読んどけばいいってことで。

 

 

 

 

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑨~関節リウマチの生物学的製剤はどれが良いか?~

<急ぐ人向け結論>

 

国内承認薬間ではどれでも大差なし!(但し論文がもう古いので改訂版を探そう)

 

<この論文を選択した理由>

 

 神戸薬科大学studentCASPに参加した際いただいた過去の開催報告の冊子にネットワークメタ解析の論文があったことを思い出したので、読んでみた。

 なおCASP(Critical Appraisal Skills Programme)とは、医療や保健の現場で判断をする職種に就いている人だけでなく、その判断に関わるすべての人が、その根拠をわきまえた上で判断し行動できるように支援する市民のための健康支援活動のことです。

 とは言っても、一般市民はおろか医療従事者間にも十分広まっているとは言い難い状況です。

 なので、千春会病院の高垣伸匡先生を中心に学生のうちから臨床論文を読める力をつけようと学生をターゲットとしたCASPとして活動しているのがstudentCASPです。

 複数の薬科大学で開催されていましたが、参加者不足からいくつかは活動中止に追い込まれたようです。(是非、再開してほしい。特にわが母校の摂南大学には)

 定期的に活動を続けていることを僕が把握しているのは、神戸薬科大学兵庫医療大学近畿大学です。

 なかでも、神戸薬科大学は学生が主体となって開催している珍しい大学です。(以前紹介した平社員先生の母校でもあります。主体となっているEBM倶楽部は平社員先生の後輩でもあります)

casp-japan.com

 

前置きが長くなりました。

 

<お題論文>

A network meta-analysis of randomized controlled trials of biologics for rheumatoid arthritis: a Cochrane overview. - PubMed - NCBI

PMID: 19884297

第5回studentCASP in Kobe (2012.11.23)より

訂正が入っているので、訂正版のpdfはこちら

http://www.cmaj.ca/content/suppl/2010/04/15/cmaj.091391.DC2/bio-singh-rev.pdf

文献の評価シートはコチラ

Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver7.pdf

 

<リサーチクエスチョン>

 

P:関節リウマチ(RA)の患者

 

I/C:アバタセプト(オレンシア)、アダリムマブ(ヒュミラ)、anakinra、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、ritukximab(リツキサン、適応外)

 

O:有効性(ACR50=50%改善率)、安全性(有害事象による中断)

 

⇒本文からの追加情報はなし。コクランレビューの再解析論文。

 

 

<システマティックレビュー(SR)の評価>

 

データベース:Cochrane library

 

検索期間:~2009.5.30

 

検索語:RA

 

元論文:コクランレビュー(RCTのSR)、risk of bias 個々のSRで済み

 

評価者:二者独立、意見対立時の方法の記載なし

 

出版:英語(元のレビューは制限なし)、参考文献・専門家連絡ともに元のSRで済み

 

異質性:事前登録なし、PはSRごとにバラバラ、Oは問題なし

 

⇒コクランレビューの再解析なので、方法論的には完璧のはず。集まった文献の質や出版バイアスはどうにもならないが、それへの言及はない。

つまり、元の研究の評価は本研究の著者は行っておらず、元となったコクランレビューに丸投げしている。

 

*当該研究の方法が「科学的に信頼のおける方法で行われているかの評価」を批判的吟味と呼んでいる。SRの批判的的吟味とはコクランの方法をどの程度満たしているかを評価している。つまり、「コクランの方法=SRの方法としては最高」ということ

 

<ネットワークメタ解析(NMA)の評価>

 

ネットワーク図:無い。というか書く必要がない。

⇒SRの再解析なので、個々の研究を繋いでいるのはplacebo

 

閉じた環:無い。

⇒個々の研究を繋いでいるのはplacebo(このタイプのNMAのネットワーク図はstar shapeと呼ばれる) つまり直接比較は集めておらず、研究の環は作りようがない。

 

資金源、COI:開示されている

 

結果

有効性:Fig4

有意差があったのはanakinra VS エタネルセプト OR 0.34(0.14-0.81)でエタネルセプトが良い

 

安全性:Fig5

ややエタネルセプト優位

アダリムマブ VS エタネルセプト OR 1.89(1.18-3.04)

anakinra VS エタネルセプト OR 2.05(1.27-3.29)

エタネルセプト VS インフリキシマブ OR 0.37(0.19-0.70)

 

コクランのSRを利用することで、文献を集めて評価する手間を省いた点がアイデアとして光る。

ただ、直接比較を集めていない時点で、NMAとしての価値は限りなく低い。

 

今回は久々なので、リハビリもかねてこんな感じで読んでみました。

4/7第△回、居酒屋抄読会in梅田 開催報告

4/7に居酒屋抄読会を開催しましたので報告します。

参加は当初はキャノン先生・ぐっち先生・にいやん先生・リンコ先生・僕・スペシャルゲストの馬淵先生の6名、後半から近所で講演後のソクラテス先生に緊急参戦していただいた結果7名での配信になっています。(論文を読み終わった後が特に楽しいので、録音を是非ご視聴ください)

 

開催案内、シナリオ、お題論文は以下から

gacharinco.hatenablog.com

 

録音は以下から

twitcasting.tv

 

 

今回はフェブキソスタットの論文を題材に扱いました。

 

前半は以前記事にしたRCTです。

フェブキソスタットの心血管イベントを評価した論文読んでみた(CARES)trial - 窓際さんのお勉強な日々

 

後半は尿酸降下療法を比較したネットワークメタ解析です。

www.ncbi.nlm.nih.gov

PMID: 27605442

 

ネットワークメタ解析(NMA)を読む際に使ったシートは以下からどうぞ

Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver7.pdf

 

開催報告もかねて、NMAを読んでいきたいと思います。

 

臨床疑問は?(黒字はアブストラクトから、赤字は本文追加分)

 

P:高尿酸血症痛風18歳以上の患者

 

I/C:アロプリノール、ベンズブロマロン、フェブキソスタット(20,40,60,80,120,240mg/day)、pegloticase(8mg/2w,8mg/4w)、プロベネシド

 

O:血清尿酸値(6mg/dL以下の達成率)、何らかの有害事象

 

実際に集まったのは、30歳以上、男性比率80%以上、ベースラインの尿酸値8mg/dL超、4~52週の試験でした。

 

次にシステマティックレビューの評価

・データベース: PubMed, Medline, Embase, Cochrane Library databases ,ClinicalTrials.gov

・検索期間:~2016.1.16

・検索語:PICOごとに検索語を設定して検索。(最後のSはstudy designです)

 (P) hyperuricaemia, hyperuricemia, gout, (I) urate-lowering therapy, uric acid, urate, (C/O) allopurinol, benzbromarone, febuxostat, pegloticase, probenecid, and (S) random*, and randomized controlled trial.

・元論文:RCT、risk of bias している(appendix。ブラインドでハイリスク評価だが、検査値に影響するのか?)

・評価者:3者独立→第三者介入

・出版:英語のみ。 reference、専門家連絡なし。funnel plotは研究数が足りず実施不可

・異質性:事前登録なし。Pは大きな問題なし。Oは安全性の中身が不明

出版バイアスと異質性バイアスは避けられない感じだろうか

 

NMAの評価

・ネットワーク図:一部あり

・閉じた環:少数有(プロベネシド、ベンズブロマロン、pegloticaseは比較研究が少ない)

・直接間接比較:Table2,Fig3

・一致性:非一致なし(普通のメタ解析段階での異質性はある)

・資金源、COI:ともに開示

ほぼアロプリノール対フェブキソスタット各用量の比較(;^ω^)

 

結果

有効性(OR1より大きい=フェブキソスタットが良い)

allopurinol vs. febuxostat

  20 mg QD: OR 0.27, 95% CI: 0.13–0.59

       40 mg QD: OR 1.52, 95% CI: 1.15–1.99

  80 mg QD: OR  3.54, 95% CI: 2.80–4.47

  120 mg QD: OR 5.95, 95% CI: 4.15–8.52

       240 mg QD: OR 17.41, 95% CI: 8.22–36.89

benzbromarone vs. febuxostat

       20 mg QD: OR 0.20, 95% CI: 0.06–0.73

       120 mg QD: OR 4.37, 95% CI: 1.47–12.93

       240 mg QD: OR 12.78, 95% CI: 3.58–45.60

 

安全性(ORが1より大きい=右の薬剤が良い)

febuxostat 120 mg QD vs. allopurinol: OR 0.72, 95% CI: 0.56–0.91

probenecid vs. allopurinol: OR 8.40, 95% CI: 1.00–70.21

probenecid vs. febuxostat 40 mg QD: OR 8.56, 95% CI: 1.02–72.01

probenecid vs. febuxostat 80 mg QD: OR 9.62, 95% CI: 1.15–80.86

probenecid vs. febuxostat 120 mg QD: 11.71, 95% CI: 1.38–99.29

 

サンプルサイズが小さく95%CI(信頼区間)の幅が大きく、結果の精確性は低い。

また、尿酸(UA)を下げることは代用のアウトカムであり、UAを下げること=健康に良いとは限らないので注意。

 

おまけ

今回緊急参戦のソクラテス先生は5/26に兵庫医療大学で講演の予定とのこと。

ご都合がよろしければ、ご参加ください。

kumamoto-pharmacist.cocolog-nifty.com

あと、著書もどうぞ(5/26に持っていけばサインがもらえるはずです)

山本 雄一郎: 薬局で使える実践薬学

山本 雄一郎: 薬局で使える実践薬学