窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

抗うつ薬の至適用量は?

<はじめに>

 

 ずいぶん更新さぼってましたが、いい加減記事を投稿していきます(;^ω^)

 

<お題論文>

 

 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31178367

 PMID: 31178367

 

 補足資料

 https://www.thelancet.com/cms/10.1016/S2215-0366(19)30217-2/attachment/23959cce-d88e-4d27-9b8d-fc1820147377/mmc1.pdf

 

 今回の研究のもとになったデータセットは以下の論文より使用

 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29477251

 PMID: 29477251 

 

 内容は過去記事で取り上げています。

zuratomo4.hatenablog.com

 

<読んでみた>

 

P:その研究が行われた当時使われていた診断基準 (Feighner criteria, Research Diagnostic Criteria, DSM-III, DSM-III-R, DSM-IVDSM-5, and ICD-10)でうつ病と診断された急性期の18歳以上の成人患者

双極性障害、精神病性うつ、治療抵抗性うつ病患者が20%以上含まれる試験は除外)

I/C:SSRI5種(citalopram、エスシタロプラム、fluoxetine、パロキセチンセルトラリン)、ベンラファキシン、ミルタザピン

 →英国での使用量になっているので、ベンラファキシンが速放錠のものになっている。なお、速放錠375mg=徐放カプセル225mg(承認審査資料78ページより)

http://www.pmda.go.jp/drugs/2015/P20151002001/671450000_22700AMX01007_A100_1.pdf

 

O:(有効性)各種スコアリングの50%低下と定義した8週での反応率、(忍容性)8週での全理由による治療中止、(受容性)あらゆる理由による脱落

8週のデータがないときは4~12週のうち長いものを採用

 

赤字は以前の論文より引用

 

 基本は以前のシステマティックレビューのデータセットを使っているので、以下の評価項目は以前の記事と同じです。(だいたいコピペしてます)

 

・使用したデータベース

 Cochrane Central Register of Controlled Trials, CINAHL, Embase, LILACS database, MEDLINE, MEDLINE In-Process, PsycINFO, AMED, the UK National Research Register,  PSYNDEX

検索期間は2016年1月8日まで

 

バイアスへの配慮

・元論文バイアス

 「double-blind, randomised controlled trials」を採用。

研究の登録情報(CRD42012002291)をみると中国のRCTは除外されているようです。

http://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.php?ID=CRD42012002291

個々の研究はコクランのrisk of bias toolを使っており結果はSupplementary appendixの19~21ページに記載されています。

https://www.thelancet.com/cms/10.1016/S2215-0366(19)30217-2/attachment/23959cce-d88e-4d27-9b8d-fc1820147377/mmc1.pdf

 

 

・評価者バイアス

二者独立のみ記載されている。

基となった論文では「6組のペアが独立して抽出・評価を行い、意見の不一致の際はリーダーが第三者として調停に入った」とあるので、実際は行われているはず

 

・出版バイアス

言語制限はなし

参考文献の検索の他、著者、専門家、メーカーに未公表データがないか問い合わせている

ファンネルプロットでの検討は行っていないよう。

 

・COI、スポンサー

 

 ともに公開されている

 

<結果>

 

Table1よりfluoxetine換算値(mg)は

 

Table2のSSRI(mg) 10 20 30 40 60 80 国内承認用量
うつ病
fluoxetine 10 20 30 40 60 80  
citalopram 10 20 30 40 60 80  
エスシタロプラム 4.5 9 13.5 18 27 36 10~20
パロキセチン 8.5 17 25.5 34 51 68 10~40
セルトラリン 24.65 49.3 73.95 98.6 147.9 197.2 25~100
ベンラファキシン(速放錠) 37.35 74.7 112.05 149.4 224.1 298.8 37.5~225(徐放カプセル)
ミルタザピン 12.75 25.5 38.25 51 76.5 102 15~45

 

Table2より(RRを抽出)

  mg 有効性 忍容性 受容性
SSRI 10 1.12(1.09~1.15) 1.18(1.09~1.28) 0.93(0.89~0.97)
  20 1.24(1.18~1.30) 1.40(1.20~1.62) 0.88(0.81~0.95)
  30 1.29(1.21~1.36) 1.65(1.39~1.96) 0.87(0.79~0.96)
  40 1.27(1.19~1.36) 1.94(1.63~2.31) 0.91(0.82~1.02)
  60 1.18(1.06~1.32) 2.69(2.06~3.52) 1.04(0.90~1.21)
  80 1.09(0.91~1.30) 3.73(2.42~5.76) 1.20(0.97~1.49)
ベンラファキシン 37.5 1.15(1.06~1.25) 1.53(1.25~1.87) 0.90(0.71~1.17)
  75 1.31(1.12~1.52) 2.24(1.53~3.29) 0.85(0.54~1.33)
  150 1.47(1.24~1.75) 3.08(1.95~4.85) 0.92(0.64~1.32)
  225 1.53(1.31~1.78) 3.21(2.09~4.92) 1.14(0.87~1.48)
  300 1.58(1.30~1.95) 3.31(2.02~5.44) 1.42(0.75~2.67)
  375 1.64(1.25~2.14) 3.42(1.81~6.45) 1.77(0.60~5.19)
ミルタザピン 7.5 1.08(1.01~1.16) 1.23(1.05~1.46) 0.99(0.88~1.11)
  15 1.17(1.02~1.34) 1.52(1.09~2.13) 0.98(0.78~1.23)
  30 1.28(1.03~1.58) 2.17(1.26~3.73) 0.99(0.67~1.46)
  45 1.16(0.95~1.42) 2.54(1.54~4.21) 1.07(0.69~1.64)
  60 0.95(0.65~1.38) 2.66(1.44~4.92) 1.20(0.71~2.05)

 

ベンラファキシンだけ振れ幅が承認用量内なのか、効果も右肩上がりのままという(;^ω^)

有害事象による脱落はしっかり右肩上がり、効果はピークがあってその後落ちていくという結果。

あらゆる理由による脱落は有害事象の他、効果がなくても落ちていくので、各用量で差は見られなかった。

 

<感想>

 

 個人的にはミルタザピンの効果のピークが30mgだったのが、国内第3相臨床試験と一致していて興味深かった。

http://www.pmda.go.jp/drugs/2009/P200900035/17005000_22100AMX01823_A100_1.pdf

f:id:zuratomo4:20190623231224p:plain

 

<最後に>

 

 更新さぼっていてすみませんでした。

少しずつ投稿していこうかと思っています。