窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

と、いうわけで読んでみました

さっきの更新であれですが、読んでみましょう。

話題になったあの試験、EMPA-REG OUTCOMEです。

Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. - PubMed - NCBI

では、早速論文のPICOから見ていきましょう。

 

P:2型糖尿病患者

(組み入れ)18歳以上、組み入れ時のBMI45以下、治療を受けている場合はHbA1c7%以上9%以下で組み入れの12週間前までの治療内容の変更がない、前治療なしならHbA1c7%以上10%以下、心血管リスクが高い

(除外)一晩の絶食後に> 240mg / dl(> 13.3mmol / L)を超えるコントロールされていない高血糖、ALT・AST・アルカリホスファターゼの正常上限の3倍以上、心臓手術や血管形成術が3ケ月以内に計画されている、GFR<30ml/minの低下、過去2年間の肥満手術および慢性吸収不良を引き起こす他の消化器外科手術、血液疾患または溶血または不安定な赤血球を引き起こす障害(例えば、マラリアバベシア症、溶血性貧血)、過去5年間のがんの病歴(基底細胞癌を除く)および/またはがんの治療、閉経前の女性、インフォームドコンセントの2ヶ月以内に急性冠動脈症候群、脳卒中またはTIA

I:エンパグリフロジン10mgおよび25mg投与1日1回(投与量を違う両群をまとめて解析しているので、I群はまとめて記載しています)

C:プラセボ

O:3点MACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)hazard ratio 0.86; 95.02% confidence interval, 0.74 to 0.99; P=0.04 for superiority(非劣性マージン1.3)

T(研究期間):3点MACEが691人に発生するまで(観察期間の中央値3.1年)

 

二重盲検比較試験の非劣性試験ですね。有名過ぎてあちこちのブログに載ってます。(何番煎じだよってレベルです)

FDA指定のプラセボ対照非劣性試験なので、しっかりした試験といった印象です。

Resultの冒頭に「患者の97.0%が研究を完了し、25.4%の患者が試験薬物を早期に中止した」とありますが、早期中止はイベントの発生には含まれていないので、この食い違いはよくわかりません。(すでに眠いので頭回ってません。批判的吟味も甘々です)

研究薬物を少なくとも1回の投与された患者を対象としていることからFAS解析をもちいています。

図

主要アウトカムの発生がプラセボ群(233例中282例(12.1%))、empagliflozin群(4687のうち490例[10.5%])なので、ARRが1.5、NNTが3年で63といったところでしょうか?(計算あってるかな?)

 

今日のシステマティックレビューの結果のほぼすべてがこの研究によるものなので、効果はいいのですが、結果から削除された有害事象はどうなるのでしょう?

今後SGLT2阻害薬のメタ解析は増えるでしょうが、結果は有名な大規模studyに引っ張られるでしょうから、少なくとも話題に上った有名studyは読んでおくべきでしょうね。

今日は近畿大学studentCASPに参加してきました

お久しぶりです。更新さぼりすぎですね(;^ω^)

 

先週土曜日の第3回奈良コクランレビューワークショップ(たぶん薬剤師の参加者僕だけ)も、先週日曜日の岡山CASPの報告もまだですが、先に本日開催された近畿大学studentCASPの報告をしたいと思います。

 

なお、今日のCASPはワタクシのチューターデビューだったりします(;^ω^)

 

SGLT2阻害薬の有効性(全死亡、心血管死)を評価したシステマティックレビューの論文です。

まずはお題論文をば

Effects of SGLT-2 inhibitors on mortality and cardiovascular events: a comprehensive meta-analysis of randomized controlled trials | SpringerLink

全文URLはこち

http://www.siditalia.it/images/Effects_of_SGLT-2.pdf

事前登録情報は以下のリンク

SGLT2 inhibitors and mortality in type 2 diabetes

 

P:2型糖尿病患者

I:SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、イプラグリフロジン、ertugliflozin)

C:プラセボもしくはほかの治療薬

O:(主要)全死亡 MH-OR 0.70 [0.59-0.83](EMPAREGが78%のウエイトを占める)

     心血管死(本文中では副次に変更されている)MH-OR 0.43 [0.36-0.53] 

 (副次)心筋梗塞 MH-OR [95 % CI] 0.77 [0.63–0.94]

     脳卒中 MH-OR [95 % CI] 1.09 [0.86–1.38]

 (計画にはあるけど報告からは消滅)骨折、ケトアシドーシス

T(研究期間):治療期間が12週間以上

T(試験のデザイン):randomized trials

 

検索されたデータベース、サイト:MEDLINE(2015.11.16まで)、FDA、EMA、clinicaltrials.gov

検索キーワード:dapagliflozin, empagliflozin, canagliflozin, ipragliflozin, ertugliflozin

言語:英語のみ

参考文献、専門家への連絡:記載なし

2人の研究者が独立してデータ抽出、意見対立時は第三者が介入

個々の試験はthe Cochrane Collaboration’s tool for assessing risk of biasで評価

(結果はTable1、randomized trialsを集めたはずなのに×がいくつか散見されるというw。ランダム化や盲検がダメとなっている文献も見てみると二重盲検のRCTとしっかり記載されているというザル評価)

統合された結果はなぜかフォレストプロット(Fig3)に載っていなくて、サブグループ解析(Fig4)に載っている謎仕様。

異質性はグラフにはなく、本文中に「For the principal endpoint, I2 was<0.001, suggesting no relevant heterogeneity」とだけ記載されている謎。

 

謎がたくさんあって結果の解釈が難しいけど、とりあえずEMPAREG OUTCOME読んだらいいんじゃないかな?異質性少ないのと、結果示されてないけどEMPAREG OUTCOME除いても結果の傾向は同じらしいので、効果の大きさはともかく死亡は減る方向で。

なお、事前に計画された有害事象の評価は消えているので何とも言えません。

 

結論としては、EMPAREG OUTCOME読めってことですね。(;^ω^)

Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. - PubMed - NCBI

居酒屋抄読会in名古屋

告知が遅くなってすみません

 

名古屋のインターネットカフェから更新しています。

 

早速ですが、今日(4/15)20時頃から居酒屋抄読会を行いたいと思います。

 

いつもは大阪でやっている居酒屋抄読会ですが、初の遠征です!

中部地方在住のEBMerの皆様をゲストに執り行いたいと思います。

(正直、僕に出番はないレベルの豪華ゲストです)

 

ツイキャス配信はこちら↓↓

http://twitcasting.tv/zuratomo4

 

お題論文はこちら

Serum creatinine elevation after renin-angiotensin system blockade and long term cardiorenal risks: cohort study. - PubMed - NCBI

PMID:28279964

 

日経メディカルでも紹介されていましたので、すでに読んだ方もおられるかもしれませんが、記事へのリンクも貼っておきます。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/bmj/201704/550758.html

 

JJCLIPの観察研究を10分で吟味するポイントのワークシートに沿って進行したいと思います。

http://j.mp/jjclipsheet3 

抄読会配信のバイブル! JJCLIP本もオススメです。

http://amzn.to/2odvbIV

しかし、本日持参し忘れるという失態を犯しましたorz

 

ゆるく、楽しくがコンセプトですので、視聴の際はリラックスした体勢かつ好きなものを飲み食いしながらでお願いいたします。

 

では、また夜にツイキャスでお会いしましょう!

 

お題論文にならなかった論文サルベージ企画②(2/25、禿論文編)

昨日に引き続いて、禿論文を読んでいきたいと思います。

 

フィナステリドやデュタステリドの第三相臨床試験を読みたかったのですが、全文フリーでないので他の論文で行きたいと思います。(禿論文の最終回はネットワークメタ解析の論文を読みたいと考えています)

 

台湾からの漢方の報告。

Hair growth effect of traditional Chinese medicine BeauTop on androgenetic alopecia patients: A randomized double-blind placebo-controlled clinical... - PubMed - NCBI

と、言っても日本にはない漢方(薬用人参、黄耆、当帰、アカヤジオウ、女貞子=トウネズミモチ、旱蓮草)のようですし、メーカーのサイトにも商品としての紹介はありませんが(;^ω^)

開発元?→Taiwantrade | Home - Sourcing quality Taiwan products, suppliers, manufacurers and exporters

販売元?→SUN TEN PHARMACEUTICAL CO., LTD

 

では、本文を読んでいきましょう。

P:AGAの患者40名(女性9名)

   6か月間の試験を完遂したのは32名。脱落は男性5名、女性3名

E:漢方の錠剤を1回4錠、朝食前と昼食前に服用

C:プラセボ(中身はコーンスターチを1回4錠、朝食前と昼食前に服用

O:  6か月後のdermatoscope、写真、3人の皮膚科医による評価。

 男性→Norwood-Hamilton scaleで評価

American Hair Loss Association - Men's Hair Loss / The Norwood Scale

 女性→Ludwig scaleで評価

American Hair Loss Association - Women's Hair Loss / Degree of Hair Loss

 育毛効果がみられたのは、介入群9/17(52.9%)、プラセボ群2/15(13%)P<0.025で有意差ありと

 

 Fig1が誤植っぽいですが、プラセボ群も後々介入受けてるっぽくなってますが、実際は受けていないようです。

PubMed Central, Figure 1.: Exp Ther Med. 2017 Jan; 13(1): 194–202. Published online 2016 Nov 30. doi: 10.3892/etm.2016.3935

 あと、記載は見つからないのですが、脱落者が解析にはいってないのでper protocol解析と判断してよいと思います。

なお、治療期間中に血液検査異常や有害反応は見られなかったとのこと。

 

 効くのはいいけど、手に入らないんじゃどうしようもないなという感じでしょうか。著者らはフィナステリドなんかと併用することで発毛増強効果が見込めるといってますが、ホントでしょうか?

お題論文にならなかった論文サルベージ企画(2/25、禿論文編)

今日はタイトル通りお題論文になれなかった論文を読んでいきたいと思います。

 

 論文の紹介に入る前に、そもそも禿げを効能効果として謳っている薬剤ってどれくらいあるのでしょう?

 

 PMDAのサイトで脱毛を適応にもつ薬剤を成分名毎に並べて、適応症を記載してみました。(本当は外用ステロイドは塩まで記載すべきなのですが、割愛しています)

 

①アムシノニド(円形脱毛症)

②カルプロニウム(円形脱毛症、悪性脱毛症、粃 糠性(ひこう)脱毛症,瀰慢(びまん)性脱毛症,壮年性脱毛症,症候性脱毛症)

③クロベタゾール(円形脱毛症)

④グリチルリチン酸一アンモニウムグリシン・DL―メチオニン円形脱毛症)

⑤桂枝加竜骨牡蛎湯(脱毛症)

⑥ジフルプレドナート(円形脱毛症)

⑦ジフロラゾン(円形脱毛症)

セファランチン円形脱毛症・粃糠性脱毛症)

⑨注射用アセチルコリン円形脱毛症)

デキサメタゾン円形脱毛症)

⑪デプロドン(円形脱毛症)

⑫デュタステリド(男性における男性型脱毛症)

⑬トリアムシノロン(円形脱毛症)

⑭ヒドロコルチゾン(円形脱毛症)

⑮フィナステリド(男性における男性型脱毛症の進行遅延)

⑯フルオシノニド円形脱毛症)

プレドニゾロン円形脱毛症のうち悪性型のもの)

⑱ベタメタゾン(円形脱毛症)

 

ついでにOTCも(上手なセルフメディケーション OTC医薬品協会で検索したもののうち上にない成分。カッコ内は商品名)

①カシュウチンキ(カロヤン)

②チクセツニンジンチンキ(カロヤン)

③エストラジオール(ハツモール)

トコフェロール(ハツモール)

⑤メチルテストステロン(ペレウス

ミノキシジル(1%はリアップ、5%はリアッププラス)

 

もうここまでで疲れ果てましたが、気を取り直して論文行きましょう!

Efficacy and safety of 5% minoxidil topical foam in male pattern hair loss treatment and patient satisfaction. - PubMed - NCBI

OTCの⑥でやたら詳しく書いたのはこの論文がリアッププラスの有効性と安全性と患者満足度を調べた論文だからです。

なお、ミノキシジル1%と5%の比較の論文は全文読めないので割愛します(´;ω;`)

 

P:男性型脱毛症の18~49歳のイラン人男性患者17名(うち3名脱落)

E:ミノキシジル5%局所泡製剤を1mL(キャップ1杯を毎日1日1回使用、6か月)

C:(設定されていない)

O:(有効性)一定範囲での毛髪数(カメラ)

       baseline:162.85±45.93→16week:181.87±52.42(P=0.015)

                 →24week:194.58±62.82(P=0.019)

      一定範囲での毛髪数(目視)

       baseline:54.92±14.06→16week:62.57±15.28(P=0.003)

                 →24week:69.91±15.61(P=0.002)

      被験者評価:大幅改善と悪化はなし。不変は16週で5人、24週で3人。

           他はわずかながらも改善。

          (悪化したら脱落しているので当然の結果)

      写真判定:1症例改善の写真はあるが、評価は困難なので割愛。

  (安全性)患者への質問調査:特に発生せず。

 

 有意差をもって改善しているが、単アームの少数例での前後比較でしかなく、そもそも悪化した被験者は脱落しており、評価は難しい。増えているというが、症例写真の方は確かに増えているし使う意味はありそうだが、他の方はどうなんだろう?

 しかも、ディスカッションの最初に「アジア人のAGAは治療反応が異なる可能性が報告されている」とか書かれてて(´;ω;`)

 ということで、いろいろ問題があってお題論文候補から外しました。

仕事辞めたさに気力が押しつぶされているので、きちんと次回更新できるかわかりませんが、2/25の居酒屋抄読会までにお題論文から外れた論文サルベージしたいです。

 

長々と駄文を書き連ねましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いいたします。

2/25に居酒屋抄読会をやります!

2/25(土)21:00頃から居酒屋抄読会を梅田付近で行いたいと思っています。

2017年になって最初の居酒屋抄読会です。

お時間の都合がつけば是非ご視聴ください!

詳しい案内は以下のリンクから。
pharm-niiyan.hatenablog.com

にいやん先生、記事第100弾おめでとうございます。

 

今回の新規の取り組みとして、仮想症例シナリオを募集します。

締め切りはバレンタイン過ぎの2/15あたりを予定しています。

ついでにシナリオの採用をツイキャスのアンケートで決めたいなぁなんて考えてます。

 

お題論文はコチラ

Superiority of dutasteride over finasteride in hair regrowth and reversal of miniaturization in men with androgenetic alopecia: A randomized contro... - PubMed - NCBI

全文フリーなのに、リンクからは全文見れないので、全文はコチラ

http://imsear.li.mahidol.ac.th/bitstream/123456789/183386/1/ijdvl2017v83n1p47.pdf#search=%27Superiority+of+dutasteride+over+finasteride+in+hair+regrowth+and+reversal+of+miniaturization+in+men+with+androgenetic+alopecia%3A+A+randomized+controlled+openlabel%2C+evaluatorblinded+study.+pdf%27

 

デュタステリド(ザガーロ)とフィナステリド(プロペシア)のガチンコ勝負のRCTです。

では、仮想症例の案をば

 

貴方は30台男性。

徐々に広がる額に物憂げな日々を過ごしています。

そんな時テレビから「薄毛が気になる人!AGAで検索~!」と聞こえてきました。

AGAとはandrogenetic alopeciaの略。要は男性型脱毛症の事。

ネットで検索すれば、AGAを専門に扱うクリニックや治療薬が一覧で出てきます。

「どうせクリニックに行くなら、一般用で売られているミノキシジル(リアップ)よりこの5α還元酵素阻害薬ってのがいいかな?効果どうなんだろ?ちょっと調べてやるか」

わが身に迫る禿の恐怖に背中を押されるようにpubmedを開いた貴方。

5α還元酵素阻害薬って2種類あるのか。どっちがいいやろ?」

疑問は広がるばかり。

「dutasterideとfinasterideとandrogenetic alopeciaで検索したらなんか当たるやろ!」

本当にあたりを引いた貴方。

「本当にあるのかよ(;^ω^)」

せっかく引き当てた論文なので、読んでみることにしました。

 

こんな感じで仕上げてみました。

皆様も自由に、自らの悩みを盛り込むもよし、笑いに特化するもよし。

大いに盛り上がりましょう‼

 

因みに、何を隠そうわたくしも後退する生え際に悩む一人にございます。

なお、ストレスのせいか、胃痛はもとより、すね毛まで引っ張れば何の抵抗もなくごっそり抜けるという緊急事態に直面しております。

遺伝的にも父方、母方ともに男は全員禿げてます。禿げることに関しては、遺伝子的にはエリートを自負しております。

要するに、禿げあがり待ったなしです。

そんな禿げかけ男性の切ない思いを胸に今回の論文を読み進めていきたいと思っています。

禿げに悩む同志はもとより、禿げあがる心配のない方も是非一緒に論文を読んで笑いましょう!

 

なお、4/15、21:00頃には名古屋で居酒屋抄読会を開催したいと考えています。

お題論文等まだまだ未定ですが、こちらもよろしくお願いいたします。

先週、費用対効果の論文を読むワークショップに参加しました

久々の更新です。

本当はワークショップの翌日には書きたかったのですが、やる気が(´;ω;`)

胃痛を抱えながら仕事行って、帰ったら生気失ってますので。

 

言い訳はこれくらいにして、早速ワークショップの感想と論文の振り返りをば。

 

前半、午前の部は検索。

要は、PubMedを使いこなしましょう。(最近ではPubMed検索することを「パブる」っていうらしいですよ)

こんな機能ありますよっていうものですが、わたくし使いこなせていないことを気づかされました。

Home - PubMed - NCBI

せっかくなので、サインインして機能を活用しましょう!

NCBI Sign In Page

そういえば、検索ワークショップでクリニカルクエリって紹介されないけど、使わないのかな?(取りこぼしがあるので、僕自身最近の使用頻度は減ってるけど)

PubMed Clinical Queries

 

午後はいよいよ、費用対効果の論文を読む日本初(おそらく)のワークショップ!

予習してもさっぱりなんのこっちゃって感じですし、ワークショップで配布されたチェックリストもβ版って感じです。まだまだ、読みなれた人がいないタイプの研究ですが、医療費のことを考えるなら知っておいた方がよいタイプの研究だと思います。

 

CASPのチェックリストを無許可でさらすわけにはいかないので、今回の記事はCHEERS声明のチェックリストを使用して読んでいきたいと思います。

https://www.niph.go.jp/journal/data/62-6/201362060009.pdf

上記に示したpdfは日本語で、各項目の解説も載っていますので是非ご覧になってください。

なお、お題論文はコチラ(無料で全文読めますので、是非記事を見ながら、論文を読んでみてください)

www.ncbi.nlm.nih.gov

新生児聴覚スクリーニング検査を全国に拡大した中国で、費用対効果を報告した論文になります。(日本での検査の実施率はおよそ80%だそうです)

血液検査のは知っていましたが、聴覚検査ってあるんですね。

早くに難聴に介入してあげないと、言語の獲得に多大な影響が出るとか。

検査なしで発覚するのが2歳前後。言語の発達の遅れで気づくのだとか。

 

チェックリストに沿って読んでいきます

 

①タイトルは経済評価研究であることを明らかにしているか?

→〇 タイトルにズバリ「Cost-effectiveness analysis」と記載されている。

*「cost benefit」もあって、Cost-effectiveness analysis」とは別の研究になるとのこと

②と③は抄録と背景の書き方なので省略。

④対象集団は?

→MethodsのData Collectionより北京、山東省、河北省、河南省江西省広西チワン族自治区を代表としてサンプリングしている。

⑤介入の状況と場所

→AbstractのBackgroundより、中国全土の病院

⑥研究の立場

(患者個人やその家族、医療機関、医療保険の支払者、政策決定者など立場によって計算すべきコストが変わってくる)

→Introductionの最後の辺りにnational and provincial policy makers(国と地方の政策決定者)と記載あり

⑦比較対照

→ Otoacoustic Emission (OAE) and Automated Auditory Brainstem Response (AABR)を、全新生児対象かハイリスク児対象か、スクリーニングなしかで分けている。スクリーニング方法についてはOAEのみか両方かで分けている。

⑧分析期間

→不明。介入は生後2~7日、介入は12ケ月。分析期間はどこを指すのかわからないし、論文中に明確な記載はない。

⑨割引率

良い結果は早期に得られるほど価値が高い(遅くに得られるほど価値が下がる)ことを軸に、各研究国ごとの経済状況を踏まえ、遅くに出た良い結果の価値を下げて(割り引いて)評価する。その際の価値の減衰の程度。

→MethodsのCost estimatesより年間3%

⑩アウトカムの指標

→DALYs averted(不利益の回避、QOLYの逆)、平均費用対効果比(ACER。総費用と総健康影響を合計)、増分費用対効果比(ICER。各介入ごとの効果と費用の増分)で示されている。

⑪効果の測定(推計に用いたデータ)

→table1に示されている。診断率、介入率など下3項目は明確なデータがなく、この部分は感度分析(システマティックレビューの感度分析とは違うので注意)の対象になっている。また、介入の効果についての根拠の提示はない。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3547019/table/pone-0051990-t001/

⑫は省略(今回の論文は対象ではない?)

⑬資源の消費と費用の推計

→MethodsのCost estimates。割引率の後に記載がある。

⑭通貨(研究時点ごとでお金の価値は異なる。特にドル換算で表現している場合、為替レートがないと、実際に見積もられた費用がわからなくなる)

→記載なし

⑮モデルの選択(戦略の概略を示す。アウトカムの発生が1回だけの場合に用いる決定樹モデルと、アウトカムの発生が複数回発生する場合に用いるマルコフモデルがある)

→図1より決定樹モデル。(決断節が左端で切れていて図示されていない)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3547019/figure/pone-0051990-g001/

⑯~⑱は省略(⑪で一緒に示されている)

 

お待たせしました

ここから、やっと結果(;´・ω・)

⑲増分費用

→table3の右端列がICER。見やすい結果はFig2。(リファレンスの線より下がコスパに優れている)

コスパに優れるのは対象をハイリスク児に絞ったスクリーニングだった。

PubMed Central, Table 3: PLoS One. 2013; 8(1): e51990. Published online 2013 Jan 16. doi: 10.1371/journal.pone.0051990

PubMed Central, Figure 2: PLoS One. 2013; 8(1): e51990. Published online 2013 Jan 16. doi: 10.1371/journal.pone.0051990

⑳不確実性

→⑪で不確実だったデータの値を想定される範囲で変動させて結果に違いがないか見ている。Fig4はACER、Fig5はICER。

fig3は支払限度額を変動させてみたもの。50million $を超えると、ハイリスク児に絞るより全対象のスクリーニングの方がよいという結果に変わる。

PubMed Central, Figure 3: PLoS One. 2013; 8(1): e51990. Published online 2013 Jan 16. doi: 10.1371/journal.pone.0051990

以降の項目は省略。(資金源以外は、読んでいくうえで時間だけかかるので。なお資金源は国家予算、第11次5カ年計画の主要技術研究開発計画より拠出)

 

 費用対効果の研究は、これまでの研究の上積みによってできるものなので、先行研究の質が問われますが、なかなか吟味が難しい。気を付けるべき点もこれで良いのか?という疑問ばかり頭をよぎります。もうこのあたりは、数を読んで慣れていくしかないでしょう。

 医療費削減の中でポリファーマシーが流行し、問題の本質である「ポリファーマシーは状態であって、そこの善悪はない。善悪で判断すべきは不適切か否か」が見落とされているような気がします。

 このタイプの研究は日本でも盛んになっていくとは思いますが、(厚労省も医療技術評価「HTA」として注目しているよう)コストパフォーマンスしか見れないなんてことにならないよう気を付けて学んでいきたいものです。