窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

日本人慢性便秘症患者に対するラクツロースの効果(ラグノスゼリー第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験)

<はじめに>

 

 「ラクツロースって便秘にどれくらい効くの?」と看護師さんに聞かれたので調べてみました。

 

<今回の論文など>

 

・論文(全文フリーと書いてはないですがフリーで読めます)

Efficacy and safety of a crystalline lactulose preparation (SK-1202) in Japanese patients with chronic constipation: a randomized, double-blind, pl... - PubMed - NCBI

PMID: 30643982

 

・事前登録情報

https://www.clinicaltrials.jp/cti-user/trial/ShowDirect.jsp?clinicalTrialId=11366

(あまり記載がなく開く価値はないと思われるが念のため)

 

・審査報告書

http://www.pmda.go.jp/drugs/2018/P20180921001/300297000_23000AMX00798_A100_1.pdf

(8ページからのLB1001試験が今回のお題論文の研究です。論文読むよりこちらを読むほうがおすすめ)

 

<読んでみる>

 

P:慢性便秘症の20~75歳の日本人患者。IBSは除外。

I/C:SK-1202(ラクツロースゼリーの成分量)13g、26g、39g、プラセボ 1日2回朝夕

O:(主)投与1週目での自発排便回数

 (副)投与2週目での自発排便回数、

    投与24・48時間で自発排便のあった患者の割合、 

    最初の自発排便までの時間、ブリストル便性状スケールの変化、

    日本版IBS-QOLスコア、有害事象、バイタルサイン、12誘導心電図、検査値

 

(審査報告書、有効性評価項目より)

f:id:zuratomo4:20190212212226p:plain

 

ランダム化:「randomized」の記載があるが詳細な方法は不明。

ブラインド:「double-blind」とあるので被験者・担当医は盲検化されているが、

      他の担当者がどうだったかは不明。

施行バイアス:プロトコルが公開されていないので確認不能だが、

       頓服使用時使用した下剤を記録することは決められているよう。

      (頓服服用後24時間の排便は自発排便に含まないとの記載あり)

解析法:FAS

サンプルサイズ:各群62名

追跡率:99.2%

患者背景:39.4~43.1歳、女性77.8~87.1%、BMI20.94~21.99

     (便秘の期間とSK-1202の投与量の反比例が実薬高用量有利になりそう)

結果(主):(審査報告書より。各群の記載が製品量になっているので注意)

f:id:zuratomo4:20190212212631p:plain

 ※論文には棒グラフで変化量のみが示されており、投与1週後の自発排便の回数などは記載されていない

 ※※製品1回12gが成分6.5gなので1日24gが成分13gになる

 

結果(副):(プラセボ、13g、26g、39gの順で記載)

 投与2週目での自発排便(回/週):1.99、2.29、3.22、3.97

 自発排便患者の割合(24時間):35.5%、47.6%、65.1%、67.7%

 自発排便患者の割合(48時間):62.9%、73.0%、82.5%、85.5%

 最初の自発排便までの時間:27.98 h (95% CI 24.33–48.00) 、24.50 h (95%CI 14.33–27.77)、10.00 h (95% CI 6.08–17.00)、 10.33 h (95% CI 5.45–22.58) 

 

有害事象

f:id:zuratomo4:20190212213815p:plain

 

<まとめ>

 

 アブストラクトの結果に

「RESULTS:The 26 and 39 g/day of SK-1202 induced significantly and dose-dependently more increase in SBM at Week 1 than placebo (p = 0.003, p < 0.001).」

と実際の変化量の記載がなく、本文中にも主要評価項目そのものである投与1週目での自発排便回数が記載されていないなど、とても2019年に発表された論文とは思えない記載の寂しさ。

 

 とりあえず26g群と39g群がプラセボに有意差をつけて自発排便を増やしているので、無事承認されました。週2~3回排便回数を増やすという結果でした。

 

 この論文を読んで、「中国のRCTの質の研究は多数あるけど、日本のRCTの質はどうなんだろう?ディオバン事件の後にあれこれ変化はあったけど質はよくなったんだろうか?」という疑問がわいたため調べた結果を「エビテン」のネタにしました!

www.rincos-diary.com

 

 中国のように活発に質の評価は行われていないようで、新しいもので2010年という(;^ω^)

 

 

 

 

 

COPD治療で死亡率を減らせる治療は?→この研究ではインダカテロールだったが、根拠は弱そう

<はじめに>

 

明日(2019.1.27)にJJCLIPが開催されます。

お題がネットワークメタ解析なので、いい加減チェックシートを改訂しようと思ったため、本記事の作成に至りました。

 

改訂版チェックシート:Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver8.pdf

 

JJCLIPのお題論文、シナリオ、視聴サイトについては以下のリンクよりどうぞ。

pharmasahiro.com

 

なお、お題論文は本ブログで記事にした以下の論文です。

 

zuratomo4.hatenablog.com

 

<お題論文>

 

Mortality and drug therapy in patients with chronic obstructive pulmonary disease: a network meta-analysis. - PubMed - NCBI

PMID: 26559138

 

<読んでみた>

 

①妥当性の評価

 

P:COPD患者

 

I/C:14種の治療

 →チオトロピウム、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、トリアムシノロン、bambuterol、ホルモテロール、サルメテロール、サルブタモール、インダカテロール、テオフィリン、roflumilast、インダカテロールマレイン酸塩、イプラトロピウム臭化物、ビランテロールトリフェニル酢酸塩、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、プラセボ、上記の組み合わせ

 

インダカテロールとインダカテロールマレイン酸塩の違いが判りません(´;ω;`)

 

O:全死亡

 

集まった研究:イプラトロピウムの研究のみ40歳前後、他は60歳強。用法用量に制限なし。

 

②SR

 

・データベース:EMBASE(1988~)、CENTRAL(1898~)、MEDLINE(1946~)、MEDLINE In-Progress(1946~)

 

・検索期間:~2012.10

 

・検索語:記載なし(リストとして提示されていない)

 

・元論文バイアス:無

 RCTを集めており、risk of bias toolで評価した結果がTableS2に示されている。Zheng 2007とZhong 2012がIncomplete outcome dataでハイリスク評価になった以外は概ねlow risk

 

・評価者バイアス:有

 独立して評価した旨の記載がない。当然意見対立時の解決法も記載がない。

 

・出版バイアス:不明

 探した研究は英語のみ。参考文献など探したという記載はない。

 

・異質性バイアス:不明

 本研究の事前登録はない。アウトカムは死亡であるため、統合は可能。

 

③NMA

 

・ネットワーク図:有(Fig.2)

 

・閉じた環:少数有

 

・比較ごとの研究数やサンプルサイズ:少ない(チオトロピウムのみ多い)

 

・直接比較と間接比較を分けて記載:無

 

・一致性:不明

 

・資金源の開示:有(GSK)

 

・COIの開示:有(著者の一人はGSK社員)

 

④結果

 

Fig.3(random effects modelより)

 

インダカテロール HR0.29 95%CI:0.08~0.89

他に有意差はない(チオトロピウム合剤系の死亡増加傾向が気になる)

 

 多くの研究でエラーバーが大きく精度不足は否めない(要はまだまだ研究する必要がありそうだし、研究が増えれば結果が変わる可能性は十分にある)

 

 UPLIFTのような何度も死亡のアウトカムを検証している試験では、どのアウトカムを採用したかで結果が変わりそうですが、表を見る限り、1470日(試験終了30日後)「941 patients died: 14.9% in the tiotropium group and 16.5% in the placebo group (hazard ratio, 0.89; 95% CI, 0.79 to 1.02)」の死亡に有意差が消えた時点のものを採用しているようです。

 

<まとめ>

 

久々に改訂しましたが、まだまだ完成には遠そうです(´;ω;`)

(NMAの世界にもGRADEでの評価の流れが来ているので。当然ですが)

Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver8.pdf

 

チェックシートともども本ブログを温かく見守っていただけると幸いです。

第9回CASPワークショップ広島(2019年1月20日開催)に参加してきました

<はじめに>

 

 

 

 山陰地方から中国山地を超えて毎月抄読会を開催しておられるEBM界の猛者、平社員 (@T462759) | Twitter先生が恩師の先生を招待して開催されたEBMワークショップに参加してきましたので、本記事は参加報告になります。

 

<お題論文など>

 

・研究特設サイト

seAFOod Trial

 

・お題論文

Eicosapentaenoic acid and aspirin, alone and in combination, for the prevention of colorectal adenomas (seAFOod Polyp Prevention trial): a multicen... - PubMed - NCBI

PMID: 30466866

 

・事前登録情報

ISRCTN - ISRCTN05926847: The seAFOod (Systematic Evaluation of Aspirin and Fish Oil) polyp prevention trial

 

プロトコル論文

A randomized controlled trial of eicosapentaenoic acid and/or aspirin for colorectal adenoma prevention during colonoscopic surveillance in the NHS... - PubMed - NCBI

 

プロトコル

https://njl-admin.nihr.ac.uk/document/download/2013072(2014.8改訂版)

https://www.journalslibrary.nihr.ac.uk/programmes/eme/0910025/#/より

 

 

<批判的吟味>

 

今回はCASPのワークシートに沿って読んでいきます。

 

・論文の課題

P:大腸内視鏡検査でハイリスクとされた55~73歳の英国人709名

(ハイリスクの定義(ポリープの大きさと数):10㎜以上を1個を含む3個以上か10㎜未満5個以上)

E/C: アスピリン non-アスピリン
EPA EPA2g/day+アスピリン300mg/day EPA2g/day+アスピリンプラセボ
non-EPA EPAプラセボ+アスピリン300mg/day EPAプラセボ+アスピリンプラセボ

EPAEPA-FFA1日1回からEPA-TG1日2回に変更になっている。

EPA-FFAを提供していたメーカー(Specialist in Gastrointestinal Medicines > SLA Pharma AG)が製造を止めたため

 

 

O:(主)腺腫の検出率(ADR

 (副)腺腫の数、進行した腺腫の検出率・発生数、鋸歯状腺腫の検出率・発生数、腺腫の見つかった領域、高リスクから中等度リスクへの改善、大腸がん、赤血球と直腸のEPADHA・AA濃度とEPA/AA比(ベースライン、6ヶ月、12ヶ月)、魚介類の摂取量、有害事象(特に出血)

T:1年

 

・割り付け

 ウェブベース(=中央割り付け)、「using random permuted blocks of randomly varying size. 」とあるのでブロックサイズがランダムに変わるランダム割り付けだとわかる

 

・目隠し

 参加者、研究スタッフ。

本文中にはないがプロトコルでは「調査者」、「アウトカム評価者」も盲検化されている

 

・解析

 ITT

(本文中にみられるのは 「Per-protocol analysis」だが、「Primary and secondary outcomes were analysed according to allocation, regardless of compliance with treatment, for all participants who were randomly assigned and who had observed follow-up data」という文章からITT(FASかも?)と読み取らないといけないらしい。

プロトコルでは「ITT」となっていた。

 

・施行バイアス

 TableS2で見られる。本文中に記載はないがプロトコル上、禁止されていた薬物は除外基準と同じNSAID、魚油サプリ、メトトレキサート。

 見た限り気になるような偏りは見られない。

 

・サンプルサイズ

 768(登録情報755、プロトコル論文904) 数字が一致しないが、どのみち不足している。

 

⇒サンプルサイズの不足以外は目立った問題はなさそう

 

<結果>

 

 ADRプラセボ61%、EPA63%、アスピリン61%、アスピリン+EPA61%

 

EPA vs non-EPA RR0.98 95%CI:0.87~1.12

アスピリン vs non-アスピリン RR0.99 95%CI:0.87~1.12

 

有害事象は下痢主体

 

 

 

<まとめ>

 

 見事に主要評価項目に差は見られなかった。会場で上がった声としては「試験期間が短すぎたのでは?」ということ。

 サンプルサイズの計算の根拠に用いられたアスピリンの試験は5年のRCT終了後20年追跡したもの。

 しかし、内視鏡検査ができずアウトカムの評価ができなかった症例が66名(約9.3%)。試験期間を延ばせばこうした評価不能例や脱落でもっと多くのサンプルサイズが要求されたのではないかと思われる。(本試験は必要数集められなかったので、これ以上の募集は困難だったのではないだろうか)

 のぶのぶEBM (@nobukin55) | Twitter(平社員先生の師匠)の解説「検出数は下がっており(アスピリンで0.78、95%CI:0.68~0.90)、介入の有効性は期待できる」だろうとのこと。

 

 

 

<おしらせ>

 

2019年2月開催のワークショップです。

(ともにシステマティックレビューがお題です)

 

ご都合のつく方は是非ふるってご参加ください!

(ちなみに、僕はただの参加者です)

 

2月17日 第4回兵庫医療大学Student CASP Workshop

 

第24å CASP ã¯ã¼ã¯ã·ã§ããin岡山

第24回 CASP ワークショップin岡山 2019年2月24日(岡山県) - こくちーずプロ(告知'sプロ)

逆行性射精に対するアモキサピンの効果

<はじめに>

 

 アモキサピンアモキサン)が逆行性射精に公知申請が通ったとのことで、その効果を検証した論文を読んでみることにしました。

 

保医発 0928 第3号平成 30 年9月 28 日 

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月刊・保険診療 2018年10月 第73巻・第10号

 

 薬剤師的にはシロドシン(ユリーフ)の副作用が有名でしょうか。(僕はまだシロドシンによると思われる逆行性射精を見たことはないですが)

 有名といっても「薬理学的に」というだけで、全例で発症するようなものではないのでご注意ください。

ユリーフインタビューフォーム2016年8月改訂(第9版)

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<お題論文>

 

Randomized Crossover Trial of Amoxapine Versus Vitamin B12 for Retrograde Ejaculation. - PubMed - NCBI

PMID: 28266821

(事前登録情報はない)

 

<批判的吟味>

 

①RQ

 

P:18~60歳の逆行性射精(一次、二次問わず)の患者26名(1名脱落)

 

A(介入):アモキサピン50mg1日1回 (アモキサン

 

B(対照):ビタミンB12 500μg 1日3回 (大塚の製品と本文中にあったが、大塚製薬は医療用ビタミンB12の経口剤を販売していないので、ネイチャーメイドB12を使った?)

 

※介入・対照群の書き方は本文に準拠した

 

O:患者報告による逆行性射精の改善率

 

⇒実際に集まった患者背景は28~54歳、罹病期間0.17~25年、一次3名、二次22名、既婚11、未婚14

 

②方法

 

ランダム化:乱数表→封筒法。クロスオーバー

 

盲検化:なし

 

施行バイアス:不明

 

ITT:不明 脱落1名(離婚による?) 追跡率96.2%

 

サンプルサイズ:探索的研究なので計算していない

 

Fig2の試験の全体図がちょっと違うので勝手に訂正

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③結果

 

改善率 A80% B16% P<0.001

勝手にRRを計算すると0.2

 

なお、COI:なし、資金源:日中笹川医学奨学金制度

 

<まとめ>

 

 少人数の被験者による探索的研究なので、実際にここまでの効果がみられるかは不明。

改善率はあくまで患者報告なので、本当に逆行性射精が改善したのかはわからない。

逆行性射精 - 21. 男性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版

 自分が患者なら、副作用云々を考えるとイミプラミン(現行治療)より先にチャレンジしてはみたいとは思う。

 

<おまけ>

 

①封筒法

 自分の割り付けたい群に当たるまで封筒を破って捨てたという違反が過去にあったため、割り付けの隠蔽化の観点からすでに廃れた手法という印象。

 違反内容だけ覚えていて、実際何の研究で違反が起きたのか知らなかったので調べてみたら一番最初にヒットしたのが「丸山ワクチン

 

医学論文の質の評価方法と実例

 

natrom.hatenablog.com

より

「中里博昭、小池明彦、市橋秀仁、尾関一郎、渡辺晃、鈴木正康、榊原日出夫、蟻須賀喜多男、小田博
胃癌非治癒切除および切除不能症例に対する人型結核菌体抽出物質(SSM)の臨床比較対照試験成績
基礎と臨床;17:293-309,1983」

だったと判明。

 

 他にもあるかもしれないので、この辺りの事情のにも詳しい先生が集う「エビデンス精神医療研究会」(Health Promotion and Human Behavior : Kyoto University)で聞いてみます。

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抗精神病薬と逆行性射精

 今回の研究では薬剤性逆行性射精症の患者さんは除外されていました。

その除外対象薬剤の中に表記の抗精神病薬が入っていました。

抗精神病薬(特にリスペリドン)で性機能障害の訴えがあれば真っ先に「高プロラクチン血症」が浮かぶと思いますが、実際プロラクチンの上昇を伴わない性機能障害が報告されています。

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(2019/1/13検索)

その時のメカニズムとして考えられているのがα1受容体遮断作用です。

泌尿器科医や薬剤師なら簡単に気付ける範囲の問題ですが、精神科ではなかなかそこまで気づかずに症例報告に至るようです。

 

いつの間にか刷り込まれた抗精神病薬による性機能障害=高プロラクチン血症」からの脱却にこの論文は良いのでは?と思い紹介してみました。

 刷り込まれていたのが僕だけという可能性も捨てきれないですが(;^ω^)

昨年末からのEPA特集、ASCEND試験(EPA側)を読んでみた

<はじめに>

 

 昨年末より引き続いてEPA系の論文を読みたいと思います。

今回はn-3脂肪酸製剤としてEPA+DHAの心血管イベント抑制効果を検討した試験になります

 

<お題論文など>

 

・お題論文

 

Effects of n-3 Fatty Acid Supplements in Diabetes Mellitus. - PubMed - NCBI

PMID: 30146932

 

・登録情報

 

ASCEND: A Study of Cardiovascular Events iN Diabetes - Tabular View - ClinicalTrials.gov

 

プロトコル論文

  

ASCEND: A Study of Cardiovascular Events iN Diabetes: Characteristics of a randomized trial of aspirin and of omega-3 fatty acid supplementation in... - PubMed - NCBI

PMID: 29653635(こちらは全文フリーです)

 

<批判的吟味>

 

ここから、本文を読んでいきたいと思います。

 

①RQ

 

・P:40歳以上、糖尿病(1型か2型)、CVDの既往無し、アスピリンの適応無し、アスピリンの禁忌なし、アドヒアランスに影響する病態無し、英国在住

 

 

・I:Omacor 1000 mg(日本未発売:EPA460mg+DHA380mg、Mylan社が販売)

Omacor - Summary of Product Characteristics (SmPC) - (eMC)

Omacor package insert(pdf注意)

・C:プラセボ

 

・O:複合心血管イベント(非致死性心筋梗塞、非致死性非出血性脳卒中TIA、非出血性血管死)

 

   <セカンダリ>プライマリエンドポイント+冠動脈再建術

   

・T:平均観察期間7.4年

 

⇒実際に集まったのは、年齢63歳、男性62.6%、白人96.5%、BMI30.7、現在の喫煙8.3%、以前の喫煙45.6%、非喫煙45.1%、高血圧(患者報告による)61.6%、アスピリン使用74.8%、スタチン94.1%、DM罹病期間7年(中央値)

 

表記されている項目間での差は特に見受けられない。

 

 

 

②方法論

 

 

・ランダム化:最小ランダム法(調整項目:年齢、性別、DM罹病期間、高血圧治療歴、喫煙、民族、総コレステロールHbA1C、Alb/Cr比)2×2法。

 

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 ※今回の論文は下の太枠で囲んだものを比較している
 

・盲検化:4者(参加者、ケア提供者、調査者、アウトカム評価者) +本文中では解析者も盲検化されたとなっている

 

・解析:ITT (0.3%のlost to follow upの処理法の記載がない)⇒追跡率99.1%

 

・介入以外の処置:TableS6に開始時と6.7年経過後の両群での治療について記載あり。

        ⇒介入前後で両群に目立った差は見られなかった。

        ⇒スタチン75%→74%、ACEiもしくはARB59%→64%、インスリン

         26%→27%、メトホルミン65%→69%、SU27%→30%、

         TZD12%→5%、β遮断薬13%→17%、CCB25%→30%、利尿剤

         19%→15%、PPI14%→25%、肝油などのサプリ10%→7%

        ⇒アドヒアランス:I群77%、C群76%

 

・サンプルサイズ:15000名。(2003年の元々の計算では10000人、イベント発生年率2%、20~25%リスク減だったが、メタ解析の結果と途中までのイベントの発生率からからイベント発生率年0.6%、12~15%リスク減、TIAをアウトカムに追加、観察期間5→7年に延長し再計算)

 

・資金の流れ:プロトコル論文に資金の流れが記載されている。

  当初、メインスポンサーであるオックスフォード大学からの研究費で賄っていたが、期間延長に伴いBritish Heart Foundationから研究費を受けている

 

 

③結果(HRだと思うが、本文がRRになっているので本文に準拠して記載しています)

 

・プライマリ I群:8.9%、C群:9.2% RR0.97 95%CI:0.87~1.08

・セカンダリ I群:11.4%、C群:11.5% RR1.00 95%CI:0.91~1.09

構成要素別にみると

 非致死性心筋梗塞    I群:2.4%、C群:2.6% RR0.93 95%CI:0.76~1.14

 非致死性非出血性脳卒中 I群:2.8%、C群:2.8% RR1.01 95%CI:0.84~1.22

 TIA          I群:2.4%、C群:2.3% RR1.03 95%CI:0.84~1.26

 非出血性血管死     I群:2.4%、C群:2.9% RR0.81 95%CI:0.67~0.99

 冠動脈再建術      I群:4.8%、C群:4.6% RR1.04 95%CI:0.90~1.20

 

おまけ:全死亡 I群:8.9%、C群:9.2% RR0.97 95%CI:0.87~1.08

 

 

<まとめ>

 

 施行バイアスについて本文中に明示してあるレアな論文。

(施行バイアス:両群が比較したい介入以外の介入で等しく扱われたかを見る。CASPワークショップで議論が一回止まる定番の場所)

 その他の記載についてもしっかりしており、これまで読んできたEPA系の論文の中では個人的に最も好印象の論文。

 しかし、n-3脂肪酸の投与を長期間行ってもイベントに差は検出できなかった(セカンダリで血管死に有意差が出ているが、これはあくまで仮説にすぎない。筆者らもそれを踏まえて「重篤な血管事象のリスクに有意差はありませんでした。」と結論付けている。

日本人に対するEPAの効果は?(今更JELISを読む)

<はじめに>

 

 

 前回REDUCE-ITを読んだわけですが、その中で日本での研究が比較対象として幾度もJELISが取り上げられていたので、今更ではありますが読んでみることにしました。

 JELISについては様々なサイトで取り上げられていますので、今更新規情報もないので、読んだことがある人はここでブラウザバックをお勧めします。

 

<お題論文など>

 

・お題論文

 

Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint anal... - PubMed - NCBI

 PMID: 17398308 

 

・登録情報

 

Protective Effect of EPA on Cardiovascular Events - Tabular View - ClinicalTrials.gov

 

プロトコル論文

 

Effects of eicosapentaenoic acid on cardiovascular events in Japanese patients with hypercholesterolemia: rationale, design, and baseline character... - PubMed - NCBI

PMID: 14564313

 

・記事、ブログなど

 

臨床薬理 39(5)Sep2008;167-168

EPAの効果 : 薬剤師の地域医療日誌

 

<批判的吟味>

 

ここから、本文を読んでいきたいと思います。

 

①RQ

 

・P:総コレステロール250mg/dL以上の者(LDL170mg/dL以上に相当)

   男性は40~75歳、女性は閉経後~75歳

 

 

・I:エパデール300mg1回2カプセル、1日3回(EPAとして1800mg)+スタチン(プラバスタチン10mgかシンバスタチン5mg)

 

・C:スタチンのみ

 

・O:複合心血管イベント(心突然死、心筋梗塞、不安定   狭心症、血管形成術、ステント、冠動脈バイパス術)

 

   <セカンダリ>全死亡、脳卒中、末梢動脈疾患、がん発症率(登録情報より)

          冠動脈疾患の死亡率と罹患率(本文中で追加されている)

   

・T:平均観察期間4.6年

 

⇒実際に集まったのは、年齢61歳、女性69%、BMI24、CVD二次予防3645名(19.5%)、喫煙者18~20%、糖尿病16%、総コレステロール7.11mmol/L、TG1.74mmol/L、HDL1.51mmol/L、血圧135/79mmHg、プラバスタチン60%、シンバスタチン37%、抗血小板薬14%、カルシウム拮抗薬30%、硝酸剤10%、血糖降下薬12%

 

両群で気になる様な差は見られなかった。

 

 

 

 

②方法論

 

 

・ランダム化:層別ランダム法(一次予防、二次予防で層別化)ブロックサイズ4。

 

・盲検化:PROBE(アウトカム評価者) 

 

・解析:ITT (197名のlost to follow upの処理法の記載がない)

 

・介入以外の処置:脂質代謝に影響する薬剤は禁止。

         他の治療薬は必要に応じて変更可能。

         治療目標値の設定はない。

 

・サンプルサイズ:18000名。(一次予防0.58%/年、二次予防2.13%/年、EPAでイベント25%減で計算)

 

 

③結果

 

・プライマリ I群:2.8%、C群:3.5% HR0.81 95%CI:0.69~0.95 NNT143
   一次  I群:1.4%、C群:1.7% HR0.82 95%CI:0.63~1.06
   二次  I群:8.7%、C群:10.7% HR0.81 95%CI:0.657~0.998

   (本文の数字抜いてきたけど有効数字どうなってんの?)

有意差のあった主要評価項目構成要素
・不安定狭心症  I群:1.6%、C群:2.1% HR0.76 95%CI:0.62~0.95
・不安定狭心症(二次)  I群:4.8%、C群:6.7% HR0.72 95%CI:0.55~0.95

セカンダリ
脳卒中  I群:1.8%、C群:1.7% HR1.02 95%CI:0.91~1.13
・全死亡  I群:3.1%、C群:2.8% HR1.09 95%CI:0.92~1.28

有害事象 
・がん  I群:2.6%、C群:2.4%
・疼痛 I群:1.6%、C群:2.0%
・消化器症状 I群:3.8%、C群:1.7%

・皮膚症状  I群:1.7%、C群:0.7%

・出血  I群:1.1%、C群:0.6%

検査値

・TG  I群:-9%、C群-4%

EPA濃度 I群:72μg/mL、C群0μg/mL

 

<まとめ>

 

 有意差があったのはソフトエンドポイントのみ。検査値も含めEPA投与による大幅な改善は見られなかった。limitationにあったが検出力の都合でソフトエンドポイントを入れたというがならば二重盲検にしないとせっかくした研究の意味が・・・

 

 後、個人的に気になった点だが、研究の事務局(組み入れの可否の判断、ランダム化の乱数表の管理、データの管理)を富山医科薬科大学が担当していること。一番めんどくさい事務処理を一手に担っておきながらJELISの筆頭著者は神戸大学という。

 それから、わざわざ本文中に「role of funding source」という項目を設定し、「The sponsor had no role」と関与しなかったことを明記している。

 この点について臨床薬理 39(5)Sep2008;167-168では「試験デザイン、試験実施、判定委員会、論文執筆に持田製薬は関与していないと明記されている」(一部改変)と。

 臨床試験登録情報を見てみると、スポンサーは神戸大学であったと明記されている。

 

f:id:zuratomo4:20181231234049p:plain

 結論から言うと、試験に関与しなかったスポンサーとは神戸大学であって、持田製薬が関与したかどうかはわからない。この記載から試験の事務局が富山医科薬科大学であったのもうなづける。

 でも、論文執筆で筆頭著者としてかかわってるけどね(;^ω^)

 

 個人的には医薬品としてEPA補充するくらいなら、その金でうまい魚でも食いに行けというのが正直な感想ではある。

年末お遊び企画!読めよ薬剤師!!

<はじめに>

 

るるーしゅ先生から「参加せよ」と言われたので、乗ってみました。

f:id:zuratomo4:20181230185120p:plain

 

 

 「今年発売」がネックで、毎月のように買い足しているのに条件クリアしたのが5冊しかないという(´;ω;`)

 ま、罰ゲームにも参加するくらいのノリで書いてみようと思います。

 

<おススメ本>

 

  1.  科学的認知症診療 5Lessons
  2.  誰も教えてくれなかった実践薬歴
  3.  菌娘と学ぶ感染症イラスト図鑑

 

<選定理由>

 

対象の範囲で広いもの順にランキングしてみました

 

 まず1位からですが、基本的には認知症診療全般をエビデンスベースドに書いた本ですが、72ページからのPMDA審査資料解説(抗認知症薬を例に)と190ページからの製薬企業からのパンフレットの読み方は全薬剤師にお勧めできると思います。

 詳しい書評はくわばら先生に譲りますw

blog.hidexp.net

 

 2位にはツイッターで話題になった実践薬歴を上げました。2位にした理由はもう持ってる人が多そうだからです。「うまく薬歴が書けない」という方には必読でしょう。

 

 3位は感染症が得意でない薬剤師にもいいかなぁと思ったので。

デザインの根拠も示されていて、菌名や菌の形状すら楽しく学べる一冊。

 

<COIやバイアス>

 

 1位の著者の小田先生とはワークショップで何度かお会いしています。また、ネタ名刺入れに使用している魔法少女まどか☆マギカ キュゥべえ 名刺ケースを最初に弄ってくれた先生でもあります。

 

 2位の山本雄一郎ことソクラテス先生は、居酒屋抄読会に二度参戦していただいた先生です。お世話になりっぱなしです。

 

 3位は本当に何もないです(;^ω^)  美少女垢の🐈💊先生との待ち合わせまでの暇つぶしに買いました。想像以上の美少女が来て、一瞬頭の中が真っ白になったのはヒミツです。