一般向けの医療情報を紹介した書籍にまともなものは存在しない!
いきなり極論風に結論を書いちゃいました(;^ω^)
極論の意図は最後で解説します。(どうせ医療デマな本に騙された被害者の方には、当ブログの説明は親切度が足りなくて読むのが苦痛でしょうから)
この記事はじほう社から弊社宛に送られてきた挑戦状(ラブレターともいう。単なるチラシ)の検証が目的です。
以下は実際に送られてきたラブレターです。(正直、ラブレターは女性からいただきたいです。と、言うか女性から以外のラブレターは遠慮したいです)
一見して「認知機能低下は治せる?防げる?デマも大概にしろ!」としか思わなかったし、著者見て「世界的権威?誰だよ?ああ、自称ですか。偉そうな肩書を自称するのにまともなのいねぇし。日本で有名な肩書自称は自称医療ジャーナリストのいとしゅん氏ですよね~」という感想しか出ませんでした。
あんまりボケっとしてるとネタをHさんに全部ツイートされかねないので、大急ぎで書いてます(^^;
チラシの裏を見ると「metabolic enhancement for neurodegeneration (MEND)」とかいうプログラムを実施したら、認知症患者さんの認知機能が回復して仕事に復帰できたのだとか。
で検索してみると以下の論文が見つかりました。google先生、超優秀!(正直まともな論文があるとは思えなかったので、パブる気にもなりませんでした)
Reversal of cognitive decline: a novel therapeutic program. - PubMed - NCBI
PMID: 25324467(全文フリー)
クッソ長いイントロのあとに10例の症例報告が出ています。(本文で紹介された3例を抜粋)
①67歳女性。物忘れに悩む(認知症であったかどうか不明)→介入で改善した模様。
②69歳男性。起業家。FDG-PETで初期アルツハイマーパターンがみられる→介入で改善した模様。
③55歳女性。弁護士。仕事でスペイン語を覚えようとするもできず→介入でできるようになった模様。
診断名のない症例報告って(;^ω^)
しかも介入前後のデータが症例報告なのに全症例分ないって(;^ω^)
と思ったら表に書いてあったけど、診断根拠なんだろ?FDG-PETは感度特異度共にイマイチで臨床的には実用に耐えないレベルなんだが。
で、介入はというと
見ても何をしているのかよくわからない。検査値を正常化って?何よ?
で、二年後にまた同著者から同タイトルで論文出ました~!
Reversal of cognitive decline in Alzheimer's disease. - PubMed - NCBI
PMID: 27294343(全文フリー)
唯一の表がコレ
前の論文の10症例がそのまま転載されてね?
有効な介入なんだったら新規症例いるよね?
そもそも有効な介入なんだったらRCTやんなさいよ
結論から言うと何らかの原因たまたま認知機能がよくなった10人を自分の手柄って報告しただけ(ほかに有効だった人がいないから症例がそのまま流用されてる)
これが世界的権威(爆笑)
google先生に「metabolic enhancement for neurodegeneration 」って入力してここまで判明するのに10分強。
この程度の検証もできないって、じほう社さん、大丈夫ですか?
そもそも、現時点でアルツハイマー型認知症の治療・予防の双方とも有効な介入は見つかっていません!
一番「metabolic enhancement for neurodegeneration (MEND)」に近そうなFINGER試験も「有意な誤差」でしかなかったことは指摘済みです。
今回の記事はここまでです。
駄文を最後まで読んでくださった、あなたのやさしさと忍耐に感謝を!
では、タイトルについて解説を
本当は「一般向けの医療情報を紹介した書籍にまともなものはほとんど存在しない!」としたかったのですが、そうしてしまうと「じゃ、自分の読んでるのは大丈夫」と都合よく解釈される危険性が高いと判断し、不正確なタイトルになるデメリットと勘案して極論にしました。
都合よく解釈された例の記事(Fizz先生、ありがとう)
指導したのに、ネット情報を信じるのはなぜ? | 薬剤師目線で考える 今月、世間を賑わした健康情報 | 薬剤師情報サイト ファーマトリビューン(PharmaTribune)
居酒屋抄読会in天王寺、開催報告。本編:「qSOFAとSIRSとオムツ」延長戦:「診断のシステム1と顔面改造工事」
遅くなりましたが、2/9に開催しました居酒屋抄読会in天王寺の開催報告をしたいと思います。
開催案内は以下よりご参照ください。
録音はこちらからどうぞ
本編「qSOFAとSIRSとオムツ」https://twitcasting.tv/zuratomo4/movie/440056552
延長戦「診断のシステム1と顔面改造工事」https://twitcasting.tv/zuratomo4/movie/440076813
お題論文はqSOFAとSIRSクライテリアの比較をした研究のメタ解析論文になります。
共に敗血症で使われる基準となりますが、SIRSは旧定義(sepsis-1)で敗血症患者のスクリーニングを目的として作られたものであり、qSOFAは2016年2月に公開された新基準(sepsis-3)で作られた基準(SOFA)とは別個の死亡率が高く危険な患者群を特定するために作られた基準です。
本来別定義の別基準、しかも目的が異なるもの同士を比較するので、前提がアレなのですが、現状この比較しかqSOFAを検証する術がないので、上記のような研究が行われました。
要するに高感度低特異度(敗血症診断に対して)のSIRSと低感度高特異度(死亡に対して)のqSOFAの対決です。
このあたりの歴史的背景は、薬師寺泰匡先生の著書「@ER×ICUめざせギラギラ救急医」のp.199~に参考文献付きで詳しく書かれていますので、興味のある方は是非ご一読を!
では、論文の中身を見ていきましょう
先ずは臨床疑問の定式化から
(登録情報を見るとICUの部分は記載なしhttp://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.php?ID=CRD42017067645)
I:qSOFAを使用
C:SIRSを使用
(I群、C群とも入院時のデータで評価したと登録情報に記載がある)
O:敗血症診断の感度・特異度、ICU滞在期間の予測(このアウトカムは本文中では評価されていない)、院内死亡率の予測
続いてSystematic Reviewの評価を。(ここでは集める対象の研究、集める努力、実際に集まったかを評価します)
研究の種類:観察研究
使用したデータベース:MEDLINE,CIANHL,Web of Science
言語:英語のみ
個々の研究の質の評価:Newcastle-Ottawa Scale(0~8点、5点以上で良。集まった10研究中1個が低質と評価)
死亡をアウトカムとした研究と診断感度をアウトカムとした研究のファンネルプロットが示されており、著者はpublication biasは少ないとしている。
*個人の感想:新基準の発表から1年と少々でのレビューであり、質を担保して集めるとなると英語のみは妥当な判断としてよいか。ファンネルプロットは基本的には10研究以上で行うものだが、10研究に満たないにもかかわらず行っている。sepsis-3公開から期間がないことを考えるとよく集めたという感じはするが、ファンネルプロットをおこなう意味はあったのだろうか?
結果
院内死亡:SMD(標準化された差) 0.03、(95% CI, 0.02-0.05)I2 = 48%
*なぜか本文ではリスク比と記載されている。
診断感度:SMD1.32;、(95% CI, 0.40-2.24) I2 = 100%
*これもなぜか本文ではリスク比と記載されている。異質性100%だが、全研究で感度はSIRSが勝っているので、異質性は程度の差という判断で良いと思われる
死亡予測では死亡予測ツールとして開発されたqSOFAが、診断感度はその目的で開発されたSIRSがよかったという順当な結果でした。示されていないアウトカム(診断特異度、ICU在室期間)がどうだったかは不明と。
もともとSIRSの特異度の低さ(スクリーニング目的なので特異度が低いのは仕方ないのだが)が問題視された経緯があるので、微妙な結果だったのだろうなぁとは予測できるが
Systemic inflammatory response syndrome criteria in defining severe sepsis. - PubMed - NCBI
今回参加していただいた薬剤師メンバーのうちqSOFAに日常的に触れているメンバーは僕も含めていないので、どういった場面でqSOFAを使うかの議論にもなりました。(ベッドサイドで簡便に使えるのがqSOFAのウリなので)
使い道
①経口抗菌薬が処方された患者さんが薬局に!
→ふらふらで呼吸が荒い!(=qSOFA2点)
→疑義照会(抗菌薬処方=感染症疑い+qSOFA2点→敗血症疑い!)
②在宅で
→ふらふらで呼吸が荒い!(=qSOFA2点)
→至急連絡!(qSOFA2点=死亡する可能性の高い状態であることの示唆!)
qSOFAを味方にすることで、バイタルサインの知識も活した活躍もできそうで、楽しい一夜となりました。
なお、締めのラーメンを食べに行った後、見事に終電を逃し徒歩で帰宅することになりました!(40分とかからなかったので、食後のいい運動とは言えなかったのが残念です)
駄文を最後まで読んでいただきありがとうございました!
敗血症に興味を持たれた方は、以下のサイトを是非ご覧ください!
居酒屋抄読会in天王寺のお知らせ
更新滞っててすみません。
居酒屋抄読会in天王寺を2/9(金)、20:30過ぎくらいから開始します。
お題論文
PMID: 29289687
Quick-SOFAと Systemic Inflammatory Response Syndrome Criteriaの診断精度、予後予測能力を比較したシステマティックレビューです。
今回の参加メンバーはいつもの居酒屋抄読会in梅田とはほぼ違う顔ぶれとなっていますので、お酒片手にゆるりとご視聴ください。
なお、配信はこちらから
inhttps://twitcasting.tv/zuratomo4/
おまけ
・qSOFAについて
SBP≤100 mmHg、≥22 breaths/min、Glasgow coma scale<15の三つのうち二つ該当で敗血症を疑う
・SIRS criteriaについて
①体温<36℃または>38℃。②脈拍>90回/分。③呼吸数>20回/分,あるいはPaCO2<32 Torr。④白血球数>12,000/mm3,あるいは<4,000/mm3,または10%を超える幼若球出現
上記の①~④のうち2項目以上の該当で、感染症が疑われる場合に敗血症を疑う。
④って、そんなに早く測れるっけ?と思ったら以下のような論文が
PMID: 26158402
基準満たしてなくても危ない状態の人はいるって報告。全文フリーですので興味があれば読んでみるのもいいかも。
で、後付けですが前回の居酒屋抄読会in梅田の録音も公開中ですので良ければどうぞ
広島までEBMな旅をしてきました③ EBM合宿最終日、SR阿鼻叫喚編
前日の泡盛からのパリピナイトで死にかけたまま、二日目は朝8:30からチュータートレーニングですよ!
どうもこのお店はのりまき先生の行きつけらしいと聞き及びましたが、裏をとることはできませんでした。ドラ先生にお詫びします。すみませんでした。
はい、前夜の影響でチュータートレーニングに遅刻しました(;^ω^)
内容を簡単にまとめると、教えるのではなく、議論を活発にできるように調整するのがチューターのお仕事だということです。
安定のつかみである桑原先生のアイスブレイクは省略。
SRの読み方のレクチャーが、平社員先生から(内容は割愛)
で、グループワークへ
シナリオはこんな感じ
「脳梗塞で倒れたことのある夫が薬をきちんと飲んでないようで心配と相談された。ワークショップで知った論文を紹介しよう」
お題論文はコチラ
運動療法による認知機能の低下抑制効果を見たシステマティックレビュー(SR)ですね。
内容は
P:MCIもしくは認知機能の落ちた60歳以上の人(認知症は除外)
I:運動(3METs以上)
C:通常ケア、ストレッチ、軽度の運動(33METs未満)
O:認知症の発生率、MCIの発生率、臨床的に有意な認知低下の発生率、左記3つの複合
集めた試験:RCT(介入期間1年以上)→5件
検索エンジン:PubMed、CENTRAL、PsychInfo/PsychArticles
検索は1名、スクリーニングは2名で実施。評価は記載なし。
言語:制限なし
参考文献、専門家コンタクト:記載なし(=していない)
事前登録情報(SRも実施前に計画の登録が求められる)
https://www.crd.york.ac.uk/prospero/display_record.php?RecordID=52690
論文に記載されている登録番号ではヒットしない不思議(CRD42016052690)
結果
認知症 RR0.56 95%CI:0.23~1.36 I²=63.1 3試験
MCI RR1.12 95%CI:0.81~1.55 統合不可 1試験
認知機能低下 RR0.90 95%CI:0.42~1.95 I²=30.4 2試験
複合 RR0.74 95%CI:0.43~1.26 I²=57.1
太極拳の研究がとびぬけた有効性を示したため、認知症のRRが低く出た模様。
適用:シナリオから想定できる臨床疑問と論文がかみ合っておらず、「こんな論文知ってる」という知識のひけらかしになっている。きちんと疑問にあった論文を探そう!
藤原先生より
「SRの結果を適用するときは、SRを作成する過程で失われる情報に目を向けよう」
と、ありがたい言葉をいただきましたので、ここでシェアしておきます。
前夜の疲れで、覇気のなくなった会場をみて思ったこと(個人の感想)
「合宿はペース配分が大事」
検索セッション終了後、とーます先生と新幹線で広島を離脱しました。
新大阪で牡蠣を食べて帰宅。
今回のEBMな旅はこれで終了です。
おまけ
まだまだワークショップはたくさん企画されていますので、参加の検討をお願いします‼
第5回 CASP 関西 ワークショップ(テーマは医療技術評価)
◎ 日時:H30年2月25日(日) 午後13時開始 午後5時20分終了予定 (昼食:各自持参)
◎ 場所:大阪大学中之島センター 703号室 (〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53)
◎ 申し込み先:casp.kansai.ws@gmail.com
メールタイトル:「参加希望@第5回CASP関西」、本文:“所属(所属大学)、氏名 ”
◎ 参加費用:3000円 (学生1500円)
広島までEBMな旅をしてきました② EBM合宿1日目、RCT血祭り編
EBM旅行記はここからが本番です!
HCA(広島文献を読む会)とAHEADMAP共催の一泊二日のEBM合宿です。
初日のテーマはRCT(ランダム化比較試験)を血祭りにあげるですよ~。
初心者も多い(ただし、一番目立つのは神戸薬科大学EBM同好会からの刺客たち)ため、平社員先生からEBM概論とRCTの簡単な読み方のレクチャーから。
PECOの例(日常生活における臨床疑問の定式化)
P:婚前の挨拶に行く人
E:オシャレな店
C:行きつけのバー
O:結婚を認めてもらえるか
未婚者は結婚ネタをぶっこむのが、ワークショップの習わしのようです。
(このPECO平社員先生の体験談かな?)
ここでテレビ無し生活の同志であるはずの平社員先生から、たけしの家庭の医学で紹介されたといういかがわしい健康情報として「アボカドがひざ痛をやわらげるのに期待できる?」が紹介されました。
そんなのあったのかとスマホで検索すること1分弱、報告を見つけました!
関節の可動域をアボカドがプラセボに比べて広くできるかを検討したRCTです!
めんどくさいので結論から言うと、プラセボと同等の改善効果が得られました!
つまり効きません!
マスコミはスマホで1分かからない程度の検証すらできないということを爽やかな笑顔を浮かべながら述べる平社員先生、さすがです!
ここまでが合宿の導入部分です。(本番はここから)
お題論文を読むに至った経緯(仮想症例シナリオ)は以下のような感じでした。
『認知症の発症を恐れるリウマチ持ちで痛みで動けなくなっている高齢女性から、某NHKで紹介されていたコグニサイズのような方法で認知症の発症を予防できないか相談された』
は?(゚д゚)?コグニサイズってなんだよ?と、思って調べたら冊子がありましたので、リンク貼っておきます。
http://www.ncgg.go.jp/cgss/department/cre/documents/cogni.pdf
どうも国立長寿医療研究センターが開発した身体運動と認知機能訓練を組み合わせたもののようですが、肝心の認知機能低下予防効果がわかりません。
(引用されている文献からはMMSEで1~2点程度改善するかもしれませんが、MMSEは30点満点。鋭敏さもないので、この点数で効果を実感するのは無理でしょう)
広島大学病院からの使者(〇貞先生)が教えてくれた、コグニサイズを紹介した論文がありましたので紹介しておきます。(効果を検証したものではないので、以下のリンクを踏む必要はありません。ほぼ時間の無駄ですので悪しからず)
Community-Based Intervention for Prevention of Dementia in Japan. - PubMed - NCBI
で、本題であるお題論文はコチラ
既に忍者先生が記事にされていましたので、分かり易い記事をお求めの方は、以下のリンクからどうぞ
screamtheyellow.hatenablog.com
論文の内容を見ていきましょう
(長いので論文の概要と結果から先に出します。その後解説とツッコミに行きますのでご了承ください)
P:60~77歳のフィンランド人
CAIDE (Cardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia) Dementia Risk Score 6点以上
CERAD基準:ⅰ)30単語(10単語を3回)のうち記憶出来た単語が19単語以下ⅱ)思い出せた単語が75%以下ⅲ)MMSEが26点以下のうち1つ以上に該当する
年齢相応よりやや認知機能が低下していると思われる者
(悪性疾患、認知症、大うつ病、視聴覚障害、血管再建術後1年以内、症候性心血管疾患は除外)
*CAIDE Dementia Risk Scoreは20年後の認知症発症の予測スコア。15点満点で評価。6点以上だと発症リスクは2%以上に相当する。
I:多面的介入(食事、運動、認知機能訓練、心血管リスク管理)
C:一般的なカウンセリング(登録情報によると初回のみ、あとは検査の為だけの通院)
O:神経心理テストバッテリー(NTB)Zスコアを用いて測定した認知機能の変化
T:2年(追跡率94.4%)
blinding:アブストラクトにはdouble-blind(二重盲検)の記載あり
結果:介入群0.20、対照群0.16、平均差0.021(95%CI:0.002~0.042)。スコアで相対的に25%改善。平均差も有意差をもって介入群で改善。
以下は解説
*介入内容の詳細
①食事→Finnish Nutrition Recommendationsに準拠。(個人セッション3回、グループセッション7~9回)
1日に摂取するエネルギー構成
タンパク質10~20%
脂質25~35%(飽和脂肪酸<10%、不飽和脂肪酸10~20%、多価不飽和脂肪酸5~10%、ω3脂肪酸2.5~3g)
炭水化物45~50%(精製糖<10%)
食物繊維25~35g
食塩5g/日未満
アルコールは1日に摂取するエネルギーのうち5%未満
必要に応じて5~10%の体重減少を目標
上記を達成できた場合、「野菜・果物・低脂肪乳の摂取の推奨、ショ糖1日50g未満、バターを植物性マーガリンへ変更、魚の摂取を週二回以上」が追加
②運動→DR'sEXTRA(http://dx.doi.org/10.1016/j.eurger.2010.08.001)に準拠。 筋トレ週1~3回、有酸素運動1~3回
③認知機能訓練→導入講義10回、コンピュータによる訓練(6ヶ月×2、週3回、1回10~15分)
④心血管リスク管理→高血圧、糖尿病、脂質異常症ガイドラインに準拠。看護師面談(3、9、18ヶ月)、医師面談(3、9、12ヶ月)血圧・体重・BMI・腰囲・胸囲の測定と生活習慣に対する指導を行う。治験参加医師は処方は禁止だが、受診勧奨は可能。
*神経心理テストバッテリー→拡張バージョンが使用されている。記憶3テスト、処理3テスト、遂行機能5テストの計14種のテストを組み合わせた検査。変法が多すぎて、専門家でもどの程度把握しているか不明。変法の多さから検査の信頼性の評価もままならない。なお、僕は全く理解してません(研修会を受けに行ったが開始直後に撃沈した)
検査時間の目安(今回のNTBは載っていませんが認知症圏の検査時間の目安にはなると思います):http://www.med.kyushu-u.ac.jp/braincenter/annai2-shin.htm
zスコアは得られたスコアを標準化したもの。スコアが正規分布という前提を満たすならば、2より大きければかなり有効と判断できる。
はい、お待ちかねのツッコミはここからですよー
①ベースラインのNTBzスコアで介入群と対照群で0.06の差がある
②アブストラクトには「二重盲検」とあるが、試験登録情報(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/record/NCT01041989)には「single(Outcomes Assessor)」と記載があり、計画されていない盲検を実行したのか?
本文中には参加者に介入がわからないよう施設間、群間の交流は禁止とあるが、本当に隠せたかを評価していない
チーム平社員では「この介入で盲検とか無理ゲ」と評してました。
③結局、どの程度改善したのかを読み解くことができない
④予測された変化は対照群-0.21、介入群-0.1で両群とも改善してるやん!
⑤介入、検査どれも負荷が大きく拷問に近い行為
まとめると、結果は有意差はあるものの臨床的な差があるとは考えにくく脱落は小さいものの実行する価値のある介入だとは到底考えられない。シナリオの患者さんは痛みも抱えており、このような効果も果てしなく薄い介入を推奨すること自体倫理的に問題。(何もしなくても改善している。組み入れ基準を途中で緩和していることの影響があったかは不明)
【*書き忘れ追記
やってもいない二重盲検を謳っていたりするこの論文を見て、この奥村先生の記事を思い出してました。
「ちょっと盛られた」臨床試験の気付き方
医学書院/週刊医学界新聞(第3246号 2017年10月30日)】
論文の結果に対する神戸薬科大学EBM同好会からの刺客からの評
「結果は有意な誤差に過ぎない」
おまけ
平社員先生より
RobotReviewer: Automating evidence synthesisで評価させると「non-RCT」と返されて評価してくれないとのことです。
この後、論文検索セッションでくわばら先生による「スマホで簡単、論文検索」が行われ、夜のワークショップへ
「カリー春雨」
という名前にひかれて、泡盛をロックで注文し、無事死亡しました。
そして、翌朝は安定の
……そして目覚めると全裸。
EBMな初日はこうして幕を閉じました。
広島までEBMな旅をしてきました① 第1回居酒屋抄読会in広島(2018/01/06)
仕事終わりに電車に飛び乗り、広島へ。
翌日から始まるEBM合宿に備え前入りしてきました。
で、20時半には着けてしまうわけですよ。
ならばと呼びかけて、居酒屋抄読会をしてきました~。
翌日、講師としての任務を控えているにもかかわらず、くわばら先生と平社員先生が駆けつけてくださいました‼
お二人ともありがとうございます‼
録音はこちらから
けいしゅけ先生がまとめていただきました~!
ありがとうございます
居酒屋抄読会in広島 聴いてみた~脳血管疾患の女性のカルシウム補給と認知症のリスク~ | けいしゅけの論文まとめ帖
で、お題論文はコチラ
Calcium supplementation and risk of dementia in women with cerebrovascular disease. - PubMed - NCBI
では、内容を見ていきましょう。
P:70~92歳の認知症のない女性700人(Sweden Population Registryより生年を指定して抽出された)
I:カルシウムサプリメントを摂取する
C:カルシウムサプリメントを摂取しない
*DSM-Ⅲ-Rとはアメリカ精神医学会による診断基準。現行がDSM-Ⅴなので古い基準ではある。以下は日本神経学会より参考資料
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/sinkei_degl_2010_02.pdf
*指定された生年と組み入れ人数
1908年4名、1914年27名、1918年137名、1922年193名、1930年339名
結果は
認知症(全タイプ):オッズ比(OR)2.1、95%信頼区間(95%CI)1.01~4.37
脳卒中関連(VaD と mixed AD/VaD):OR4.4、95%CI 1.54~12.61
アルツハイマー型認知症(AD):OR0.66、95%CI 0.19~2.25
認知症の発症が増えるかもという結果でした。
ただ、スウェーデン発の観察研究としては参加人数が少なく、アウトカムの発生数もそれにしてがって少なくなるため、わずかな差が大きく見えてしまっているだけのような気がします。
また、補正についてもコントロールしたとはありますが、補正内容への言及はなくTable1の内容で補正していたとしても不十分さが残ります。(既往歴が脳卒中しかないなど)
会での結論は交絡を見ているだけではないか?探索的な研究だったのではないか?という感じになりました。
参加人数3人で、食べる時間がうまく取れず、なかなか鳥鍋が食べられないトラブルもありましたが、楽しい時間を過ごせたと思います。
翌日の準備が大変な最中、参加していただきました両先生にこの場を借りて感謝申し上げます。
ありがとうございました‼
11/19 居酒屋抄読会in東京、開催報告
去る11/19に東京駅近くの居酒屋で、東京では初めてとなる居酒屋抄読会を開催いたしました!
今回は、乙ありぃ先生、いっつん先生、たけちゃん先生に参加していただき、2017年に発表されたてのDOACのリアルワールドデータの論文を読みました!
お題論文はコチラ
(全文フリーではありませんが、動画内にて結果の解説がありますので、手ぶらでご視聴ください)
PMID: 28974629
配信の録音はこちらから
続き
韓国の保険診療データ(国民の97%が加入、毎年公表されている)
DOACがCHA 2 DS 2 -VAScスコア≧ 2でないと適応にならないため、ワーファリンを対照にプロペンティシティスコアで1:2になるようマッチさせて解析しているデータになります。なお、DOAC群の52%は減量用量で使用されています。
論文のPECO
P:CHA 2 DS 2 -VAScスコア≧ 2のAF患者のうち新規使用者(2014~2015)
E:DOAC(リバロキサバン5681名、ダビガトラン3741名、アピキサバン2189名)
C:ワーファリン(プロペンシティスコアでマッチさせた23222名)
O:①虚血性脳卒中②頭蓋内出血③全死亡
T:平均追跡期間1.2年(アピ0.4年、リバ0.5年、ダビ0.55年、ワーファリン1.5年)
結果
① HR0.98 95%CI:0.78~1.22
② HR0.50 95%CI:0.36~0.68
③ HR0.70 95%CI:0.59~0.81
④ ①+②+③(ネットクリニカルアウトカム)HR0.79 95%CI:0.65~0.94
研究の限界として、INRがわからない(TTR、HAS-BLED算出不能)、DOAC群の追跡期間の短さ(適応拡大で使用量が増えたのが2015.7以降の為)
話し合ったこと(一部抜粋)
1.重症度とDOACの値段の問題
自宅(使える)→回復期・老健(使えない)→在宅訪問診療(使える)→長期療養(使えない)と、重症度の上昇に応じて使えたり使えなかったりするというでたらめな制度設計(-_-;)
2.DOACが広がることで起きた臨床の場での変化
(乙先生によるキャス前の事前レクチャーより)頭蓋内出血が起きても、時間経過による血腫の拡大がDOACでは小さい。(下記は一例)
3.AF患者の入院期間の短縮ができる(ただし、制度設計の問題で薬価の都合による老健等の引受先がなくなる)
当日ご視聴いただいた皆様、ありがとうございます。
乙先生のレベルの高い解説を是非とも録音にてお楽しみください。