ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑨~関節リウマチの生物学的製剤はどれが良いか?~
<急ぐ人向け結論>
国内承認薬間ではどれでも大差なし!(但し論文がもう古いので改訂版を探そう)
<この論文を選択した理由>
神戸薬科大学studentCASPに参加した際いただいた過去の開催報告の冊子にネットワークメタ解析の論文があったことを思い出したので、読んでみた。
なおCASP(Critical Appraisal Skills Programme)とは、医療や保健の現場で判断をする職種に就いている人だけでなく、その判断に関わるすべての人が、その根拠をわきまえた上で判断し行動できるように支援する市民のための健康支援活動のことです。
とは言っても、一般市民はおろか医療従事者間にも十分広まっているとは言い難い状況です。
なので、千春会病院の高垣伸匡先生を中心に学生のうちから臨床論文を読める力をつけようと学生をターゲットとしたCASPとして活動しているのがstudentCASPです。
複数の薬科大学で開催されていましたが、参加者不足からいくつかは活動中止に追い込まれたようです。(是非、再開してほしい。特にわが母校の摂南大学には)
定期的に活動を続けていることを僕が把握しているのは、神戸薬科大学と兵庫医療大学、近畿大学です。
なかでも、神戸薬科大学は学生が主体となって開催している珍しい大学です。(以前紹介した平社員先生の母校でもあります。主体となっているEBM倶楽部は平社員先生の後輩でもあります)
前置きが長くなりました。
<お題論文>
PMID: 19884297
第5回studentCASP in Kobe (2012.11.23)より
訂正が入っているので、訂正版のpdfはこちら
http://www.cmaj.ca/content/suppl/2010/04/15/cmaj.091391.DC2/bio-singh-rev.pdf
文献の評価シートはコチラ
Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver7.pdf
<リサーチクエスチョン>
P:関節リウマチ(RA)の患者
I/C:アバタセプト(オレンシア)、アダリムマブ(ヒュミラ)、anakinra、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、ritukximab(リツキサン、適応外)
O:有効性(ACR50=50%改善率)、安全性(有害事象による中断)
⇒本文からの追加情報はなし。コクランレビューの再解析論文。
<システマティックレビュー(SR)の評価>
データベース:Cochrane library
検索期間:~2009.5.30
検索語:RA
元論文:コクランレビュー(RCTのSR)、risk of bias 個々のSRで済み
評価者:二者独立、意見対立時の方法の記載なし
出版:英語(元のレビューは制限なし)、参考文献・専門家連絡ともに元のSRで済み
異質性:事前登録なし、PはSRごとにバラバラ、Oは問題なし
⇒コクランレビューの再解析なので、方法論的には完璧のはず。集まった文献の質や出版バイアスはどうにもならないが、それへの言及はない。
つまり、元の研究の評価は本研究の著者は行っておらず、元となったコクランレビューに丸投げしている。
*当該研究の方法が「科学的に信頼のおける方法で行われているかの評価」を批判的吟味と呼んでいる。SRの批判的的吟味とはコクランの方法をどの程度満たしているかを評価している。つまり、「コクランの方法=SRの方法としては最高」ということ
<ネットワークメタ解析(NMA)の評価>
ネットワーク図:無い。というか書く必要がない。
⇒SRの再解析なので、個々の研究を繋いでいるのはplacebo
閉じた環:無い。
⇒個々の研究を繋いでいるのはplacebo(このタイプのNMAのネットワーク図はstar shapeと呼ばれる) つまり直接比較は集めておらず、研究の環は作りようがない。
資金源、COI:開示されている
結果
有効性:Fig4
有意差があったのはanakinra VS エタネルセプト OR 0.34(0.14-0.81)でエタネルセプトが良い
安全性:Fig5
ややエタネルセプト優位
アダリムマブ VS エタネルセプト OR 1.89(1.18-3.04)
anakinra VS エタネルセプト OR 2.05(1.27-3.29)
エタネルセプト VS インフリキシマブ OR 0.37(0.19-0.70)
コクランのSRを利用することで、文献を集めて評価する手間を省いた点がアイデアとして光る。
ただ、直接比較を集めていない時点で、NMAとしての価値は限りなく低い。
今回は久々なので、リハビリもかねてこんな感じで読んでみました。
4/7第△回、居酒屋抄読会in梅田 開催報告
4/7に居酒屋抄読会を開催しましたので報告します。
参加は当初はキャノン先生・ぐっち先生・にいやん先生・リンコ先生・僕・スペシャルゲストの馬淵先生の6名、後半から近所で講演後のソクラテス先生に緊急参戦していただいた結果7名での配信になっています。(論文を読み終わった後が特に楽しいので、録音を是非ご視聴ください)
開催案内、シナリオ、お題論文は以下から
録音は以下から
今回はフェブキソスタットの論文を題材に扱いました。
前半は以前記事にしたRCTです。
フェブキソスタットの心血管イベントを評価した論文読んでみた(CARES)trial - 窓際さんのお勉強な日々
後半は尿酸降下療法を比較したネットワークメタ解析です。
PMID: 27605442
ネットワークメタ解析(NMA)を読む際に使ったシートは以下からどうぞ
Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver7.pdf
開催報告もかねて、NMAを読んでいきたいと思います。
臨床疑問は?(黒字はアブストラクトから、赤字は本文追加分)
I/C:アロプリノール、ベンズブロマロン、フェブキソスタット(20,40,60,80,120,240mg/day)、pegloticase(8mg/2w,8mg/4w)、プロベネシド
O:血清尿酸値(6mg/dL以下の達成率)、何らかの有害事象
実際に集まったのは、30歳以上、男性比率80%以上、ベースラインの尿酸値8mg/dL超、4~52週の試験でした。
次にシステマティックレビューの評価
・データベース: PubMed, Medline, Embase, Cochrane Library databases ,ClinicalTrials.gov
・検索期間:~2016.1.16
・検索語:PICOごとに検索語を設定して検索。(最後のSはstudy designです)
(P) hyperuricaemia, hyperuricemia, gout, (I) urate-lowering therapy, uric acid, urate, (C/O) allopurinol, benzbromarone, febuxostat, pegloticase, probenecid, and (S) random*, and randomized controlled trial.
・元論文:RCT、risk of bias している(appendix。ブラインドでハイリスク評価だが、検査値に影響するのか?)
・評価者:3者独立→第三者介入
・出版:英語のみ。 reference、専門家連絡なし。funnel plotは研究数が足りず実施不可
・異質性:事前登録なし。Pは大きな問題なし。Oは安全性の中身が不明
出版バイアスと異質性バイアスは避けられない感じだろうか
NMAの評価
・ネットワーク図:一部あり
・閉じた環:少数有(プロベネシド、ベンズブロマロン、pegloticaseは比較研究が少ない)
・直接間接比較:Table2,Fig3
・一致性:非一致なし(普通のメタ解析段階での異質性はある)
・資金源、COI:ともに開示
ほぼアロプリノール対フェブキソスタット各用量の比較(;^ω^)
結果
有効性(OR1より大きい=フェブキソスタットが良い)
allopurinol vs. febuxostat
20 mg QD: OR 0.27, 95% CI: 0.13–0.59
40 mg QD: OR 1.52, 95% CI: 1.15–1.99
80 mg QD: OR 3.54, 95% CI: 2.80–4.47
120 mg QD: OR 5.95, 95% CI: 4.15–8.52
240 mg QD: OR 17.41, 95% CI: 8.22–36.89
benzbromarone vs. febuxostat
20 mg QD: OR 0.20, 95% CI: 0.06–0.73
120 mg QD: OR 4.37, 95% CI: 1.47–12.93
240 mg QD: OR 12.78, 95% CI: 3.58–45.60
安全性(ORが1より大きい=右の薬剤が良い)
febuxostat 120 mg QD vs. allopurinol: OR 0.72, 95% CI: 0.56–0.91
probenecid vs. allopurinol: OR 8.40, 95% CI: 1.00–70.21
probenecid vs. febuxostat 40 mg QD: OR 8.56, 95% CI: 1.02–72.01
probenecid vs. febuxostat 80 mg QD: OR 9.62, 95% CI: 1.15–80.86
probenecid vs. febuxostat 120 mg QD: 11.71, 95% CI: 1.38–99.29
サンプルサイズが小さく95%CI(信頼区間)の幅が大きく、結果の精確性は低い。
また、尿酸(UA)を下げることは代用のアウトカムであり、UAを下げること=健康に良いとは限らないので注意。
おまけ
今回緊急参戦のソクラテス先生は5/26に兵庫医療大学で講演の予定とのこと。
ご都合がよろしければ、ご参加ください。
kumamoto-pharmacist.cocolog-nifty.com
あと、著書もどうぞ(5/26に持っていけばサインがもらえるはずです)
ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑧~経口血糖降下薬間の心血管死の抑制効果~
<今回の記事作成の背景>
るう先生(僕の転職に当たっていろいろ助言をくださった恩人)より、このようなツイートのやり取りをした結果、読んだにもかかわらずほったらかしにした論文があったことを思い出しました。
はい、お題論文は薬局2018年1月号の「エビデンスアップデート2018」の青島先生の記事で引用されていたネットワークメタ解析の論文になります。
※薬局の1月の特集は前年にアップデートされたエビデンスをまとめてチェックできるのでオススメですが、販売当初は売れすぎて品薄でした。確認はしていませんが、今はきっと大丈夫!
今回のお題論文
PMID: 28542373
一言でまとめると「SGLT2阻害薬が一番良かった」です。
ここから批判的吟味をして、結果を見ていきましょう。
臨床疑問(リサーチクエスチョン)をアブストラクトから抽出します。
P:2型糖尿病の患者
I/C:メトホルミン、スルホニルウレア、チアゾリジンジオン(TZD)、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、ナトリウム - グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害剤
O:全原因死亡率、心血管関連死亡率、急性冠動脈症候群(ACS)、心筋梗塞(MI)
本文から詳細情報を追加すると(追加情報は赤字)
P:2型糖尿病の患者
I/C:メトホルミン、スルホニルウレア、チアゾリジンジオン(TZD)、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、ナトリウム - グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、meglitinide
※background medicationは変更がなければ、解析時に考慮しない
O:全原因死亡率、心血管関連死亡率、急性冠動脈症候群(ACS)、心筋梗塞(MI)
24週以上、100名以上のサンプルサイズ、アウトカムに設定されたデータが報告されていること(有害事象としての報告も含む)
実際に集まったのは、54~73歳、ベースラインのHbA1c 7.2~8.9%、平均罹病期間18年、本文中にはないが追跡期間は24~270週(24週に近いものが多い)。
また、各薬剤クラスごとの内訳は本文中で開示されていないためS2 Table「Main characteristics of included trials.」から探していくと(黒字は凡例より、赤字は表より)
スルホニルウレア:Glipizide、グリメピリド、グリベンクラミド、グリクラジド、Glyburide
TZD:Rosiglitazone、ピオグリタゾン
DPP4阻害剤:シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン
SGLT2阻害剤:ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン
※薬剤略称の凡例にない薬剤があることに怒りを覚えていますので、本記事はそういうバイアスがかかっていることをご承知おきください。普通に考えて、武田が種まき試験的にアログリプチンvsピオグリタゾンの試験やってんだから、もれてんの気づけよ!編集!
(# ゚Д゚)<こちとら確認のために表に記載の臨床試験登録情報確認しとんじゃ!
臨床疑問の定式化だけでくたびれましたが(すでにこの論文に読む価値はないのではという疑念が拭えません)、システマティックレビュー(SR)の評価に進みたいと思います。
・データベース:MEDLINE、EMBASE,、the Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.gov
・検索期間:~2016.3
・検索用語:S1 Tableより「2型糖尿病」と各薬剤名
・元論文:RCT、risk of bias toolで評価している→S3 Table、S1 Figにあり
・評価者:二者独立→第三者介入
・出版:言語制限なし、参考文献は追っている、専門家連絡なし、funnnel plotあり(S4 Fig)
・異質性:事前登録なし、P/Oについてバックグラウンド治療(多くがメトホルミン)の無視が気になる
SR部分で気になったのは、risk of biasの評価の雑さ。PROactiveはクソ試験ではあるが一応は評価者も盲検されていたぞ!(解析後に後付け解析されはしたが)
あと、NCT00509236だが、評価者は盲検化されていない試験でlow riskってどうなん?英語が読める読めない以前の問題では?(おそらく著者達はきちんと読んでない)
すでに読む価値なしという結論が頭をよぎりますが、ネットワークメタ解析(NMA)の評価行きます!(もはや意地)
・ネットワーク図:本文には全死亡のみだが、S7~S9Figでほかの図も示されている
・閉じた環:多数ある
・直接比較、間接比較:分けて示されている
・一致性:非一致は少ない(S3 Fig)
・資金源、COI:ともに「なし」とのこと
NMAの評価部分だけ見るとまともに見えますが、SR部分ではあえて触れませんでしたが、ほとんど説明なくα-グルコシダーゼ阻害剤、meglitinideが削除されています。(アカルボースは非一致性が高かったから削除したとはあります)
説明もなく介入群を削除し、アブストラクトでは触れもしないのでは「粉飾」との誹りは免れません。
価値がないと判断してから結果見るのは苦痛ですが、結果を見ていきます。
結果
全死亡(Fig3下側)・・・上側の直接比較と大きな差がない=一致性が高い
有意差をもって他剤より死亡を減らしたのはSGLT2阻害剤だけ
vs Placebo 0.68(0.57-0.80)
vs SU 0.63(0.46-0.87)
vs TZD 0.71(0.55-0.90)
vs DPP4 0.65(0.54-0.78)
なお、直接比較ではプラセボとしか有意差はなかった
vs Placebo 0.72(0.61-0.85)
心血管死(Fig4下側)
有意差をもって他剤より死亡を減らしたのはSGLT2阻害剤だけ
vs Placebo 0.61(0.50-0.76)
vs SU 0.52(0.31-0.88)
vs TZD 0.66(0.49-0.91)
vs DPP4 0.61(0.48-0.77)
なお、直接比較ではプラセボとしか有意差はなかった
vs Placebo 0.63(0.51-0.78)
EMPA-REG OUTCOMEの結果に見事に引っ張られているといった印象。
ただ、firstlineとsecondlineの治療がごちゃごちゃに解析されており、何の参考になるのか疑問。粉飾もされており、「読む価値はない」というのが僕の結論です。
つまり、この論文読むよりEMPA-REG OUTCOMEを読んだ方がよいと思います。
駄文を最後まで読んでいただきありがとうございます。
まだまだ記事のストックがあるので、さっさと書かねば:;(∩´﹏`∩);:
ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑦~心房細動患者の卒中予防に有効な治療手段は?~
今回のお題論文は「広島文献を読む会(通称HCA)」で3月に取り上げられた論文を、一人寂しく読んでいきたいと思います。
※HCAとは、、、
平社員先生(ツイッターアカウント@T462759)や有志で運営されている文献抄読会。その名の通り広島で開催されているが、平社員先生は住まいも職場も広島ではないという。そもそも平社員先生は「中国地方~関西までは誤差みたいなもん」という思考と異常な行動力を誇る方で、学生時代よりEBMを学んできたEBMerの年下の先輩。広島に近い方は一度参加をご検討ください。
お題論文はコチラ
PMID: 27207998
非弁膜症性心房細動の患者さんに対する抗凝固療法の効果と安全性を検討したネットワークメタ解析になります。著者たちはアブストラクトの結論で「全介入有効だった」と述べています。なお、本文の結論は「リバロキサバンが一番良かった」でした。(見え透いた伏線)
さっそく読んでいきます。
アブストラクトから臨床疑問(リサーチクエスチョン)を探していきます。
P:非弁膜症性心房細動の患者
I/C:NOAC→アピキサバン(エリキュース)、ダビガトラン(プラザキサ)、エドキサバン(エドキサバン)、リバロキサバン(イグザレルト)
ビタミンK拮抗薬(書いてないけどINRの設定からほぼワルファリンっぽい)
Watchman device→経皮的左心耳閉鎖術(LAA Closure: Left Atrial Appendage Closure)で使用する。
O:有効性(脳卒中、全身性塞栓症)、二次アウトカム(全死亡)、安全性(頭蓋内外の大出血) 六か月以上のフォローアップをしている。
本文メソッドからの追加情報はなし。
実際に集まった層は、平均年齢71.5歳、男性65%、フォローした期間(中央値)1.7年
システマティックレビューの評価
・データベース:MEDLINE
・検索期間:1966~2015.8
・検索語:記載なし
・元論文バイアス:RCT(第2相臨床試験は除外)、risk of biasの評価はしている
・評価者バイアス:二者で共同。意見対立時の方法はなし
・出版バイアス:英語のみ。参考文献、専門家連絡共になし。
・異質性バイアス:事前登録なし。患者情報、アウトカム共に統合に際して問題はないと思われる。
システマティックレビューに関して、検索語の提示がなくデータベースも一つのみと、レビューする気があるのか疑問。
(たぶん有名な大規模研究のみを相手にしたからだとは思うが)
※個々の研究の評価について
「J-ROCKET AF」(PMID: 22664783)の評価がすべてunclearになっており、評価はしたと記載されているがきちんと評価できたとは言えないと思われる。
(著者の文献評価能力が怪しい)
なお、RobotReviewerの評価はコチラ
(僕の評価と一致したから出すというバイアスがかかっていますのでご注意ください)
trial |
design |
n |
Random sequence generation |
Allocation concealment |
Blinding of participants and personnel |
Blinding of outcome assessment |
The J-ROCKET AF Study.pdf |
RCT |
??? |
+ |
? |
+ |
+ |
個人的な小括として、システマティックレビューはずさんで、結果への確信性は低いと言わざるを得ない。(本来ならここで読むのをやめるが、本記事の目的はチェックリストが使えるかの確認なので最後まで読んでみる)
ネットワークメタ解析の評価
・ネットワーク図:一部あり(示されているのは脳卒中のもの)
・閉じた環:二か所のみ
・直接、間接比較:無
・一致性:非一致性なし
・資金源:示されていない
・COI:アピキサバン、リバロキサバン、Watchman deviceの販売メーカー
結果
・卒中、塞栓症(fig6)
・大出血(fig8)
vsVKA エドキサバンのみ出血が少ない
・死因を問わない死亡(全死亡)(fig10)
vsVKAorPlacebo 有意差のあるものはない
・ランキング(table3)
卒中、塞栓症:リバロキサバン>ダビガトラン>アピキサバン
死亡:Watchman device>リバロキサバン=アピキサバン
TTR50%台のワーファリン相手に優越性一つつけられなかったリバロキサバンが謎の大躍進!もとにしたデータはROCKET AFとJ-ROCKET AFなのに!
アブストラクトの結論で「The entire spectrum of therapy to prevent thromboembolism in nonvalvular AF significantly reduced stroke/systemic embolism events and mortality.」とあるが、アスピリンは?
あと、Fig7は「unajasted」の間違いと思われる。
本論文を読んだ個人的感想。「捏造スレスレじゃね?」以下は参考文献。
「ちょっと盛られた」臨床試験の気付き方 医学書院/週刊医学界新聞(第3246号 2017年10月30日)
ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑥~メトホルミン治療の次の選択肢はどれがいいですか~
4/1、薬価改定でバタバタの時期の貴重過ぎる日曜日にもかかわらず、多くの方にご参加いただき、第2回AHEADMAP×EBM倶楽部ジョイントワークショップを盛会のうちに終えることができました。ご参加の皆様、兵庫医療大学の清水先生はじめEBM倶楽部の皆様ありがとうございました!
ワークショップが終わって、モンハンで一狩りし終わったので、まだ記事化できていないネットワークメタ解析の論文を読んでいきたいと思います。
今日のお題論文はコチラ
PMID: 25919293
先ずはアブストラクトから情報を拾っていきます。
P:メトホルミン単剤(1500mgか最大耐用量を4週以上使って)でコントロール不良の2型糖尿病患者
I/C:FDA、EUで承認された25薬剤(インスリン製剤以外の血糖降下薬+持効型インスリン)
O:(有効性)HbA1c、体重、収縮期血圧(安全性)低血糖、尿路感染、生殖器感染
まるでSGLT2iに特化したかのような安全性のアウトカムが光ります。
本文から追加情報を拾っていくと(追加情報は赤字で表示。英字は日本未発売)
P:メトホルミン単剤(1500mgか最大耐用量を4週以上使って)でコントロール不良の18歳以上の2型糖尿病患者
I/C:FDA、EUで承認された25薬剤(インスリン製剤以外の血糖降下薬+持効型インスリン)
αGI:ミグリトール(セイブル)、アカルボース(グルコバイ)
DPP4i:アログリプチン(ネシーナ)、リナグリプチン(トラゼンタ)、サキサグリプチン(オングリザ)、シタグリプチン(ジャヌビア/グラクティブ)、ビルダグリプチン(エクア)
胆汁酸吸着薬:colesevelam(コレスチミドの類似薬。下記は参考)
高コレステロール血症治療薬「ウェルコール」の2型糖尿病に関する適応追加申請について - ニュースリリース - 第一三共株式会社
グリニド系:レパグリニド(シュアポスト)、ナテグリニド(スターシス/ファスティック)
GLP1アナログ:エキセナチド(バイエッタ)、リキシセナチド(リキスミア)、リラグルチド(ビクトーザ)
持効性インスリン:インスリングラルギン(ランタス)
SGLT2i:カナグリフロジン(カナグル)、ダパグリフロジン(フォシーガ)、エンパグリフロジン(ジャディアンス)
SU:グリベンクラミド(オイグルコン/ダオニール)、グリクラジド(グリミクロン)、グリメピリド(アマリール)、glipizide
TZD:rosiglitazone、ピオグリタゾン(アクトス)
合剤:アログリプチン+ピオグリタゾン(リオベル)、empagliflozin/linagliptin
O:(有効性)HbA1c、体重、収縮期血圧(安全性)低血糖、尿路感染、生殖器感染
12~52週で評価
実際に集まったのは、50~62歳、BMI30.8、SBP131、HbA1c8.0%の患者さん。
リサーチクエスチョンが明確になったところで、システマティックレビューの評価へ
・データベース:MEDLINE、CENTRAL
・検索期間:~2014.5
・元論文バイアス
RCT(Blindは問わない)、risk of bias toolで評価(FigS2.不明評価が多い)
・評価者バイアス
二者独立→話し合いで決着つかない場合は第三者介入
・出版バイアス
英語のみ。リファレンスは探している。専門家への連絡はない。ファンネルプロットはないがEgger's testをしている(研究数が少ないのでやる意味があったかは不明)
・異質性バイアス
事前登録情報なし。PとOは統合可能(診断、検査性能の違いはありそうだが)
EU系ならEMBASEは見ても良かったかもしれない(糖尿病のRCTなら英語だけでも十分そうだが)
ネットワークメタ解析の評価
・ネットワーク図
Fig2に示されてはいるが、何のアウトカムについてかの説明がない。(研究の組み入れ基準がHbA1cの報告なので、HbA1cである可能性が高そう)
・閉じた環
少数(研究数1が多い)
・直接比較、間接比較
示されている(Table2:有効性、Table3:安全性)
・一致性
示されていない
(95%CIを見る限りTable2では一致性は高そう。Table3は不一致性が高そう)
・資金源、COI
資金源はベーリンガー。COIはベーリンガーとヤンセンファーマ(ランク付けはない)
結果(Table2とTable3)
(有効性)
HbA1c SU
体重 SGLT2iとDPP4iは低下に働く
収縮期血圧 SGLT2i
(安全性)
低血糖 SUとグラルギンは増加させる
尿路感染 有意差をもって増加させるものはなかった
生殖器感染 カナグリフロジン、エンパグリフロジンで増加
研究数が少なく、結果の示し方もわかりにくいため、どう利用したらいいのか?というのが読んでみての感想。集めた研究の質も微妙であるため、確信性の高い情報を得るには今後の研究待ちといったところか。
フェブキソスタットの心血管イベントを評価した論文読んでみた(CARES)trial
FDAより心血管死がフェブキソスタット(商品名:フェブリク)でアロプリノール(商品名:ザイロリック)より多かったとの情報が流れたものの、論文化されておらず評価できないままになっていました。
販売メーカーのMR(医療情報担当者)さんに聞いても、現場にはそもそも情報が来ていないのでわからないとのお返事をいただいていました。
事の発端はFDAでフェブキソスタットが承認された際の臨床試験で心血管イベント(CV)がフェブキソスタット群で多い傾向がみられたことにあります。
ロシグリタゾンで心血管イベントが増えるという報告から、プラセボ対照非劣性試験での心毒性評価が求められていましたが、今回もその流れの一環にありそうです。
なお、フェブキソスタットの心毒性は日本国内では積極的に周知されていません。現場的に使用しづらさに定評のあるRMP(医薬品リスク管理計画)に記載がある程度のため、知らない医療関係者も多いのではないかと思います。
※RMPの内容を情報提供しているMRさんを見たことがないのですが、僕だけでしょうか?
フェブキソスタットの心毒性に関する国内の状況は以下のリンクが詳しいと思いますので、よろしければご参照ください。
フェブキソスタットで心関連死のリスク上昇? | ぼうそう医薬情報室
で、今回のお題論文はコチラ
www.ncbi.nlm.nih.gov
PMID: 29527974
※「Free full text」となっていますが、NEJMのアカウントを持っていないと読めないようです。
詳しい結果以外の試験の概要はこちらで把握できます。
P:50歳以上の男性または55歳以上の女性で、少なくとも1つを含む主要なCVまたは脳血管疾患の病歴を有する米国リウマチ協会の基準を満たす痛風
I:フェブキソスタット40mg開始、最大80mgまで(腎機能による投与量の調整なし)
C:アロプリノール300mg開始、最大600mgまで(推定クレアチニンクリアランス30~60mL/minなら200mg開始、最大400mgまで)
両群とも血清尿酸値が6.0mg / dL未満が目標
O:主要有害心血管イベント(MACE):心臓血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症の再灌流術
非劣性マージン1.3
4者ブラインド(Quadruple :Participant, Care Provider, Investigator, Outcomes Assessor)のRCT。
実際に集まった患者集団は平均64歳、65歳以上が半分くらいで、男性が80%強、尿酸値が8.7mg/dL、BMI33.5前後、9割以上高血圧・脂質異常症を合併、CKDstage1~2が75%。
結果
フェブキソスタット335 人 (10.8%) 対アロプリノール321 patients (10.4%)
hazard ratio(HR), 1.03; upper limit of the one-sided 98.5% confidence interval (CI), 1.23
ということで98.5%CIの上限値が1.3を上回らなかったので非劣性。
ここまでが試験の主な結果ですが、注目されたのはMACEの中身。
心血管死:HR1.34 [95% CI, 1.03 to 1.73]
全死亡:HR1.22 [95% CI, 1.01 to 1.47]
有意差がついたのが「死亡」に関する部分だったという点です。
もう一つ気になるのが試験中断率の多さ
試験中断:フェブキソスタット57.3% 、アロプリノール 55.9%
受診(検査等臨床試験で実施機関に患者が赴くことが定められているのだが、それを辞めた率):フェブキソスタット45.0% 、アロプリノール 44.9%
mITTのため解析に脱落者も含まれるが、扱い次第では結果が変わりかねない。
脱落理由の内訳がSupplementary AppendixのFigS1に記載されているので抜粋すると、
フェブキソスタット中断57.3%のうち、同意の撤回22.5%、有害事象14.6%、lost to follow-up6.9%
アロプリノール中断55.9%のうち、同意の撤回21.6%、有害事象14.4%、lost to follow-up6.6%
受診中断
フェブキソスタット45.0%のうち、同意の撤回19.2%、有害事象6.2%、lost to follow-up7.3%
アロプリノール 44.9%のうち、同意の撤回19.0%、有害事象5.6%、lost to follow-up7.2%
フェブキソスタット群3101名のうち3098名、アロプリノール群3097名のうち3092名が解析に回っている。試験プロトコルで脱落者の扱いを確認すると、「電話→手紙」でコンタクトをとるとはなっているが、統計的処理については触れられていない。
※なお第三相臨床試験の脱落を見てみると、ほぼゼロ。
ディスカッションでもこの脱落の多さへの言及はあるが、「両群同程度の脱落で問題なし」とまるで説明になっていない。
脱落者の扱い如何で評価が変わる可能性が高く、この結果をもって安全とは言い難い。死亡も同様の理由で確信性が低く、直ちに行動を起こすようなものではないと考えてはいるが、今後の報告次第だろうか。
ここからは推測なのでご注意ください。
仕方ないので、治験で脱落の少なかった薬剤でここまで脱落した理由を考えてみたい。
脱落理由で最も多かったのは同意の撤回。
Supplementary Appendixに脱落者の国別内訳が示されている。(この試験自体はアメリカ、カナダ、メキシコで行われている。のちにカナダが除外されているが理由は不明)
フェブキソスタット群:アメリカ2651人中1081人、カナダ68人中20人、メキシコ379人中48人
アロプリノール群:アメリカ2655人中1102人、カナダ72人中13人、メキシコ355人中53人
脱落者の多くがアメリカに集中している(人数、率ともアメリカが群を抜いて多い)
この心血管安全性評価試験が計画されたのがFDA承認の1年後の2010年。
Febuxostat: the evidence for its use in the treatment of hyperuricemia and gout
一般への情報提供が行われたのがいつ頃かは不明(調べても出てこなかった)だが、試験企画当時まだ安全性への懸念が一般に広まっていなかったのではないだろうか?
同意取得前に、薬剤の心毒性への懸念を十分に伝えなかった結果、後から同意の撤回が増えたのではないだろうか?
(武田はピオグリタゾンで心血管リスクの高い人を組み込んだ試験を通した実績がある)
余談
この件の影響かわからないが、順調に株価下がってる。
(武田)
(帝人)
ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道⑤~抗菌薬による下痢の予防効果の高いプロバイオティクスは何か~
早速ですが一部チェック項目の順を間違えていたので、ネットワークメタ解析(NMA)のチェックシートを改訂しました。
Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver7.pdf
今回は中華製NMAの論文を読んでいきたいと思います。
<今回の記事作成の背景>
中国では論文投稿ごとに特別ボーナスが出るらしく、論文の投稿数がものすごく多いですが、一方で質が問題視されています。
特に研究の二次解析であるメタ解析の分野は、きちんとシステマティックレビューをしたうえでメタ解析を行うととても大変なのですが、システマティックレビューとはとても呼べない適当な集め方をしており、その結果は読むに値しないほど信頼性の低いものしか出てきていないという現状があります。
信頼できない論文を「読む価値なし」と判定できることもチェックリストには求められていると考えているので、質の低いものは低いと評価できるかを検証する意味も込めて読んでいきたいと思います。
では、お題論文を
PMID: 29511547
先ずはリサーチクエスチョンを見ていきます。
P:抗菌薬服用者
I/C:プロバイオティクス
O:有効性、忍容性
Pがきちんと書いていないが、わからなくはないレベル。
本文で情報を追加すると
P:何らかの理由で経口抗生物質療法を受けた個人
I/C:プロバイオティクス、形態はサプリメント(カプセル、小袋)か食品(例:ヨーグルト)、対象菌種はTable1参照。()内のコメントは国内の販売状況を調べたものですが、漏れている可能性はあります。
Multi-genera II=Combinations of two types of genera (Lactobacillus + Bifidobacterium, Lactobacillus + Streptococcus, Bifidobacterium + Streptococcus, Bifidobacterium + Clostridium)
Multi-genera III =Combinations of three or more types of genera (Lactobacillus + Bifidobacterium + Streptococcus, Lactobacillus + Bifidobacterium + Enterococcus, Lactobacillus + Bifidobacterium + Lactococcus + Saccharomyces + Leuconostoc, Lactobacillus + Bifidobacterium + Propionibacterium)
LGG =Lactobacillus rhamnosus GG(ヨーグルト)
L. rhamnosus =Lactobacillus rhamnosus species except for Lactobacillus rhamnosus GG
L. casei =Lactobacillus casei species (ビオラクチス、ヤクルト系)
L. acidophilus =Lactobacillus acidophilus species(サプリメントのみ)
L. reuteri =Lactobacillus reuteri species(輸入系サプリメント)
L. plantarum =Lactobacillus plantarum species(漬物、キムチ、ザワークラウト)
B. clausii =Bacillus clausii species(該当商品無し)
S. boulardii =Saccharomyces boulardii species(輸入系サプリメント)
O:有効性→下痢の発生率(下痢の定義は個々の研究に依存)、Clostridium difficile 感染率
忍容性→全有害事象の発生率
実際に集まったのは平均43.2歳、男性比率59.5%。介入群の男性の比率次第で結果がゆがみそう。
PICOがたったら、システマティックレビューの評価へ
データベース:Medline(PubMed)、Embase、Cochrane library 、 Web of Science
検索語:プロバイオティクス、菌種、ヨーグルト、抗菌薬、下痢
検索期間:1996.1.1~2016.12.31
・元論文バイアス
RCTのみ。 Risk of biastoolで評価したとあるが結果の記載はない。
・評価者バイアス
三人が独立して評価。意見対立時は共同してレビュー(権威勾配で評価が歪みそう)
・出版バイアス
言語制限なし。参考文献は追っている。専門家連絡はなし。funnel plotという単語はあるがやったと思われる痕跡はない。
・異質性バイアス
事前登録はされている。(CRD 42016050776)、Pの近似性は不明。アウトカムは定義がバラバラではあるが統合可能なものを選択していると思われる。
http://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.php?ID=CRD42016050776
Supplementary Materialが公開されていないので、評価しようのない項目が多々存在する。書いてある項目だけならきちんと記載はされている印象。
ネットワークメタ解析の評価
・ネットワーク図
全アウトカムについて示されている。閉じた環(closed-loop、ようは介入群で三角形が描けているかどうか)はとても少ない。
・直接、間接比較
示されていない。もっとも、示すことができるほどの閉じた環もないが。Table2とTable3で示されているのはプラセボ比で、ここでいう比較(head-to-headの結果と第三者を介して推定した結果が一致するかを評価する)とは異なる。
・一致性
不明。評価できるほどの閉じた環がない。
・資金源、COI
ともに記載はされている
研究そのものが少なく、いかんともしがたいといった感じ。
結果(ランク順に記載)
・下痢の発生率(プライマリアウトカム)
LGG 0.28(0.17~0.47)
L. casei 0.29(0.13~0.68)
L. plantarum 0.83(0.22~3.20)
S. boulardii 0.41(0.29~0.57)
L. acidophilus 0.57(0.43~0.76)
・Clostridium difficile 感染率(セカンダリアウトカム)
L. casei 0.04(0.00~0.77)
L. acidophilus 0.20(0.08~0.48)
・全有害事象の発生率
L. reuteri 0.33(0.08~1.42)
L. plantarum 1.04(0.20~5.29)
LGG 0.44(0.23~0.84)
L. plantarumの謎の躍進っぷりが気になる。
体裁だけなら意外ときちんとしている印象。
但し、本研究の結果の確信性は高くない。