窓際さんのお勉強な日々

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ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道④~COPD患者に対するLABA/LAMA合剤の安全性~

 まだまだ続くネットワークメタ解析(NMA)チェックリスト試用大会。

第五回目の今回は、イタリアからのCOPDの報告を読んでみたいと思います。

 

The impact of dual bronchodilation on cardiovascular serious adverse events and mortality in COPD: a quantitative synthesis. - PubMed - NCBI

 

 いつも通りアブストラクトから

 

P:COPD患者

I/C:LABA/LAMA固定用量の組み合わせ製剤、単剤療法(LABA単剤、LAMA単剤)、プラセボ

O:心血管系の重篤な有害事象

 

 続いて本文からの追加情報を赤字で追加

 

P:肺機能検査で診断されたCOPD患者

I/C:LABA/LAMA固定用量の組み合わせ製剤:アクリジニウム/ホルモテロール 400/12 µg (KRP-AB1102F、杏林開発中phaseⅢ終了), グリコピロニウム/インダカテロール 15.6/27.5 µg (Utibron、アメリカでのみ承認のウルティブロの1日2回版), グリコピロニウム/インダカテロール  50/110 µg (ウルティブロ), ウメクリジニウム/ビランテロール 62.5/25 µg (アノーロ), チオトロピウム/オロダテロール 5/5 µg (スピオルト), グリコピロニウム/ホルモテロール 14.9/9.6 µg (Bevespi Aerosphere AZ開発中)、単剤療法(LABA単剤、LAMA単剤)、プラセボ

O:心血管系の重篤な有害事象(LABA/LAMA固定用量の組み合わせ製剤対単剤療法

 セカンダリ:死亡率LABA/LAMA固定用量の組み合わせ製剤対単剤療法

 セカンダリ:心血管系の重篤な有害事象LABA/LAMA固定用量の組み合わせ製剤対プラセボ

 

続いてシステマティックレビューの評価

 

・データベースはMEDLINE(PubMed)、Scopus、Embase、Google scholar

 検索語は薬品名とCOPD、検索期間は2017.6.31

(。´・ω・)ん? 6/31? 本文間違ってね?

 

・元論文バイアスはRCTに限定。(二重盲検比較試験が集まっている)

 質の評価はJadad score

※Jadad scoreで集まったすべての試験の評価結果が良質というが、評価自体がザルなので(;^ω^)

 

・評価者バイアスは二名以上の独立評価はしており、意見対立時は話し合い。第三者介入については不明。

 

・出版バイアスは英語のみ。参考文献は他のレビューを参照。ClinicalTrials.govも検索している。専門家連絡については言及がない。ファンネルプロットはあり、 Egger’s testでも評価しており有意差はなかった。

※ Egger’s testは左右対称性を検定する。バイアスの存在を有意差で表現するが、有意差がなくてもバイアスの存在を否定できないのが難点。

 

・異質性バイアスは事前登録情報がある。

https://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.php?ID=CRD42017070100

対象患者は中等度~重症の60代。試験期間は2~64週。むしろこれで心血管系有害事象や死亡増えたらヤバいくらいの年齢層と試験期間。(RCTの時点でハイリスクは除外されている)

アウトカムについてきちんとした定義がかかれていないので、統合可能性の評価が難しい。

 

 なぜにJadad score使ったんだろ?英語縛りの時点で有名な大規模研究狙いだったからそれでもよかったのだろうかという疑問。大規模研究狙いなら、集め方が恣意的すぎるような(;^ω^)

 

 プライマリアウトカムは普通のメタ解析で行われている。「NMA」で検索した論文なのに(´;ω;`)

 結果は RR 0.94,(95% CI 0.79–1.13) I2 0%で単剤療法に比べて心血管イベント(本文中で確認できるのは心房細動、心筋梗塞、冠動脈疾患。詳しくはtable2)は増やしませんでした~。

で、今回の記事の本番はこれから。

本論文では安全性についてランク付けの為にNMAでのSUCRAを利用している。

 

NMAの評価

 

 ネットワーク図は示されていないが、本文中に「results on head-to-head RCTs are not currently available.」とあり、閉じた環がなかった(star-shape)であったことがわかる。

このため、ⅱとⅲは評価ができない。

ⅳはCOIは記載されているが、資金源は登録情報を含めどこにも記載がない。

 

SUCRAに基づくランクと各薬剤ごとのSAEサブ解析の値を並べてみる。

1.KRP-AB1102F RR0.61,(95% CI 0.35–1.06)

2.スピオルト         RR0.89,(95% CI 0.65–1.23)

3.プラセボ

4.アノーロ   RR0.77,(95% CI 0.36–1.65)

5.Bevespi          RR1.36,(95% CI 1.00–1.85)

6.Utibron           RR0.62,(95% CI 0.21–1.85)

7.ウルティブロ   RR0.72,(95% CI 0.39–1.34)

 

結果は一致しない。

比較対象の単剤療法だが、単剤が安全とは言ってないということでしょうか。

 

で、ネットワーク図がない場合のシートの説明が不十分と判断し、改訂。

www.dropbox.com

 

是非ご活用ください。

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