「ググレカス」から「ググってもカス」時代を生き抜くために ~るるーちゅ先生からご指名をいただきました~
今回の記事は、こちらで呼ばれたので書きます。
「ググってもカス」とは近年普通に検索をしても検索上位にはカス情報がならぶ惨状を黒の薬剤師会代表「るるー主」先生が皮肉ってつけた言葉である。
「惨状」と表現したが、現在の悲しい現状を報告した論文があるので紹介したい。
「体重減少」(いわゆるダイエット)について検索した時、どの程度まともなサイト(情報の正確さのほか見やすさも評価されている)が検索結果として帰ってきたかを調べたものである。
なお、以下に示したのは評価項目である。
で、結果はコチラ
こう
公的機関からの情報がブログに劣ると(-_-;)
広告サイトのなんと劣悪なことよ(-_-;)
で、どのくらいヒットしたのかというと
検索結果で見やすいところにくるサイトは信頼できないものが多いという結果でした。
上記論文は2014年のものですが、最近でも健康情報サイト「WELQ」が話題になり、この問題が解決に向かっているとはとても思えません。
テレビ・新聞を見ていないのですが、古くはフジテレビの「発掘!あるある大事典」でのダイエット情報の捏造で店頭から納豆がなくなったのは個人的には印象的でした。
最近では「ガッテン」で睡眠薬で血糖値を下げるなんてものもありました。
最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎 - NHK ガッテン!
「ググってもカス」とは言いつつ、公共電波に載ってくる情報にも盛大なKS(クソ)が盛り込まれているわけです。
放送側の知的レベルを心配させるこんな画像もありましたよね。
さらには「報道しない自由」で正しい情報が遮断されている事例もあります。
「本会は、将来、先進国の中で我が国に於いてのみ多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益が、これ以上拡大しないよう、国が一刻も早くHPVワクチンの接種勧奨を再開することを強く求めます」という声明も、WHOの安全という勧告も検証するならまだしも黙殺する「自由」。
デマを飛ばすことを規制機関が「表現の自由」と取り違えているのではないかという不安すら感じる。
なお英国ではかつて「MMRワクチンで自閉症になる」という捏造論文を世に送り出した著者の医師免許をはく奪するという処分を下したが、日本ではそのような動きはない。(下記リンクは捏造論文へのリンク)
学会側が国民の健康に対して否定的に働く事例もあるという始末。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/kumagai/201708/552207.html
一方で大学や公的機関による医薬品の適正な処方や使用に向けた教育的介入の動きもある(情報を提供していただいた兵庫医療大学の清水先生に感謝)
Academic Detailingのための評価情報基盤疾患と医薬品情報|Academic Detailingについて
しかし、現状正確な情報に一般の方がたどり着くのは困難である。
いくら正確な情報を発信してもKS(クソ)情報の波に消されてしまいかねない。
ならば、正しい情報をもってKS情報を駆逐し、検索上位をとるしかない。
冒頭で紹介した運動はそういうものである。
ここまで記事を読まれた諸氏には、ぜひ本活動への理解と協力をお願いしたい。
以下は、本活動に参加を表明された先生方のブログであるので、ぜひご覧いただきたい。(なお、紹介順はテキトーなので、ご了承ください)
(ネーヤ先生のだけうまく貼れない:(;゙゚''ω゚''):)
あと、以下のサイトも近々参加予定です。
KS情報を駆逐し、清浄な世界を目指します!
と、いうわけでかの名言で締めたいと思います!
,,、,、、,,,';i;'i,}、,、
ヾ、'i,';||i !} 'i, ゙〃
゙、';|i,! 'i i"i, 、__人_从_人__/し、_人_入
`、||i |i i l|, 、_)
',||i }i | ;,〃,, _) 汚物は消毒だ~っ!!
.}.|||| | ! l-'~、ミ `)
,<.}||| il/,‐'liヾ;;ミ '´⌒V^'^Y⌒V^V⌒W^Y⌒
.{/゙'、}|||// .i| };;;ミ
Y,;- ー、 .i|,];;彡
iil|||||liill||||||||li!=H;;;ミミ
{ く;ァソ '';;,;'' ゙};;彡ミ
゙i [`'''~ヾ. ''~ ||^!,彡ミ _,,__
゙i }~~ } ';;:;li, ゙iミミミ=三=-;;;;;;;;;''
,,,,-‐‐''''''} ̄~フハ,“二゙´ ,;/;;'_,;,7''~~,-''::;;;;;;;;;;;;;'',,=''
;;;;;;;;''''/_ / | | `ー-‐'´_,,,-',,r'~`ヽ';;:;;;;;;;, '';;;-'''
''''' ,r'~ `V ヽニニニ二、-'{ 十 )__;;;;/
(あとがき)
こんなこともあろうかと、下調べとかしておいてよかった。
地域医療ジャーナルを購読しませんか?
またまた宣伝記事です。
そして個人的には値段設定が頭おかしいんじゃないか?(褒め言葉)と思うくらい安く質の高い医療情報を提供してくれるオンラインジャーナルです。
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さっきの言葉訂正します。
頭おかしいわ!
で、今回の特集は冷酷なエビデンスです。
いかに薬の効果が小さいか、新薬として世に出たときは真の効果に夢や希望という名のメッキがついた状態で過大評価されています。
やがて、使用経験が蓄積されるとメッキがはがれ真の効果が姿を現します。
その小ささにときに失望するかもしれません。
あるいは見つけることができなかった有害事象によって、消えていくかもしれません。
そんなときEBMの実践をするものが、どう考え・どう悩み・どう行動するか見てみませんか。
求める答えが書いてあるわけではないですが、参考になると思います。
以下のリンクからどうぞ
で、このブログは僕が読んだ論文を秘めやかに記録する場ですので、もちろん論文を読みます。
やはり精神科病院に勤務するものとして、こちらの記事は必読でしょう。
はい、我らがAHEADMAP代表の桑原先生の記事ですね。
うつ病はメーカー主導の試験が多く、発表される試験の結果はスポンサーのメーカーの薬剤が強いとパキシル🄬(パロキセチン)なんかを中心にたたかれてきた歴史もあるわけです。
で、発表されていないネガティブな研究結果を集めると効果は想定より小さいと言われているわけですね。
(桑原先生の記事を楽しんでほしいので、記事の引用はしません)
今回はその記事の中からこちらを取り上げたいと思います。
ざっくり紹介すると、大うつ病患者にSSRIを使うのはプラセボと比べて17項目のハミルトンのうつ病評価尺度でみた効果に統計的有意差はあるけど臨床的有意差を示すほどの差はなく、重篤な有害事象はSSRIで多かったというものです。
どうしてこれを取り上げようかと思ったかというと、答えは上記リンク先にあります。
研究結果に異論がある場合、論文の投稿先にレターという形で疑義が投げかけられるのですが、この論文はPubmedのページにまで反論コメントがつけられています。
正直こんなにこってりコメントつけられた論文初めて見ました。(;´・ω・)
まあコメントは疑義でしょうから、普通に批判的吟味してたらわかるはず!と思って普通に本文を読むことにしました。
先ずは論文のPECO(臨床疑問の定式化)から
P:18歳以上の大うつ病患者に
E:SSRI(citaloplam、エスシタロプラム、セルトラリン、fluoxetine、パロキセチン、フルボキサミン)を投与すると
C:プラセボ、active placebo、何も介入しない場合と比べて
O:①うつ病の症状はどうなるか?(ハミルトン評価尺度17項目と21項目、 Montgomery-Asberg Depression Rating Scale、 Beck’s Depression Inventory)
②緩解率は?
③有害事象は?
なんか。もうつっこみポイントが出ましたね(;´・ω・)
なんでプラセボとの比較を謳っている研究で比較に「no-intervention(何も介入しない」が入ってくるのかと。で、active placeboは具体的に何なのか説明はないっす。でも、結果的にプラセボ以外は見つからなったとのことなのでセーフ。(いいのか?)
先にネタバレしますが、アウトカムの英字は方法の中には出てきますが、これ以降本文中で触れられることはありませんので、安心して無視してください。
*一応尺度について簡単に解説
・ハミルトン評価尺度(HDRS)→HAM-Dとも。うつ病の重症度の推移を見るのに使う。17項目は重症度評価で21項目は先の17項目に性状4項目を加えたもの。うつ病の診断に使われる項目が網羅されていない、うつ病の評価に必要ない余計な項目があるなどの理由で使うべきでないという批判があります。
・ Montgomery-Asberg Depression Rating Scale→略記MADRS。うつ病患者でよくみられる症状のうち三環系抗うつ薬に反応しやすい症状10項目で作成された。HDRSと違い身体症状は評価されない。
・Beck’s Depression Inventory→略記BDI。重症度評価やスクリーニングに使う自己評価尺度。0~63点満点で評価。29点以上で重症。
入口でいきなり足払い食らった気分ですが、本丸はPubmedにくっついてたコメントで紹介されていたレター論文ですので、サクッと済ませていきます。
検索したデータベース: CENTRAL, PubMed, EMBASE, PsychLIT, PsycINFO, clinicaltrials.gov., Science Citation Index Expanded。他にFDA、EMA、製薬企業のサイト
評価者バイアス:13名がペアを組んで独立して評価。意見対立は第三者仲介。(13人でペアって、ぼっちでるやん)
出版バイアス:記載がなく著者に連絡を取ったかどうかなどは不明。事前登録情報を見ると検索は英語のみの模様。
http://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/display_record.asp?ID=CRD42013004420
一応、対称っぽい感じではある。
元論文バイアス:ここだけコクランハンドブック準拠。(スポンサーバイアスが赤一色であることを示したかっただけに見える)
結果を一目で評価できるSummary of findings tableはなぜかAppendixに追いやられている。(結果を隠す研究ってやる意味あるのですかね?)
Summary of findings table |
||||||||||||||||||||||
|
Risk with placebo |
Risk with SSRIs |
Relative effect |
№ of participants |
Quality of the evidence |
Comments |
||||||||||||||||
Hamilton Depression Rating Scale (HDRS) |
- |
- |
The mean HDRS score at end of treatment in the SSRI group was 1.94 (2.50 to -1.3) HDRS points lower than the placebo group |
10,464 (49 trials) |
⊕⊕⊝⊝ Very low |
Trial sequential analysis showed that the boundary for harm was crossed |
||||||||||||||||
Serious adverse events |
22 per 1,000 |
31 (25 to 40) per 1,000 |
OR 1.37 (1.08 to 1.75) |
13,299 (44 trials) |
⊕⊕⊝⊝ Very low |
Trial sequential analysis showed that the boundary for harm was crossed
|
||||||||||||||||
No remission |
746 per 1,000 |
657 (642 to 679) per 1,000 |
RR 0.88 (0.84 to 0.91) |
4214 (34 trials) |
⊕⊕⊝⊝ Very low |
Trial sequential analysis showed that the boundary for benefit was crossed
|
*The risk in the intervention group (and its 95% confidence interval) is based on the observed risk in the comparison group and the relative effect of the intervention (and its 95% CI). |
GRADE Working Group grades of evidence |
HDRS(17項目) 平均差 −1.94 points; 95% CI −2.50 to −1.37(49試験)I 2 = 75%(異質性:高)
緩解 RR 0.88; 95% CI 0.84 to 0.91 I 2 = 36%(著者は異質性はないと評価。えっ?)
重篤な有害事象(SAEと略す。死亡、機能障害、入院を評価) OR 1.37; 95% CI 1.08 to 1.75(異質性の評価はなし)
HDRSの17項目で3点差が臨床的に優位な差とされているとのことで、著者の結論は「統計的有意差はあるけど臨床的有意差を示すほどの差はなく、重篤な有害事象はSSRIで多かった」となっているわけです。
ツッコミがちょいちょい入りましたが、精神科薬剤師としては未熟な雑魚薬剤師視点でこんなもんです。
ここからは、レターで寄せられたツッコミを見ましょう。
本文の内容をざっくり紹介します。(ご自身で是非ご覧ください、ツッコミがすさまじくて笑えます)
①SAEカウントの際の分母がおかしい(少なくカウントされている=SAEを過大評価)
②SAEカウントの際の分子がおかしい(少なくカウントされている=SAEを過小評価)
③SAEの全データが追えていない。(少なくカウントしている。分子より分母の影響が大きい=SAEを過大評価している)
④有害事象による入院にアルコールや薬物依存による治療の入院がカウントされている
⑤そもそもSAEの定義がおかしい
⑥RevManで解析しても再現できず、解析方法が間違っているか解析方法が本文記載の方法で行われていない
などなど(一部ツッコミは省いています)
ここまではナンバリングして突っ込んでますが、まだツッコミは続きます。
・統計処理時の重みづけが間違っている
・データ解析時にすべてのデータを解析に含んでいない
・そもそも拾うべき重要論文が除外されている
・HDRSはSSRIの効果を過小評価する欠点を内包した評価尺度
で、レター論文の著者は訂正をするよう求めています。
はい、訂正記事出ました。
リファレンスがちょこっと訂正( ^ω^)・・・
そこじゃねぇ!(# ゚Д゚)
しかも間違い方がSSRIの効果を過小に、有害事象を多くする方向で一貫して間違ってるし。
もはや捏造臭しかしない。(以下、捏造だったと仮定して書きます)
で、ここまでイカれた報告を出した著者がどんな人物か興味がわくわけですよ。
日本の内〇聡とかみたいな人物像が浮かんできます。
で、調べた結果がこちら
https://www.researchgate.net/profile/Janus_Jakobsen2
心臓病が専門(-_-;)
で、シーケンス分析もしていると。
お題論文にあった「Trial Sequential Analysis」をやることが目的だったと。
で、評判を高めるためにインパクトの出るようにアレコレやったわけね。
端から読む価値のない論文だったと
で、これがメディアに出て治療機会を失う患者さんが出てくると
ふざけんな!
と、ここまで書いて、「冷酷なエビデンス」が牙をむいたのは患者さんではなく著者になったと。
しかし、被害者は患者さんですよ。
これは冷酷ではなく残酷ですね。
コレだけ大大と反論が出ているのを桑原先生が見逃すはずもなく
この論文が取り上た意図は、「原著をきちんと確認しろ、自分の目と頭で評価しろ」ということでしょう。
で、こんな盛大な伏線もりもりで月額250円ですよ。
頭おかしい(褒め言葉)と思いませんか?
ぜひ会員登録して読みましょう。
他の記事の読みごたえも折り紙付きですから。
では今日はこの辺で
おやすみなさい。(現在、10/7の0:47 土曜も出勤なのに)
京都エビデンス精神医療研究会に参加しませんか?
今日の記事は毛色を変えて、研究会のご案内です。
京都エビデンス精神医療研究会は精神科医療をエビデンスベースドで行う研究会です。
基本的な内容は、『症例提示(自分が悩んだ症例などを個人情報に配慮して提示)→疑問の抽出と定式化→検索のコツと使えそうな論文のヒント』が前半で与えられ、次の会で実際自分で選択した論文を『批判的吟味→症例への適応』を後半で考える2回1セットの研究会です。
日時は、原則奇数月の第3木曜日の19:00~21:00(演者、座長の古川先生の都合で前後します)。つまり、次回は11/16(木)19:00~になります。
会場: 福井ビル5階、京都駅前メンタルクリニックのデイケアルーム。
会費は年間1000円。
参加職種に制限はありませんが医師が主体ではあります。(僕のような薬剤師も参加しています)
*来年度から日時の変更の予定です。詳細はまだ未定です。
予定は以下のリンクから見ることができます。
Publications : Health Promotion and Human Behavior : Kyoto Univ.
【内容の紹介】
前半1時間で症例提示を行い、症例の経過報告と聴講している先生方からの質疑応答を経て疑問の提示と定式化を行い、後半1時間で2か月前に提示した臨床疑問の解決に役立ちそうな論文を提示し批判的吟味の後適応を考えるという流れになっています。
また、発表者には事務局の田近先生からわからないところをサポートしていただけます。
*後で紹介しますが、座長を含め聴講している側もEBMを実践している一線級の精神科医が揃っている会の為、上級者向けの会話が展開していたことから、次回より初心者(多くは研修医の先生)向けのレクチャーを挟む予定になっています。
正直、薬剤師のジャーナルクラブ(JJCLIP)で、ランダム化比較試験(RCT)とメタ解析について理解するか、
南郷先生の運営されているHP、SPELLのはじめてシートでRCTとメタ解析を一通り理解しておかないと簡単に置いてけぼりを食らうレベルの会話が繰り広げられます。
参加されている先生方の名前がちらほら見ることのできる刊行物として、統合失調症薬物治療ガイドラインがあります。(まあ、そういうことです)
会の運営が初心者向けにシフトすることを鑑み、本ブログで紹介することとしました。
ここで終わると思いました?
このブログは論文読んでいく趣旨のブログです。もちろん読みますよ。
座長の古川壽亮教授が書かれた論文をね!
その前に著作と業績の中にあった有名論文を
MANGA Studyですね。(今日は読みません)
では、今回のお題論文です。
うつ病に対するミルタザピンの効果を多剤と比較したメタ解析になります。
先ずは、論文の臨床疑問を定式化するところから
P:成人大うつ病患者
E:ミルタザピン投与
C:他剤を投与(三環系、SSRI、SNRI、トラゾドン、MAOI、bupropion、reboxetine、イヨウオトギリソウなどのハーブ)
*E、C群とも投与量、用法などは問わない
O:(主要)治療反応率(HAM-D、MADRS、CG-I)
*HAM-Dはベースラインから50%改善で治療に反応したとする。CG-Iは1~2点
T(評価時点):2週間、急性期(6~12週)、維持期(4~6ヶ月)
検索データベース:CCDAN、MEDLINE (1950- date),、EMBASE (1980 - date) 、PsycINFO (1967 - date)、CENTRAL
その他調査:参考文献、専門家へのコンタクトもされている
調査された言語:英語だけには縛っていない
主要アウトカムの治療反応率は代用のアウトカムで良く用いられる。
以下は採用された各論文のリスクオブバイアスであるが、資金面でメーカーからの支援が入っていることは右端列の赤の並ぶsponsorship biasを見れば一目瞭然だろう。
報告は資金・期間の面で負担の大きく差が出るまでのサンプルを集めにくいことから治療反応率の報告が多いことも予想できる。研究数の確保も考えるなら主要アウトカムが治療反応率になるのもやむを得ないが、別に緩解率を主要にせず副次アウトカムに置く必要あるのかね?と個人的には思った。
結果です。(試験が一つしかないなど結果が統合されていないものは省略)
1)vsTCA
2週での治療反応率 8 studies;OR 0.85, 95% CI 0.64 to 1.13
6~12週での治療反応率 9 studies;OR 0.89, 95% CI 0.72 to 1.10
2週での緩解率 8 studies;OR 0.85, 95% CI 0.55 to 1.32
6~12週での緩解率 9 studies;OR 0.86,95% CI 0.69 to 1.08
高血圧、頻脈 4 studies;OR 0.44, 95% CI 0.24to 0.81
振戦 7 studies;OR0.36, 95% CI 0.22 to 0.57
2)vsSSRI
2週での治療反応率 12 studies;OR 1.57, 95%CI 1.30 to 1.88
6~12週での治療反応率 12 studies; OR 1.19,95% CI 1.01 to 1.39
2週での緩解率 12 studies;OR 1.82, 95%CI 1.36 to 2.44
6~12週での緩解率 12 studies;OR 1.17, 95% CI 0.98 to 1.40
口渇 10 studies; OR 1.80, 95%CI1.37 to 2.36
体重・食欲増加 11 studies; OR 4.23, 95%CI 2.93 to 6.11
倦怠感 8 studies; OR 1.53, 95%CI 1.08 to 2.15
傾眠 11 studies; OR 1.81,95% CI 1.39 to 2.37
発汗 5 studies; OR 0.25, 95% CI 0.15 to 0.44
下痢 8 studies; OR 0.57, 95% CI0.41 to 0.80
悪心・嘔吐 11studies; OR 0.33, 95% CI 0.26 to 0.43
性機能障害 4 studies; OR 0.31, 95% CI 0.13 to 0.74
頭痛 11 studies; OR 0.69,95% CI 0.56 to 0.86
振戦 5 studies;OR 0.34, 95%CI 0.18 to 0.66
睡眠障害 5 studies; OR 0.52, 95% CI 0.31 to 0.86
3)vsSNRI
2週での治療反応率 2 studies; OR 2.29, 95% CI 1.45 to3.59
6~12週での治療反応率 2 studies; OR 1.53, 95% CI 1.03 to 2.25
2週での緩解率 2 studies; OR 2.34, 95% CI 1.07 to 5.13
6~12週での緩解率 2 studies; OR 1.55, 95% CI 0.98 to 2.47
何らかの理由による脱落 2 studies;OR 0.65, 95% CI 0.43 to 0.99
4)vsトラゾドン
2週での治療反応率 2 studies; OR 1.14, 95% CI 0.64 to 2.04
6~12週での治療反応率 2 studies;OR 1.50, 95% CI 0.95 to 2.37
2週での緩解率 2 studies; OR 1.00, 95%CI 0.36 to 2.80
6~12週での緩解率 2 studies; OR 1.38, 95% CI 0.76 to 2.52
何らかの理由による脱落 2 studies; OR 0.90, 95% CI0.47 to 1.72
5)vs reboxetine(ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)
試験が一つしかないため結果省略
赤字は主要評価項目でミルタザピンの方が優れていると出たもの
コクランは読むのはいいですが、結果が多すぎて書くのがつらいです。
で、こうした論文を書かれた先生から直接教えを請える機会です。
こうした研修会で年6回で1000円とか頭おかしいんじゃないかと思わざるを得ないレベルです。(1回1000円でも破格に安い)
平日の晩であるため、参加は難しいかもしれませんが、機会があればぜひともご参加ください。
参加するのが心細いという方は、@zuratomo4 にリプをいただけましたら京都駅までならお迎えに上がりますので積極的なご参加をお待ちしております。
今更ながらUPLIFT試験読んでみた(前回記事の補足として)
前回、UPLIFT試験がセカンダリアウトカムで死亡率の低下を示したことをサラッと紹介しました。(メーカー後援の研修会や呼吸器系の書籍なんかでもそんな風に紹介されています)
前回記事で明かしたように、ベーリンガー大嫌い病(MRさん個々人がではなく、組織としての会社がという意味ですので)の発作が起きたので、読んでみることにしました。
「どの程度の死亡率の低下がいつの時点でみられたのか?」(そもそも死亡率低下が眉唾な予感がしたので)と「その結果は信頼に値するのか?」の二点を確認したかったわけです。
では、お題論文を(UPLIFTは後付け解析の試験がいっぱいあるので)
A 4-year trial of tiotropium in chronic obstructive pulmonary disease. - PubMed - NCBI
PMID: 18836213
先ずは論文の臨床疑問の定式化をば
P:40歳以上のCOPD患者、FEV1(1秒率)70%以下、FVC(努力肺活量)70%以下
E:チオトロピウム18μg(スピリーバハンディヘラー🄬のこと)
C:プラセボ
O:(主)気管支拡張薬を使用する前に測定されたFEV1の減少率、気管支拡張薬を使用する前に測定されたFEV1の減少率
(副)FEV1の二重盲検治療終了後1日目から30日目までの衰退率(気管支拡張薬使用前後)、FVCの30日から4年間の衰退率(気管支拡張薬使用前後)、SVC(肺活量)の30日から4年までの衰退率(気管支拡張薬使用前後)、SGRQ(COPDの疾患特異的QOLスコア、症状、日常生活の活動、生活への影響で評価、0~100点、得点高いほど重症)総スコアの減少率、FVCの二重盲検治療終了後1日目から30日目までの衰退率(気管支拡張薬使用前後)、最初の悪化までの時間、COPDの有症状期間(患者人年)、1回以上の症状悪化をきたした患者の割合、COPD悪化による入院までの期間と人数と割合、試験開始後(1,6,12,18,24,30,36,42か月)のFEV1とFVCとSVC(気管支拡張薬使用前後)、試験開始後(1,6,12,18,24,30,36,42か月)のSGRQ、1440日(試験終了後)と1470日(試験終了後30日)での全死亡と下気道疾患死、重篤な有害事象
(途中で変更削除された副次アウトカム)SVCの二重盲検治療終了後1日目から30日目までの衰退率(気管支拡張薬使用前後、SGRQの総スコア、死亡率
*赤字は元々(2005年9月)設定されていた副次アウトカム、黒字は試験終了間際(2013年9月)で変更追加された副次アウトカム
研究の形式:ランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験
試験の期間:4年(1440日)
はい、副次アウトカム(セカンダリアウトカム)の入力だけで疲れました。どうみても有意差が元々設定されていたアウトカムでつかなかったので、いっぱいアウトカム設定して無理やり有意差がつくアウトカム探してます。本当にありがとうございました。
*実は統計解析方法も共分散解析から分散解析に変更されていますが、理由と正当性がわかりません(´;ω;`)
本来ならここで「読む価値なし」と判断するのが妥当だと思うのですが、有名論文なので先に進めます。(ベーリンガー嫌いが絶賛加速しました。もう読みたくない)
書く気力も失いましたが、主要アウトカム(プライマリアウトカム)に有意差はありませんでした。(薬使おうが使うまいが肺機能の低下する速度は一緒!)FEV1の値はスピリーバ群の方がよかったので、使うことで呼吸は楽になると思います。(但しセカンダリアウトカムなのであくまで仮説)
その他有象無象の有意差出すためだけの後付けアウトカムに興味はありませんので、本題の死亡率についてみていきたいと思います。
1440日(試験終了後)で「921 patients died: 14.4% in the tiotropium group and 16.3% in the placebo group (hazard ratio, 0.87; 95% CI, 0.76 to 0.99).」(ARR=1.9%、NNTは4年で53人)、1470日(試験終了30日後)「941 patients died: 14.9% in the tiotropium group and 16.5% in the placebo group (hazard ratio, 0.89; 95% CI, 0.79 to 1.02)」とあります。1440日で有意差をもってスピリーバ群で死亡率が減っていますね。よかったね。30日もすると差はみられてないので、偶然誤差じゃねぇの?としか思えません。
あと重篤な有害事象で「致死的有害事象の割合」があるのですが、どんだけ多重検定する気なの?仮説生成だからと言ってセカンダリアウトカム設定しすぎ(しかも後付け)でしょ。こちらのアウトカムでは 「381 patients (12.8%) in the tiotropium group and 411 (13.7%) in the placebo group (hazard ratio, 0.84; 95% CI, 0.73 to 0.97)」とあり、有意差が出ています。もう、どうでもいいです。数字遊びでたまたま有意差出た程度のアウトカム(ARR=0.9%、NNTは4年で112人)に興味はありません。死亡を減らすというなら、死亡をプライマリアウトカムにして再度試験してください。
では、最初の僕自身の疑問に戻りましょう。
・「どの程度の死亡率の低下がいつの時点でみられたのか?」→見るアウトカム次第だが4年でNNT=53か112。ただしその30日後には有意差はなくなる程度のわずかな差。
・「その結果は信頼に値するのか?」→上記アウトカムは試験の終了間際(解析段階)で追加されており、とても信頼できるものではない。
「UPLIFT試験で死亡率の低下がみられた」って宣伝真に受けてました。恥ずかし~。
一次情報にあたって自分で評価することがいかに大切かってことですね。
UPLIFT試験の解説をしたブログはいくつもありますが、有意差の出た死亡アウトカムが後付けだって指摘してるの見た覚えがない(;´・ω・)←全部見たわけではない。
https://clinicaltrials.gov/archive/NCT00144339
上記リンクの2013.10.22がアウトカム変更が行われた時点になります。(2013.9に申請して2013.10に承認された。上の表記と日付が異なるのはそのためです)
そのうち僕のベーリンガーインゲルハイム社嫌いを決定づけたダビガトランについても記事にできたらな~とは思っています。(←記事を書くと約束できないほどの怠け者)
書いた本人が読み返すのも億劫なほどの駄文・乱文にお付き合いいただきありがとうございました。
チオトロピウム製剤(スピリーバ🄬)のデバイス間の差。ネットワークメタ解析
去る9/24にJJCLIPでスピリーバ🄬のデバイス間の安全性を検討した非劣性試験かつ優越性試験(TIOSPIR)の配信がありました。
JJCLIP_#48 チオトロピウムのレスピマット製剤はカプセルと比較して安全なのでしょうか? - クスリのよろず屋「雅 (Miyabi)」の見立て
P:COPD患者
E1:スピリーバ🄬レスピマット2.5μg/日
E2:スピリーバ🄬レスピマット5μg/日
C:スピリーバハンディヘラー18μℊ/日
O1:死亡(安全性、非劣性マージン1.25)
O2:COPDの初回増悪(有効性、優越性試験)
⇒有効性、安全性共にデバイス間に有意差なし
(詳しくは録画がありますので、そちらを参照してください)
個人的には、生まれて初めてメーカーからの製品説明でブチ切れた根拠の一角を担う思い出の論文です。
また、青島先生(@syuichiao89)、D.TNK先生(@phdai)と初めて大分でお会いした時、青島先生への質問の元ネタにした論文でもあります。
バックグラウンドでもサラッと書いてありますが、ハンディヘラーがプラセボに対して死亡を減らした(UPLIFT study PMID:27176208、21678045 死亡はセカンダリアウトカム)けど、レスピマットがプラセボに対して死亡を増やしたというメタ解析(PMID:21672999、23042705)が報告されていました。
*メタ解析についての解説はこちらの先生の記事が詳しいです。→
スピリーバ・レスピマットの安全性疑惑: メタアナリシス 死亡率52%増加 : 内科開業医のお勉強日記
なお、上で紹介した記事は青島先生、忍者先生(@ScreamTheYellow)をEBMの世界に誘った記事でもあります。
JJCLIP本編中でもコメントしましたが、割と論文のバックグラウンドはデマに近い内容になっています。この研究が始まったのが2010年であり、上記メタ解析が初めて世に出たのは2011年だからです。
メタ解析後にアウトカムに変更がありましたが3年→1年への変更のようです。
(募集当初から心血管ハイリスク患者の除外は行われていたのかを調べたくてプロトコールの変更履歴を見ていましたが見つかりませんでした。見つけた方は教えてください。https://clinicaltrials.gov/archive/NCT01126437 )
(おまけ:レスピマット群で、もとは1回1吸入1日2回だったのが1日1回2吸入に用法が変更になっている。プラセボを用いたダブルダミーになったのは途中から。)
*もし募集要項に変更がなくて、心血管ハイリスク患者を除外して募集していたなら、TIOSPIR開始時点でメーカーはスピリーバの危険性を認識していた疑いが出てくるので。
とりあえず、記事にしたついでに何にブチ切れたかも書いておこうと思います。
死亡増加のメタ解析について一言も触れなかったメーカーがTIOSPIRの報告後「懸念の事項は解決しました」とか笑顔で抜かしたからです。当時の僕は論文の読み方も知らないEBMに目覚めてもいない雑魚薬剤師でしたが、メタ解析の論文を読んで、呼吸器専門のクリニックからのレスピマットの持参薬を各ドクターに説明・了承を得てハンディヘラーに切り替えていたので。(なお、薬局の同僚上司からの理解は得られませんでしたので、直接説得しましたw 当時はクソすぎると怒りも感じていましたが、今となっては良い思い出です)
前置きが長くなりました。(前置きを書くのに疲れました)
今日の記事の本題は、チオトロピウム製剤のデバイス間の差を検討したネットワークメタ解析です。
Tiotropium formulations and safety: a network meta-analysis. - PubMed - NCBI
僕はこの分野の専門家でもないので、解説間違ってたらツッコミお願いします。
このブログでネットワークメタ解析を扱うのは2回目ですね。
一部使えない部分(メタ解析では直接比較と間接比較の一致性を考えます。また通常のメタ解析で問題になる非直接性は微妙です)はありますが、批判的吟味には通常のメタ解析の批判的吟味で良いと思います。
(ですので、本文中にPRISMA声明に従ったとの文言が出てきます)
では、お決まりの疑問の定式化から
P:COPD患者
E1:スピリーバ🄬レスピマット2.5μg/日
E2:スピリーバ🄬レスピマット5μg/日
E3:スピリーバハンディヘラー18μℊ/日
C:プラセボ
O:①有害事象②重篤な有害事象③死亡
アブストラクトでPECO立てできないので、この時点で少し残念な論文ですね。
次にバイアスのチェックをしましょう。
言うまでもないとは思いますが、メタ解析は既存の報告を統合して解析するので、とってもバイアスが入り込みやすいという構造的弱点を有しています。
評価者バイアス(論文を選ぶ人によって生じるバイアス)
→「Two reviewers independently ~」とあるので一先ずは大丈夫。意見の対立は第三者を挟まず相談って大丈夫なのかな?評価者間の権威勾配がどうなっているのかはわからない。
出版バイアス(網羅的に探した?偏りなく探せた?)
→ 探したのは「PubMed and Google Scholar」正直心もとない。せめてCENTRALくらいは追加で確認してほしいところ。で、実際に集まったのは「 38 published and unpublished studies including 44 RCT」とあり、「The Egger’s test did not find any asymmetry (p > 0.1)」と結果の項に記載があるので、集まった論文に偏りはなかったよう。
元論文バイアス(組み入れた個々の研究の質)
→「The Jadad score」を用いたとある。正直今更こんな古臭いスコアで評価しましたとか言われましても…ねぇ?マリオ先生?ランダム化、盲検化、脱落の記載で5点満点のスコアですよ。RCTなら普通2点は超えるんですが(;´・ω・) CENTRALを検索で回避していたり、GRADEシステムではなく古臭いスコアリングを持ち出したりと、コクランになんか恨みでもあるんですか?
異質性バイアスはネットワークメタ解析では使わないというか使えない
一致性(inconsistency factor =IF)
→直接比較と間接比較で得られた推定値のばらつきを見る。一致していないと結果への信頼性が落ちる。「(AEs IF 0.01, 95% CrI −0.93 to 0.87; p > 0.05; SAEs IF 0.01, 95% CrI −0.38 to 0.81, p > 0.05; risk of death IF 0.03, 95% CrI −2.65 to 1.94. p > 0.05)」両比較で結果に食い違いはなかったよう。
で、バイアスのチェックも終わったところで結果に。
見るべき結果はただ一つ!Fig.3Aのみ!
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5298465/figure/fig3-2042098616667304/
はい、アウトカムに設定された3つの安全性指標でどれにも有意差はありませんでした~。やや、ハンディヘラーよりですが。
で、このややハンディヘラー寄りが影響しているのがTable2で示されているSUCRAという解析ですね。ネットワークメタ解析の産物としてできる各選択肢の順位付けですね。MANGA試験で有名になりました。(メーカーさんがこの結果だけ示してたからね。目につく結果だから仕方ない)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5298465/table/table2-2042098616667304/
個人的には中身がないのにミスリーディングかつ目を引くという意味で「サクラ」と読んでます。「SUCRA」の文字の読み方としても正しいでしょ?順位1位と2位以下に有意差がなくてもほぼ点推定値の位置で順位付けしてます。だから、結果として見る価値はほぼないです。公式な扱いが決まるまで無視するのが最善策だと思います。(そもそもネットワークメタ解析の批判的吟味のやり方も、普通ののメタ解析のPRISMA声明を流用しているくらいなので)
デバイス間に安全性で差はないというのがこの論文の結論で良いでしょう。
と、いうことで今日の記事はここまでになります。
駄文・長文にお付き合いいただき、ありがとうございます。
7/29居酒屋抄読会の開催報告
7/29に梅田で居酒屋抄読会を開催してきました。
開催の告知は以下からお願いします。
7/29(土) 第5回居酒屋抄読会ツイキャス配信のご案内 - pharm-niiyan’s diary
7/29(土) 第5回居酒屋抄読会ツイキャス配信のご案内 - リンコ's ジャーナル
【告知】7月29日土曜日に居酒屋抄読会を開催します! - 窓際さんのお勉強な日々
録音は以下から聞くことができます。
はい、既に何回やったかまともに数えていません。
なお、今月8/26に予定していた居酒屋抄読会in名古屋は参加者が集まらなかったため延期することになりました。
お声がけさせていただいた皆様、大変申し訳ありません。
みやQ先生から、参加報告をいただいております。宜しければご一読ください。
平成29年7月29日 居酒屋抄読会参加報告 - 「くすりや」の「現場」
更に今回はファーマトリビューンさんがきてくださいましたので、参加報告記事も貼っておきます。
お題論文はコチラ
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa052771
P:症候性膝関節炎のある患者
E:グルコサミン1500mg、コンドロイチン1200mg、グルコサミン+コンドロイチン、セレコキシブ200mg
C:プラセボ
O:24週後の膝関節痛20%減少(臨床的に優位ととれる改善は15%程度)
今回は5アームという多岐にわたる比較試験の論文です。アメリカの公的機関がバックについた試験だけに批判的吟味でも大きな問題ない感じでしょうか。(もともと20%は脱落する前提の試験なので脱落率については議論の余地があるかもしれません)
結果はプラセボでも60%の患者さんが改善、一番改善者の割合が多いセレコキシブで70%とプラセボ群の反応率の良さが目につきます。(グルコサミン、コンドロイチン、両者の併用は有意差が出ませんでした)
もうプラセボ(フリスクでも、栄養ドリンクでもなんでも)でよくね?みたいな感じになりました。こんなご意見もいただきました。
いっつん@aitataitachan
単に活動量が増えて筋力が増強した場合に痛みが減少するケースもあるので、痛みがとれた要因として、下肢筋力や柔軟性、活動量などの変化についても気になりますね。
患者さんへの適用を考えるなら、情報を集めることから始める必要があると思います。(体重、運動量、日々の生活への痛みの影響、現在の受診・服用歴など)太ってるなら痩せるってのが膝への負担軽減には有益でしょうから(;´・ω・)
高いプラセボ反応率によって、海外で市販されている薬(例:Fluoxetine、Lurasidoneなど)であっても治験でこける案件が多い精神科ではプラセボ効果は笑えないほどの効果を示します。
プラセボ効果そのものを測定することは極めて難しいのですが、プラセボ効果と未治療を比較した試験を集めたコクランレビューがありますので紹介します。
Placebo interventions for all clinical conditions | Cochrane
全文はこちらから
http://www.rima.org/web/medline_pdf/placebointerventions.pdf
P:健康上の問題を抱えた人
E:プラセボ
C:未治療(プラセボも受け取らない)
O:主観・客観的な医療状況の評価(二値的、連続変数的)
結果のSoF表より抜粋
All clinical conditions (binary outcomes) RR 0.93 (0.88 to 0.99) No. of participants (studies) :6041 (44) Quality of the evidence:Moderate
All clinical conditions (continuous outcomes) SMD -0.23 (-0.28 to - 0.17) No. of participants (studies) :10,525 (158) Quality of the evidence:Moderate
Quality of the evidenceがModerateと割と高い確信性をもって有意差が出ています。プラセボ効果、本当に侮れない(;´・ω・)
以上が居酒屋抄読会の開催報告と追加説明になります。
報告が遅れましてすみません。
7月29日土曜日に居酒屋抄読会の為の周辺情報
7月29日土曜日の居酒屋抄読会にむけて、関節痛に対するコンドロイチンやグルコサミンの効果を検討した臨床試験などを紹介していきたいと思います。
グルコサミンやコンドロイチンといえばCMでも流れているので、健康食品のイメージが強いのではないでしょうか?
こうした健康食品で信頼できる情報はどうやって手に入れてますか?
検索エンジンで単純に「グルコサミン」とか「コンドロイチン」って入力していませんか?追加で入力してもせいぜい「効果」くらいでしょうか?
「臨床試験」ってそれっぽい単語を入力しても、大半が『臨床試験で効果がみられました!』なんて引用文献の一つも明示していない怪しげなサイトしか引っかかりません。
こうした健康食品を調べる際、個人的にお勧めしているのは以下のサイトになります。
検索の最中に面白い文書を見つけたので貼っておきます。日本語で読みやすいと思いますので、以下の文書を読むよりラクチンだと思いますので、お疲れの方は以下のリンクからどうぞ!
http://pha.jp/shin-yakugaku/doc/43_3_44-48.pdf
関節炎に関しては、すでに多くの臨床試験が行われているため多くの論文が発表されています。多くの研究結果があるということは、メタ解析(複数の研究を統合して解析する手法)の論文の存在が期待されます。はい、もちろんありました!メタ解析の論文を期待するなら、できれば手法的に信頼度の高いコクランレビューの論文がないか確認したいところ!モチロン、見つけましたよ!(コンドロイチンの論文、全文フリーでございます)
Chondroitin for osteoarthritis. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jan 28;1:CD005614. doi: 10.1002/14651858.CD005614.pub2.
PMID: 25629804
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD005614.pub2/full
P:いずれかの関節に変形性関節症を患っている成人
E:コンドロイチン
O:(有効性)
・疼痛スコア(0~100):コンドロイチン群で10% 低下 (95% confidence interval (CI), 15% to 6% lower; number needed to treat (NNT) = 5 (95% CI, 3 to 8; n = 8 trials )
(T2 = 0.07; I2 = 70%) (level of evidence, low; risk of bias, high)
・WOMAC MCII Pain subscale(疼痛、硬直および機能の自己評価):コンドロイチン群で6% 低下(95% CI 1% to 11%), (RR 1.12, 95% CI 1.01 to 1.24; T2 = 0.00; I2 = 0%) (n = 2 trials, 1253 participants; level of evidence, high; risk of bias, low).
・ Lequesne's index (composite of pain,function and disability):コンドロイチン群で8% 低下 (95% CI 12% to 5% lower; T2= 0.78; n = 7 trials) (level of evidence, moderate; risk of bias, unclear
(安全性)
・有害事象:Peto odds ratio of 0.40 (95% CI 0.19 to 0.82; n = 6 trials) (level of evidence, moderate)
〈評価と感想〉
コンドロイチンを使うと有効であるばかりか有害事象まで減るというコクランからの報告。(2013.11までの結果。RCTのシステマティックレビュー)メタ解析としてはこの報告が新しい部類に入る。コクランだけにシステマティックレビューやメタ解析の手法などに特段の問題はないように見える。しかしFunnel plotでは、コンドロイチンに不利な報告は欠落しているように見える。また統合における異質性も高く、結果の精確さには欠いていると言わざるを得ない。
ここからはコクランの報告が2013年までの研究を集めたものなので、それ以降のものをいくつか紹介します。
Prevention of Knee Osteoarthritis in Overweight Females: The First Preventive Randomized Controlled Trial in Osteoarthritis AJM August 2015Volume 128, Issue 8, Pages 888–895.e4
http://www.amjmed.com/article/S0002-9343(15)00244-2/abstract
太った(BMI27以上)50~60歳女性に減量(ダイエットとエクササイズ)、グルコサミン投与の二つの介入比較し、2.5年後の変形性関節症の発症を検討したRCT。(Proof study)以下に示すように予防効果は見られなかった。
DEP control/glucosamine群(n=204) 発症率13% オッズ比(未調整)0.610 95%CI 0.328-1.135 オッズ比(ベースラインのKellgren & Lawrence gradeで調整)0.591 95%CI 0.313-1.118
DEP intervention/glucosamine (n=204) 発症率20% オッズ比(未調整)1.010 95%CI 0.579-1.763 オッズ比(調整)0.972 95%CI 0.553-1.710
Combined chondroitin sulfate and glucosamine for painful knee osteoarthritis: a multicentre, randomised, double-blind, non-inferiority trial versus celecoxib.
PMID: 25589511 Ann Rheum Dis. 2016 Jan;75(1):37-44
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25589511
重度の痛みのある変形性膝関節症患者にグルコサミン500mg+コンドロイチン400mgとセレコキシブ200mgを6か月間で比較した非劣性試験。WOMAC(0~500点で評価)のベースラインからの変化量の差(マージンは-40)で見た結果、非劣性が示された試験。といっても、頓用で1日3gのアセトアミノフェンの服用が認められており、最初の1か月は介入群で服用が多かったとの記載がある。
Effectiveness and safety of Glucosamine, chondroitin, the two in combination, or celecoxib in the treatment of osteoarthritis of the knee.
PMID: 26576862 Sci Rep. 2015 Nov 18;5:16827
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26576862
変形性膝関節症に対する、コンドロイチン、グルコサミン、グルコサミン+コンドロイチン、セレコキシブの有効性と安全性を比較したネットワーク・メタ解析。
上記はFig1であり、白色の部分が疼痛への効果で、灰色の部分が機能を評価したもの。有意差は出ているが、臨床的な有効性については変化量の小ささからすべての介入で疑問が残る。
どれも調べた限り経口投与のグルコサミンやコンドロイチンが「無効」とした報告はないが、疼痛時の対策として痛み止めが使用されており、純粋なグルコサミンやコンドロイチンの効果を見た報告は調べた限り見当たらない。(探し方の問題なので、探せば見つかるはず)
したがって現時点ではグルコサミンやコンドロイチンを服用することの関節痛低減効果は懐疑的に見る必要があると思う。
ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました。
そして、おやすみなさい(この記事作成時、7/18 2:33)