窓際さんのお勉強な日々

こそっと論文読んで、こそっとメモ

ネットワークメタ解析チェックリスト改訂への道②~開放隅角緑内障の第一選択となる点眼薬は?~

抗うつ薬のネットワークメタ解析(NMA)の論文を読み直すこと3度。

更にチェックシートを改訂しました!

Dropbox - ネットワークメタ解析チェックシートver3.pdf

 

チェックシートの完成度を高めるべく新たなNMAの論文を読むことにしました。

 

 緑内障の点眼薬による治療についてはFizz先生による記事がありますのでご参照ください。(そもそも緑内障点眼薬への理解は概ね以下の記事のようでした)

www.fizz-di.jp

で、上記記事に緑内障の点眼薬のNMAの論文が紹介されていたのですが、

www.ncbi.nlm.nih.gov

2008年の上記論文にはタプロスが含まれていないこと、既に2018年であり改訂版が出ている公算が大きいことから、新しいお題論文を探すことにしました。

(「国産」をウリにした製剤はエビデンスが質量ともにイケていないことが多く、上記論文でも対象になれなかったものと推測しています)

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

(青島先生がNMA祭りでツイートしていた時は焦りました)

 

では、臨床疑問の定式化をアブストラクトで行いましょう。

 

P:原発性開放隅角緑内障もしくは高眼圧症の患者

I/C:点眼治療単剤、プラセボ(未治療を含む)

O:きちんと記載されていないが、「治療開始3か月後の眼内圧(IOP)」?

 

微妙にアウトカムの分かりにくい書き方に、読み進める気力を奪われましたが、チェックリスト改良の為、どんどん読み進めます!

 

P:参加者の60%以上が原発性開放隅角緑内障もしくは高眼圧症と診断された患者

 10名未満の群で比較している試験、併用療法を許容している試験は除外

 28日以上追跡していること

I/C:β遮断薬:チモロール(チモプトール)、カルテオロール(ミケラン)

      ベタキソロール(ベトプティック)、レボブノロール(ミロル)、levobetaxolol

 炭酸脱水酵素阻害薬:ブリンゾラミド(エイゾプト)、ドルゾラミド(トルソプト)

 α2刺激薬:ブリモニジン(アイファガン)、アプラクロニジン(アイオジピン)

 プロスタグランジン関連薬:ラタノプロスト(キサラタン)、

  タフルプロスト(タプロス)、トラボプロスト(トラバタンズ)、

  ビマトプロストルミガン)、ウノプロストン(レスキュラ)

 濃度は問わず一緒に解析。(感度分析として濃度別解析をする)

O:治療開始3か月後の平均眼内圧mmHgの差(測定方法は問わない

眼内圧測定値の優先順位:平均日内IOP>24時間平均IOP>ピークIOP>朝IOP>トラフIOP

 

「40%も対象にしたい疾患外の混入を認めるのヤバくね?」と思いつつ次へ

 

ステマティックレビュー(SR)の評価

 

・データベースはCENTRAL、MEDLINE、EMBase、FDAのサイトで検索。検索語(appendixにある)検索日の記載はあるが、検索期間がない

・元論文バイアスはRCTに限定しており、risk of bias toolで評価している。

結果、スポンサーバイアスがかなり入っているよう。

・評価者バイアスは英語文献のみ二者独立、それ以外の言語は単独での評価、意見対立時は第三者介入を行っている。

・出版バイアスについては言語の制限を設けていないが、参考文献や専門家連絡については記載が見当たらない。またファンネルプロットもない。

・異質性バイアスは事前登録情報はなく、対象集団には40%未満の対象外疾患の混入が認められ、アウトカムの眼圧値も測定方法や内容の違いを無視してよいのか疑問。

 

SRの作り方が、前回の抗うつ薬の論文に比べて極めて雑なのが伺えます。

(と、いうか前回の論文がSRの作り方でコクランレビューをも凌駕するほど完ぺきなだけで、あれと比較するのは厳しすぎる気もします)

 

NMAの評価

・ネットワーク図はあるが、閉じた環の少ない介入がぽつぽつ見受けられる(タフルプロスト、アプラクロニジン、levobetaxolol、カルテオロール、トラボプロストが特に少ない)

・直接比較と間接比較を分けて結果を示していない

・11%に不一致がみられたとの記載あり

・COIの記載なし。資金源の記載はあるが提示された番号を検索しても何もヒットしない

(筆頭著者のCOIを確認すべく検索するもCOI不明。眼科出身の疫学の専門家らしい)

Tianjing Li - Faculty Directory - Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health

 

で、結果(IOPの低下。対プラセボ

ビマトプロスト 5.61(4.94; 6.29)

ラタノプロスト 4.85 (4.24; 5.46)

トラボプロスト 4.83 (4.12; 5.54)

レボブノロール 4.51 (3.85; 5.24)

タフルプロスト 4.37 (2.94; 5.83)

チモロール 3.70 (3.16; 4.24)

ブリモニジン 3.59 (2.89; 4.29)

カルテオロール 3.44 (2.42; 4.46)

levobetaxolol 2.56 (1.52; 3.62)

アプラクロニジン 2.52 (0.94; 4.11)

ドルゾラミド  2.49 (1.85; 3.13)

ブリンゾラミド 2.42 (1.62; 3.23)

ベタキソロール 2.24 (1.59; 2.88)

ウノプロストン1.91(1.15; 2.67)

 

タプロス、ミロルに負けちゃった(;^ω^)

で、SUCRAによるランク付けが行われています。(順位は上記の並び順)

COIの公開のないランク付けはメーカーバイアスかかっている可能性が高いのでご注意ください。

あ、Fig5の見方ですが、ランクが上の方にいる可能性が高いほどグラフの曲線の上りが左に寄ります。

 

正直、疫学の専門家が参加してこの出来ってどうなん?(;^ω^)

前回のお題論文が方法論的に凄過ぎたことによる落差もあるかもしれませんが、結果の確信性が低すぎるでしょ(;^ω^)

 

で、今回の論文を読んで、更にチェックシートをバージョンアップしました!

www.dropbox.com

是非、ご活用ください!