認知症患者さんにがっつり運動してもらった認知機能はどうなる?⇒変わりませんでした!
<はじめに>
はい、タイトルにオチ入れちゃいました(;^ω^)
もう記事を読む価値はないかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。
<お題論文>
PMID: 29769247
こちらはプロトコル論文
PMID: 27015659
で、双方で事前登録情報が異なっています。
上:ISRCTN10416500
下:ISRCTN32612072
上は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の換気方法の研究です(OSCAR試験)
本文の解釈には全く関係ありませんが、参考までに。
<臨床疑問>
P:軽度~中等度の認知症患者494名
→(本文より)DSM-Ⅳで診断。MMSE>10、10Feetを独歩で移動可能、椅子に着席できる。
→4ヶ月週2回グループセッション:理学療法士監督下にジムもしくは施設でエアロバイク(ウォーミングアップ5分+許容レベルに合わせた運動)+ダンベルなどを使ったレジスタンス運動+1時間のホームワーク。その後、自宅で150分/週の運動。
C:通常ケア
O:12ヶ月後のADAS-cogのスコア
→11項目、70点満点。高得点ほど認知機能悪化を示す
→大元のプライマリアウトカムは6ヶ月、12ヶ月でのMMSEとBADL(要はADL)
→事前登録情報の最新のプライマリアウトカムは6ヶ月、12ヶ月でのADAS-cog
(「6ヶ月」が論文では削除されている)
⇒実際に集まった患者群にTable1で示されている範囲で特に気になる偏りはないが、併存疾患は示されていない。平均年齢I76.9歳vsC78.1歳。独居I16%vs21%。
⇒介入の指示を守れた人とそうでない人をTable2で示している。やや男性が多いよう。
<批判的吟味>
・ランダム化:コンピュータで作成した乱数による。I群:C群=2:1。グループセッションがあるため、アンバランスなランダム化になった。
・マスキング:アウトカム評価者のみ
・真のアウトカム:代用
・アウトカムは明確?:明確
・ITT解析?:ITT
・サンプルサイズ:468名(20%は脱落する見込み)
・追跡率:I群85%、C群83%
<結果>
Table3より
ADAS-cog I vs C
開始時: 21.2 vs 21.4
6ヶ月: 22.9 vs 22.4 MD-0.6 95%CI:-1.6~0.4
12ヶ月: 25.2 vs 23.8 MD-1.4 95%CI:-2.6~-0.2
⇒1年後、有意差をもって介入群で悪化(臨床的意味のある差ではないが)
NIHR健康技術評価プログラムで公的資金を投じて行われた研究だが、認知機能の他QOLも測定している(医療技術評価の為QALYを測定したかったのだろう)が、そちらも有意差はなかった。
個人的感想「運動、キツ過ぎね?」
※この研究には4つほどコメントがついているので、一部を紹介
「4ヶ月間の介入後に評価されなかったため、著者は認知における中高度運動の効果について結論することができない」
いやいや、4ヶ月で認知機能に差がついたら、元の診断名が間違ってるでしょ!(アルツハイマー病は年単位で進行する疾患)
「この研究は認知症における身体活動の役割に関する多くの否定的な報道を生み出している」
こんだけの強度の運動を平均年齢76.9歳に課した部分を報道は考慮しないのね(;^ω^)